第12章 トンネル河川
第1節 基本事項
トンネル構造による河川は、地形の状況、その他特別の理由によりやむを得ない場合に限り設けるものとし、ルートは、地形・地質条件、地上の利用条件、地下埋設物等の調査を行って決定するものとする。なお、線形は著しい屈曲を避けるよう定めるものとする。また、特にやむを得ない場合を除き現状河道は確保するものとする。
トンネル構造による河川を導入したことによって、何らかの事態でトンネル構造による河川が使用不能になった場合においても、現状より不利になることがないよう、特にやむを得ない場合を除き現状河道は確保するものとする。
1. 断面および縦断勾配
トンネルの断面は、設計流量の流下に必要な断面積のほかに、原則として十分な空面積を確保するものとする。さらに、トンネルの縦断勾配は、洪水処理機能の確保、水理的な安定性、維持管理上の観点から適切な勾配を決めるものとする。
1-1 断面
開水路方式のトンネルの場合は、流木、浮遊ゴミ等の流下による疎通障害や高速水流が流れると空気圧が低下する。このため、十分空気が補給でき、空気流の流過ができるように設計流量の流過に必要な断面積の15%程度を下回らない値を標準として空面積を確保する必要がある。
1-2 縦断勾配
トンネル本体の縦断勾配が適当でない場合には、緩勾配の区間で堆積の生じる恐れがある。したがって、全区間にわたり掃流力のバランスを考慮して縦断勾配を設定する必要がある。
2. 設計の基本
トンネル構造による河川は、設計流量の流水の作用に対して安全であり、付近の河岸および河川管理施設等の構造に著しい支障を及ぼさず、ならびにトンネル構造による河川に接続する河床および 高水敷の洗掘の防止について適切に配慮された構造となるよう設計するものとする。
トンネル構造による河川は、水系の河川改修計画に基づき計画され、河川流量の一部または全量を流下、もしくは河川流量を低減させる目的で設置されるトンネル構造の河川である。なお、本便覧ではトンネル構造による河川のうち、流入施設もしくは排水施設を有するものを地下河川といい、それ以外をトンネル河川という。
トンネル本体の設計にあたっては、できるだけ自由水面をもった断面とし、やむをえず圧力トンネルとする場合は、水理実験等による検討を行う必要がある。
また、騒音、振動、悪臭等周辺地域の生活環境、あるいは接続する河川の自然環境に配慮することも重要である。なお、ここに特記するものを除き、「トンネル標準示方書・同解説」等を参考にして設計する。
3. 設計の手順
トンネル河川の設計の手順:
- 治水計画
- 基礎調査
- トンネル河川の位置付け
- 関連法令の整理
- 目的に応じたトンネルの指定
- 階段整備計画の検討
- 設計流量の設定
- 分流方式の検討
- トンネル本体の検討
- 治水経済効果
- 階段整備計画の設定