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道路の概念

道路の意義

一般に、「道路」とは、広く一般の人々が通行するための具体的な場所を指します。しかし、「道路法上の道路」とは、法的な規定に基づいて一般の交通に供される特定の種類の道路を指します。これにはトンネル、橋、渡船施設、道路用エレベーターなどが含まれ、これらは道路と一体となり、その機能を果たす施設や工作物、および道路に附属して設けられたものを指します(道路法 第 2 条)。

道路法上の道路以外の道路の種類

道路法の道路以外の道路としては、

  1. 道路運送法による自動車道(専用自動車道、一般自動車道)
  2. 土地改良法による農業用道路の農道
  3. 森林法等による林道
  4. 港湾法による道路
  5. 漁港法による道路、
  6. 港湾法による臨港道路
  7. 自然公園法による道路
  8. 都市公園法による園路
  9. 鉱業法による鉱山道路
  10. 里道
  11. 私道等

があります。

Q: 道路法上の道路とは何か。

A: 道路法上の道路とは、道路法の対象となり、その法の規定に基づいて路線が指定または認定され、同法に基づき新設、改築、維持、修繕、災害復旧などが行われる道路を指します。
簡単に言えば、道路法の定めた基準に基づいて管理が行われ、法的な取り決めが適用される道路のことを指します。

Q: 里道とは何か。

A: 里道とは、道路法の適用のないいわゆる認定外道路(特に何ら管理法をもたない)の 1 つです。明治 9 年太政官達 60 号により、道路について、「国道」、「県道」、「里道」の区別がなされ、旧道路法制定後、国道と県道についてはほとんどが道路法の道路に認定されましたが、里道についてはかなり多くの道路が認定されませんでした。
里道はその敷地が国有地であるものについては、公共用財産として国有財産法第 9 条 3 項国有財産法施行令 第 6 条 によりその事務の一部は、都道府県又は市町村が行うこととすることができます。また、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(平成 11 年法律第 87 号)によって国有財産特別措置法同法 第 5 条第 1 項五に譲与のための根拠規定が設けられています。

私権の制限

道路法上の道路の性格

道路法上の道路は、いわゆる「公物」の性格を有しています。すなわち、道路法上の道路は、国、地方公共団体等の「行政主体」によって、直接に一般交通の用という「公の目的」に供される「個々の有体物」(物的施設)です。

私権の制限の意義

道路は、一般交通の用に供される物的施設(公物)であり、その目的を達成するために必要な限度で、道路を構成する敷地、支壁その他の物件について一定の私権の行使が制限されます。

私権の制限の内容

道路を構成する敷地、支壁その他の物件については、所有権の移転または抵当権の設定若しくは移転以外の私権を行使することはできません(道路法第4条)。

したがって、道路の敷地を道路管理者以外の者が所有することは、可能です。

私権の制限を受ける範囲

平面的には、道路法 18 条 1 項に基づいて道路管理者が行う道路区域の決定によって定まります。立体的には、上下にわたり、基本的には無限です。

私権の制限の働く時期

道路は、道路管理者による土地についての権原の取得、道路新設工事、供用の開始によって成立し、原則として私権の制限はこの段階を始期とします。

ただし、権原の取得が済めば、供用の開始がなされるのは時日の問題ですので、道路区域の決定がなされその土地についての権原を道路管理者が取得した段階においても私権の制限の効果は及びます(道路法 第 91 条第 2 項 による 道路法第4条の準用)。

私権の制限の終期は、当然のこととして道路としての供用廃止の日または道路の区域から除外される日です。ただし、供用の廃止や区域変更後の道路管理者による不用物件管理期間についても私権の制限の効果は存続します(道路法 第91条第2項による道路法第4条の準用)。

私権の制限の不適用

既にある「他の工作物」について道路の路線が認定された場合(他の工作物が先に設置されている場合に限られます。)、例えばダムの一部を道路の区域とした場合等には、その区域については私権の行使は制限されず、「他の工作物」についての賃貸借契約等が有効に成立します(道路法 第 98 条)。

