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第3章 護岸

第1節 基本事項

1. 適用範囲

本章は、河川において実施する護岸の設計についての考え方を示すものである。

2. 適用基準等

護岸の設計に適用する主な基準等は以下の通りである。

  • 改訂解説・河川管理施設等構造令(平成12年1月、日本河川協会)
  • 河川砂防技術基準 同解説 計画編(平成17年11月)
  • 河川砂防技術基準(案)同解説 設計編 I(平成9年10月)
  • 改訂 護岸の力学設計法(平成19年11月、国土技術研究センター)
  • 河川構造物の耐震性能照査指針・解説(平成24年2月、国土交通省水管理・国土保全局)
  • その他関係法令等

3. 護岸設計の基本的考え方

3-1 護岸設計

護岸は、高水敷や他の構造物とともに流水による侵食作用から堤防(掘込河道にあっては堤内地)を保護するために設けるものである。また、護岸は河川環境および景観の保全・整備等とも強く関連するので、生物の多様な生息環境等に適した計画とするものとする。護岸の配置にあたっては、高水敷幅等の河道の横断形、洪水時の流水の状況、みお筋の変化等を十分に把握して、その必要性(設置箇所)、法線、延長を定めるものとする。

護岸の設計条件は以下の通りである。

  • 安全性の設計:流水の作用による外力、土圧等の外力、洪水時の河床変動、流砂や礫の衝突時による磨耗・破損・劣化、流水や降雨の浸透による吸出し等
  • 機能の設計:侵食防止・軽減、河川環境の保全・整備
  • 合理性設計:経済性、施工性
3-2 河川環境の保全

護岸設計にあたっては、堤防や河岸の侵食防止機能を有すること、また流水に対して安定な構造とすることが必要である。また、これらの機能に加え河川環境・景観の保全・創出を基本に据えるものとする。

第2節 のり覆工(標準)

2-4 捨石護岸

捨石護岸は、巨石により河岸部と河床部の保護をねらった自然型護岸であり、空隙が多く魚類や水生昆虫の恰好の生息場、避難場となるもので、水際部の良好な自然景観の保全・創出が図れる工法である。

この工法の類似として、建設副産物をリサイクルするコンクリート塊を袋詰めした袋詰め玉石工法等もある。安定度照査は「掃流~一体性の弱い」モデルにより、掃流力に対する安定性の照査を行い決定する。

捨石護岸では、求められた石の必要径は、石の最小径であり、それ以上の様々な大きさの石を使って十分なかみ合わせを考慮する。

図2-2-7は捨石護岸の例、図2-2-8は袋詰め玉石工の例である。

2-5 植生護岸、間伐材等を利用した護岸

植生護岸は、ヤナギ等の緊密な根による土の緊縛力と枝葉による洪水時の流速低減効果と河岸保護を確保した自然型護岸である。

また、河川伝統工法には、間伐材を利用した護岸が多くあり、良好な河岸環境が創出される。

ヤナギが繁茂すれば、河岸部の日陰の創出、洪水時の流速低減が図られ、水際部の自然環境・景観の保全・創出を図ることができる工法である。

植栽工による侵食限界は、植栽等の管理レベルにより差が生じるため、植栽が堤体や河岸ののり面等に十分活着していること、植栽の維持管理が行われることが必要である。

なお、これらの工法では、河床部や水際部の洗掘低減、多孔質空間の確保のため、寄せ石による保護が必要である。

間伐材を堤外側の護岸等に使用する場合は、材料の腐食を前提として設計を行うこと。

図2-2-9はヤナギによる自然型護岸の例、図2-2-10は間伐材等を利用した護岸工法の例である。

2-6 連節ブロック護岸

連節ブロック護岸は、流水の作用に対して抵抗するように設計するものとし、基本的に以下の箇所に適用するものとする。

  1. 施工箇所ののり勾配が1:2.0以上の緩い勾配の区間
  2. 護岸に連結用として鋼線を使用する場合は、河川水が強い酸性または高い塩水濃度を有する河川で、著しく鋼線の腐食の恐れのある区間を除く。なお、特殊な条件のもとで使用する場合には、連節鉄筋の材質を考慮する必要がある。

連節ブロック護岸は、連結が確実な鉄筋等によってのり覆工に一体性が保たれており、「河川砂防技術基準(案)」によれば群体としてとり扱うことのできる工種であり、使用するブロックの重量は、「滑動~群体」モデルおよび「めくれ」モデルにより安定性の照査を行い、決定するものとする。

