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第5章 堰

第1節 基本事項(標準)

1. 定義

堰とは、河川の流水を制御するために、河川を横断して設けられるダム以外の施設であって、堤防の機能を有しないものをいう。

「構造令」の適用においては、次の点に基づいて、堰とダムとを区分する。

  • ダム:基礎地盤から固定部の天端までの高さ15m以上
  • 堰:流水の貯留による流量調節を目的としない
  • 堰:堤防に接続する

ただし、最近は流量調節を行って積極的に流水の正常な機能を維持するための堰が設けられるようになってきており、堰とダムの区分が必ずしもはっきりしなくなっている。

(1) 分類

a. 用途別分類
  1. 分流堰
  2. 潮止堰
  3. 取水堰
  4. その他
b. 構造上分類
  1. 可動堰:ゲートによって水位の調節ができるもの
  2. 固定堰:水位の調節のできないもの

2. 構造の概要

堰は、計画高水位(高潮区間にあっては計画高潮位)以下の水位の流水の作用に対して安全な構造となるよう設計する。また、堰は、計画高水位以下の水位の洪水の流下を妨げることなく、付近の河岸および河川管理施設の構造および機能に著しい支障を及ぼさず、ならびに堰に接続する河床、高水敷等の洗掘の防止について適切に配慮した構造とし、操作性、河川環境および景観、ならびに経済性等を総合的に考慮して設計するものとする。

3. 適用基準等

堰の設計に適用する主な基準等は以下の通りである。

  • 改訂解説・河川管理施設等構造令(平成12年1月、日本河川協会)
  • 河川砂防技術基準 同解説 計画編(平成17年11月)
  • 河川砂防技術基準(案)同解説 設計編I(平成9年10月)
  • ダム・堰施設技術基準(案)(平成23年7月、ダム・堰施設技術協会)
  • 鋼製起伏ゲート設計要領(案)(平成11年10月)
  • ゴム引布製起伏堰技術基準(案)(平成12年10月、国土技術研究センター)
  • 河川構造物の耐震性能照査指針・解説 Ⅳ水門・樋門及び堰編(平成24年2月、国土交通省水管理・国土保全局)
  • 設計便覧(案) 機械編(平成24年4月、近畿地方整備局)
  • その他関係法令等

4. 周辺環境との調和

堰本体および関連施設の設計にあたっては、周辺環境及び景観との調和に配慮するものとする。

  1. 堰は、常時閉鎖され満水状態を保つことが多いため、堰の上下流で落差を生ずることになり、流水の連続性を断ち、魚類の遡上を妨げる。このため、堰には、魚道を設置したりして、魚類の生息環境の保全に対する配慮を行う必要がある。
  2. 堰の堰柱、門柱、操作室及びその関連施設について、周辺の景観に配慮した設計を行う必要がある。
  3. 堰は、常時越流することが多く、越流水による騒音、低周波振動等が周辺環境に影響を与える場合も考えられるので、計画にあたっては留意する必要がある。

