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第12章 トンネル河川

第1節 基本事項

トンネル構造による河川は、地形の状況、その他特別の理由によりやむを得ない場合に限り設けるものとし、ルートは、地形・地質条件、地上の利用条件、地下埋設物等の調査を行って決定するものとする。なお、線形は著しい屈曲を避けるよう定めるものとする。また、特にやむを得ない場合を除き現状河道は確保するものとする。

トンネル構造による河川を導入したことによって、何らかの事態でトンネル構造による河川が使用不能になった場合においても、現状より不利になることがないよう、特にやむを得ない場合を除き現状河道は確保するものとする。

1. 断面および縦断勾配

トンネルの断面は、設計流量の流下に必要な断面積のほかに、原則として十分な空面積を確保するものとする。さらに、トンネルの縦断勾配は、洪水処理機能の確保、水理的な安定性、維持管理上の観点から適切な勾配を決めるものとする。

1-1 断面

開水路方式のトンネルの場合は、流木、浮遊ゴミ等の流下による疎通障害や高速水流が流れると空気圧が低下する。このため、十分空気が補給でき、空気流の流過ができるように設計流量の流過に必要な断面積の15%程度を下回らない値を標準として空面積を確保する必要がある。

1-2 縦断勾配

トンネル本体の縦断勾配が適当でない場合には、緩勾配の区間で堆積の生じる恐れがある。したがって、全区間にわたり掃流力のバランスを考慮して縦断勾配を設定する必要がある。

2. 設計の基本

トンネル構造による河川は、設計流量の流水の作用に対して安全であり、付近の河岸および河川管理施設等の構造に著しい支障を及ぼさず、ならびにトンネル構造による河川に接続する河床および高水敷の洗掘の防止について適切に配慮された構造となるよう設計するものとする。

トンネル構造による河川は、水系の河川改修計画に基づき計画され、河川流量の一部または全量を流下、もしくは河川流量を低減させる目的で設置されるトンネル構造の河川である。なお、本便覧ではトンネル構造による河川のうち、流入施設もしくは排水施設を有するものを地下河川といい、それ以外をトンネル河川という。

トンネル本体の設計にあたっては、できるだけ自由水面をもった断面とし、やむをえず圧力トンネルとする場合は、水理実験等による検討を行う必要がある。

また、騒音、振動、悪臭等周辺地域の生活環境、あるいは接続する河川の自然環境に配慮することも重要である。なお、ここに特記するものを除き、「トンネル標準示方書・同解説」等を参考にして設計する。

トンネル河川の各部の名称

地下河川の各部の名称

3. 設計の手順

トンネル河川の設計の手順:

  1. 治水計画
  2. 基礎調査
  3. トンネル河川の位置付け
  4. 関連法令の整理
  5. 目的に応じたトンネルの指定
  6. 階段整備計画の検討
  7. 設計流量の設定
  8. 分流方式の検討
  9. トンネル本体の検討
  10. 治水経済効果
  11. 階段整備計画の設定
  12. 地質調査
  13. トンネル本体設計
  14. 工法選定
  15. トンネル本体設計
  16. 流入条件のチェック
  17. トンネル断面、平面、縦断の設定
  18. トンネル河川計画諸元の決定
  19. 概略設計
  20. トンネル、呑口、吐口
  21. 測量
  22. 流出土砂・流木調査
  23. 呑口部設計
  24. 設計内容、図面等のとりまとめ
  25. 施工計画
  26. 環境調査
  27. 吐口部設計
  28. 各施設の必要用地

トンネルルートの検討:

  1. ルート別水理検討
  2. 施工法の概略検討
  3. 周辺環境への影響検討
  4. 経済性検討
  5. 比較評価
  6. 河川ルートの設定
  7. 水理模型実験
  8. 維持管理計画
  9. 緊急時の対応
  10. 土捨場
  11. 維持管理施設の検討

第2節 構造(標準)

1. 本体

トンネルの本体は、全断面コンクリート・ライニングその他これに類するものとし、流出土砂による摩耗に対して安全な構造とするものとする。

トンネル本体の内側は全断面コンクリート・ライニングもしくはこれに類する構造とし、流水、土砂等による摩耗のため、構造上の安全性が低下することのないようコンクリートの厚さを厚くする、表面を対摩耗性の材質のものにする等の摩耗対策を実施するものとする。

2. 吞口部および流入施設

2-1 吞口部

トンネル河川の呑口部は、流水が平滑に流入できる形状とするものとし、流送土砂、流木等による閉塞を防ぐための適切な対策を行うものとする。

また、トンネル河川の呑口部に接続する河道には、必要な範囲に護岸および護床工を設けるものとする。

トンネル河川は、流送土砂、流木等による閉塞が最も危険なので、河状に応じて適切な防除対策を行う必要がある。流送土砂量の多い河川では、適当な沈砂池を設けることを検討する。また、流木等に対しては、必要に応じ防除スクリーン、除塵機、防除パイル等を用いるものとする。呑口部は、形状等が急変する所であり、他区間に比べて乱れが大きくなるので、トンネル本体を保護するため、護床工および取付護岸を設けるものとする。

2-2 流入施設

地下河川の流入施設は、流水が平滑に流入できる形状とするものとする。流入施設には、河状に応じて、流送土砂、流木等に対して適当な防除対策を行うものとする。さらに、圧力管方式の場合には、空気混入量を極力減ずる形状とするものとする。

