Skip to main content

気象学

わが国の気候

季節変化

日本は四季の変化が明瞭です。冬は日本海側の大雪と太平洋側の晴天が対象的です。冬から春にかけては、4~5日周期で寒暖、天気が変化します。6月中旬から7月中旬にかけての梅雨は東アジアだけにみられるもので、梅雨の末期には集中豪雨に襲われることがあります。梅雨前線が北上すると、むし暑い夏となり、台風がやってきます。9月にはまた雨季があり、気温はしだいに下降していきます。

シベリアに優勢な高気圧が現れ、寒冷な季節風が吹きます。寒冷な気団が日本海を渡る間に、暖かい海面から加熱・加湿され雲群が発生・発達し、日本海側には大雪がもたらされます。脊梁山脈でせき止められた太平洋側では乾燥晴天日となります。低気圧が日本の南岸沖を通過するとき、太平洋側にも大雪が降り各地で交通が途絶することがあります。

大陸では気温が上昇し、季節風が弱まると、移動性の高気圧と低気圧が西から次々と現れます。強い低気圧が日本海を通過するとき暖かい南風が吹き、山地では、雪崩が発生したり融雪が進みます。乾燥強風によって北海道や東北地方で山火事が続発することがあります。

6月から7月中旬にかけての約1か月間、日本列島を横切って、寒冷な気団と湿った暖かい気団の境界(梅雨前線帯)に沿って低気圧が頻繁に発生し、北海道を除く日本列島に雨季がもたらされます。梅雨のころ、東日本の太平洋沿岸では冷たい偏東風「やませ」にみまわれます。

梅雨前線が北上すると安定した夏の晴天になります。台風は年間2030個発生し、そのうち23個が7~9月に日本に上陸します。台風は豪雨で水害をもたらす反面、重要な水資源をもたらします。冬の山間部の雪と、夏の台風による雨が少ない年は渇水になりやすいです。

9月上旬から10月上旬にかけて、梅雨前線帯に似た前線帯が日本列島に沿って形成され雨季をもたらします。この雨季は梅雨ほど顕著ではありません。10月から11月にかけては、大きな移動性高気圧におおわれ晴天になることが多いです。北日本では10月に初霜、11月に初雪を、西日本では約1か月遅れて初霜、初雪をみます。

降水

地域分布

地球上の年間平均降水量は約900mmですが、日本の年間降水量は平均1700mmでかなり多いです。日本一の多雨地は紀伊半島東岸の尾鷲で、平均年間降水量は4,118mm4,118mmです。少雨地域は北海道で、年間降水量1,000mm1,000mm前後です。

西南日本では夏に2回降水量の極大値があります。6月の梅雨と8~9月の台風による降水のためです。他の地域で月降水量が極大値をとるのは、関東から北海道にかけては9月に多く、日本海側の福井県から新潟県にかけては12~1月、中部地方以北の山岳では冬期となるところも多いです。

冬の積雪は、日本海に面した山腹で、大きい福井県から青森県にかけて非常に大きく、最大積雪深が4mをこえるところもあります。

参考リンク

渇水

降水量の年々変動は大きいです。渇水の発生時期は太平洋側の各地では冬に起ることもありますが、全般的に夏に多いです。梅雨前線の活動が不活発で、それに続く夏型天気が発達し、台風来襲もなく、秋になってもほとんど雨が降らない年は渇水になります。西日本では渇水になることが多いです。

集中豪雨

1日当り100mmをこす雨が降ったときや、年平均値の10%程度以上が1日に降ったとき災害が起りやすくなります。集中豪雨は、多量の雨が100km100km四方以下の狭い範囲に数時間から1日に集中して降るものです。

各時間帯の最大雨量の日本での記録の概略値は、10分間で50mm50mm、1時間で190mm190mm、3時間で400mm400mm、6時間で700mm700mm、24時間で1,100mm1,100mm、1か月で3,000mm3,000mmです。

気象情報

気象観測所

現在、気象官署約150か所、アメダス観測所は20~30km間隔で約1300か所あります。アメダス観測所では気温、雨量、日照、風向、風速の5要素が観測され、電話線で1時間ごとに収集され、必要に応じて10分間ごとに呼び出すことができます。積雪地域ではアメダス観測所でも積雪深が観測されています。

高層気象観測所は気象庁や自衛隊が設置しています。気象庁の観測所では9時と21時に各気圧面の高度、風向、風速、気温、湿度が、3時と15時には風向・風速が観測されています。

他の省庁、地方自治体、日本道路公団、電力会社などでも独自の気象観測を行っています。

天気図

各地の天気、風向、風速、気圧などを地図上にプロットし、気圧が等しい線(等圧線)を描き、高気圧、低気圧、前線などの位置を示したものが天気図です。詳しい地上天気図には、雲量、視程、雨や雪などの強弱、過去の天気、気温、露点温度、上中下層の雲なども記号でプロットされ、海上では波の高さや向きも示されています。

高層の天気図として、850mb850mb気圧面(上空約1.5km1.5km)、700mb700mb気圧面(約3km3km)、500mb500mb気圧面(約5.5km5.5km)のものが毎日作成されています。

