第4章 床止め
第1節 基本事項
1. 定義
床止めとは、河床の洗掘を防いで河道の勾配等を安定させ、河川の縦断または横断形状を維持するために、河川を横断して設ける施設をいう。
構造令では、床固めも含めて床止めと称することとしている。したがって、砂防工学の分野でいう「床固め」についても、河川法の適用区間に設ける場合は、構造令の適用がある。
2. 分類
構造的には、落差がある床止めを「落差工」、落差がないか又はあっても極めて小さい床止めを「帯工」と呼んでいる。
目的別に分類すれば、砂防を目的とするものと単に河床の安定を目的とするものに大別される。前者は、縦侵食を防止して河床を安定させることによって、河床堆積の再移動、河岸の決壊等を防止するものである。後者については、以下のように分けられる。
- 河床勾配を緩和するためのもの(一般に落差工となる)
- 乱流を防止し、流向を定めるためのもの(落差工となる場合が多い)
- 河床の洗掘または低下を防止するためのもの(一般に帯工となる)
3. 適用基準等
床止めの設計に適用する主な基準等は以下の通りである。
- 改訂解説・河川管理施設等構造令(平成12年1月、日本河川協会)
- 河川砂防技術基準 同解説 計画編(平成17年11月)
- 河川砂防技術基準(案)同解説 設計編I(平成9年10月)
- 床止めの構造設計の手引き(平成10年12月、国土技術研究センター)
- その他関係法令等
4. 床止め設置の留意点
(1) 河道計画上は、洪水流のエネルギーを分散させて、必要な箇所に護岸や水制を設置して堤防を防御することが望ましい。しかし、勾配が急な河川において、洪水流のエネルギーを1箇所に集中させ、その場所でエネルギーを減らすために設 置するものである。このため、落差工を設置する場合は、治水上の問題を十分意識しつつ、一方で、堤防が危険とならないよう、次に示す措置が必要である。
- 落差工が被災しても堤防に支障を生じないよう、落差工本体と堤防とを絶縁すること。その際、落差工本体と堤防が近接している場合等は、必要に応じて堤防基礎部を矢板で補強しつつ絶縁する等の対策を講じること。
- 落差工本体の端部を擁壁構造とするとともに、高水敷や本体下流部の河岸の侵食を防ぐため、適切な範囲に高水敷保護工を設置すること。
- 落差工下流部において河床低下や洗掘が発生すると、洪水時の上下流の水位差が設計時に想定したものより大きくなり、流速や衝撃が大きくなり、危険性が増加する。このため、設置後も適切な頻度で下流部の河床低下や洗掘について状況を把握し、安全性について検討しておく必要がある。
(2) 床止めは、一般に、上下流で落差を生じさせたり、床止め本体上で浅い水深の流れを生じさせ、流水の連続性を断ち、魚類の遡上等を妨げる。このため、床止めは、河床等の安定を図る上でやむを得ない場合に限って設置することを基本とする。やむを得ず床止めを設置する場合は、魚道を設置したり、床止め本体を緩傾斜型の構造とする等の対策を講じる必要がある。
第2節 落差工(標準)
1. 落差工の設置
1-1 設置位置
落差工の設置位置は以下の条件を考慮して選定する。
- 砂州が移動しない場合:直線河道
- 蛇行がある程度あり、砂州の移動が生じる場合:横断形状がほぼ長方形断面となる地点
- 偏流が生じる可能性が低い場合:堤防法線と低水路法線ができるだけ平行な箇所
- 洪水時の周辺部での激しい流れを考慮する場合:山つき箇所や堤内地盤の高い箇所
- 合流点付近に設置する場合:合流点の直近ではなく、やや上流側
1-2 設計の手順
落差工の設計手順を以下に示す。
- 地質調査
- 床止め基礎および周辺地質調査
- 堤防調査
- 堤内地調査
- 測量調査・地形図、縦断図、横断図、用地図
- 現地調査
- 計画地点の地質・地形把握
- 周辺環境・隣接構造物の把握
- 施工条件の把握
- 用地条件の把握
- 地質測量調査の内容、範囲等の決定
- 計画基本調査
- 河道計画調査
- 利水計画調査
- 環境調査
- 基本事項の検討
- 位置の検討
- 構造検討(コンクリート構造、ブロック構造)
- 水理検討(跳水現象、減勢工の必要性)