なお、この場合の「他の工作物」とは、兼用工作物(道路法 第 20 条第 1 項)となり得るような工作物(堤防、ダム、鉄道等)に限られています。

道路管理者による権原の取得と私権の制限の関係

道路を建設する場合、道路管理者は当該道路を構成する土地について何らかの権原の取得が必要です。ここで言う権原とは、「土地を道路法上の道路の敷地として使用することを正当にする法律上の根拠(原因)」です。

権原取得の態様については、所有権または地上権を取得することを原則としますが、土地所有者からの貸借、使用貸借による権原の設定も可能です。ただし、道路はその性格上、継続して半永久的に公共の用に供されるものですから、道路管理者は第三者に対抗できるような権原(所有権や地上権)の取得に努めるべきです。

なお、私権の行使の制限自体は道路敷地が公の用に供された結果発生するものであり、その権原に根拠があるわけではありません。

Q: 所有権を取得していない道路敷地(所有権を取得したが、移転登記を完了していない場合を含む。)の使用料支払の請求が、現在の登記簿上の名義人から行われたが、これに応ずる必要はあるか。

A: 道路管理者が取得している権原のいかんによって異なります。

  1. 道路管理者が地上権を取得しており、当該地上権設定契約において賃料を支払う旨の定めをしていない場合には、使用料を支払う必要はありません。
  2. 道路管理者が賃借権を取得している場合には、使用料(賃料)を支払う必要があります。
  3. 道路管理者が使用貸借による権利を取得している場合には、使用料を支払う必要はありません。
  4. 道路管理者が地主から寄附を受けて道路を設置した場合であって、まだ所有権の移転登記を済ませていない場合には、使用料を支払う必要はないことは当然です。このような場合、道路管理者は、すみやかに所有権移転登記を済ませる必要があります。
  5. 道路管理者が当該土地の寄附を受けて道路を設置したことは確実ですが、戦災等のため「寄附願」、「寄附採納書」等の書類が焼失してしまい、立証の方法がない場合には、道路管理者は、この間の事情を相手方に納得してもらった上で、使用料を支払わないことを確認する必要があります。

Q: 旧道路法当時より道路となっている土地で、登記簿上の名義が第三者にあり、使用承諾等を証するものがないまま、今日まで道路として使用してきたものにつき、第三者より地代の請求があった場合、道路管理者に支払の義務はあるか。

A: 戦前においても、無権原で土地を道路として使用することはあり得ません。一般的に設問のような場合は、土地所有者の寄附により、あるいは、土地所有者からの買収により、道路としたものですが、たまたま所有権の移転登記をまだ完了していないにすぎないと考えられます。したがって、道路管理者としては、この趣旨を第三者に十分納得してもらう必要がありますが、地代の支払請求に応じる必要はありません。第三者を納得させる手段としては、当該道路に係る路線の指定若しくは認定、区域の決定又は供用の開始についての公示の記録の指示により、当該道路はその当時から有効に道路法上の道路として成立したものであることを示すこと、その当時の事情に詳しい者の証言等が有効です。

Q: 道路管理者が所有権を取得して供用を開始したが、登記をしない間に、前所有者が第三者に二重売買し、第三者が登記を完了した場合には、道路管理者は、当該第三者の引渡請求又は損害賠償請求に応ずる必要があるか。

A: 当該第三者は、道路法の規定(道路法第4条)に基づき私権の行使を制限された状態において所有権を取得することができるにすぎませんから、道路管理者は、引渡請求または損害賠償請求に応じる必要はありません(最高判昭 44.12.4)。

Q: 道路管理者は、道路敷地を時効取得することができるか。私人の場合はどうか。

A: 道路管理者の時効取得は認められます(名古屋地判昭 43.8.17)。黙示的に道路としての公用が廃止されたとみることができる土地所有権については、その建物を占有することにより私人の時効取得は可能です(金沢地判昭 52.5.13)。

道路の範囲

道路法の規定に基づき、各種の管理・規制が行われる範囲が道路の範囲です。

道路の範囲は、単に一般交通の用に供される路面の部分のみならず、路肩、法敷や「道路と一体となって道路の効用を全うする施設又は工作物(トンネル、橋、渡船施設、道路用エレベーター等)」、「道路の附属物で当該道路に附属して設けられるもの」を含みます(道路法 第2条)。