海上の波浪図として、現況解析図と、24時間および48時間先の予想図が作成されています。

高気圧は、まわりより気圧が高いところです。地球の自転で、北半球では高気圧から時計回りに風が吹き出します。それを補うように、上空からの下降気流があり、一般に高気圧の中では天気がよいです。低気圧は、まわりより気圧が低いところで、反時計回りに風が吹き込みます。低気圧の中心付近では上昇気流が起り雲が生じ、悪天候となります。前線は性質の異なる2つの気団が接するところです。前線に沿って上昇気流が生じ、天気がわるく、低気圧が発生します。

風速は気圧勾配に比例するので、等圧線の混み合ったところでは風速が強いです。

衛星資料

いろいろな波長の電磁波を使って、衛星から地球の気象が観測されています。可視光線では、日中の雲の分布や、晴天時の積雪域、海氷域などを知ることができます。

熱赤外線では水蒸気の吸収の少ない10~13μ\mum帯を使用しているので地表温度を、雲域では雲の頂上の温度を観測できます。雲の頂上の温度が特に低いところは上空まで発達した積乱雲が存在し、地上は強い降雨となっています。

将来、マイクロ波が利用されるようになると、降水強度や土壌水分なども推定される可能性があります。

気象通信

一般向けのラジオと気象専用の短波放送で気象官署のデータが放送されているほか、予報図類のファックスによる通信、漁業無線局からの通信、海上保安庁からの海上予報・警報の通信が行われています。災害が予想される事態にあっては防災基本法に基づき各地方気象台から地方自治体等防災機関へ伝達されます。

降水短時間予報

気象庁からの情報としては次のものがあります。

「レーダーエコー合成図」はレーダーエコーのディジタル値を合成したもので10kmメッシュで表現されます。

「レーダー・アメダス合成図」はレーダー1時間積算降水強度とアメダス雨量の実況値を用いた5kmメッシュの情報です。最適な雨量分布を求めるため、降水短時間予報も取り込まれるようになっています。

「降水3時間予想図」はレーダーやアメダスのデータを基に、雨域の移動や発達・衰弱を把握し、3時間先までの降水予報を5kmメッシュで1時間おきに行うものです。

警報と注意報

重大な災害を起す恐れのある気象状況に即して、警報が発表されます。また、注意を要する気象状況では注意報が発表されます。警報を出す基準値と、注意報を出す基準値は各都道府県・地域ごとに異なります。例えば、風については、普段から風が強い地域では基準値が大きいです。また、東京のような地域では少しの積雪で交通が麻痺するので、多雪地域よりも少ない積雪が基準値となります。

警報としては、以下のようなものがあります。

  • 暴風警報
  • 大雨警報
  • 暴風雪警報
  • 大雪警報

注意報としては、以下のようなものがあります。

  • 強風注意報
  • 大雨注意報
  • 風雪注意報
  • 大雪注意報
  • 乾燥注意報
  • 低温注意報
  • 雷注意報

霧と降水現象

霧と雲

水蒸気を含む空気塊が冷えると飽和になります。さらに冷えると過飽和な水蒸気は凝結し水となります。氷点下であれば昇華凝結して氷になります。

地表付近で小規模に起る凝結は霧として現れます。霧は視界を悪化させます。どこまで見えるかの距離は「視程」として観測されています。霧は水蒸気の補給源となる川、湖、海などで発生しやすいです。雨の後は水蒸気が多く霧が発生しやすいです。晴天夜の放射冷却で発生するものを放射霧と呼びます。内陸盆地では夜間の放射冷却が大きく、湿度の高い日に霧が発生します。

暖かい空気が冷たい海面や陸地を運ばれている途中で発生する霧を移流霧と呼びます。春から夏に、瀬戸内海や北海道・東北地方沖の太平洋で海霧が発生しやすいです。沿岸地方では海霧が内陸に侵入し、視程障害や日照不足をきたします。海霧は内陸に入ると下から暖められ、しだいに消えていきます。この霧の高さは500m500m程度です。

降水をもたらすような雲が生成されるには、空気塊が広く厚く冷やされることが必要で、一般には、空気塊が上昇し断熱的に膨張することで大規模に冷やされます。上昇速度の強さと性質およびその高度の違いにより、雲の型が違ってきます。対流性の雲(積雲や積乱雲など)と層状性の雲(層雲や高層雲など)があります。

降水時の気象

対流性の雲が発生するときの上昇気流の速さは数m/sm/s、ときには数十m/sm/sをこえます。降水はシャワー性で、短時間に狭い領域で起ります。層状性の雲が発生するのは広範囲の大気が水平収束するときで、上昇流は1 10cm/s1~10cm/s程度です。降水は、長い時間に広い範囲で起ります。

降水をもたらす気象擾乱は温帯低気圧、前線、収束線、熱帯低気圧、台風などです。ほかに、夏の内陸で日射による加熱で発生する雷や、冬の季節風が暖かい日本海を吹き渡ってくる際にも降水を伴います。