なお、設置にあたっては、次に示すことに留意するものとする。

  1. 連節ブロック護岸で1:2.0より急勾配で1:1.5までののり勾配の箇所にあっては、次の2点を考慮して、のり覆工の滑りに対して十分安全性が確保できる場合にあっては適用してもよいものとする。
    • 護岸上部において、摩擦力を含めた支持機能の補強を施した構造(折り返し構造等)。
    • 護岸のり尻部において、摩擦力を含めた支持機能の補強を施した構造(水平の護床工を施した構造および突っ込み構造等)
  2. 低水護岸に使用する場合には、局所的に急変することのないようにし、上下流河岸になじみよく取り付ける。また、人工的に直線化しない。
  3. 連節ブロック護岸は、環境保全等を考慮して、覆土、寄せ石等を行って、植生の復元等を図るものとする。覆土は、植生が復元しやすい表土の利用を考慮する。また、水際部には河床材の玉石等で寄せ石を行う等、生息動物等の環境保全を図るものとする。
  4. 連節ブロック護岸工法には、ブロックの下に吸出し防止材を設置する。

図2-2-11は連節ブロック張りの低水護岸の例である。

2-7 擁壁護岸

擁壁護岸は、高水敷が狭く堤防までの距離が十分でない場合に設置される護岸形式であり、堤防保護が最大目的であることから、堅固な安定性が要求される。

擁壁護岸には逆T型、L型、または重力式等水圧、土圧による滑動、転倒を安定の対象とするのり覆工であり、「道路土工 擁壁工指針」を参考にして、擁壁の安定に関する照査を行うものとする。

構造については「土木構造物設計マニュアル(案)」に準じて設計を行うものとする。なお、擁壁構造の護岸では、環境および景観等に考慮し、壁面を緑化や化粧型枠等も検討するものである。

2-8 矢板護岸

矢板護岸は、高水敷が狭く堤防までの距離が十分でない場合や、護岸設置のための仮締切等が困難な場合によく採用される護岸形式であり、自立式、控え式がある。また、控え式には、タイロッド式、斜め控え杭式等がある。

矢板護岸では、土留め高、作用荷重の大きさ、土質、背面の条件、重要度等を勘案して、形式の特性、安全性、経済性等から適正な形式を選定するものとする。

なお、矢板護岸では、環境および景観等に考慮した設計を行うものとする。

a. 設計の手順

矢板護岸における設計の手順は以下の通りである。

  1. 壁高、地形条件、地質、環境・景観、経済性、施工性を考慮して形式を決定する。
  2. 設計条件を決定する。
  3. 土圧・残留水圧等の外力を計算する。
  4. 仮想地表面の位置を計算する。
  5. 鋼矢板の断面を設定する。
  6. 曲げ応力を照査する。
  7. 変位量を照査する。
  8. 必要根入れ長を計算する。
  9. 円弧すべりを計算する。
  10. 細部を設計する。

※基礎地盤が軟弱な場合は、地盤改良の検討が必要である。

図2-2-12は鋼矢板護岸の設計手順を示したものである。

b. 設計壁高の考え方

設計壁高の考え方は以下の通りである。

  • 設計地盤が1:1.5の場合、設計壁高は0.5~1.5m以内とする。

図2-2-13は設計壁高の考え方を示したものである。

c. 安全率
  1. 円弧すべりに対する安全率
    • 常時:1.2以上
    • すべりが生じた場合(本堤への影響あり):1.3以上
    • 一般的な地震時:1.0以上(検討されることは少ない)
  2. 矢板の根入れに対する安全率
    • 基礎地盤(設計河床以下):
      • 砂質土
        • 常時:1.5以上
        • 地震時:1.2以上
      • 粘性土
        • 常時:1.2以上
        • 地震時:1.2以上
    • Chang式による計算で必要根入れ長を確保
f. 腐食対策
  • 護岸矢板の腐食代:
    • 一般的な場合:片面1mm(両面2mm)
    • 腐食が著しい場合:現地に適合した腐食代
  • Chang式による根入れ長計算:腐食代を考慮しない断面二次モーメントを使用
  • 護岸矢板背面の腐食代:片面1mm(両面2mm)
  • 頭部コンクリート内の部材、塩ビ被覆タイロープ:腐食を考慮不要

