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第9章 取水施設

第1節 基本事項

1. 定義

河川水を堤内に取り込む施設を取水施設といい、河川法の適用を受ける区域に設置される取水施設に適用する。

取水施設は、取水方法の相違により以下のように分類される。

  1. 表流水取水: 取水塔、取水口
  2. 伏流水取水: 集水埋渠

取水方法は、取水塔の側面に設けた取水口から表流水を取水する方式が最も望ましく、集水埋渠による取水方式は、それが不適当または著しく困難であると認められる場合に限定すべきである。また、これらの施設に、揚水機場、水中ポンプ、送水管が付属する。

2. 適用基準等

  • 改訂解説・河川管理施設等構造令 (平成12年1月, 日本河川協会)
  • 改訂解説・工作物設置許可基準 (平成10年11月, 国土技術研究センター)
  • 河川工作物設置許可基準(案) (平成15年1月, 近畿地方整備局)
  • 揚排水ポンプ設備技術基準(案)同解説 (平成13年2月, 河川ポンプ施設技術協会)
  • その他関係法令等

3. 設計の手順

取水施設の設計手順は、施設の種類に応じて適応させるものとする。

4. 位置

取水地点は、取水方法に応じて適切な位置を選定するものとする。

4-1 表流水取水

表流水取水は、現在の河川の状況にとらわれることなく、過去の状態、将来の状況の変化等を考えて、取水地点、取水位水深等を決定するものとするが、最小水深2m以上のところに設けることが望ましい。また、吞口は、最低水位の際はもちろん、水位の変化に応じて取水できるように上流側を避けて数箇所に設ける。

4-2 伏流水取水

伏流水取水に当たっては、伏流水の性状、表流水との関係、堤内の伏流水との関係、既設集水埋渠との関係、水量、水質、洪水時の状況等を充分調査した上で取水地点、取水方法を決定するものとする。

第2節 構造(標準)

1. 取水塔

  • 流下断面内に設ける取水塔(河道の死水域に設けられる場合を除く)は、計画高水位以下の水位の洪水の流下を妨げず、付近の河岸および河川管理施設の構造に著しい支障を及ぼさず、並びに取水塔に接続する河床及び高水敷の洗掘の防止について適切に配慮された構造とするものとする。
  • なお、設計にあたっては、魚類等への影響に留意するとともに景観にも配慮し、周辺との調和を図るものとする。
1-1 取水塔の形状等

取水塔の形状は、原則として、できるだけ細長い楕円形その他これに類する形状のものとし、その長径(これに相当するものを含む)の方向は洪水が流下する方向と平行とすること。

1-2 取水塔の操作室等
  • 取水塔の操作室等は、できるだけ堤内地に設けることが望ましい。
  • やむを得ず取水塔に操作室等を設ける場合は、その操作室等の床面の下端の高さを、計画堤防高以上の高さとすること。ただし、小規模なもので、かつ、取水塔の位置が河岸又は堤防から十分離れており、河岸又は堤防に支障を及ぼすおそれがないと認められるときは、計画高水位以上の高さとしてもよい。
  • 取水塔およびその操作室は、周辺との調和を図ることに留意し、景観に配慮した形状・構造に配慮して設計するものとする。
1-3 取水塔の基礎部

取水塔の基礎部については、取水塔に接続する河床及び高水敷の洗掘の防止について適切に配慮されたものでなければならない。また、取水塔の基礎は、安全に荷重を支持層に伝える構造とする。

1-4 取水塔の取水口の構造

取水口は、魚類の迷い込み、吸い込み等を防止するため、呑口の大きさを流入速度15~30cm/sとして断面を定め、スクリーンを取りつけ、塔内には弁扉を設けることなどし、魚類への影響に配慮するものとする。

2. 取水塔の設計

取水塔の設計は、荷重として自重、設備機器重量、水圧、動水圧、地震力を考慮するものとし、転倒、滑動に対して、常時、地震時について安定計算、応力計算を行なうものとする。井筒の場合には、施工時土圧を考慮するものとする。

3. 取水口

取水口は、樋門等の呑口の構造に準ずるものとする。また、取水口には、ゲートおよび角落しを設け、前方には粗目のスクリーンを設けることを原則とする。

4. 集水埋渠

集水埋渠による取水方式は、表流水取水が不適当または著しく困難であると認められる場合に限って選定できるものとする。

不適当または困難とは、次のものをいう。

  1. わずかな量の取水のために大規模な堰等の施設の設置が必要となる場合など、社会的経済的妥当性の観点から表流水取水をすることが不適当な場合
  2. 堰を設ける際の河積確保のための河道拡幅が地形条件により著しく困難である場合や流路が不安定なため表流水取水ができない場合など、表流水取水とすることが物理的に困難な場合

このような場合には、堰や取水塔を用いた表流水取水方式と伏流水取水方式を比較検討して、表流水取水が不適当または著しく困難な場合で、かつ、対策を講ずることにより河川管理上支障がない場合には伏流水取水方式を選定できるものとしている。集水埋渠の設置等の留意事項については、「改訂解説・工作物設置許可基準」によるものとする。

5. 取水塔の付属施設

5-1 水中ポンプ

水中ポンプは、計画河床高、現河床高、将来の河床変動等を考慮して十分な深さに設けるものとする。ポンプ室周囲には、護床工を設けるものとする。

5-2 取水施設の送水管等

取水施設の送水管等は、「改訂解説・工作物設置許可基準」に準じた構造とする。

  1. 取水塔または水中ポンプに接続した送水管等を堤防の下またはその計画断面内に設ける場合には、当該送水管等には揚水機等の圧力が直接加わらない構造とする。
  2. 堤内地に調圧水槽を設ける場合には、その高さは計画堤防高以上とするものとする。
  3. 取水塔に接続する送水管を橋梁形式とする場合、「構造令 第64条(橋の桁下高に関する規定)」および「構造令 第66条(管理用通路の構造の保全に関する規定)」を適用させるものとする。

なお、送水管が堤防天端を横過する場合には、計画堤防外に設置するものとし、その構造は管理用通路の設計自動車荷重および送水管からの漏水防止等について配慮されたものとする。

6. 取水塔の設置に伴い必要となる護岸等

取水塔を設ける場合は、これに接続する河床又は高水敷の洗掘を防止するため、必要に応じ、適当な護床工又は高水敷保護工を設けるとともに、流水の変化に伴う河岸又は堤防の洗掘を防止するため護岸を設けなければならない。

取水塔は、原則的には、「構造令 第63条第1項」の規定による橋の基準径間長に相当する長さの距離を河岸または堤防から離すことが望ましい。したがって、それより近接するときは、河岸又は堤防に設ける護岸の構造については十分な根固工を設けるとともに、一般の護岸の強度より強固なものにするなど、特に慎重な配慮を払わなければならない。