降水の微物理

雲粒の典型的な大きさは10μ\mumで個数濃度は1001000cm3100~1000cm^{-3}です。雨滴の典型的な大きさは半径1mmで個数濃度は100~1000m3^{-3}です。したがって、雨滴は100万個の雲粒が集まって1個ができているといえます。

雨には氷晶過程を経て降るものと、氷晶過程を経ずに降るものがあります。前者を氷晶雨、後者を暖かい雨といいます。

氷晶雨

雲の中の水滴は氷点下でも凍らないで過冷却であることが多いです。0~-40^\circCの大気中に過冷却水滴と氷粒子が共存していると、水の上と氷の上の飽和水蒸気圧の違いにより、氷粒子は昇華凝結により雪結晶として急速に成長していき、雲粒づき雪結晶になったり、あられになります。これらは落下速度の違いにより集合し、雪片を形成します。雪片が下層の0^\circCより高温の気層にきて、融けて地上に降るのが雨です。地上の気温が低いときは雪片は融けずに、降雪となります。雪と雨の限界は地上気温で2~3^\circCです。

暖かい雨

大気中に浮遊する微粒子のうち吸湿性エアロゾルは水蒸気が凝結する際の雲粒核となります。雲粒核を中心とした多数の雲粒で構成された雲の中では、それぞれの大きさに応じた速度で落下する途中で、衝突し併合していきます。熱帯や亜熱帯地方の海洋性気団の中で起りやすいです。

豪雨の原因

集中豪雨は、対流性の雲からの激しい降雨が局地的に数時間続くような大気の状態になったときに発生します。

ごく局地的な豪雨

上昇気流域と下降気流域とでつくる大きな循環系が定常的に数時間以上維持されることがあります。スーパーセル型の積乱雲がその例です。これは、雲の中での上昇気流の速度や、下層から供給される水蒸気量、上層と下層での風向風速の違い、さらに降水にともなってひき起こされる冷たくて強い下降気流などの相互関係で維持されます。

積乱雲群による豪雨

日本の豪雨の多くは、発達した積乱雲の群が全体として停滞することで起ります。梅雨末期に起りやすいです。この場合、30~60分の間隔で次々に移動してくる積乱雲が、ほぼ同じ領域に集中攻撃するかのように雨を降らせます。

地形性豪雨

台風が九州の南に停滞するようなときに下層で湿潤な南東風が吹き、地形による降雨の増幅作用によって豪雨の起る地域があります。九州南部や四国や紀伊半島などの山系の南東側斜面から海岸にかけての地域がその例です。地形性豪雨では強い雨が1日前後も続くことが多いです。

日変化

地表面から高度2km付近までの層を大気境界層と呼びます。大気境界層内の風は、大気の安定度、地表面の粗度、地形、気圧傾度の高度変化(温度風)などによって、さまざまな違いをみせます。

日中の陸地面は日射で加熱され、下層大気は不安定化し上下の混合が盛んで、風速は鉛直方向に一様化します。夜間は下層大気は安定で混合が弱く、地面付近は微風になるのに対し、高度200~1000mの気層で風速は日中より強くなることがあります。

地衡風と傾度風

大気境界層の上の自由大気中では、風は近似的に地衡風で表わされ、北(南)半球では低気圧を左(右)にみて等圧線に平行に吹きます。地衡風とは、定常で等圧線が平行で、摩擦がないときに吹く風で、その大きさは式(7.1)で表わされます。

VG=1ρfdpdn,f=2ωsinϕ(7.1)V_G = \frac{1}{\rho f} \frac{dp}{dn} , f = 2 \omega \sin \phi \tag{7.1}

ここに、ρ\rhoは空気密度、ω=7.29×105\omega = 7.29 \times 10^{-5} rad/s(地球自転の角速度)、ϕ\phiは緯度、dpdn\frac{dp}{dn}は気圧傾度、ffはコリオリ因子です。表-7.3は、dpdn=1\frac{dp}{dn} = 1 mb/100 km、ρ=1.15\rho = 1.15 kg/m3^3のときの地衡風の大きさと緯度との関係です。

等圧線が曲率をもつときは傾度風の式(7.2)で表わされます。

V_{GR} = \frac{V_G}{2} \left\\{ -1 + \left[ 1 + \left( \frac{4V_G}{rf} \right) \right]^{1/2} \right\\} (7.2)

ここに、rrは等圧線の曲率半径で、低気圧性のときr>0r > 0、高気圧性のときr<0r < 0です。

表-7.3 地衡風の大きさと緯度との関係 (Geostrophic wind speed versus latitude)

緯度(^\circ)2030406090
地衡風速(m/s)17.411.99.66.96.0

地上風

地上から高度100m付近までの風速鉛直分布を表わす式として「べき法則」と「対数則」があります。前者は全層の概略的な分布を簡単に表わす便宜的なものと考えてよいでしょう。

(1) 大気の安定度が中立に近いとき 気温の鉛直勾配が小さいときの地上風速は上空の風速の50~70%(海上)、または20~50%(陸上)です。「対数則」によれば、地上から高度zzにおける風速UU

U=uklnzdz0U = \frac{u_*}{k} \ln \frac{z - d}{z_0} (7.3)

