防災計画の体系と土木計画学の役割
1. 防災計画の定義と体系
わが国の防災計画は、国レベルの総合的かつ長期的な計画である防災基本計画と、地方レベルの都道府県および市町村の地域防災計画から構成されています。さらに、2013年の災害対策基本法の改正により、「地区防災計画制度」が創設され、必要に応じて市町村地域防災計画に、一定の地区の居住者および事業者(以下、「地区居住者等」)が行う地区防災計画を位置付けることができるようになりました。
いずれの階層における「防災計画」も、基本的には、「災害予防」、「災害対応」、「災害復旧 ・復興」から構成される施策体系を含んでいます。本記事では、「防災基本計画」を参照しながら、土木計画学との関わりにおいていかなる課題が存在するのか考察します。
2. 防災基本計画における防災の位置づけ
現行の防災基本計画では、「第2章 防災の基本理念及び施策の概要」において、防災を以下のように位置付けています。
災害が発生しやすい自然条件下にあって、調密な人口、高度化した土地利用、増加する危険物等の社会的条件をあわせもつ我が国の、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護する、行政上最も重要な施策である。
そして、以下のような基本理念を示しています。
災害の発生を完全に防ぐことは不可能であることから、災害時の被害を最小化し被害の迅速な回復を図る「減災」の考え方を防災の基本理念とした。たとえ被災したとしても人命が失われないことを最重視し、また経済的被害ができるだけ少なくなるよう、さまざまな対策を組み合わせて災害に備え、災害時の社会経済活動への影響を最小限にとどめなければならない。