5. 設計の手順

堰の設計の手順として一般的な項目を図1-5-1に示す。

  1. 計画
    • 規模および位置等の概定(現地および図上)
  2. 調査
    • 河川調査
    • 地質調査
    • その他の調査
      • 水文資料(水位、流速、洪水)
      • 河道資料(河道計画諸元、河床変動)
      • その他の資料(背水影響、既設工作物)
      • 平面図(堰上下流区間1/2500~1/1000、堰地点1/1000~1/500)
      • 縦断面(堰上下流区間)
      • 横断面(堰軸、堰の上下流25~50m間隔)
      • 概査(地表地質、河床材料、他の資料)
      • 本調査(原位置試験、室内試験)
      • その他(杭、矢板の打ち込み試験、載荷試験)
      • その他の資料(潮位、波高、波圧、その他)
  3. 基本設計
    • 位置決定
    • 敷高
    • 堰の高さ(即高)
    • 径間長
    • 全体配置計画
    • 水理模型実験
      • 位置選定比較
      • 堰中心線(堰軸線)の方向と位置決定
      • 計画高水流量(流量配分)
      • 計画河床高(河道計画)
      • 現河床高(最深河床、河床変動)
      • 背水影響(用排水、堤内地盤高)
      • 流況、潮位
      • 取水量
      • 水路(断面および勾配の概定、損失計算)
      • 計画取水流量(標準径間長、河積)
      • 可動堰、固定堰の割合
      • ゲート構造形式(設計製作限界、実績)
      • 施工条件(通年工事か渇水工事か、施工時流量、仮締切の回数と方法)
  4. 詳細設計
    • 堰本体
    • 本体
    • 床版
    • 護床護岸
    • しや水壁流量調節
    • 附帯設備
    • 取水設備
    • 工事計画
    • 堰付帯設備
    • 調節門、土砂吐き、開門または舟通し、魚道等
    • 堤防および低水路法線とのすりつけ
    • 水叩き、護床工、護岸などの範囲
    • 調節門、土砂吐、魚道などの位置
    • 管理橋の位置(左岸か右岸か)
    • 管理橋の位置(上流か下流か)
    • 取水口の位置、水路および中心線
    • ゲート形式(フラップゲートか、ローラーゲートか、二段ゲートか)
    • 形状寸法(幅、厚および高さ、戸当寸法、操作台の大きさ等)
    • 構造形式(床版と分離した構造か、それとも一体構造か)
    • 操作階段(位置、構造)
    • 管理橋の幅員、操作室のデザイン
    • 断面決定、安定計算、主要寸法の決定
    • 基礎工法(杭基礎かケーソンか、コンクリート杭か鋼杭か、杭径)
    • 断面決定(戸当床版、水叩き床版の厚さ決定)
    • 目地割(安定性、施工性)
    • 基礎工(直接基礎か杭基礎か)
    • 止水壁(浸透経路長、地下浸透流量)
    • 材料、構造、工法等の決定
    • 深さ、長さ、構造の決定
    • 水理検討
    • ゲート形式の選定
    • 調節方法
    • 土砂吐き(幅員、門数、ゲート形式、水路勾配、導流堤)
    • 閘門(対象船、給排水方式)
    • 魚道(対象魚種、魚道形式、幅員、勾配、通水量、箇所数、位置)
    • 取水口(幅員、水深、流量)
    • 沈砂池(基準土粒子の径、沈砂槽の大きさ、排砂の方法)
    • 導水路(水路断面、構造)
    • 流量(施工時最大流量の設定)
    • 仮締切の回数(年度割)
    • 締切範囲
    • 締切堤の構造(安定計算)
    • 切り替え方法の検討
    • 工事工程、その他
    • 基礎工の設計(構造計算、基礎配置図、詳細図)
    • 各部構造計算
    • 設計図(構造図、配筋図)
    • 数量計算、その他

6. 設置位置

堰の設置位置は、その設置目的に応じて選定し、河道の湾曲部や河道断面の狭小な箇所は極力避けるものとする。

堰の設置位置等の検討に当たっては、「構造令 施行規則第21条の解説」および「改訂 解説・工作物設置許可基準」に準じるものとする。

なお、堰の建設費を節約するためには、川幅の狭い箇所が有利と考えられがちであるが、高水の安全な流下を図るため特別の配慮が必要となり、かつ、堰が将来にわたって河道の制約条件ともなるので、努めて避けなければならない。

7. 平面形状および方向

堰の河川横断方向の線形は洪水の流心方向に直角の直線形(直堰)とし、堰柱の方向は、洪水の流心方向とすることを基本とする。

堰を流下する流水は、通常、堰と直角の方向に流れるものであり、その平面形状のいかんによっては、下流側の水衝作用を助長したり、局所洗掘の原因となることが多い。したがって、堰の河川横断方向の線形は洪水の流心方向に直角の直線形(直堰)とし、堰柱の方向は、洪水の流心方向とすることを基本とする。

8. 可動堰の天端高等

可動堰の天端高は、計画湛水位に必要な余裕高を考慮してゲート天端高を設定する。

余裕高は堰の設置目的、河川の流況、操作条件等を勘案して必要高を検討する必要がある。一般に、中流部に設けられる取水堰の場合では、この余裕高を0mとし計画湛水位=ゲート天端高とする事例が多い。