ここに、uu_*は摩擦速度、k(=0.4)k (= 0.4)はカルマン定数、z0z_0は地表面の粗度、ddは見かけの地表面を修正するゼロ面変位です。z0z_0は地物の幾何学的な高さhhとその配列の状態に依存します。代表的な地表面におけるz0z_0の概略値を表-7.4に示しました。

表-7.4 代表的な地表面の粗度 (Roughness parameters for various ground surfaces)

地表面状態大都市森林田園集落畑や草地海氷や積雪面水面
粗度(cm)100~50030~10020~501~300.01~10.001~0.1

地物がまばらな場合はd=0d = 0ですが、畑作地などではd=0.7hd = 0.7h程度、地物が非常に密になるとd=hd = hに漸近します。

係数u/ku_*/kは地衡風速VGV_Gと粗度z0z_0と緯度ϕ\phiの関数(ロスビー数相似則)で表わされ、中緯度では、z0=100z_0 = 100 cmでu/k=0.125VGu_*/k = 0.125V_Gz0=1z_0 = 1 cmで0.082VG0.082V_Gz0=0.01z_0 = 0.01 cmで0.065VG0.065V_G程度です。

地上風は等圧線を横切って高気圧側から低気圧側に向かって吹きます。その角度α\alphaは上記と同じパラメータ(VGV_Gz0z_0ϕ\phi)に依存し、海上で10~20^\circ、陸上で30~40^\circです。

(2) 大気の安定度が安定および不安定のとき 大気が安定のときは、係数u/ku_*/kは中立のときの半分以下になります。風速はごく地表面付近で対数則に従いますが、それより上空では対数則の延長線よりも大きくなります。α\alphaは中立のときより大きいです。

不安定のとき、係数u/ku_*/kは大きいです。風速はごく地表面付近で対数則に従いますが、それより上空では等風速に近づきます。また、α\alphaは小さいです。

(3) 温度風の影響 水平方向に気温差があるときは、気圧傾度は高度によって変化し、地面摩擦がなくても風ベクトルは高度とともに変ります。これを温度風といいます。南北の温度差が大きい日本付近では偏西風が高さとともに増加します。温度風の大きさは、通常、高さ1kmにつき5~10m/sです。

地上風は、地上の地衡風ベクトルと高度1~2km付近の地衡風ベクトルの平均の方向へ引きずられるように吹き、前項で示した大きさの±50%変化することがあります。

地上風の乱流強度

風の乱れの強さは大気の安定度によるほか、地表面の粗度と地表面からの高さに依存します。安定度が中立に近いとき、粗度z0z_0の増加に対して平均風速は小さくなり、最大瞬間風速VmaxV_{max}も小さくなります。z0=1z_0 = 1 cmではVmax/VG=0.80.9V_{max}/V_G = 0.8 \sim 0.9z0=1z_0 = 1 mではVmax/VG=0.50.7V_{max}/V_G = 0.5 \sim 0.7程度です。しかし、不安定のときは、地表面粗度への依存性は小さくなり、Vmax/VG=0.91.2V_{max}/V_G = 0.9 \sim 1.2程度となります。

乱れの強さの標準偏差(風向方向σu\sigma_u、それに直角な水平成分σv\sigma_v、鉛直成分σw\sigma_w)は、摩擦速度uu_*と比例関係にあります。観測時間が10~30分では、中立のときσu/u=2.7\sigma_u/u_* = 2.7σv/u=2.0\sigma_v/u_* = 2.0σw/u=1.2\sigma_w/u_* = 1.2程度です。不安定時の乱れの強さは高度とともに大きくなります。

台風

台風域での気圧分布はほぼ同心円形をなし、台風中心からrrの距離(座標: xxyy)での気圧は近似的に藤田の式

P=PΔP[1+(rr0)2]1/2P = P_{\infty} - \Delta P \left[ 1 + \left( \frac{r}{r_0} \right)^2 \right]^{-1/2} (7.4)

で表わされます。ここにPP_{\infty}は台風中心から遠く離れた地点での気圧、ΔP\Delta Pは台風中心での気圧低下量、r0(=30100r_0 (= 30 \sim 100 km)は風速が最大V0(2050V_0 (20 \sim 50 m/s)となる台風中心からの距離です。

速さCCで移動中の台風周辺の海上風速は、静止台風の風速分布VtV_tと台風移動に引きずられる風速FFの和で表わされます。添字xxyyでそれぞれ東と北の成分に分ければ[1]

静止台風の風速 Vt=V0(4rr0)(1+rr0)2V_t = V_0 \left( \frac{4r}{r_0} \right) \left( 1 + \frac{r}{r_0} \right)^{-2} (7.5)

風速のxx成分 Vx=Vtsin(α+β)+FxV_x = -V_t \sin (\alpha + \beta) + F_x (7.6)

風速のyy成分 Vy=Vtcos(α+β)+FyV_y = V_t \cos (\alpha + \beta) + F_y (7.7)

FFxx成分 Fx=0.8Cxexp(0.314rr0)F_x = 0.8 C_x \exp \left( -0.314 \frac{r}{r_0} \right) (7.8)