地下河川の流入施設の形状は、中小洪水時でも流水が平滑に流入し、異常出水時にも地下河川全体の安全性が確保できるようにする必要がある。

地下河川は流送土砂、流木等による閉塞が最も危険なので河状に応じて適当な防除対策を行うことが重要である。流送土砂量の大きい河川や、流送土砂の粒径の粗い河川では、適当な沈砂池を設ける必要がある。

また、流木類の流出の恐れのある河川では、流木類に対する除去スクリーン等を設ける必要がある。

流入施設の例

圧力管方式の場合は、トンネル本体内に取り込まれた空気に起因する圧力変動、水頭損失等の現象が発生するため、模型実験等により混入状況を把握し、流入施設の適切な形状を検討する必要がある。

3. 吐口部および排水施設

3-1 吐口部

トンネル河川の吐口部は、流水が平滑に流出できる形状とするものとする。トンネル河川の吐口部に接続する河道には、必要な範囲に護岸および護床工を設けるものとする。

トンネル河川からの流水が、付近の河道および河川構造物に著しい支障を与える恐れのある場合には、適切な減勢工を検討するものとする。

3-2 排水施設

地上河川の排水施設の設計にあたっては、吸水槽規模、ポンプ規模、サージング現象等地下河川全体に与える影響とともに、排水域に与える影響を十分に考慮するものとする。

排水施設を通しての流水の放流先が海域の場合には、水面利用や吐出部の閉塞等について、また、放流先が河川の場合には、合流により河床や河川構造物等に支障がないように配慮する必要がある。

排水施設の例(平面図)

排水施設の例(断面図)

4. 維持管理に対する施設

トンネル構造による河川は、非洪水時に容易にかつ安全に巡視ができるように、また、非洪水時に上下流からトンネル内への河川水の流入を容易に遮断でき、かつ維持修繕工事のための資材搬入路が確保できる構造とするものとする。

トンネル構造による河川は、常時巡視ができてライニングの欠落、クラックの発生、インバートの破損、落盤の徴候等を観察できなければならない。そのためには、容易にかつ安全に巡視ができるように非洪水時にトンネル内をドライな状態に簡単にできる構造とする必要がある。また、維持修繕工事を施工するために上下流のいずれかに資材搬入路が確保できるように必要空間を確保する。

第3節 設計

1. 設計流量

トンネルの設計流量は、原則として計画で配分される計画高水流量の130%流量以上とするものとする。

トンネル構造による河川においては、他の開水路河道に比較して流下能力増大の対応が極めて困難であることや、流下物による閉塞の危険性が高い等不利な点が考えられるので、計画上設定される流量に対してトンネル断面の設計に用いる設計流量を割増しする必要がある。

この割増率は、一般的に開水路方式のトンネルの場合は、計画で配分される計画高水流量の130%流量以上とするものとする。なお、現状の河道は確保しておくことが望ましいが、やむをえぬ事情から現状の河道を廃止せざるをえない場合、トンネルの設計流量は、計画高水流量の130%流量以上とすることはもとより、次の流量のうちいずれか大きいものを下回らない流量とするものとする。

  1. トンネルの上流の現状河道が有堤の場合その流下能力の130%流量
  2. トンネル吞口部または流入施設における超過確率1/100流量の130%流量

圧力管方式のトンネル内の流下量は、断面積よりも動水勾配に大きく規定されるものであるから、設計流量は計画流量と同一とする場合が多い。

2. 設計流速

トンネル内の設計流速は、トンネル本体の維持上安全な流速とするものとする。

一般的には、トンネル内の設計流速は、7m/s以下にとる場合が多い。流速の決定においては、次の事項について考慮するものとする。

  1. 粗度係数については、当該河川ごとに、次のことを総合的に考慮し、従来の計画実績と粗度の観測資料も参考にして適切な値を設定する。
    • 使用頻度
    • 流入土砂およびゴミの特性
    • 管内流速等に起因する摩耗の程度
    • 壁面の維持管理方法等
  2. 常時流下させる水路内の流速は、25m/s程度が適当であるが、一時的に大量に流下させる水路においては、流速を47m/sとすることもある。

3. 断面

トンネルの断面は、安全性、施工性等を考慮したうえで、流水の流下に支障を及ぼさないよう設計するものとする。

開水路方式のトンネルについては、トンネル内で跳水現象が生じないように十分な検討を行い、必要に応じて水理模型実験で検証する。

また、トンネル内の曲線部分では、一般にv^2/(gR)(ここに、v:流速、R:曲率半径、g:重力加速度)に相当する横断水面勾配(常流の場合)となるので、特に、カルバートタイプのトンネルの場合、天井部分に水面が接触しないよう設計するものとする。なお、水路トンネルであることからも、地質の良、不良にかかわらずインバートは必ず設け、厚さは35cm以上とし、トンネルの施工継目には止水板を設けるものとする。

第13章 海岸

第1節 基本事項

1. 適用範囲

海岸計画は、海岸災害の防止、海岸域の利用、海岸環境の保全を目的に、「海岸法第23条」に規定する海岸整備計画を都道府県知事が作成し、主務大臣に提出ないし関係海岸管理者と協議する際に必要な事項を定めるものであり、本章は、海岸保全区域における海岸保全施設の設計についての概要を示すものである。