また、下流の潮位が影響する河口部等に設けられる潮止堰、取水堰の場合には、上記の他に下流の潮位、波浪、波浪の打上げ高をも勘案して必要高を検討する必要がある。

堰の計画湛水位は、原則として高水敷高より低い高さおよび堤内地盤高より高くしないものとする。ただし、盛土等適切な処置を講じた場合はこの限りでない

9. 流下断面との関係

堰の固定部(または固定堰)、土砂吐き、舟通し、魚道等は、原則として、現状または計画の流下断面内に設けてはならない。

堰の固定部(または固定堰)は、利水機能上からは現状または計画の流下断面内に設けなければならない必然性がなく、また洪水の流下に与える影響も極めて大きく、土砂吐き、舟通し、魚道等を現状または計画の流下断面内に設けることは、堰上流部における洪水時の水位上昇、下流部における局所洗掘等を招き、洪水による被害の危険性を増大させるものである。したがって、堰の固定部(または固定堰)、土砂吐き等は、原則として現状または計画の流下断面内に設けないものとしている。

ただし、やむを得ない場合は、これら(固定堰は除く)を現状または計画の流下断面外に設けるとその機能が発揮されない場合等では、「構造令 第37条のただし書き」の取扱いを行って設置するものとする。

10. 可動堰の可動部の径間長

可動堰の可動部の径間長(隣り合う堰柱の中心線間の距離をいう。)は、計画高水流量に応じ、以下の表の下欄に掲げる値以上(可動部の全長が、計画高水流量に応じ、同欄に掲げる値未満である場合には、その全長の値)とするものとする。

計画流量(m³/s)径間長(m)
500未満15
500以上2,000未満20
2,000以上4,000未満30
4,000以上40

ただし、山間狭窄部であること、その他河川の状況、地形の状況等により治水上の支障がないと認められるときは、この限りでない。

11. 可動堰の可動部のゲートの高さ

引上げ式ゲートの最大引上げ時におけるゲートの下端の高さは、計画高水位との間に洪水時における流木等流下物の浮上高等を考慮して、決定するものとする。

引上げ式ゲートの最大引上げ時におけるゲートの下端の高さは、一般的には、現状または計画堤防のいずれか高いほうに合わせるものとする。

高潮区間においては、一般に計画高水流量の流下のための計画高水位は計画高潮位より相当低く設定されており、ゲートの下端の高さを計画高潮位に合わせてもなお計画高水位との間には十分な空間があるので、洪水疎通に対しては特段の支障がない。しかし、高潮と洪水とがほぼ同時に生起した実績を有するような河川にあっては、洪水の流下に支障のない高さをゲートの下端の高さとする必要がある。

12. 起伏堰の構造

起伏堰は、ゲートの特性、水位条件、流量条件および点検・整備等を考慮して、洪水時においても、土砂や流下物によって倒伏が妨げられない構造とする。

起伏堰は、その工事の簡易、低廉、横断構造物としての河川流水の阻害の僅少等、引上げ式ゲートに比していくつかの優位性を認めることができる。一般に堰高および堰長が設置箇所の河積、河幅等に比して十分小さい場合および河積に十分余裕のある場合については起伏堰の設置が有利となる。また、洪水の到達時間等からみて、引上げ式ゲートでは出水時の的確な開閉ができない場合については、一般に起伏式ゲートを用い、自動開閉式とすることが望ましい。更に、渴水時以外は常に倒伏させておく潮止堰等、出水時における不完全倒伏の懸念の全くない場合は起伏式とすべきである。

起伏堰には、ゴム引布製ゲートを使用したゴム引布製起伏堰(通称ラバーダム)と鋼製転倒ゲートを使用した鋼製起伏堰とがある。

a. ゴム引布製起伏堰

ゴム引布製起伏堰は、「構造令 施行規則第21条第1号および第2号」の「ゲートを洪水時においても土砂、竹木その他の流下物によって倒伏が妨げられない構造」として取り扱っている。ただし、水位や流量を制御するような堰高操作を必要とする機能については十分でないことや、倒伏時に袋体上に多量の堆砂が生じた場合には起立不能となる場合がある。また、堰下流側に堆砂が生じる場合は不完全倒伏のおそれがあること等に留意する必要がある。