FFyy成分 Fy=0.8Cyexp(0.314rr0)F_y = 0.8 C_y \exp \left( -0.314 \frac{r}{r_0} \right) (7.9)

ただしβ\betaはその地点と台風中心を結ぶ線がxx軸となす角度です。

気温と地温

地上から高度十数km以下の対流圏内では、気温は平均的に、高さ1kmにつき6.5^\circCの割合で低くなっています。しかし、各時刻の気温は大気運動に伴う移流熱と、水蒸気の凝結・蒸発に伴う潜熱、さらに日射の吸収と大気放射の吸収・射出によって変化します。

日変化

晴天日における、地表面近くの気温および地中温度の日変化の振幅は、陸地面で10^\circC程度であるのに対し、海面や湖面では1^\circC以下のことが多いです。

海水や湖水は太陽光を透過しやすく、深さ10mになっても1~20%のエネルギーを透過します。さらに鉛直混合が盛んなため、日変化は数mの深さまで、強風時には20m以深まで及びます。

大気中では対流が起りやすく、日変化は数百mから2~3kmの気層まで及びます。

陸地面は太陽光の大部分を吸収し、地表面付近の薄い地層だけが昇温し、深さ30cm以深では日変化はほとんどありません。

深さzzにおける地中温度の変化は式(7.10)から推定することができます。いま、地表面温度TsT_sが振幅A0A_0、周期τ\tauの余弦関数で変化するとき(Ts=A0cosωtT_s = A_0 \cos \omega tω=2π/τ\omega = 2\pi/\taut=0t = 0TsT_sが最高値を示す時刻)、

地温 T=Acos(ωtϵ)T = A \cos (\omega t - \epsilon)

振幅 A=A0exp(zω2a)A = A_0 \exp \left( -z \sqrt{\frac{\omega}{2a}} \right)

位相のおくれ ϵ=zω2a\epsilon = z \sqrt{\frac{\omega}{2a}}

ここに、a=λ/cρa = \lambda/c\rhoは地中の温度拡散係数、λ\lambdaは熱伝導率、ccρ\rhoは比熱と密度です。それらの例を表-7.5に掲げました。熱物理係数は土壌水分量に強く依存します。

表-7.5 代表的な土壌その他の熱物理係数の概略値 (Thermal constants of soils, snows and ice)

地面の状態熱容量cρc\rho熱伝導率λ\lambdaλcρ\sqrt{\frac{\lambda}{c\rho}}
(J\cdotcm3^{-3}\cdotK1^{-1})(W\cdotcm1^{-1}\cdotK1^{-1})(cm\cdots1/2^{-1/2})
乾燥砂地・粘土1.30.0030.0039
湿り砂地・粘土3.00.020.06
新しい軽い雪-0.0002-
古い雪-0.0032-
氷 (0^\circC)-0.0432-

日変化の場合ω=2π/(24×60×60)\omega = 2\pi/(24 \times 60 \times 60)です。ω\omegaを変えれば周期1年の年変化にあてはめることもできます。

放射冷却

地表面は夜になると、入る大気放射量よりも出る熱放射量が多くなるので冷却を始めます。このとき風があると、上の方の冷却していない暖かい空気が降りてきて顕熱を地面に与え、地面冷却は弱められます。地衡風速が5~10m/s以下の弱いとき、顕熱輸送量は放射収支量に比べて無視できます。このようなときの夜間冷却を放射冷却といいます。

雲がなく大気が乾燥した夜は大気放射量が少ないので、冷却は大きくなります。夕方の地表面温度をT0T_0、放射冷却で下がりうる最低温度の極限値をTET_Eとしたとき「可能な最大冷却量」T0TET_0 - T_Eは近似的に次式で与えられます。

σT04L04σT03(T0TE)\sigma T_0^4 - L_0 \sim 4 \sigma T_0^3 \left( T_0 - T_E \right) (7.11)

ここに、L0L_0は夕方の下向きの大気放射量です。

実際の地表層は土壌や水分から成り、熱容量(cρ)(c\rho)があり、さらに熱伝導率(λ)(\lambda)で深部から地熱が伝わり、急には「可能な最大冷却量」までは冷えません。夕方からの時間ttにおける地表面温度をTTとすれば、放射冷却量は

T0T=(T0TE)G(x)T_0 - T = \left( T_0 - T_E \right) G(x) (7.12)

ただし

x=4σT03tcρλx = \frac{4 \sigma T_0^3 t}{\sqrt{c\rho\lambda}}

G(x)=2π1/2x1/2x+(4/3)π1/2x3/2(1/2)x2+G(x) = 2\pi^{-1/2} x^{1/2} - x + (4/3) \pi^{-1/2} x^{3/2} - (1/2) x^2 + \cdots (7.13)

G(0.2)=0.356G(0.2) = 0.356G(1)=0.573G(1) = 0.573G(5)=0.767G(5) = 0.767G(30)=0.899G(30) = 0.899となり、最終的に1に収束します。G(x)G(x)xxの小さい期間では(実際的には時間ttが2~3時間までの範囲では)、xxの平方根に比例して大きくなります。