2-9 じゃかご工

  • 仮設護岸や現況河岸へのすり付けに使用
  • 2.0m程度の止杭(松杭)を使用

2-10 その他の護岸

  • 表2-2-1に記載の各種護岸形式あり
  • 設置箇所の特徴に応じて選定

表2-2-1はその他の護岸の例を示したものである。

第3節 基礎工(のり留工)(標準)

1. 設計の基本

護岸の基礎工(のり留工)は、洪水による洗掘等を考慮して、のり覆工を支持できる構造とする。

2. 基礎工の設計

最深河床高の推定

基礎工天端高の設計にあたっては、一連の護岸(一湾曲部程度)は、その区間の最深河床高に対して求めた基礎工天端高とすることが基本的な考え方であるが、一連の護岸の設置区間が長く、かつ深掘れ位置が移動しないような場合には、河道の特性に応じて各断面ごとの最深河床高の評価高を検討することが望ましい。

河床高の変遷の検討

最深河床高の推定は河床高の変遷の検討を行う必要がある。

図3-2-1は基礎工の力学的安定性の照査手順を示したものである。

2-1 根入れ(基礎工天端高)

基礎工天端高は、洪水時に洗掘が生じても護岸基礎の浮き上がりが生じないよう、過去の実績や調査研究成果等を利用して、洪水時に推定される最大洗掘深を考慮して設定した最深河床の評価高とする。

なお、根入れが深くなる場合には、根固め工や基礎矢板等を設置することで基礎工天端高を浅くする方法もある。また、かごマット工法等の屈とう性を有する工法についてはこの限りでない。

(1) 最深河床高の評価

最深河床高の評価方法としては、これまでの研究成果等を基にした次の方法により推定するのが一般的である。

  • 方法1:経年的な河床変動からの評価
  • 方法2:既往研究成果からの評価
  • 方法3:数値計算による評価
  • 方法4:移動床水理模型実験による評価

これらの方法の中から、河床変動データの所在状況、河道特性、設計対象区間の重要性等を勘案して適切な方法を用いる。

なお、護岸の力学的安定性の照査にあたり、「改訂 護岸の力学設計法 第4章 4-3最深河床高の評価法」を参照し、設計対象箇所の最深河床高を評価するものとする。

(2) 根入れが深くなる場合

根入れが深くなる場合には、根固め工を設置することで基礎工天端高を浅くする方法も検討することが必要である。

2-2 構造

基礎工は、地盤条件、施工条件に応じて選定する。地盤が良好な場合には直接基礎とし、軟弱地盤の場合には、杭または矢板の天端をコンクリートでコーピングした基礎を用いる場合がある。

また、平水時において護岸前面の水深が深く、瀬替えが容易でない場合や、船着き場として利用される護岸等では、矢板基礎とすることが多い。なお、この場合、土圧、水圧、載荷重、地震時慣性力、上載荷重等の設計条件に対して矢板が自立でき、安全となるように照査する。

(1) 直接基礎工

直接基礎工には、概ね台形断面のコンクリート構造、大型の自然石等を利用することがある。のり留基礎工のコンクリート基礎は、状況に応じてコンクリート二次製品の使用についても検討を行う。なお、二次製品の使用にあたり、地盤条件や現場条件等によっては、施工性を考慮して、均しコンクリート等の使用も検討するものとする。

(2) 鋼矢板基礎

洗掘の恐れのある箇所、吸出しの恐れがある箇所、基礎漏水箇所では、鋼矢板基礎を用いることも検討すること。

なお、破堤実績箇所や旧河川締切箇所の本堤部において堤防基盤漏水が予想される箇所(区間)について、漏水防止矢板を使用する場合は、矢板を不透水層まで貫入することを原則とする。

(3) 岩盤が露出した場合の基礎構造

岩盤が露出した場合の基礎工の構造は以下のとおりとする。

  • 掘削を同時に行う場合
    • 岩質が「軟岩I」の場合:形式-1(基礎コンクリートC型)
    • 岩質が「軟岩II」でもろく、ブロック張りを施工する必要が「ある」場合:形式-1
    • 岩質が「軟岩II」で、ブロック張りを施工する必要が「ない」場合:形式-2(基礎コンクリートD型変形)
    • 岩質が「中硬岩」以上場合:形式-2
  • 掘削を行わない場合
    • 岩質に関係なく施工する場合:形式-2

