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第8章 排水機場

第1節 基本事項

1. 定義

排水機場とは、ポンプによって河川または水路の流水を河岸、または堤防を横断して排水するために、河岸または堤防の付近に設けられる施設であって、ポンプ場とその付属施設(吐出水槽、樋門等)の総称である。

排水機場には、通常、樋門が設けられるが、まれには樋門の代わりに水門が設けられる場合もある。また水門および樋門を設けないで、小規模な吐出管によって堤防を横過する場合も少なくない。

構造令ではポンプ場およびその付属施設を排水機場と称しているが、許可工作物である場合は、その適用範囲について注意を要する。すなわち、許可工作物である場合、樋門は当然河川区域内に設けられるとしても、ポンプ場等は河川区域外に設けられる場合が多いが、その場合においてポンプ場等にまで構造令が適用されるのかどうかという点である。構造令の適用範囲は以下のとおりである。

  1. 排水機場の「吐出水槽その他の調圧部」についてはすべての場合、また、排水機場の「ポンプ室」については、河川区域内のものまたは河川区域内にまたがる場合のみ構造令を適用することとしている。
  2. 排水機場に付属して水門または樋門が設けられる(ポンプ排水のみに供する水門または樋門)場合、当該水門または樋門については、「構造令 第57条第2項」の規定によって「構造令 第49条(河川を横断して設ける水門の径間長等)第2項」の適用がないことのほかは、「構造令 第46条~第53条」の水門および樋門に関する諸規定の適用がある。

2. 適用基準等

排水機場の設計に適用する主な基準等は以下の通りである。

  • 改訂解説・河川管理施設等構造令(平成12年1月、日本河川協会)
  • 河川砂防技術基準 同解説 計画編(平成17年11月)
  • 河川砂防技術基準(案)同解説 設計編I(平成9年10月)
  • 揚排水ポンプ設備技術基準(案)同解説(平成13年2月、河川ポンプ施設技術協会)
  • ダム・堰施設技術基準(案)(平成23年7月、ダム・堰施設技術協会)
  • 設計便覧(案)機械編、電気通信編(平成24年4月、近畿地方整備局)
  • 河川構造物の耐震性能照査指針・解説 Ⅳ水門・樋門及び堰編(平成24年2月、国土交通省水管理・国土保全局)
  • その他関係法令等

排水機場の設計に考慮する主要な荷重は以下の通りである。

  • 自重:機場(吸水槽、上屋等)およびポンプ設備の荷重を考慮する。原動機の基礎コンクリートの大きさは、その振動等を考えて、必要な重量と厚さを有する必要がある。
  • 静水圧:考えられる静水圧の組合わせを検討する。ただし、地震時慣性力と機場運転時(洪水時)における水圧は、同時に作用しないものとする。
  • 揚圧力:揚圧力は、機場の水位差が最大となる水位により求めるものとする。
  • 地震時慣性力:水平方向についてのみ考慮する。
  • 温度荷重:温度変化を±15.0℃とし、膨張係数を鋼で0.000012、コンクリートで0.00001として計算する。
  • 土圧:土圧は原則としてクーロン公式を用いて常時および地震時について計算するものとする。
  • 風荷重
  • 雪荷重
  • 自動車荷重:大型の自動車のA活荷重、またはB活荷重を基本とするが、状況に応じた荷重を使用してもよい。

3. 沈砂池

沈砂池は、流水中の土砂を沈降させてポンプの摩耗、損傷を防ぐため、必要に応じて吸水槽の前に設けるものとする。沈砂池の流入部は、偏流を防ぐようにするものとする。

流水中の土砂はポンプの主要部の寿命を低下させる原因となるので、特に砂礫質の土砂がポンプに流入する恐れのある場合には、河川の状況等により必要に応じて沈砂池を設けるものとする。

沈砂池を設置する場合の留意点は、以下のとおりである。

  1. 沈砂池の形状:沈砂池は、吸水槽の導水路も兼ねるので、流れの方向や流速の急変は避け、均等な流速とし、偏流や死水の生じないよう方向、大きさ等を検討するものとする。
  2. 沈砂池の大きさおよび深さ等の諸元:流水の流況、流入土砂の粒度を勘案し、ポンプの摩耗等の影響が生じないように設定するものとする。
  3. 沈砂池の構造:地表面下深く築造され、土圧、揚圧力等の荷重が作用し、不同沈下の影響を受ける恐れがあるため、原則として堅固で水密な鉄筋コンクリート構造とする。
  4. 沈砂池の伸縮継手:沈砂池が長い場合、地盤が軟弱な場合、荷重や支持層が変化する場合には、必要に応じて適当な間隔に伸縮継手を設けるものとする。
  5. 沈砂池の計画:一般に粒径が0.3mm以上の土砂を除去するものとして計画する。