一般の冷却量は「可能な最大冷却量」の50%前後のことが多いです。しかし、数日以上も晴天乾燥日が続き土壌が乾燥すると、土壌のcρλc\rho\lambdaが小さくなり、冷却量は「可能な最大冷却量」の7080%に、乾燥新雪が積もった静かな晴天夜は90%程度になります。深い盆地では厚い冷気層が生じ、これが下向きの大気放射量を減少させるため、盆地底の放射冷却量は上記の式で計算されるよりも23^\circC大きいです。

日中の昇温

風が弱いときの日中の地表面昇温量は、入射する放射量RRに比例して大きくなります。昇温の速さは、土壌の熱容量と熱伝導率(cρc\rhoλ\lambda)が小さいほど大きいです。つまり、夜間冷却が激しい日は、日中の昇温量も大きくなります。

海岸近くでは、海風の影響で日中の気温上昇は内陸ほど大きくなりません。

日射と大気放射

太陽光のスペクトルは波長0.5μ\mum付近にピークをもち、0.36μ\mum(紫)0.75μ\mum(赤)の可視光線があり、0.153μ\mum範囲にその99%のエネルギーが含まれています。

一方、地球・大気系の温度は300K前後であるから、地表面や大気が出す放射は波長10μ\mum付近を中心とし、大部分のエネルギーは3~100μ\mumの範囲に含まれます。これを長波放射、赤外放射、熱放射、または大気放射と呼びます。

日射

(1) 大気上端における日射量 地球と太陽が平均距離にあるとき、大気の上端において、太陽光線に垂直な単位面積に単位時間に入射するエネルギーI0=1360±7I_0 = 1360 \pm 7 W/m2^2を「太陽定数」といいます。水平な単位面積に入射するエネルギーを「水平面日射量」といい、S0=I0cosθS_0 = I_0 \cos \thetaで表わされます。ただしθ\thetaは天頂と太陽のなす角度です。

大気上端における日平均水平面日射量は、

S0=I0π(d0d)2(Hsinϕsinδ+cosϕcosδsinH)\overline{S_0} = \frac{I_0}{\pi} \left( \frac{d_0}{d} \right)^2 (H \sin \phi \sin \delta + \cos \phi \cos \delta \sin H) (7.14)

ここに、ϕ\phiは緯度、δ\deltaは太陽赤緯、H=cos1(tanϕtanδ)H = \cos^{-1} (-\tan \phi \tan \delta)は半日の長さを表わす時角(rad)、ddd0d_0は太陽地球間の距離とその平均値です。

(2) 日射の減衰 太陽光線は空気分子(窒素78%と酸素21%その他)および浮遊する微粒子(雲を含むエアロゾル)によって散乱され、また、水蒸気・酸素分子・二酸化炭素などの吸収によって減衰します。

空気分子による散乱はレイリーの理論に従い、光の波長の4乗に逆比例して散乱され、0.5μ\mumより短波長で減衰が大きいです。エアロゾルによる散乱はミーの理論に従い、前方散乱(光の進行方向への散乱)が強いです。大粒子によるミー散乱は波長にあまり依存しなくなり、あらゆる可視光が散乱されます。直達光は太陽光そのものの強さ、散乱光は空の明るさ、雲があれば雲の明るさです。

水蒸気は太陽光の0.7μ\mumより長波長を選択的に吸収します。水蒸気、二酸化炭素、酸素で直達光が吸収される割合は、太陽の光路上の水蒸気量が、水柱換算で0.1cmのとき6%、1cmのとき10%、10cmのとき19%です。

(3) 地上における日平均日射量の実験式 日本各地の気象官署では水平面日射量が日射計で観測されています。アメダス観測所では日照計で日照時間が観測されています。日照時間から日射量を推定する実験式が多数提案されています。s\overline{s}を地上における水平面日射量の日平均値、S0\overline{S_0}を大気上端における値とすれば

sS0=a+bNNm0\frac{\overline{s}}{\overline{S_0}} = a + b \frac{N}{N_{m0}} (7.15)

a=0.140.18a = 0.14 \sim 0.18b=0.530.56b = 0.53 \sim 0.56(ジョルダン式、または太陽電池式日照計の場合)、NNは日照時間、Nm0N_{m0}は可照時間です。

日照計の種類によって受感の閾値が異なり、aabbが変るので、使用に際して注意を要します。

雲量nn (0n10 \leq n \leq 1)を用いる場合は、

sS0=c+d(1tn)\frac{\overline{s}}{\overline{S_0}} = c + d(1 - tn) (7.16)

c=0.22c = 0.22d=0.55d = 0.55ttは雲の厚さを表わすパラメータで平均的に1.2、下層雲が多い日はt=1t = 1、上層雲が多い日はt=1.6t = 1.6、降水がある日はt=0.8t = 0.8です。

大気放射

(1) 吸収・射出の主要気体 大気中には容積比で0.5%前後の水蒸気、約0.03%の二酸化炭素、微量のオゾンなどがあります。これら少量の気体が、大気全層としては、黒体放射の6090%相当の熱赤外放射を出すとともに、吸収を行います。波長89μ\mumおよび10~13μ\mum付近は吸収・射出の少ない領域で、透過がよいです。この波長を使って人工衛星から地球の表面温度や、雲頂温度を観測することができます。