ゴム引布製起伏堰の設計方法については、「ゴム引布製起伏堰技術基準(案)」に準拠すること。

b. 鋼製起伏堰

鋼製起伏堰はその構造上、出水時の不完全倒伏が懸念されてきたが、近年の技術開発により、不完全倒伏を回避するための措置が可能となったため、鋼製起伏堰についても、ゴム引布製起伏堰と同様に「構造令 施行規則第21条第1号および第2号」の「ゲートを洪水時においても土砂、竹木その他の流下物によって倒伏が妨げられない構造」として取り扱えるものである。

鋼製起伏堰の設計方法については、「鋼製起伏ゲート設計要領(案)」に準拠すること。

第2節 可動堰(標準)

本基準は、主に引上式ゲート可動堰について定めたものである。

以下の可動堰に関する基準等は、主として「引上式ゲート可動堰」の設計に関する事柄について記載したものであり、ゴム引布製起伏堰および鋼製起伏堰においては、これによるほか以下の基準等によるものとする。

  • ゴム引布製起伏堰 : 「ゴム引布製起伏堰技術基準(案)」
  • 鋼製起伏堰 : 「鋼製起伏ゲート設計要領(案)」

1. 本体構造

引上式ゲートの場合の可動堰では、本体の主要構造物のうち、床版、堰柱、門柱、ゲート操作台は、原則として鉄筋コンクリート構造とし、ゲートは、原則として鋼構造とするものとする。

引上式ゲートの場合の可動堰の本体は、上記の主要構造物のほかに、ゲート操作室、戸当り、開閉装置を含んで構成される。

1-1 床版

可動堰の床版は、上部荷重を支持し、ゲートの水密性を確保し、堰柱間の水叩きの効用を果たすことのできる構造として設計するものとする。

本体の形式が逆T形のように床版が分離している場合には、堰柱からの荷重を支持する堰柱床版と、ゲート荷重を主な荷重とする中間床版とがある。中間床版の基礎は、ゲート荷重に対して不同沈下が生じないような構造とし、中間床版は、ゲートとの間の水密性が確保できるようにする必要がある。

1-2 堰柱

堰の堰柱は、上部荷重および湛水時の水圧を安全に床版に伝える構造として設計するものとする。

(1) 両端の堰柱の位置

両端の堰柱の位置は、計画堤防を著しくおかさないよう配慮するものとする。

  1. 堰柱を計画堤防内に設ける場合の問題点は、それが堤防の弱点になることである。
  2. 堰柱を計画堤防外に設ける場合の問題点は、堤防との間に無効河積が生じて堰による河積の阻害が大きくなる。また、堤防との間に流木等により閉塞しやすくなる点があげられる。

以上の点を総合的に勘案のうえ、両端の堰柱の位置を決定する必要がある。

また、堰が低水路部分のみに設けられる場合には、原則として、低水路ののり肩線に堰柱の内面(ゲート側)を合わせるものとするが、低水路の断面積が上下流に比べて著しく大となるときおよび起伏堰にあっては堰の設置前の低水路断面積と等値となるよう両端の堰柱の位置を決定してもよい。

(2) 高さ

堰柱の天端高は、引上げ式ゲートの場合には、計画高水位に余裕高を加えた値以上とする。また、起伏式ゲートの場合には、起立時のゲートの天端高に、ゲートの操作、戸当りの裾付け等に必要な高さを加えた値とする。

1-3 門柱

引上式ゲートの場合の堰の門柱は、上部荷重を安全に堰柱に伝える構造として設計するものとする。

引上式ゲートの場合の堰の門柱の天端高は、ゲート全開時のゲート下端高にゲートの高さおよびゲートの管理に必要な高さを加えた値とするものとする。

門柱の断面は、戸当り、ゲートの操作用階段等の設置を考慮して、十分検討のうえ、決定する必要がある。ゲートの管理に必要な高さとしては、引上余裕高のほか滑車等の付属品の高さを含んだものであり、ゲート操作台下面までの高さとし、ゲートの規模、開閉装置の構造、開閉速度等を考慮して決定するが、原則として、引上余裕高は1m以上とする。