3-1 設計

沈砂池は、設計荷重に対して安全な構造となるよう設計するものとする。

大型の沈砂池は、一般に擁壁と床版との組合わせによる構造であるので、計算は擁壁と床版を分離して行うものとする。

擁壁は、転倒、滑動、支持力について検討するものとする。床版は、施工時の自重および揚圧力に対する基礎の安全性について検討を行うものとする。擁壁は、床版が洗掘、その他により破壊しても影響を受けないよう、原則として自立構造とするものとする。ただし、沈砂池の幅が小さく、擁壁と床版が一体構造の場合は、一体として検討を行うものとする。

4. 機場上屋

4-1 ポンプ室

ポンプ室は、次に示す内容を考慮して設計を行うものとする。

  1. ポンプ室の大きさ:「揚排水ポンプ設備技術基準(案)同解説」に準ずるものとするが、ポンプ台数、電気設備、附属設備、将来の増設、仮置場等を考慮して、決定するものとする。
  2. ポンプ室の防湿・防音対策:ポンプ運転時の防湿対策、騒音対策等が必要な場合には、適切な換気や防音構造を持つポンプ室を設けるものとする。
  3. ポンプ室の機器配置:ポンプ室には、主ポンプ、付属設備、機器搬入口等を機能的に、かつ整然と配置するものとする。

4-2 操作室、管理室等

排水機場には、適切な操作室、管理室等を設け、管理室は、操作室、電気室、ポンプ室等の監視に適当な位置に設けるものとする。

操作室は、原則として場内と場外設備全体をよく見渡せる位置に設けるものとする。また、配電盤等を格納する電気室は、換気と採光がよく、乾燥した場所で、乾燥、器具の点検、調整等が容易な広さを有するものとする。

4-3 設計

排水機場の上屋の設計は、建築基準法、同施行令、消防法等の関連法令および以下に示す仕様書等に準拠するものとする。

  • 「建築基礎構造設計指針」(日本建築学会)
  • 「建築工事共通仕様書(追補付 平成11年4月再編集版)」(建設大臣官房官庁営繕部)
  • 「機械設備工事共通仕様書および標準図」(建設大臣官房官庁営繕部)
  • 「電気設備工事共通仕様書および標準図」(建設大臣官房官庁営繕部)
  • 「建築工事標準仕様書・同解説」(日本建築学会)

5. スクリーン

ポンプ運転時に浮遊物が流入しポンプ運転に支障を与える恐れがある場合は、ポンプの保護と安全対策として、ポンプ吸込槽入口には、必要に応じてスクリーンを設けるものとする。ただし、人力除塵での対応が困難な場合に限って除塵機を設置するものとする。

除塵機で排除できない大きな流下物、園芸用のビニール等がある箇所にあっては、スクリーンの前方に必要に応じて杭やフロータを設けるものとする。

6. 角落し等

吸水槽の流入口には、吸水槽の除砂、スクリーンおよびポンプ設備の点検修理、土木構造物修理用の角落しのため、戸溝を設けるものとする。

7. 付属設備

機場には、必要に応じて付属設備を設けるものとする。

付属設備としては、以下に示すような施設が考えられる。

  1. ポンプ運転に必要な水位の検知と監視のための水位計、照明灯等
  2. 換気設備、消火設備、避雷針設備、冷暖房設備、飲料水設備等
  3. 大容量の機場で公害規制等のある地域での内燃機関排気のための集合煙突設備
  4. その他、ポンプ運転のための支援設備

第2節 耐震設計(標準)

排水機場は、所定の耐震性能を保持するよう、設置される地盤条件、機場の規模、構造形式等に応じて、適切に設計するものとする。耐震設計は、「河川構造物の耐震性能照査指針・解説」に準じて行うものとする。

2-5 基礎

排水機場の基礎は、上部荷重を良質な地盤に安全に伝達する構造として設計する。

基礎形式は、直接基礎、杭基礎が考えられる。基礎形式の選定にあたっては、必要工期、作業場面積の大小、環境面での制限、施工機械の保有量等を考慮するものとする。

また、機場地点の地質条件等によっては、地震時に基礎地盤が液状化する可能性があるので、必要に応じて液状化対策を行うものとする。地震に対する照査は、「道路橋示方書」に準ずるものとする。