図3-2-2は岩盤が露出した場合の構造例を、表3-2-1は施工条件および岩質条件による構造形式を示したものである。

第4節 根固め工(標準)

1. 設計の基本

根固め工は、河床の変動等を考慮して、基礎工が安全となる構造とするものとする。

護岸の破壊は、基礎部の洗掘を契機として生じることが多い。根固め工は、その地点の流勢を減じ、さらに河床を直接覆うことで急激な洗掘を緩和する目的で設置される。根固め工は、堤防に近傍した河岸や水衝部等、洪水時の洗掘が著しい場所において、基礎工前面の河床の洗掘を防止し基礎工の安定を図る必要がある区間に設けるものとする。

2. 構造

根固め工は、設置箇所の河道特性等に応じて適する構造とし、のり覆工同様に外力条件や河川環境に適した構造とすること。なお、河床の変動等を考慮するとともに、以下の点に留意し、基礎工全体が安全となる構造とする。

根固め工の性能確保に加えて、魚類等の生育環境の確保や植物の育成に配慮した配置を考慮する必要がある。

  1. 流体力に耐える重量であり、護岸基礎前面に洗掘を生じさせない敷設量であること。
  2. 耐久性が大きく、河床変化に追随できる屈とう性構造であること。
  3. 敷設天端高は、基礎工天端高と同高程度を基本とする。
  4. 根固め工は、基礎工の前面に絶縁して設ける構造とする。

図4-2-1は根固め工の代表的な工種を示したものである。

2-1 力学安定性の照査

根固め工については、その構造の力学的安定性ならびに敷設幅について照査する。根固め工の破壊は、流体力により根固め工そのものが破壊する場合(重量不足)と周辺が洗掘されることにより変形する場合(敷設幅不足)がある。根固め工本体の破壊形態としては、滑動、転倒および掃流に分けることができ、その安定性について照査を行うものとする。安定性の検討等については、「河川砂防技術基準(案)」や「改訂 護岸の力学設計法」を参考とすること。

2-2 間詰工

根固め工とのり覆工との間の間詰工は、流水の呼び込み渦流、洗掘防止に対して安全な構造とする。間詰工の材料は、間隙を防ぎ、流出しにくいものとすること。間詰工の施工については、図4-2-2を標準とする。

第5節 護岸付属構造物(標準)

1. 工種および構造

護岸の付属工は、のり覆工の天端、上下流の侵食防止、背後からの吸出し防止等、のり覆工周辺の保護を目的として設置されるものであり、天端工・天端保護工、目地工、小口止工、横帯工、吸出し防止材、遮水シート、すり付け工等からなる。

(1) 天端工、天端保護工

護岸天端からの洗掘を防止する必要のある場合には、天端工、天端保護工を設置するものとし、これらは流れの作用に対して安全な構造とするものとする。

流体力に対する安全性の考え方は、設置場所が平坦であることを除けば、のり覆工と同様であり、のり覆工の構造モデルを基本として、控え厚等の安定性の照査を行うものとする。

図5-1-1は天端工の幅の設置例を示したものである。

(2) 目地工

目地を必要とするのり覆工(護岸工、基礎工、天端工等)の目地間隔は、10m程度につき1箇所設けるものとする。

(3) 小口止工、横帯工

小口止工は、のり覆工の上下流端部を保護する必要のある場合に設置するものであり、護岸上下流で河岸侵食が発生しても、流れが護岸背後に回り込むことによる洗掘を防止する構造とする。

また、護岸施工区間の中間部には50m程度の間隔で横帯工を設け、護岸の変位・破損が他に波及しないように絶縁する。

なお、高水護岸の場合、小口止工等を深く嵌入させることは、堤体を弱体化する懸念があるため、深さの決定に際しては留意することとする。

図5-1-2は低水護岸の小口止工(コンクリートタイプ)の例、図5-1-2は低水護岸の横帯工、高水護岸の小口止工・横帯工の例、図5-1-3は低水護岸の小口止工(鋼矢板タイプ)の例を示したものである。

(4) 吸出し防止材

かご系・木系・連節ブロック系等の透過性護岸は、背後の残留水や流水による背面土砂の吸出しがのり覆工の変形に結びつき、容易に破壊につながるので、これを防止するために吸出し防止材を設置する。