2. 適用基準等

指針・要綱等発行年月日発刊者
海岸保全施設の技術上の基準・同解説平成16年6月海岸保全施設技術研究会
河川砂防技術基準 同解説 計画編平成17年11月日本河川協会
河川砂防技術基準(案)同解説 設計編Ⅱ平成9年10月
緩傾斜堤の設計の手引き平成18年1月全国海岸協会
人工リーフ設計の手引き平成16年3月

3. 設計のフローチャート

各種海岸保全施設の詳細設計にいたる一般的な設計のフローチャートを図1-3-1に示す。

  1. 自然条件・社会条件の把握
  2. 面的防護方式のパターンの選定
  3. 個別施設の配置の検討
  4. 環境条件
  5. 個別施設の基本諸元の仮定
  6. 整備目標の設定
  7. 整備効果の検討
    • 配置、基本諸元の決定(整備効果あり)
    • 個別施設の設計条件の決定
  8. 個別施設の性能規定の検討
  9. 個別施設の安全性の照査
    • 個別施設の構造諸元の決定(安全性あり)
  10. 詳細設計

(4) ヘッドランド工法

ヘッドランド工法は、大規模な突堤や離岸堤等の海岸構造物によって静的あるいは動的に安定な海浜を形成する工法、およびヘッド部付突堤等の人工岬によってポケットビーチ的に安定な海浜を形成する工法である。

図3-2-3 ヘッドランド工法平面配置図

第2節 堤防および護岸(標準)

1. 定義

ここで堤防とは、現地盤を盛土、またはコンクリート打設等によって増高し、高潮、津波による海水の侵入を防止し、波浪による越波を減少させるとともに、陸域が侵食されるのを防止する施設をいい、護岸は構造物の天端高が現地盤より低い場合をいう。

2. 型式

堤防および護岸の型式には、表のり勾配、構造、使用材料等により種々考えられるが、選定にあたっては、水理的条件、基礎地盤の土質、築堤材料、用地条件、利用状況、施工期間等を総合的に検討し、安全かつ機能的な型式を選定しなければならない。

型式表のり勾配堤防および護岸に共通する型式主として護岸に用いられる型式
傾斜堤1:1.0 ~ 1:3.0石張り式、コンクリートブロック張り式、コンクリート被覆式等捨石式、捨ブロック式等
緩傾斜堤1:3.0より緩コンクリートブロック張り式
直立堤1:1.0より急石積み式、重力式、扶壁式等突型式(L型式を含む)、ケーソン式、コンクリートブロック積み式、セル式、矢板式、石砕式等
混成堤上部1:1.0より急、下部1:1.0より緩等上記の組合わせ上記の組合わせ

3. 堤防および護岸各部の名称とその機能

堤防および護岸各部を図2-3-1、図2-3-2に、堤防および護岸各部の機能を表2-3-1にそれぞれ示す。

図2-3-1 海洋堤防各部の名称

図2-3-2 護岸の一般構造

表2-3-1 海洋堤防および護岸の機能

堤防・護岸の機能機能する部分の名称堤防のみ堤防および護岸に共通
(1)高潮・津波および波浪の阻止堤体表のり被覆工、波返工、基礎工
(2)波浪、しぶきの越流防止または越流の処理堤体、裏のり被覆工、根留工、基礎工表のり被覆工、波返工、天端被覆工、排水工、消波工
(3)波浪による洗掘防止根固め工、基礎工、表のり被覆工
(4)堤脚による波力の減殺根固め工、消波工
(5)浸透防止裏のり被覆工、根留工止水工、表のり被覆工、基礎工、天端被覆工、排水工
(6)天端載荷支持堤体、天端被覆工、その他の各部
(7)排水裏のり被覆工排水工、天端被覆工

4. 設計手順

堤防及び護岸の設計に当たっては、所定の機能が発揮されるよう、堤防及び護岸の型式、天端高、天端幅、法勾配及び法線を定めるものとする。

堤防・護岸の標準的な設計手順を図2-4-1に示す。

  1. 構造形式
    • 水理条件、基礎地盤の条件、堤体土砂の確保の難易、用地取得の難易、海浜の利用、施工条件、その他を総合的に検討する。
  2. 要求性能の決定
    • 目的達成性能(高潮又は津波による海水の進入防止、波浪による越波の減少)
    • 安全性能(高潮、津波、波浪、地震動及びその他の作用に対する適切な安全性)
  3. 照査において考慮すべき条件
    • 自然条件(潮位、波浪、津波、流れ、漂砂、海底地形及び海浜地形、地盤、地震)
    • その他の条件(背後地の重要度、海岸の環境、海岸の利用及び利用者の安全、船舶航行条件、施工条件)
  4. 目的達成性能の照査
    • 天端高、表法勾配、天端幅、裏法勾配の組み合わせにより評価
  5. 安全性能の照査
    • 波力、地震力、土圧等の作用に対する安全性
    • 透水の抑制
  6. 詳細設計

