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第3章 護岸
第1節 基本事項
1. 適用範囲
本章は、河川において実施する護岸の設計についての考え方を示すものである。
2. 適用基準等
護岸の設計に適用する主な基準等は以下の通りである。
- 改訂解説・河川管理施設等構造令(平成12年1月、日本 河川協会)
- 河川砂防技術基準 同解説 計画編(平成17年11月)
- 河川砂防技術基準(案)同解説 設計編 I(平成9年10月)
- 改訂 護岸の力学設計法(平成19年11月、国土技術研究センター)
- 河川構造物の耐震性能照査指針・解説(平成24年2月、国土交通省水管理・国土保全局)
- その他関係法令等
3. 護岸設計の基本的考え方
3-1 護岸設計
護岸は、高水敷や他の構造物とともに流水による侵食作用から堤防(掘込河道にあっては堤内地)を保護するために設けるものである。また、護岸は河川環境および景観の保全・整備等とも強く関連するので、生物の多様な生息環境等に適した計画とするものとする。護岸の配置にあたっては、高水敷幅等の河道の横断形、洪水時の流水の状況、みお筋の変化等を十分に把握して、その必要性(設置箇所)、法線、延長を定めるものとする。
護岸の設計条件は以下の通りである。
- 安全性の設計:流水の作用による外力、土圧等の外力、洪水時の河床変動、流砂や礫の衝突時による磨耗・破損・劣化、流水や降雨の浸透による吸出し等
- 機能の設計:侵食防止・軽減、河川環境の保全・整備
- 合理性設計:経済性、施工性
3-2 河川環境の保全
護岸設計にあたっては、堤防や河岸の侵食防止機能を有すること、また流水に対して安定な構造とすることが必要である。また、これらの機能に加え河川環境・景観の保全・創出を基本に据えるものとする。
第2節 のり覆工(標準)
2-4 捨石護岸
捨石護岸は、巨石により河岸部と河床部の保護をねらった自然型護岸であり、空隙が多く魚類や水生昆虫の恰好の生息場、避難場となるもので、水際部の良好な自然景観の保全・創出が図れる工法である。
この工法の類似として、建設副産物をリサイクルするコンクリート塊を袋詰めした袋詰め玉石工法等もある。安定度照査は「掃流~一体性の弱い」モデルにより、掃流力に対する安定性の照査を行い決定する。
捨石護岸では、求められた石の必要径は、石の最小径であり、それ以上の様々な大きさの石を使って十分なかみ合わせを考慮する。
図2-2-7は捨石護岸の例、図2-2-8は袋詰め玉石工の例である。
2-5 植生護岸、間伐材等を利用した護岸
植生護岸は、ヤナギ等の緊密な根による土の緊縛力と枝葉による洪水時の流速低減効果と河岸保護を確保した自然型護岸である。
また、河川伝統工法には、間伐材を利用した護岸が多くあり、良好な河岸環境が創出される。
ヤナギが繁茂すれば、河岸部の日陰の創出、洪水時の流速低減が図られ、水際部の自然環境・景観の保全・創出を図ることができる工法である。
植栽工による侵食限界は、植栽等の管理レベルにより差が生じるため、植栽が堤体や河岸ののり面等に十分活着していること、植栽の維持管理が行われることが必要である。
なお、これらの工法では、河床部や水際部の洗掘低減、多孔質空間の確保のため、寄せ石による保護が必要である。
間伐材を堤外側の護岸等に使用する場合は、材料の腐食を前提として設計を行うこと。
図2-2-9はヤナギによる自然型護岸の例、図2-2-10は間伐材等を利用した護岸工法の例である。
2-6 連節ブロック護岸
連節ブロック護岸は、流水の作用に対して抵抗するように設計するものとし、基本的に以下の箇所に適用するものとする。
- 施工箇所ののり勾配が1:2.0以上の緩い勾配の区間
- 護岸に連結用として鋼線を使用する場合は、河川水が強い酸性 または高い塩水濃度を有する河川で、著しく鋼線の腐食の恐れのある区間を除く。なお、特殊な条件のもとで使用する場合には、連節鉄筋の材質を考慮する必要がある。
連節ブロック護岸は、連結が確実な鉄筋等によってのり覆工に一体性が保たれており、「河川砂防技術基準(案)」によれば群体としてとり扱うことのできる工種であり、使用するブロックの重量は、「滑動~群体」モデルおよび「めくれ」モデルにより安定性の照査を行い、決定するものとする。
なお、設置にあたっては、次に示すことに留意するものとする。
- 連節ブロック護岸で1:2.0より急勾配で1:1.5までののり勾配の箇所にあっては、次の2点を考慮して、のり覆工の滑りに対して十分安全性が確保できる場合にあっては適用してもよいものとする。
- 護岸上部において、摩擦力を含めた支持機能の補強を施した構造(折り返し構造等)。
- 護岸のり尻部において、摩擦力を含めた支持機能の補強を施した構造(水平の護床工を施した構造および突っ込み構造等)
- 低水護岸に使用する場合には、局所的に急変することのないようにし、上下流河岸になじみよく取り付ける。また、人工的に直線化しない。
- 連節ブロック護岸は、環境保全等を考慮して、覆土、寄せ石等を行って、植生の復元等を図るものとする。覆土は、植生が復元しやすい表土の利用を考慮する。また、水際部には河床材の玉石等で寄せ石を行う等、生息動物等の環境保全を図るものとする。
- 連節ブロック護岸工法には、ブロックの下に吸出し防止材を設置する。
図2-2-11は連節ブロック張りの低水護岸の例である。
2-7 擁壁護岸
擁壁護岸は、高水敷が狭く堤防までの距離が十分でない場合に設置される護岸形式であり、堤防保護が最大目的であることから、堅固な安定性が要求される。
擁壁護岸には逆T型、L型、または重力式等水圧、土圧による滑動、転倒を安定の対象とするのり覆工であり、「道路土工 擁壁工指針」を参考にして、擁壁の安定に関する照査を行うものとする。
構造については「土木構造物設計マニュアル(案)」に準じて設計を行うものとする。なお、擁壁構造の護岸では、環境および景観等に考慮し、壁面を緑化や化粧型枠等も検討するものである。
2-8 矢板護岸
矢板護岸は、高水敷が狭く堤防までの距離が十分でない場合や、護岸設置のための仮締切等が困難な場合によく採用される護岸形式であり、自立式、控え式がある。また、控え式には、タイロッド式、斜め控え杭式等がある。
矢板護岸では、土留め高、作用荷重の大きさ、土質、背面の条件、重要度等を勘案して、形式の特性、安全性、経済性等から適正な形式を選定するものとする。
なお、矢板護岸では、環境および景観等に考慮した設計を行うものとする。