また、練石積み等の不透過性護岸においては、特に背後の土砂が細粒土の場合、裏込め材に細粒分が流入し、裏込め材の透過性が低下する恐れがあるので、吸出し防止材が使用される場合がある。

図5-1-4は吸出し防止材の設置例を示したものである。

(5) 遮水シート

漏水箇所・破堤実績箇所・旧河川締切箇所の本堤部の高水護岸および本堤開削に伴う構造物周辺の高水護岸には、護岸用遮水シートを使用するものとする。ただし、胴込めコンクリートを施工する護岸には適用しない。

図5-1-5は遮水シートの設置位置を示したものである。

(6) すり付け工

護岸には、原則として上下流端で河岸侵食が発生しても護岸本体に影響を及ぼさないようなすり付け工を設置するものとする。護岸下流部のすり付け工は、流速を緩和し下流河岸の侵食を発生しにくくする機能を有することから、屈とう性と適度な粗度を持つ構造とする。また、上流側のすり付け工は、かご系・連節ブロック等の柔構造護岸のめくれ防止工として機能することから、十分な控え厚の確保または杭による固定等、めくれに対して安全な構造とする。なお、安定性の照査は「改訂 護岸の力学設計法」によるものとする。

図5-1-6はすり付け工の設置例を示したものである。

第6節 水制工(標準)

1. 基本的考え方

水制は、目的、河状および出水状況に適応した強さ、耐久力、固さ、粗度等を有し、かつできる限り構造が簡単で屈とう性のあるものが望ましい。

(1) 横工(流水に対してその方向が直角または直角に近いもの)

横工の設計においては以下の点に留意する。

  • 水制の方向:水制域に土砂を堆積し、越流および流下した水流を河心に向わせるとともに周辺に深掘れを生じないよう定める
  • 水制の間隔:水制域に土砂を堆積させ、もしくは越流または流下する水流により、河岸を侵食されないように定める
  • 水制の長さおよび勾配:その目的、川幅、上下流および対岸への影響、水制自体の安全等を考慮して定める
  • 水制の幅:水衝および周辺の洗掘に耐えうる幅とする
  • 水制の高さ:その目的、上下流および対岸への影響、それ自体の安全等を考慮して定める
(2) 縦工(流水に平行に近いもの)

縦工の設計においては以下の点に留意する。

  • 水制の方向:河岸または堤脚の流勢を最も緩和するように定める
  • 水制の間隔:水制を越流または流下した水流により、河岸を侵食されないように定める
(3) 導流水制

導流水制の設計においては以下の点に留意する。

  • 水制の方向:主河川の河状を漸変し先端で激変しないよう法線を定めなければならない
  • 水制の間隔:水流を所定方向に導くとともに先端に向い透過度が漸増するよう定めなければならない
  • 水制の長さ:先端付近の河状の変化を考慮して決定しなければならない
  • 水制の高さ:施工箇所付近の河状に最も悪影響を与える支配洪水を対象として定めるものとする。なお、通常は中洪水以上の洪水に対応できる高さとする必要がある
(4) 元付け工

水制の上・下流においては、透過流および越流に対して河岸を保護するため元付け工を設けなければならない。

(5) 間詰工

水制と元付け工との間の水流のため護岸を破壊されないよう間詰工を設ける。特に凹岸においては、破壊の傾向が著しいので特に注意を要する。

2. 工種および構造

水制の工種は、その目的によりまた河状および出水状況等により異なるものであるが、その河川の特性と既往の施工事例、研究事例等を参考として、河川環境に配慮してその箇所に適合した工種を採用するように留意するものとする。

設計にあたっては、「河川砂防技術基準(案)同解説 設計編I 第1章第5節水制」を参考とするものとし、大規模なものの場合には、対岸または上下流への影響度を含め水理模型実験等を行う必要がある。

(1) 水制と景観

水制は護岸と異なり、水際に凸凹をつくり水際線が複雑となるとともに、景観上のアクセントとなるものであり、水制の設置にあたっては、水制の水理機能、水制設置による流水に対する変化、河床や河岸に対する影響等を十分チェックの上、景観に対する配慮をした設計をすることが望ましい。