なお、門柱は、その上に設置される操作室とともに、周辺景観との調和に配慮した設計を行う必要がある。

1-4 水叩き

水叩きは、鉄筋コンクリート構造とすることを原則とし、水叩きと床版との継手は、水密でかつ不同沈下にも対応できる構造とする。

水叩きは、堰の越流、またはゲートの一部開放による強い水流による侵食作用に対して安全となるように、鉄筋コンクリートによることを原則とする。

水叩きと護床工を含めた長さは、必要に応じて、水理計算、水理模型実験、河床材料、河道形状(単、複断面)、河床勾配、堰の全幅、揚圧力に対する安定条件、遮水壁形状等についての検討結果および過去の事例等を参考として総合的に判断して決定するものとする。

1-5 遮水工

遮水工は、原則としてコンクリート構造のカットオフ、または、鋼矢板構造とし、上下流の水位差によって生じる浸透水の動水勾配を減少させ、土砂の流動および吸出しを防止しうる構造として設計するものとする。

遮水工は、土砂の流動および吸出しを防止するものであるが、浸透経路長を長くすることにより揚圧力を減殺し、床版、水叩き厚を薄くする効果もあるので、遮水工の長さはこれらの効果を総合的に検討して決定する必要がある。

2. 基礎

堰の基礎は、上部荷重によっても不同沈下を起こさないよう、良質な地盤に安全に荷重を伝達する構造として設計するものとする。

基礎形式の選定にあたっては、必要工期、作業場面積の大小、環境面での制限、施工機械等を考慮するものとする。

また、地質条件等によっては、地震時に基礎地盤が液状化する可能性があるので、必要に応じて液状化対策を行うものとする。対象とする地震時の水平震度等については、「河川構造物の耐震性能照査指針(案)」に準ずるものとする。

3. 端部の処理

堰本体の端部処理については、堰取付部の上下流を擁壁構造の護岸とすることを基本とする。また、堰が被災しても堤防に支障を生じないよう、堰と堤防とを絶縁した構造とする。

4. 護床工

本体およびそれと連続する水叩きの上下流には、原則として、屈とう性を有する護床工を設ける。

堰を設置した場合には、上下流河床と堰部分の粗度の違い、または堰柱の縮流による流水変化、あるいは堰のゲートからの越流水等によって河床が洗掘されるのを防止する必要がある。また、流速を弱め流水を整える作用をもち、併せて本体および水叩きを保護するため、護床工を設ける必要がある。

5. 取付護岸

護岸は、流水の作用により堤防、または河岸を保護しうる構造として設計するものとする。

堰にはゴム引布製ゲート等特別な場合を除いて取付擁壁を設けるものとする。その施工範囲は、堰本体の構造、堤防法線の線形、すり付けの線形、護岸の形式、魚道、土砂吐き、閘門の有無およびその位置等を考慮の上決定するものとする。

堰の設置に伴い必要となる護岸は、「構造令 第35条および規則第16条」の規定を準用した範囲を最低限とし、必要な場合には数値計算(必要に応じて水理模型実験)等により、設置範囲を決定するものとする。

堰上流の湛水池に接する河岸または堤防は、波浪による洗掘を受けたり、また常時湛水により堤内地への漏水によって、河岸または堤防が弱体化するおそれがある。したがって、これらの影響を受ける区間においては必要に応じ、護岸、漏水対策の措置を講ずるものとする。

6. 高水敷保護工

流水等の作用による高水敷の洗掘を防止するため、堰柱の背面付近および堰上下流の取付護岸ののり肩付近は、屈とう性のある構造の高水敷保護工で保護するものとする。

一般に、流水が高水敷を流下する場合、堰付近では流水の乱れにより護岸の肩部分および高水敷内に設けられた構造物の部分(例えば魚道)が特に洗掘されやすい。したがって、高水敷内の構造物周辺および護岸肩部分については保護するものとする。この場合、粗度を急変させないよう留意するものとする。