第3節 救急排水ポンプ(標準)

救急排水ポンプ設備は、比較的小規模な排水施設を対象として、ポンプ設備や電源設備等の可搬設備、運搬、据付機器および現地の固定設備より構成される。

救急排水ポンプ設備は、建設省と(社)河川ポンプ施設技術協会で開発したものであり、屋外で使用できるように設計されているので、排水機場には機器を収納する建物は必要ない。また、ポンプ本体は、同じ周波数で使用する場合、異なる流域の排水機場でも運転できるように、コラムと呼ばれる揚水管部とポンプ本体の取付け部分の寸法は統一されており互換性がある。

1. 選定基準

救急排水ポンプの選定基準は以下の通りである。

  1. 2河川以上の内水頻発区間であって、可搬式ポンプにより機動的かつ効率的な排水が可能な地域を対象とする。
  2. 当該排水に必要なポンプの排水容量の規模が概ね10m³/s以内であること。
  3. 排水先河川の必要な流下能力が確保されていること。

2. 救急排水ポンプ設備の構成

救急排水ポンプ設備は、必要に応じて機器を運搬して使用することが大きな特徴である。機器はトラックで運搬するものと固定しておくものの二種類に分けられる。トラックで運搬する機器は機動性を良くするために小型軽量化を第一とし、外形寸法もできるだけ統一している。排水機場に固定しておく機器は、コラムパイプ、吐出弁、吐出管等配管系が主であり、その他に水位計、接地装置等土木と一体になる機器である。

救急排水ポンプ設備の主な構成機器と役割は以下の通りである。

  • のり面保護工
  • ゲート
  • 放流端
  • 復工板
  • 燃料運搬車
  • トラッククレーン(ポンプ本体取付中)
  • 発電装置(操作盤一体型)
  • 運搬車
  • 休憩室
  • 吐出弁
  • 水位計
  • スクリーン
  • 接続盤
  • コラムパイプ
  • ポンプ本体
  • ケーブルリール

救急排水ポンプ設備の構成は、「本体(可搬部)」と「コラムパイプ(固定部)」に大別される。堤外へ排水するためにコラムパイプが固定部として設置され、その上にポンプ本体が可搬部として据え付けられる。

第4節 ポンプ設備の新技術(参考)

新技術の導入にあたっては、その信頼性を適合性について十分検討を行いその効果が達成できるよう留意する必要がある。

最近の新技術の内容は以下の通りである。

項目内容新技術
ポンプポンプの潤滑水系統簡素化セラミックス軸受、無給水軸封装置
冷却水系統の簡素化管内クーラ、槽内クーラ
主題の空冷化
原動機ガスタービン駆動
ラジェータ冷却方式
減速機空冷減速機
ポンプポンプの高速小形化救急排水ポンプ
シンプル化水中モータポンプ
リフトポンプ
総合操作・制御の合理化運転支援装置、広域群管理

3. 設計の手順

排水機場設計の基本的な手順は以下の通りである。

  1. 調査項目
    • 自然的諸条件の把握
      • 地形・地質条件
      • 水質条件
      • 地盤条件
    • 社会的諸条件の把握
      • 立地条件
      • 環境条件(生活環境、自然環境)
      • 管理環境
      • 施工条件
  2. 内水計画策定
    • 許容湛水位の設定
    • 計画外水位設定
  3. 内水排除計算
    • 必要排水量の検討
    • 吸水位、吐水位設定
    • 実揚程設定
  4. ポンプ形式設定
    • ポンプ場位置の検討
    • ポンプ台数、口径の検討
    • 計画吐出量検討
    • ポンプ形式検討
    • 原動機、機電設備検討
    • 運転方式検討
  5. 土木設備検討
    • 吸水槽、吐出水槽、吐出函渠の検討(水理検討、形状寸法)
    • 運転、保守管理施設検討
  6. 設備配置計画
    • 据え付け基準高設定
    • 施設、機器配置計画
    • 全揚程の算出
    • 設備仕様の決定
  7. 基本図作成
    • 全体計画図
    • 施設配置図
    • 設備配置図
  8. 総合検討、計画の妥当性検討
  9. 細部設計