景観のための水制設計のポイントは以下の通りである。

  1. 水制工種が設置場所の河川風景、護岸形式との調和
    • 河川景観の構成要素として、川幅・水深、河道の平面形状、水面幅・水面の表情(水面波)、河床材料とその表層での分級状況・色調、河岸物質とその色調、河岸形状、植生配置等があり、これらは河道特性の各構成要素であり、河川景観は河道特性が総合化された姿であるといえる。したがって、周辺の景観、護岸等との調和に配慮する。
  2. 水制だけでなく、護岸、河岸植栽と一体化した修景
  3. 既存水制の利用
    • 既存の水制は、その河川の河道特性にマッチし、なじんだ風景となっており、貴重な風景資源となっていることが多く、河岸防御を含めて既存水制を生かすことを考慮する。
  4. 水制設置後の環境変化に対する検討
    • 水制設置後の植生変化や土砂の堆積、洗掘に関する検討を行い、無理な維持管理を行わなくてもよいようにする。
(2) 水制と生態系の保全

水制が生態系の保全・育成に役立つものとして、以下のポイントが考えられ、水制の設置にあたってはこれらの事柄を考慮に入れ河川環境の保全・創造に努めるものとする。

  1. 水の流れに変化を与え、流速の変化が大きいことから、水中生物に対して多様な生息環境を提供する。
  2. 水制周辺の洗掘部や土砂の堆積によって、河岸に変化のある微地形を形成し、1の作用と相まって水中生物に対して多様な生息環境を提供する。
  3. 洪水時の魚の避難空間を提供する。
  4. 土砂の堆積等によって河岸が自然河岸と同様なものと発展する可能性がある。

護岸の構造は、出水時において破壊されないよう充分な強度を有するものとし、また以下のことに留意するものとする。

  1. 表面には適当な粗度を持たす。
  2. 天端および上下流端は、破壊の原因とならないようすりつけ等を考慮する。
  3. 河道特性、護岸特性、護岸の安全性、背後地の状況を十分踏まえた上で、生物の良好な生息・生育環境と自然環境および景観の保全・創出に適した工法を用いる。

なお、手順に示す各段階における具体的検討、照査等については「改訂 護岸の力学設計法」によるものとする。

第2節 のり覆工(標準)

1. 設計の基本

護岸ののり覆工は、河道特性に配慮し、流水・流木の作用、土圧等に対して安全な構造となるように設計するとともに、良好な河川環境・景観等の保全・創造に十分配慮して設計する必要がある。

護岸ののり覆工は、以下の事柄に留意して設計する必要がある。

  1. のり覆工の構造
    • のり覆工は堤防および河岸を保護する構造物であり、護岸の構造の主たる部分を占めるので、流水・流木の作用、土圧等に対して安全な構造となるように設計するとともに、その形状・構造は多くの場合に河川環境の保全・整備と密接に関連することから、設計に際しては生態系や景観について十分に考慮する必要がある。
  2. 護岸の工種
    • 護岸の工種は多種多様であり、河道特性や作用する流速、あるいは高水敷の幅等を考慮して、良好な河川環境および景観を保全・創出できる工種を選定し、設計する必要がある。
  3. 河岸の耐侵食性
    • 河岸そのものも、粘性土や砂礫質土等の種々の土質材料とそこに生育する植生により、ある程度の耐侵食性を有し、外力の条件によっては自然河岸のままで、あるいは多少の補強により洪水時の安全を確保できる場合もある。特に、植生は地上部の葉や茎による流体力の低減、河岸表面の被覆による河岸の流水作用からの保護、根による河岸表面の直接保護(強化)等により、相当程度の河岸防護効果が期待される。これらの効果については調査研究が進められており、種々の調査成果や追跡調査の結果等を活用して積極的に採用することが望まれる。