各項目の詳細については、「海岸保全施設の技術上の基準・同解説 3.2 P3-19~3-64」を参照のこと。

5. 構造

海洋堤防の構造は、「海岸保全施設の技術上の基準・同解説」および「緩傾斜堤の設計の手引」が優先し、「河川砂防技術基準 同解説 計画編」「河川砂防技術基準(案)同解説 設計編Ⅱ 第7章海岸保全施設の設計」に準ずるものとする。

第3節 突堤(標準)

1. 定義

突堤は、主として沿岸漂砂が卓越する海岸において、海岸から細長く突出して設けられるものであり、沿岸漂砂を制御することによって汀線の維持あるいは前進をはかることを目的とした構造物である。

2. 型式

突堤の型式は、原則として透過性および横断面形状を検討し選定するものとする。

  1. 透過型、不透過型の選定にあたっては、近隣の海浜地形、漂砂、卓越する波向、沿岸流の方向等を考慮するものとする。
  2. 横断面形状の選定にあたっては、設置水深、潮差、波力、必要とする透過性、材料の入手の難易等を考慮するものとする。

(1) 透過性による分類

突堤は、透過型と不透過型に大別でき、一般に用いられている構造の種類は表3-2-1のとおりである。

突堤の透過性は、沿岸漂砂の制御効果に強く影響するため、不透過堤、透過性の特徴をふまえたうえで型式の選定をする必要がある。

不透過堤は堤体が完全に漂砂を遮断するため、下手へ通過するのは先端部を回り込む漂砂だけである。よって不透過堤では、長さによって沿岸漂砂の制御効果を調整する。

表3-2-1 透過性による突堤の型式

型式名構造等
透過型
捨石・捨ブロック式石、ブロック(異形ブロックを含む)を捨て込んだもの。ブロックに孔をあけ、これに杭を差し込んだ串形のものもある。
詰杭式コンクリート杭等を2列に打ち並べ、この中に、中詰石を詰めたもの。透過率は小さく不透過に近い。
石杭式鉄筋コンクリートで枠を作り、井げたに積み重ねて枠を1列、2列に並べるか、杭を2列に打ち込んで石材を充填する。
不透過型
石積み式・石張り式捨石し、表面を割石で張るもの。のり勾配が1:1.0より急なものが石積み、穏やかなものが石張り。
コンクリートブロック積み式コンクリート方塊ブロックを積み上げるもの。平らな形のブロックに穴をあけ、これに杭を差し込んだ串形のものもある。
場所打ちコンクリート式陸上部分に用いられるものが大半である。
ウェル・ケーソン・セルラーブロック式外洋に面した急勾配海岸の堤頭部にウェルが用いられることが多い。他は混成堤タイプとして用いられる。
二重矢板式鋼矢板を二重に打ち、中に砂利、土砂を中詰めにしたもの。
パイル式鋼管矢板を1列に打ち並べたもの。

(2) 横断面形による分類

直立型の突堤は、壁面に作用する波圧に十分耐えうるものでなければならない。傾斜型の突堤は、表面を披覆する石およびブロックが波力に対して十分安定なものを用いる。両者とも、洗掘に対して十分配慮する。また、各形式の模式図を図3-2-1に示す。

各型式の特性を考慮の上、水深・潮差・波力、必要とする透過性、材料の入手の難易等に対して、所要の目的にかなう横断面形を選定する。一般的に、傾斜型は直立型あるいは混成型に比して材料が多量に必要であるので、傾斜型は水深、潮差の大きい場合には、工費の面から不適当な場合がある。

表3-2-2 横断面形による突堤の分類

横断面形斜面勾配突堤の分類
直立型鉛直~1:1.0石積み式、コンクリートブロック積み式、ケーソン式、セルラーブロック式、ウェル式、石枠式等
傾斜型1:1.0より穏やか石張り式、捨石式、捨ブロック式等

図3-2-1 突堤の型式

(3) 平面形による分類

突堤は、図3-2-2に示すように平面形状から直線型、T型、L型等に分類される。現在、よく用いられるのは直線型とT型であり、直線型が沿岸漂砂のみの制御を考えているのに対して、T型は岸沖漂砂の制御も考えている。

図3-2-2 突堤の平面形状

(4) ヘッドランド工法

ヘッドランド工法は、大規模な突堤や離岸堤等の海岸構造物によって静的あるいは動的に安定な海浜を形成する工法、およびヘッド部付突堤等の人工岬によってポケットビーチ的に安定な海浜を形成する工法である。

図3-2-3 ヘッドランド工法平面配置図

3. 設計手順

突堤の設計に当たっては、所定の機能が発揮されるよう、突堤の型式、天端高、長さ及び方向並びに突堤相互の間隔を定めるものとする。

突堤の標準的な設計手順を図3-3-1に示す。

  1. 構造形式
    • 設置場所の水深、波力、底質・土質、海底地形・海浜地形及び地形変化の状況、経済性、施工性、海岸域の自然環境及び利用を総合的に評価。
  2. 要求性能の決定
    • 目的達成性能(汀線が必要な浜幅を満足する漂砂制御性能)
    • 安全性能(設計高潮位以下の潮位の海水及び設計波の作用に対する適切な安全性)
  3. 照査において考慮すべき条件
    • 自然条件(潮位、波浪、津波、流れ、漂砂、海底地形及び海浜地形、地盤)
    • その他の条件(背後地の重要度、海岸の環境、海岸の利用及び利用者の安全、船舶航行条件、施工条件)
  4. 目的達成性能の照査
  5. 安全性能の照査
    • 波力、土圧の作用並びに洗堀に対する安全性
  6. 詳細設計