(2) 地上における大気放射量の実験式 気象官署の定常観測では、大気放射量は観測されていません。地表面における大気放射量は、地上から上空までの気温と水蒸気量の鉛直分布および雲分布の関数です。放射図を用いる方法などで計算することができます。

晴天時の大気放射量LLは地上の日平均気温TT (K)と日平均水蒸気圧ee (mb)、または可降水量ww (cm)を用いて、式(7.17)または(7.18)から推定することができます。

L=(0.51+0.066e1/2)σT4L = (0.51 + 0.066e^{1/2}) \sigma T^4 (7.17)

L=(0.73+0.20x+0.06x2)σT4L = (0.73 + 0.20x + 0.06x^2) \sigma T^4 (7.18)

ここに、x=log10wx = \log_{10} wσ=5.670×108\sigma = 5.670 \times 10^{-8} W\cdotm2^{-2} \cdotK4^{-4}: ステファン・ボルツマン定数です。可降水量とは、鉛直気柱内に含まれる水蒸気量を水柱に換算したときの厚さです。

降水時のように、下層雲で全天が覆われたような場合は、上式の( )内を0.90.95とおいて、また上層雲の場合は0.770.83とおいて計算します。

地表面の熱収支

エネルギー配分の原理

地表面に入射し、吸収される放射エネルギーは

R=(1γ)S+LR = (1 - \gamma)S + L (7.19)

ここに、γ\gammaは地表面のアルベード、SSは水平面日射量、LLは下向きの大気放射量.地表面は大気放射(熱赤外放射)に対して近似的に黒体とみなしてよい.RRは地表面で、熱赤外放射σTs4\sigma T_s^4TsT_sは地表面温度)や顕熱HH、蒸発の潜熱lElE、および地中伝導熱GGに変換される.GGは地中温度を、水面の場合は水温を上昇させる.GGは日中と夜間でプラスマイナスとなり、日平均状態を想定すれば微小項となるので、Q=RGQ = R - Gと定義すれば、熱収支式は

QσTs4=(σT4σTs4)+H+lEQ - \sigma T_s^4 = (\sigma T^4 - \sigma T_s^4) + H + lE (7.20)

4σT3(TsT)+H+lE\cong 4 \sigma T^3 (T_s - T) + H + lE (7.21)

ここに、TTは地表面から十分に離れた高さ(約2m、対象とする面の広さによる)の気温である.左辺を有効入力放射量とよび、外部条件(与えられる条件)とみなすことができる.右辺はその変換成分で、各項の大きさは風速や湿度などの大気条件、および地表面条件(粗度や土壌の熱的性質など)によって決る.なお、RσTs4R - \sigma T_s^4RσT4R - \sigma T^4(正味放射量、純放射量)と異なることに注意を要する.

一般に、蒸発量EEは次の式で表わされる.

lEQσTs4=1T+[1+q+(1h)]\frac{lE}{Q - \sigma T_s^4} = \frac{1}{T^+} \left[ 1 + q^+ (1 - h) \right] (7.22)

ただし

T+=1q+(iΔ/r)(1h)1+i+4lΔ/rT^+ = 1 - \frac{q^+ (i \Delta/r) (1 - h)}{1 + i + 4 l \Delta / r} (7.23)

=(ri+4σT3QσTs4)(qSAT(T)qqSAT(T))1= \left( \frac{r}{i} + \frac{4 \sigma T^3}{Q - \sigma T_s^4} \right) \left( \frac{q_{SAT}(T) - q}{q_{SAT}(T)} \right)^{-1} (7.24)

J=4σT3QσTs4J = \frac{4 \sigma T^3}{Q - \sigma T_s^4}: 地表面の無次元交換係数 (7.25)

ここに、hhは相対湿度(0h10 \leq h \leq 1)、i=kH/kEi = k_H/k_Eは地表面の蒸発散の係数(0i10 \leq i \leq 1)、kH=CHUk_H = C_H UkE=CEUk_E = C_E Uは地表面の交換係数、r=cp/lr = c_p/lΔ=dqSAT/dT\Delta = dq_{SAT}/dTqSAT(T)q_{SAT}(T)は気温TTにおける飽和比湿、cpc_pρ\rhoは空気の定圧比熱と密度、llは単位質量の水の気化の潜熱である.JJは、微風~強風、いろいろな粗度の面を含んで、0.3<J<100.3 < J < 10である.地表面が完全に湿っているときi=1i = 1、乾いているときi=0i = 0、森林や草地で、0<i<0.50 < i < 0.5程度である.CHC_HCEC_Eは顕熱と蒸発のバルク係数である.水面ではCHCE0.0016C_H \cong C_E \cong 0.0016(ただし観測高度が2.5mのとき)、平坦地の積雪面でCHCE0.002C_H \cong C_E \cong 0.002(高度が1mのとき)である.