図2-1-1はのり覆工の工種の例を示したものである。

1-1 工法の選定

護岸の設計に際しては、設置箇所の河道特性および背後地の状況等に応じた護岸とすることが重要であり、各種工法の特徴を理解した上で選定を行う。

護岸工法の選定においては以下の事柄に留意して選定する必要がある。

  1. 護岸は、堤防および低水路河岸を侵食作用に対して保護することを主たる目的で設置するものであり、護岸工法の選定に際しては、設計流速、背後地の状況、河川環境、河道計画、被災状況、経済性、施工性等を総合的に勘案して選定する必要がある。また、必要に応じて根固めや水制等の組み合わせを考慮する。
  2. 護岸は、本来あるべき「川らしさ」の目指す環境に応じた適切な護岸を選定する。目指す環境とは、単に植生の発生を促すだけでなく、動植物の保全や回復を図る等、具体的に目指す環境に応じた護岸を考慮するものであり、例えば、動植物、魚類、親水性等の親しみやすさ、川らしさとしての景観等である。
  3. 護岸工法の選定にあたっては、多様な工法を積極的に選定するものとするが、水際と陸上部の連続性に考慮し、動植物の生息、生育環境上好ましくない工法は使用しないものとする。
  4. 各工法に対する設計流速等の目安や、適応箇所等は、「美しい山河を守る災害復旧基本方針」等、各種文献等に示されており、これらを参考として工法選定を行い、実際の適応にあたっては、設計流速に対する安定性を検討した上で、使用する必要がある。安定性の検討等については「河川砂防技術基準(案)」や「改訂 護岸の力学設計法」を参考とするものとする。

1-2 のり勾配等横断形状

のり勾配等の断面形状は、上下流の河道状況に配慮し、以下の事項に留意して設定するものとする。

  1. のり勾配は、可能な限り緩勾配とし、護岸工法の選定の自由度を高める。
  2. 淵、山付き部、樹木のある箇所等では、無理に緩くする必要はない。
  3. 河床部の淵や瀬は、現況を尊重し、平滑化しないことを心がける。
  4. 河床、水際、陸上部の生態系の連続性が確保できるように、必要に応じて勾配に変化を付ける等、工夫を行う。

1-3 力学安定性の設計条件

力学的安定性の照査に用いる設計条件は、設置箇所の河道特性に応じた適切なものを選定する。主な設計条件としては、流速、土圧および水圧、最深河床高を扱い、その他については必要に応じて検討する。

(1) 設計条件の評価方法

洪水時に発生する流速は、護岸の設置する箇所の最深河床高、低水路および高水敷の粗度、のり勾配等の影響を受ける。したがって、設計に用いる流速や、最深河床高等の設計条件は、水理模型実験、数値計算、最近の研究成果による理論的な算定方法等の中から護岸設置箇所の河道特性を反映できる方法で評価するものとする。流速算定に用いる粗度係数および河岸近傍の最深河床高の評価方法については、「改訂 護岸の力学設計法」を参考とするものとする。

(2) 流速算定の考え方

設計に用いる流速は、計画高水位以下の水位のさまざまな流況条件の中で、実際に河岸に作用する流速のうち最大の値を用いる必要がある。

流速は、一般に計画高水位相当の水深が生じた場合が最も大きくなるが、堰・床止め等の横断構造物等や狭窄部の上下流部、高水敷から低水路へ流れが落ち込む場合や低水路の主流が高水敷に乗り上がる場合、水深変動に伴う河床形態の変化が大きい場合には、計画高水位以下の水位での流速が大きくなることがある。

2. 各種護岸の設計

2-1 自然石護岸
(1) 設計の基本

自然石護岸は、以下の外力に対して検証して用いるものとする。

  1. 空石張り護岸は、流体力による掃流に対する安定性を検証して用いる。
  2. 練石張り護岸は、流体力による滑動に対する安全性を検証して用いる。
  3. 練石積み護岸は、土圧に対する安全性を検証して用いる。

護岸の構造形式である石張り、石積みの区分は、「河川砂防技術基準(案)」に従い、流体力が破壊の主要因となる1:1.5より緩い場合を「張り」、土圧・水圧が破壊の主要因となる1:1.5より急な場合を「積み」と規定する。なお、一般には、のり勾配が1:1.0程度より急な場合に積み護岸として設置される。

自然石護岸の設計にあたっては、次の点に留意すること。

  1. 練石張り護岸は、水循環や植生の復元等、環境の観点からは積極的に採用する工法ではなく、急流河川等やむを得ない場合に用いる工法である。したがって、検討にあたっては、先ず空石張り護岸の検討を行い、やむを得ない場合には練石張り護岸の適用を検討するものとする。
  2. 練石張りあるいは練石積み護岸とする場合は、目地は深目地を基本とし、少しでも植生が繁茂できるようにする。
  3. 自然石はできるだけ現地材料を利用することが望ましく、石の大きさはあまり規格にとらわれず、多様な粒径のものを使用するのがよい。
(2) 空石張り護岸