4. 設置位置

排水機場のポンプ場は、ポンプの振動が堤防に著しい影響を及ぼさない位置に設ける必要がある。

排水機場は、その付近で地形上最も低い位置に設けられることから、低湿地の軟弱地盤地帯に設けられることが多く、その連続的な振動は、堤防に影響を与えかねない。したがって、ポンプ場は、その付近の地盤条件を勘案し、できるだけ堤防から離して設けるよう努めるものとする。また、排水機場の吐出水槽その他の調圧部等を堤防に近接して設ける場合は、いわゆる「2Hルール」(工作物を設けてはならない区間を堤防高の2倍とすること)に加えて、「排水機場の吐出水槽等の振動が堤防に伝わるおそれのある工作物を設置する場合については、堤防のり尻より5m以上離すものとすること。」としている。

5. 構造の概要

排水機場は、河岸および河川管理施設の構造に善しい支障を及ぼさない構造とし、鉄筋コンクリート構造またはこれに準ずる構造とする。

排水機場のポンプ室(ポンプを据え付ける床およびその下部の室)、吸水槽および吐出水槽その他の調圧部は、鉄筋コンクリート構造またはこれに準ずる構造とし、構造自体の安定を図るとともに、連続振動が堤防等河川管理施設に与える悪影響が少ない構造とする。

排水機場は、以下の施設から構成される。

  1. 沈砂池
  2. 機場本体
  3. 機場上屋
  4. ポンプ設備
  5. スクリーン
  6. 落角しまたは削水ゲート
  7. 吐出水槽
  8. 逆流防止弁
  9. 樋門等

排水機場の構成は、規模やポンプの形式により異なるが、一般的には「ポンプ場」と「付属施設(関連施設)」に大別され、さらに「ポンプ場」は「ポンプ設備」と「機場上屋」に分類される。「ポンプ設備」は、ポンプ本体を中心とした機械設備と監視操作制御設備からなり、「機場上屋」はポンプ室や吸水槽等の土木構造物を指す。「付属施設」は、スクリーンや角落し設備等の関連施設を指す。

6. ポンプ場設置の留意点

ポンプ場を計画し、設置する場合は、目的、立地条件、投資効果、周辺の環境条件、維持管理等を考慮して決定する必要がある。

河川管理施設として排水機場を設ける場合の留意事項は以下の通りである。

  1. 排水機場の容量:機場の目的、性格、立地条件、運転条件、投資効果等を検討し、より効果的、より経済的な設備となるよう決定する。
  2. 排水機場:内水の湛水によって運転に支障をきたすことのないよう、湛水位に対して余裕をもった高さまでポンプ場自体を水密構造とする、あるいは床面を高くする等、十分な配慮を払わなければならない。なお、支川の出水が長期に亘り、且つ重要な施設の場合は、H.W.L.以上に据付けることが望ましい。
  3. ポンプの台数:運転の効率、不時の故障等を考慮して、2台以上の適切なものとする。
  4. ポンプの原動機:経済性、保守点検の容易さ、周辺の環境条件を考慮の上決定するものとする。
  5. ポンプ室の機場上屋:必要な場合に設けるものとする。
    • ポンプ運転時の防湿対策、騒音対策、積雪・塩害対策等が必要な場合。
    • 排水機場に天井クレーンが特に必要とされる場合。
  6. 操作室・管理室等:適切な位置、構造で設置するものとする。

第2節 構造(標準)

1. 設計の基本

排水機場は、内水または河川水を排除する所要の機能が達せられ、河岸および河川管理施設等の構造に著しい支障を及ぼさないようにするとともに、管理運転を考慮して設計するものとする。また、河川環境や景観にも考慮し、周辺との調和に配慮するものとする。

  • 排水機場は、ポンプにより堤防を横断して内水または河川水を排除するために設けられる施設である。
  • 排水機場は、原則として堤体とは分離して適当な距離をおいて設置するものとする。
  • 洪水時に排水機場が確実に運転できるように、日常の点検と整備を行うことが必要であり、そのため設備の構造もそれに適したものとして計画する必要がある。
  • 長期休止による機能低下が生じないよう、管理運転が実施されるが、これを考慮した設計とする必要がある。
  • ポンプ設備の詳細については、「揚排水ポンプ設備技術基準(案)同解説」、「揚排水ポンプ設備設計指針(案)同解説」による。
  • 小規模ポンプ、救急排水ポンプ機場については、それぞれ「揚排水ポンプ設備技術基準(案)同解説」、「揚排水ポンプ設備設計指針(案)同解説」、「救急排水ポンプ設備設計指針」によるものとする。
  • 排水機場は、周辺の環境によっては、景観等にも考慮し、周辺との調和を図る設計を行うものとする。