各項目の詳細については、「海岸保全施設の技術上の基準・同解説 3.5 P3-78~3-85」を参照のこと。

4. 構造

堤体は、波力、土圧等の外力に対して安定した構造としなければならない。なお、脚部が洗掘されるおそれのある場合には、洗掘を防止するために必要な基礎工または根固め工を設けるものとする。

構造細目は、表3-2-2に示した突堤型式によって変わり、その設計細目もそれぞれことなる。それぞれの型式の設計細目については「海岸保全施設の技術上の基準・同解説」および「港湾の施設の技術上の基準 同解説」等を参考にして設計をするものとする。

第4節 離岸堤(標準)

1. 基本事項

1-1 定義

離岸堤は、汀線から離れた沖側に、汀線にほぼ平行に設置される構造物であり、消波、または波高減衰を目的とするもの、その背後に砂を貯え侵食防止や海浜の造成をはかることを目的とするものがある。

図4-1-1 離岸堤各部の名称

1-2 離岸堤の機能

離岸堤の機能としては、次のもの等が挙げられる。

  1. 入射波のエネルギーを減勢させる。
  2. 波高の減衰効果により、波形勾配を小さくして、侵食型から堆積型の波に変える。
  3. 波高の減衰効果により、沿岸漂砂量を減少させる。
  4. (1)および(2)の効果により、トンボロを発生させて海浜の造成を図る。

2. 型式の選定

離岸堤の型式の選定にあったては、突堤に準ずるものとする。

3. 設計手順

離岸堤の設計に当たっては、所定の機能が発揮されるよう、離岸堤の型式、天端高、天端幅、長さ及び汀線からの距離並びに離岸堤相互の間隔を定めるものとする。

離岸堤の標準的な設計手順を図4-3-1に示す。

  1. 構造形式
    • 設置の目的を踏まえ、設置場所の水深、波力、底質・土質及び海底地形・海浜地形を総合的に評価。
  2. 要求性能の決定
    • 目的達成性能(波のうちあげ高または越波流量が所定の値を上回らないことを満足する越波制御性能、汀線が必要な浜幅を満足する漂砂制御性能)
    • 安全性能(設計高潮位以下の潮位の海水及び設計波の作用に対する適切な安全性)
  3. 照査において考慮すべき条件
    • 自然条件(潮位、波浪、流れ、漂砂、海底地形及び海浜地形、地盤)
    • その他の条件(背後地の重要度、海岸の環境、海岸の利用及び利用者の安全、船舶航行条件、施工条件)
  4. 目的達成性能の照査
    • 堤長、天端高、離岸距離、構造の組み合わせにより評価、離岸堤群の場合は設置間隔を追加。
  5. 安全性能の照査
    • 波力の作用並びに洗堀に対する安全性
  6. 詳細設計

各項目の詳細については、「海岸保全施設の技術上の基準・同解説 3.5 P3-86~3-98」を参照のこと。

4. 構造

離岸堤の安全性を確保するためには、所要断面の確保が必要であり、波の作用、海底地盤の変化に対し安全性を見込んだ配慮が必要となる。このため、特にブロックの質量、積み方、法勾配、天端幅、基礎構造については、十分な配慮が必要となる。

斜面勾配は、緩斜面化、複断面化したほうが反射による離岸堤前面の洗掘を防ぐとともに、堤体の安全性が高まる。

なお、ブロックの重量は、波力にしたがって求めるものとし、過去の災害実績の多い海岸では1.5倍程度まで割増しする場合が多い。詳細は「海岸保全施設の技術上の基準・同解説」等を参考にして設計をするものとする。

第5節 人工リーフ(標準)

1. 定義

人工リーフは、自然のサンゴ礁の形態を捨石等の材料を用いて珊瑚礁が高波を砕波、減衰させる現象を再現したもので、景観を損なうことなしに波浪の静穏化、海浜の緩勾配化および沿岸漂砂の制御を行い、安定した海浜の形成を海浜でのレクリエーションの促進を図ろうとするものである。

2. 具体的な設置目的

  • 打ち上げ高、越波量、あるいは飛沫量を減少させる。
  • 沿岸漂砂量を減少させる。
  • 人工リーフの岸側に砂を堆砂させて汀線を前進させる。
  • 人工リーフの岸側の砂が沖向きに流出するのを防止する。

図5-1-1 リーフの効果の概念図

3. 設計手順

リーフの標準的な設計手順を図5-3-1に示す。

  1. 構造形式
  2. 要求性能の決定
    • 目的達成性能(波のうちあげ高または越波流量が所定の値を上回らないことを満足する越波制御性能、汀線が必要な浜幅を満足する漂砂制御性能)
  3. 照査において考慮すべき条件
    • 自然条件(潮位、波浪、流れ、漂砂、海底地形及び海浜地形、地盤)
    • その他の条件(背後地の重要度、海岸の環境、海岸の利用及び利用者の安全、船舶航行条件、施工条件)
  4. 目的達成性能の照査
  5. 安全性能の照査
    • 安全性能(設計高潮位以下の潮位の海水及び設計波の作用に対する適切な安全性)
  6. 詳細設計
    • 長さ、天端高、離岸距離、構造型式の組み合わせにより評価、潜堤・人工リーフ群の場合は堤体間隔(または間口幅)を追加。
    • 波力等の作用並びに洗堀に対する安全性