空石張り護岸に用いる自然石の粒径は、流体力に対して掃流が生じない大きさとする。

  1. 空石張り護岸に用いる自然石の粒径は、「改訂 護岸の力学設計法」に示される「掃流~一体性の強い」モデルで、掃流力に対する安定性の照査を行い決定する。
  2. 求められた石の必要径は、のり覆工に用いる石の最小径とする。
  3. 求められた必要径は、かみ合わせ効果が確保されたときの粒径であり、何らかの原因でかみ合わせが不十分であるとき、石は急激に流出しやすくなるので、これらを考慮した安全確保が必要である。

図2-2-1は空石張り護岸の例を示したものである。

(3) 練石張り護岸

練石張り護岸は、流体力による滑動に対して安全な構造として設計する。

  1. 練石張り護岸に用いる自然石の粒径は、「改訂 護岸の力学設計法」の「滑動~群体」モデルにより、安定性の照査を行い決定する。
  2. 求められた石の必要径は、のり覆工に用いる石の最小径とする。

図2-2-2は練石張り護岸の例を示したものである。

(4) 練石積み護岸

練石積み護岸は、のり覆工、基礎工、天端工を組み合わせて構成し、土圧に対して安全な構造として設計する。

土圧を受け持つのり覆工、のり覆工を支持する基礎工、のり覆工天端部を保護する天端工を組み合わせて構成し、以下の点に留意して設計するものとする。

  1. 使用する石の粒径は、控え厚が確保できる範囲内で多様な粒径を用いるものとする。
  2. 低水護岸として用いる場合、背後からの流水作用が想定される場合は、天端保護工を設ける。
  3. 練石積み護岸を計画する場合は、土圧、水圧に対する検討を行い、安全性の検証行う。

図2-2-3は練石積み護岸の例を示したものである。

2-2 かごマット護岸(鉄線かご型護岸)

かごマット護岸は、中詰め材料の粒径選定、鉄線かごの規格(厚さ、幅)、構造の安定について照査を行い、設計するものとし、基本的に以下の箇所に適用するものとする。

  • 平張りタイプにおいては、のり勾配が1:2.0以上の緩やかな勾配の区間に適用する。
  • 多段積みタイプにおいては、のり勾配が1:1.0以下の急な勾配の区間に適応する。
  • 河川水が強い酸性または高い塩水濃度を有する河川で、著しく鋼線の腐食の恐れのある区間を除く。なお、特殊な条件のもとで使用する場合には、連節鉄筋の材質を考慮する必要がある。
  • 河床材料が転石等で構成され、鉄線の耐久性に著しく支障を及ぼす区間を除く。

かごマット護岸は、流水を容易に通過させるかご状の枠に石等を詰めた状態であり、かごの変形は許すが中詰め材料の移動を許さないものとし、「掃流~かご詰め」モデルで流体力による滑動に対する安定性の照査行うものとする。なお、設置にあたっては、以下に示す事柄の他、連節ブロック護岸を準用するものとする。

  • 平張りタイプのかごマット護岸で1:2.0より急勾配で1:1.5までののり勾配の箇所にあっては次の2点を考慮して、のり覆工の滑りに対して十分安全性が確保できる場合にあっては適用してもよいものとする。
    • 護岸上部において、摩擦力を含めた支持機能の補強を施した構造(折り返し構造等)。
    • 護岸のり尻部において、摩擦力を含めた支持機能の補強を施した構造(水平の護床工を施した構造および突っ込み構造等)
  • かごマット護岸には、植生が容易に回復するように覆土を行うものとする。覆土は、植生が復元しやすい表土の利用を考慮する。
  • 水際部は、洗掘防止、覆土の流失の防止、多様な水際の復元に配慮した設計を行うことが望ましい。
  • 詰石は、コンクリート塊を使用すること等、リサイクルに配慮するものとする。
  • 中詰め材料として、標準以外の詰石や現地発生砂利の使用、流速、河岸特性等で標準構造によりがたい場合には、別途考慮するものとする。(「鉄線籠型護岸の設計施工技術基準(案)」参照)

図2-2-4はかごマット護岸の平張りタイプと多段積みタイプの例を示したものである。

2-3 ポーラスコンクリート護岸

図2-2-5はポーラスコンクリート護岸の基本構成例を示したものである。

以上の通り、マークダウン形式で整形し、誤字脱字を修正し、表形式の情報を可能な限り箇条書きの文章に変換しました。原文の内容はそのまま維持しつつ、読みやすくなるよう構成を整えました。