2. 機場本体

2-1 吸水槽

  • 吸水槽の形式は、ポンプ容量、ポンプ形式等を考慮して定めるものとする。
  • 吸水槽の形状は、流水の乱れが起きないようなものとし、断面の急変を避けるとともに、流入口の位置、吸水槽容量、ポンプ配置等を考慮して定めるものとする。
(1) 吸水槽の形式

吸水槽の形式には以下のようなものがある。

  • オープンピット形: 吸水槽とポンプの吸込管とが分離した形式
  • クローズピット形: 吸水槽そのものが吸込管となった形式
  • 一般に口径が2,000mmを超える大容量のポンプの場合クローズピット形が採用されている例が多い。
  • ポンプの高流速化の検討により施設規模の縮小に努めるものとするとともに、いずれの形式を採用するほうが有利か十分検討する必要がある。
  • 水中ポンプについては、吸水槽内にポンプそのものを据え付けた型式とする。
(2) 吸水槽の形状と構造
  • 吸水槽の容量は、水理的には大きいほど望ましいが、河川の状況、地形状況、建設費等を検討して決定するものとする。
  • ポンプの吸水位については、余裕を見込むことが望ましい。
  • 吸水槽の構造は、設計荷重に対して安全な構造となるように設計するものとする。

2-2 吐出水槽

  • ポンプ場と吐出樋門の間には、調圧水槽を兼ねた吐出水槽その他の調圧部を設けるものとする。
  • ただし、樋門が横断する堤防(第2種、第3種側帯を除く)および河岸の構造に支障を及ぼす恐れのないときはこの限りでない。
(1) 機能
  • ポンプ排水による場合は、揚程の大小にかかわらず、停電によるポンプの急停止や、なんらかの原因によるバルブの急閉塞等によって大きな水撃作用を起こすことがあり、設計条件を突破するような加圧や負圧を生ずるおそれがある。
  • 吐出水槽その他調圧部は、主としてこのような異常事態に対処するものである。
  • さらに、ポンプの振動が直接堤体に伝達され、連続的振動による樋門および堤防への悪影響を吸収緩和する効果も大きいと見られている。
(2) 構造
  • 吐出水槽は、前後の構造物と絶縁した構造とする。
  • 吐出水槽は、堤防ののり尻から深さの2倍かつ5m以上離して設置する。
  • 吐出水槽は、機場からの振動を遮断するとともに、地震の影響を受けた場合に地下に埋設されている吐出管路および吐出樋門と異なった挙動をすることや、吐出樋門等の不同沈下等による破損を防ぐため、両端の吐出管路および吐出樋門との接合部には、原則として水密構造の継手を設けるものとする。
  • 吐出管路から吐出された水流は、水槽内で急激に流速が遅くなり乱れを生じ、波立ちや振動を与える原因となるので、流水がスムーズに吐出水槽に流入するよう側壁や底面の形状を定めるものとする。
(3) 高さ
  • 吐出水槽の上端の高さは、少なくともポンプー斉始動時のアップサージの計算値に余裕を考慮した高さが必要である。
  • 吐出水槽設置の目的であるポンプ急停止時の水撃現象に対する配慮を考慮すれば、調圧水槽の上端の高さは堤防の高さ(計画堤防または現況堤防の高い方)以上の高さが必要である。
  • ただし、吐出水槽の上端の高さは、現堤防の高さが計画堤防高を著しく上回っているような場合には、本川の計画堤防高以上の適切な高さとすることができる。
(4) その他
  • ポンプと吐出水槽を結ぶ吐出管路(パイプの場合とコンクリート函渠の場合とがある)は、水流による吐出水槽への衝撃と水頭損失を小さくするための配慮、および吐出水槽への取付け方向にも配慮する必要がある。
(5) 小口径の排水機場
  • 排水量が極めて小さく吐出管(概ね500mm未満)により堤防の定規断面外で堤防を横過して排水機場から直接排水する方法がある。
  • この方法による場合には、吐出水槽その他の調圧部を設ける必要はない。
  • この方式の適用については、「河川工作物設置許可基準(案)」を参考とすること。