各項目の詳細については、「海岸保全施設の技術上の基準・同解説 3.5 P3-99~3-107」を参照のこと。

表5-3-1 リーフの諸元と効果・機能の関係

項目関連諸元
越波防止越波防止効果を支配する消波効果は、主に天端水深と天端幅により決定される。
海浜の安定化沖向漂砂の制御効果は主に消波効果に支配されるので、天端水深と天端幅の関係が深い諸元となる。また、離岸距離、堤脚水深も岸沖漂砂の制御に関する諸元である。沿岸漂砂量の低減や堆砂効果は消波効果との関係も強いが、海浜流場を支配する平面形(堤長、開口幅、離岸堤)との関連が特に強い。
堤体断面の規模堤体断面の規模は天端幅と堤脚水深によりほぼ決められる。
海岸の利用等船舶の航行や海洋性レクリエーションによる海面利用には天端水深が関係する。また人工リーフによる水質、生態系の変化は海浜流場や設置水深との関連が強いことから、堤脚水深、離岸距離、堤長、開口幅と関連すると考えられる。
被覆材重量被覆材重量は、主に天端水深と堤脚水深に支配される。
海上交通潜水構造のため視認性が悪いことから、海上交通の多い場所では本工法の採用にあたり十分配慮しなければならない。

第6節 養浜(標準)

1. 定義

海岸に人工的に砂を供給することを養浜といい、造られた砂浜を人工海浜という。

養浜とは、侵食された海岸あるいは種々の利用要請のある海岸に人工的に砂を供給し海浜の造成を行なうことであり、こうして造成された海浜を人工海浜という。

人工海浜には、養浜材料流出防止施設を適切に設けることによって、継続的に砂を補給することなく安定状態を保っているものと、継続的に砂を補給することによって動的な安定状況を保っているものとがある。なお、本節では、前者を対象とする。

後者のための養浜の代表的なものには、構造物によって下手への漂砂の供給が断たれた場合に、漂砂の上手海岸に堆積した土砂を人工的に下手海岸に供給する、いわゆるサンドバイパス工法(図6-1-2)がある。

図6-1-1 海浜各部の名称と定義

図6-1-2 サンドバイパス工法概念図

2. 基本事項

養浜は、背後の堤防、護岸と一体として、防災機能、海浜の安定性、海浜の利用等を考慮し、養浜量、基本断面、養浜材料、流出防止施設の種類等を決定するものとする。

(1) 防災

浜の砂礫は、打ち寄せる波のエネルギーを減殺分散し、背後の施設や地域の防護として重要な役割を果たしている。このような点から、特に侵食対策工の一つとして、海浜造成は有効な手段と考えられている。

(2) 海岸利用

海岸が本来有しているオープンスペース的な性格、景観美等に加え、海浜造成により、海水浴場、釣り場、磯遊び、散策の場等、海洋性レクリエーションの場として積極的な利用が考えられる。また、地曳き網、船揚場等生産活動の場としての海浜利用も古来からの利用形態として依然として多い。

(3) 海岸環境

海浜により波を砕けさせ、エアレーションを促進することにより、海中の溶存酸素量を増し、海岸と前面の海域との海水交換により、海域の溶存酸素量を増し、健全な生態系を復活させる。このような過程で海域の浄化を図ることが考えられる。また、波や潮の干満によって乾湿を繰り返す"なぎさ"は、生物の生息のための貴重な場を提供する。

(4) 海浜断面の安定機構

海浜の砂は、波や流れによって容易に動かされ、このため海浜の地形は刻々とその形を変化させている。しかし、海浜は、このように長期的には変動しながらも、自らを安定の方向に落ち着けようという自律的な機構をもっており、長期的にみて安定していると考えてよい。

緩勾配で細砂からなる海浜の二次元的な安定機構を模式的に示したのが、図6-2-1である。

海浜が高波にさらされると前浜部が侵食され、その砂が沖へ運ばれて堆積し、沿岸砂州(バー)が発達する。この沿岸砂州は、潜堤のような働きをして波を砕くようになり、前浜部へ作用する波は弱められ、ある程度以上の侵食は進行しないようになる。やがて、波がおさまってくると、沿岸砂州に堆積していた砂が岸向きに押し戻されて前浜部に堆積していき、バームを形成する。このように沿岸砂州は、荒天時に前浜部から削り取られた砂の貯蔵場所として機能し、それより沖へ砂が運ばれるのを防止する働きをしている。逆にバームは、荒天時に削り取られるべき砂を静穏時に保管する働きを有するわけで、このバームを形成する砂の量が来襲する高波に対して十分であることが、海浜の安定条件のひとつであるといえる。

人工海浜の設計にあたっては、海浜断面の安定に必要なバームの砂の量が確保されるように後浜天端、および天端幅を決定しなければならない。

図5-2-1 海浜の安定機構

3. 設計手順

養浜の標準的な設計手順:

  1. 材料選定
  2. 要求性能の決定
    • 照査において考慮すべき条件
      • 自然条件
        • 潮位
        • 波浪・波浪制御施設
        • 流れ、漂砂・漂砂制御施設
        • 動的養浜
        • 海底地形及び海浜地形
        • 地盤
      • その他の条件
        • 背後地の重要度
        • 海岸の環境
        • 海岸の利用及び利用者の安全
        • 船舶航行条件
        • 施工条件
  3. 目的達成性能の照査
    • 生物の生息、海浜及びそれにまつわる歴史・文化的価値
    • 消波性能(海岸管理者が設定した防護水準を満足すること)
    • 短期的耐波性能(高波浪時に浸食を受けても堤防を支持する十分な砂浜幅の確保)
    • 長期的耐波性能(不可逆的な侵食の有無)
  4. 安全性能の照査
  5. 詳細設計
    • 後浜天端高及び天端幅、前浜勾配、底質粒径の組み合わせにより評価
    • 設計供用期間中の汀線変形及び漂砂量の予測

4. 養浜材料

養浜材料は、海浜の安定性、供給可能量、材質、海浜利用および周辺環境に及ぼす影響等を考慮して決定するものとする。

養浜材料の材質としては、火山噴出物、貝殻等の低比重物質やシルト質分等を多量に含まないこと、有害物質を含まないこと等が必須条件である。加えて材料の色調は砂浜のイメージを左右する要因であり、海岸環境を考慮する場合にはこうした点にも配慮する必要がある。

養浜材料の粒度は、海浜の安定性、消波効果、海浜利用者の感触、生物生息条件、海水浄化機能等と密接に関連する必要がある。これらの各種条件の中には、例えば以下に示すように粗い砂を可とする場合と逆に細かい砂を可とする場合の相反的なものもある。そのため供給可能量およびこれら粒度の特性を総合的に判断して材料を決定することになる。また、要求事項を満たす養浜材料の供給可能量が十分にない場合には、被覆層あるいはのり先に要求事項を満たさない材料の使用は基本断面に留めるものとし、波浪等により、被覆材が沈下したり、中詰材が吸い出されないように注意しなければならない。

要求事項底質の粒度特性
海浜の安定性一般に粗い方がよい
海浜勾配粗いほど急になる
消波効果一般に粗い方がよい
海浜の浄化機能、利用者の感触泥質にならない程度に細かい方が良い。一般に粗い方が好ましくなく、よって泥質にならない程度に細かい方が良い

第7節 人工海浜の安全確保のため留意すべき技術的事項(陥没による事故の防止対策)

1. 流出防止対策における留意事項

項目内容
フィルター構造設計に際し、フィルターの層数・フィルター各層の厚さや粒径を決定する場合、養浜砂と捨石の粒径、施工性等に留意する必要がある。
砂防シート・砂防マット設計に際し、1作用する外力(潮汐、波浪、土圧、施工時の風、土砂投入による衝撃力、捨石部表面の凸凹等)に対してそれ自体が十分な強度をもつ必要がある。2波の作用などによって正確な施工が困難な場合があるため、継ぎ目のオーバーラップを十分にとる必要がある。

2. その他留意事項

項目内容
不透過型構造物の裏込め材不透過型構造物の直立部に作用する土圧軽減のために裏込め材が設けられる場合があるが、裏込め材の中に土砂が流出する場合もあり、必要に応じてフィルター層、砂防シート、砂防マットなどの対策を行う。
防砂板施工性等の観点から防砂板を使用する場合の設計にあたり、1作用する外力(潮汐、波浪、土圧、施工時の風、土砂投入による衝撃力等)に対してそれ自体及び取り付け部が十分な強度を有する必要がある。2構造物の沈下や変形に対し追随できるものを選定することが必要である。なお、波浪や潮汐により防砂板が変形し磨耗等の損傷を助長する場合があるため形状や材質に留意する必要がある。
不透過型構造物の目地間充填材目地部に、マット類やモルタル等を充填すること(以下「目地間充填材」という。)によって、防砂板に作用する波力等を低減することができる。ただし、目地間充填材は構造物の沈下や波力等に対して安定であることが重要である。
天端置換捨石部の設置陥没孔は、基本的に静水面付近より上に発生するため、この部分が捨石であれば陥没孔発生の危険性は少ない。また砂部が捨石の下にあれば、陥没孔は発生しないと考えられる。
空隙の充填透過型構造物の空隙を予め土砂等で充填しておくことにより、波の作用で空隙中の土砂が安定勾配を形成し、土砂の流出を防止することが期待できる。

図7-2-1 裏込め材設置に伴うボイリングの防止対策

図7-2-2 天端置換捨石による陥没孔防止対策

図7-2-3 空間の重点による防止対策

第8節 付帯施設(標準)

付帯施設は、堤防、護岸等とともに一体的に機能し、構造上の弱点とならないように近傍の土地および水面の利用状況を考慮して設けなければならない。

付帯施設には水門、樋門、樋管等のほか排水機場、潮遊び、陸こう、昇降路およびえい船道、船揚場等がある。

設計は「海岸保全施設の技術上の基準・同解説」を最優先し「河川砂防技術基準 同解説 計画編」「河川砂防技術基準(案)同解説 設計編Ⅰ」および当設計便覧の適応する各章の事項に準ずるものとする。