7. その他の構造物

7-1 管理橋

堰には、原則として管理橋を設けるものとする。ただし、起伏式ゲート等によるもの、その他必要がないと認められる場合においてはこの限りでない。

また、管理橋の幅員は、堰の維持管理上必要な幅、堤防の管理用通路幅等を考慮して決定するものとする。

可動堰の可動部(洪水吐き)が引上げ式ゲートである場合には、原則として、管理橋を設けるものとする。

管理橋の位置については、その堰の設置目的により維持管理等を考慮のうえ、決定するものとする。

管理橋の設計にあたって、幅員、設計荷重の決定にあたっては、次のような事項を検討する必要がある。

  1. 管理橋を一般の道路橋または堤防管理用通路として使用するか、または併設するか。
  2. ゲートの組立において、管理橋を利用するか否か。
  3. 維持管理において、どのような事態が予想されるか。

7-2 土砂吐き

土砂吐きの規模、設置位置は非洪水時の堰上流の堆砂の防止および堰下流への土砂の供給の機能が確保されるよう決定するものとする。

7-3 取水設備

取水施設は、次の事項を満足するよう位置を選定するものとする。

  1. 取水機能が確保できること。
  2. 取水口本体の安全が確保できること。
  3. 維持管理が容易であること。

7-4 沈砂池

沈砂池は、用水路にとって有害な流入土砂を沈積排除するために、必要に応じ設置するものとする。

7-5 船通し、閘門

船通しや閘門の規模、設置位置は対象となる舟種を考慮のうえ決定するものとする。

閘門には、必要に応じて次のような設備を設けるものとする。

  1. 充給排水設備(閘渠)
  2. 繫留設備
  3. 保安設備

7-6 魚道

魚道は、魚類等の遡上・降下に適した形状とし、計画高水位以下の水位の作用に対して安全な構造とするものとする。

堰は河川の低水路部分を横断して設置される工作物であり、上下流の落差等の構造によっては魚類の遡上等を妨げることから、原則として魚道を設置するものとする。魚道の設計については、「本編第4章床止め」を参照すること。

7-7 付属設備

堰には、維持管理および低水時、洪水時の操作に必要な付属設備を設けるものとする。

第3節 設計(標準)

1. 設計荷重

堰の設計に用いる荷重については、堰の規模、ゲートや堰柱、門柱の形式、堰の位置等を考慮して、自重、静水圧、泥圧、揚圧力、地震時慣性力、地震時動水圧、温度荷重、波圧、残留水圧、土圧、風荷重、雪荷重および自動車荷重の中から設計荷重を定めて、堰の安定について検討するが、必要に応じてその他の荷重についても検討するものとする。

2. 本体の設計

2-1 可動堰

可動堰の本体は、設計荷重に対して、転倒、滑動、基礎支持力に対する所要の安全性が確保されるよう設計するものとする。

可動堰の安定計算等は、「河川砂防技術基準(案)同解説 設計編I 7.2.1.1可動堰」を基本とし、設計するものとする。この他、予想される荷重に対し適切な組み合わせを行い、安全であるように設計を行うものとする。

堰の耐震性能については、「河川構造物の耐震性能照査指針・解説」に準じた地震に対する照査を行うものとする。

  • レベル1地震動は、河川構造物の供用期間中に発生する確率が高い地震動である。レベル1地震動に対しては、地震後においても機能回復のための修復をすることなく、地震前と同じ機能を保持することができるように、地震によって堰としての健全性を損なわない性能(耐震性能1)を確保することとする。
  • レベル2地震動は、対象地点において現在から将来にわたって考えられる最大級の強さを持つ地震動である。レベル2地震動に対しては、治水上又は利水上重要な堰については、地震後もゲートの開閉性等の確保が求められることから、地震後においても堰としての機能を保持できる性能(耐震性能2)を確保することとする。一方、前記以外の堰については、地震後に堰としての機能が応急復旧等により速やかに回復できる性能(耐震性能3)を確保することとする。

2-2 固定堰

固定堰の本体は、設計荷重に対して、転倒、滑動、基礎支持力に対する所要の安全性が確保されるよう設計するものとする。

固定堰の安定計算を行う場合の荷重条件は、「河川砂防技術基準(案)同解説 設計編I 7.3.2.2固定堰」を基本とし、設計するものとする。

この他、必要に応じ上流側に堆砂がなく動水圧が作用する場合や揚圧力が作用しない場合の荷重条件に対しても安全であるように設計するものとする。

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