2-3 吐出樋門

  • 排水機場の吐出樋門とそれ以外の部分とは、ポンプおよび自家動力源によって発生する連続振動等によって、河岸または堤防の構造に悪影響が及ぶことを防止するため、構造上分離するものとする。
  • 樋門断面は、ポンプ排水量と樋門内流速の値により決定されるが、樋門内流速は2~3m/sとするのが一般的である。
  • 設計方法は、「本編第6章樋門」に準じて行うものとする。
  • 高規格堤防特別区域においては、高規格堤防の機能に支障を及ぼすおそれがない場合は、樋門と樋門以外の部分とは分離する必要はない。

2-4 設計荷重

排水機場の吸水槽、吐出水槽等の設計に用いる荷重の主なものは、以下のものとする。

  • 自重
  • 静水圧
  • 揚圧力
  • 地震時慣性力
  • 土圧
  • 風荷重### 3. 基礎

排水機場の基礎は、上部構造物の荷重を安全に地盤に伝達し、上部構造物の沈下や不同沈下等による影響を防止できる構造とするものとする。

基礎の設計にあたっては、基礎地盤の調査を十分に行い、基礎地盤の性状を的確に把握するとともに、基礎の形式や規模、施工方法等を総合的に検討し、安全かつ経済的な基礎を選定するものとする。

基礎の設計は、「本編第5章基礎」に準じて行うものとする。

4. 排水機場の防災

排水機場は、洪水時や地震時等の異常時においても、排水機能を維持できるよう、以下のような防災対策を講じるものとする。

4-1 耐震対策

  • 排水機場は、地震時においても排水機能を維持できるよう、耐震設計を行うものとする。
  • 耐震設計は、「本編第7章耐震設計」に準じて行うものとする。

4-2 浸水対策

  • 排水機場は、洪水時の浸水に備え、重要な機器や電気設備等は高所に設置するなど、浸水対策を講じるものとする。
  • 浸水対策は、想定される浸水深に対して十分な対策を講じるものとする。

4-3 停電対策

  • 排水機場は、停電時においても排水機能を維持できるよう、非常用電源設備を設置するなど、停電対策を講じるものとする。
  • 非常用電源設備は、想定される停電時間に対して十分な容量を確保するものとする。

5. 維持管理設備

排水機場は、適切な維持管理を行うことで、常に良好な状態を保ち、所要の機能を発揮できるようにする必要がある。そのため、排水機場には、以下のような維持管理設備を設けるものとする。

5-1 管理橋

  • 吸水槽や吐出水槽等の水槽上には、点検や維持管理作業を行うための管理橋を設置するものとする。
  • 管理橋は、作業の安全性や作業性を考慮した構造とするものとする。

5-2 クレーン設備

  • 排水機場には、ポンプ等の大型機器の搬出入や点検等を行うためのクレーン設備を設置するものとする。
  • クレーン設備は、搬出入や点検対象物の重量や形状等を考慮し、適切な仕様とするものとする。

5-3 排水設備

  • 排水機場内に浸水した水を排除するための排水設備を設置するものとする。
  • 排水設備は、想定される浸水量に対して十分な排水能力を有するものとする。

6. 環境対策

排水機場の建設や運用に伴う周辺環境への影響を最小限に抑えるため、以下のような環境対策を講じるものとする。

6-1 騒音・振動対策

  • 排水機場の建設工事や運用に伴う騒音・振動の発生を抑制するため、低騒音・低振動型の機器の採用や防音・防振対策を講じるものとする。
  • 特に、住宅地等の近傍に位置する排水機場では、周辺環境への影響を十分に考慮した対策を講じるものとする。

6-2 水質対策

  • 排水機場から河川等に排水する際、排水の水質が周辺環境に悪影響を及ぼさないよう、必要に応じて水質改善対策を講じるものとする。
  • 水質改善対策としては、沈砂池の設置や排水の浄化処理等が考えられる。

6-3 景観対策

  • 排水機場の建設にあたっては、周辺の景観との調和に配慮し、圧迫感の軽減や修景等の景観対策を講じるものとする。
  • 景観対策としては、建物の色彩や形状の工夫、植栽等による修景などが考えられる。

以上が、河川砂防技術基準に基づく排水機場の構造(標準)に関する主な内容となります。排水機場の設計にあたっては、これらの基準類を参考に、個々の現場条件を踏まえて適切な設計を行う必要があります。