平衡蒸発量

十分に湿った地面の蒸発散の指標として平衡蒸発量EEQE_{EQ}が用いられる.水面蒸発量は平均的にはEEQE_{EQ}の11.6倍、水の供給がよい草地の蒸発散量はEEQE_{EQ}の0.81.5倍程度である.EEQE_{EQ}は、水面または雪氷面のように地表面が水蒸気飽和(i=1i = 1)で、大気湿度も飽和(h=1h = 1)で、強風の極限(uu \rightarrow \infty)における蒸発量として定義されたものである.そのときの顕熱HEQH_{EQ}と蒸発量EEQE_{EQ}とボーエン比BEQB_{EQ}

HEQ=4rr+4(QσTs4)H_{EQ} = \frac{4 r}{r + 4} (Q - \sigma T_s^4) (7.26)

EEQ=1l4r+4(QσTs4)E_{EQ} = \frac{1}{l} \frac{4}{r + 4} (Q - \sigma T_s^4) (7.27)

BEQ=HEQlEEQ=rB_{EQ} = \frac{H_{EQ}}{l E_{EQ}} = r (7.28)

上式によれば、ボーエン比が気温上昇とともに小さくなるのは、高温時の水面に入射した放射量の大部分は蒸発のために使用されることを意味している.

表-7.6 熱収支量に関する諸数値表(無次元量) (Some properties of water vapour)

気温TT(K)Δ/r\Delta/rJ/(r+Δ)J/(r + \Delta)(r+Δ)/r(r + \Delta)/r
253.20.16840.14411.17
273.20.67810.40411.68
293.22.17050.68463.17
313.25.78180.85256.78

湖面蒸発量

蒸発量は、平均水深が5mより浅い湖では夏に多く、冬に少ないが、平均水深が40m程度以上の深い湖では夏に少なく、秋と冬に多い.年間蒸発量は北海道で400500mm、関東以西の暖地では7001000mmである.

融雪

気温が0^\circC以下での融雪は、日射および大気放射量に依存する.雪面のアルベードγ\gamma(汚れ)が融雪量を左右する.気温が高いときは、風速と気温と湿度が融雪量を支配する.降雨時に融雪が大きくなるのは、雨が運ぶ熱によるのではない.一般に降雨時は湿度が高く、空気中の水蒸気が雪面に凝結し、その潜熱が雪を融かす.

気温が0^\circC以上で融雪が連続的に生じているときは積雪は全層0^\circCとなる.そのときの融雪エネルギーは

M=(RσTs4)+cpρCHU(TTs)+lρCEU(qqs)M = (R - \sigma T_s^4) + c_p \rho C_H U (T - T_s) + l \rho C_E U (q - q_s) (7.29)

=(RσTs4)+cpρCHU(1+Δr)(TTs)qSAT(T)r(1h)= (R - \sigma T_s^4) + c_p \rho C_H U \left( 1 + \frac{\Delta}{r} \right) (T - T_s) \frac{q_{SAT}(T)}{r} (1 - h) (7.30)

ここに、qSAT(T)q_{SAT}(T)は気温TTにおける飽和比湿、{}\{ \}内は気温の関数である.MMを氷の融解の潜熱lFl_Fで割算した値が融雪量である.M=100M = 100 W/m2^2のとき、融雪量は、水の厚さに換算して25.9mm/日となる.

ここにTs=273.2T_s = 273.2 K、σTs4=316\sigma T_s^4 = 316 W/m2^2UUは風速(m/s)、hh = 相対湿度(0h10 \leq h \leq 1)、CHCE0.002C_H \cong C_E \cong 0.002UUTTの観測高度が1mのとき)、r=cp/lr = c_p/lcpρ=1300c_p \rho = 1300 J\cdotK1^{-1} \cdotm3^{-3}は空気の熱容量、また

Δ=qSAT(T)qSAT(Ts)TTs\Delta = \frac{q_{SAT}(T) - q_{SAT}(T_s)}{T - T_s} (7.31)

例として、U=3U = 3 m/s、R=σTs4R = \sigma T_s^4(密な森林内や、厚い雲が低く覆う日に相当)、h=1h = 1(湿度100%)またはh=0.8h = 0.8(湿度80%)の場合について、融雪量(水の厚さに換算)を式(7.31)から計算すると次の近似式が得られる.

h=1h = 1 融雪量(mm/日) =5.2(TTs)= 5.2(T - T_s)

h=0.8h = 0.8 融雪量(mm/日) =4.8(TTs)3.8= 4.8(T - T_s) - 3.8

他の場合の計算に必要な諸数値を表-7.7に掲げた.

表-7.7 A1=(1+Δ/r)(TTs)A_1 = (1 + \Delta/r) (T - T_s)A2=qSAT(T)/rA_2 = q_{SAT}(T)/rσT4σTs4\sigma T^4 - \sigma T_s^4の表、ただしTs=273.2T_s = 273.2 K (Some values in heat balance equation)

TTsT - T_s (^\circC)0246810
A1A_1 (^\circC)0.003.366.8910.5614.4018.40
A2A_2 (^\circC)9.3510.7712.4014.2216.2918.62
σT4σTs4\sigma T^4 - \sigma T_s^4 (W/m2^2)0.09.418.928.738.748.9