付帯施設設置
水門付帯
樋門付帯
樋管付帯
排水機場付帯
潮遊び付帯
陸こう付帯
昇降路付帯
えい船道付帯
船揚場付帯

5. 海岸保全施設の設計にあたっての留意事項

海岸保全施設の配置に当たっては、施設の機能が十分発揮されるように効果的に配置するように努めるものとする。また、設計に当たっては、自然環境の保全及び景観に留意するものとし、できるだけ海岸の水質保全機能、生態系保全機能及び底質保全機能に配慮するものとする。合わせて、海岸の利用に配慮した工法を選択するものとする。

(1) 面的防護方式の検討

面的防護方式は、護岸、砂浜、離岸堤、潜堤・人工リーフ等の施設を面的に配置することで、波浪のエネルギーを徐々に弱めながら海岸を防御する方法である。この方式は二重、三重の防護を採用しているため、一つの施設が破壊されてもすぐに背後地が被災しないという利点がある。ただし、本来の海岸の特性を変える可能性があることに留意する必要がある。

なお、面的防護方式において緩傾斜護岸を導入する場合は、砂浜の安定に悪影響が出ないように配慮する必要がある。護岸に波が当たると、砂浜の動的安定機構が阻害され、反射波によって護岸前面の砂浜が浸食される可能性がある。そのため、緩傾斜護岸を整備する際は、砂浜の幅に十分な配慮が必要である。

(2) 水質保全機能・生態系保全機能と底質保全機能への配慮

海岸全体の水質保全機能・生態系保全機能や底質保全機能に配慮するため、設計対象の海岸保全施設がそれらに寄与する性質について、現状と要求される性能、そしてそれぞれの工法によって実現される性能を定量的に把握し、評価する必要がある。

(3) 景観への配慮

快適性に関連して景観が重要である。特に施設上やその近くからの景観は、親水機能としても重要な機能である。また遠くから見るその施設自体の景観も、海岸の親水機能としても重要である。景観は、個々の人の感じ方によって異なるために定量的な評価が困難であるが、その海岸の持つ本来の開放感や美しさを損なわないことや、施設の本来の機能美を考慮すること、背後地を含めた広域的な景観に配慮することなどが必要である。

(4) 利便性と快適性

海岸においては様々な利用形態があり、それぞれの利用について、利便性や快適性は異なり、また対象とする人によっても異なることに注意する必要がある。利便性を考えることは、それぞれの利用をいかに円滑に行うことができるかを考えることであるが、特に海岸独自の利用については、具体的に調べる必要がある。

快適性は、人間の感覚によるものであり、特に視覚が重要である。また、温熱環境(日差し・気温・湿度・風)や、しぶきや飛砂、波の音、砂の色、鳴き砂、磯や潮のかおり、植生など海岸特有な環境要素についても快適性と深く関係しており、できるだけ定量的な把握が必要である。

(5) 利用者の安全

海岸の利用は、基本的には自由使用であり、自己責任において誰でも自由に利用することができる。公衆の利用を前提とする場合、あるいは想定される場合には、海岸保全施設が厳しい自然条件の下に置かれることに留意し、海岸保全施設に起因する事故が発生しないように、利用者の安全に十分配慮して設計する。

また、安全対策が設計どおりの性能を有しているか確認するため、海岸保全施設及び海岸の巡視・点検を定期的に行う必要がある。特に人工海浜においては、養浜砂の流出・吸い出し等により、陥没や地上から視認できない空洞が発生する場合がある。そのため、砂の流出・吸い出し防止のための対策をとることとともに、供用後も定期的な巡視点検を行うことにより、利用者の安全にかかわる現象を常に把握するよう努めることが重要である。

(6) 性能規定

性能規定においては、「目的」、「機能」、「性能」及び「照査法」を定めることが必要である。ここで、「機能」とは、例えば、高潮又は津波による海水の浸入を防止し、波浪による越波を減少させるといった施設が担うべき働きのことであり、「性能」とは、これらの機能に実現に寄与する施設の能力のことである。

第9節 東播海岸実施例(参考)

1. 計画諸元

東播海岸の計画諸元を表9-1-1に示す。

表9-1-1 計画譜元

明石以西明石以東
計画潮位T.P.+2.80mT.P.+2.80m
朔望平均満潮位T.P.+0.60mT.P.+0.60m
偏差2.20m2.20m
計画波計画波高 H=3.40m 波の周期 T=8.0sec計画波高 H=4.60m 波の周期 T=8.0sec

2. 各施設の実施例

2-1 明石以西地区

図9-2-1 消波工、堤防断面図

図9-2-2 消波工、根固め工、護岸工、擁壁工断面図

図9-2-3 離岸堤断面図

図9-2-4 養浜工平面図

図9-2-5 養浜工断面図

図9-2-6 緩傾斜堤断面図

図9-2-7 礫浜断面図

2-2 明石以東地区

図9-2-8 消波工、根固め工、堤防断面図

図9-2-9 消波工、根固め工、護岸工断面図

図9-2-10 離岸堤断面図(塩屋)

図9-2-11 離岸堤断面図(舞子)

図9-2-12 防波護岸断面図

以上が、提供された文章をマークダウン形式で整形した内容です。図や表は可能な限り文章に変換し、誤字脱字は文脈から推定して修正しました。