なお、沿道区域(道路法 第44条)にも道路法の規制は及びますが、道路の範囲には含まれません。

道路の範囲と道路管理権

道路の範囲に含まれるものについては、道路管理権が及びます。道路管理権とは、道路管理者が一般交通の用に供する施設として道路本来の機能を発揮させるためにする積極的、消極的作用の一切を行う権能をいいます。

道路の種類

道路法上の道路の種類

道路法上の道路は、「高速自動車国道」、「一般国道」、「都道府県道」及び「市町村道」の4種類に区別されます(道路法 第3条)。

道路法においては、この道路の種類に応じて道路管理者、費用の負担等の取り扱いに相違があります。

このうち、高速自動車国道と一般国道は国の営造物で、都道府県道は都道府県の営造物で、市町村道は市町村の営造物です。

高速自動車国道

高速自動車国道とは、自動車の高速交通の用に供する道路で、全国的な自動車交通網の枢要部分を構成し、かつ、政治・経済・文化上特に重要な地域を連絡するものや、国の利害に重大な関係を有するものです(高速自動車国道法 第4条)。

高速自動車国道は、その性格により特殊な規定が必要であり、路線の指定、整備計画、管理、構造、保全等については、高速自動車国道法の定めるところですが、同法に特別の定めがない場合には、道路法の規定が適用されます(道路法 第3条の2)。

高速自動車国道は、以下の2つのうちのいずれかに該当するものでなければなりません

高速自動車国道とは、自動車の高速交通の用に供する道路で、全国的な自動車交通網の枢要部分を構成し、かつ、政治・経済・文化上特に重要な地域を連絡するものその他国の利害に特に重大な関係を有するもので、次の各号に掲げるものをいう。

  1. 国土開発幹線自動車道の予定路線のうちから政令でその路線を指定したもの
  2. 前条第三項の規定により告示された予定路線のうちから政令でその路線を指定したもの

高速自動車国道の予定路線は、国土開発幹線自動車道建設会議の議、内閣の議を経て定められます(高速自動車国道法 第3条第1項・第2項)。

一般国道

一般国道とは、高速自動車国道と合わせて全国的な幹線道路網を構成し、かつ、道路法 第5条に規定する一定の要件に該当する道路で、政令でその路線を指定したものです。

都道府県道

都道府県道とは、地方的な幹線道路網を構成し、かつ、道路法 第7条の要件に該当する道路で、都道府県知事がその路線を認定したものです。

市町村道

市町村道とは、市町村の区域内に存在する道路で、市町村長がその路線を認定したものです。

Q: 主要地方道、開発道路等の名称は、道路法上の道路の種類であるか。

A: これらの道路は、それぞれ、道路法 第56条により国土交通大臣が指定した主要な都道府県道または市道、道路法 第88条及び施行令 32 条により国土交通大臣が指定した北海道の区域内の道道または市町村道であり、道路法上の道路(道路法の適用を受けるもの)ではありますが、その名称は、法律上定義された道路の種類ではありません。これらの道路は、国庫補助などにおいて特別の扱いを受けることとなっています。

Q: 「自動車専用道路」は、道路の種類であるか。

A: 道路法にいう道路の種類ではなく、道路法 第48条の2 第1項または第2項の規定により道路管理者の指定を受けた道路または道路の部分であり、道路の機能上の区分です。

Q: 国土交通大臣に協議をせずに都道府県知事が認定した都道府県道は、道路法上の道路であるか。

A: 道路法 第74条では、都道府県知事は、都道府県道の路線を認定し、変更し、または廃止しようとする場合には、国土交通大臣に協議しなければならない旨を規定しています。この協議は、路線認定の効力発生要件であり、これを欠く場合、認定は無効です。

道路の附属物

道路を一般交通の用に供するためには、路面を主体とする道路そのものを建設するだけでは足りず、その構造全体が、安全かつ円滑な道路交通を確保するためには、管理上さまざまな種類の施設や工作物が必要です。このため、道路法では、これらの施設や工作物を道路の附属物として規定し、これを道路の概念に含むこととしています(道路法第2条第1項)。

道路の附属物は、次のとおりに定められています。なお、これは限定列挙であり、これ以外のものは道路の附属物となり得ません。

法律で定める附属物

この法律において「道路の附属物」とは、道路の構造の保全、安全かつ円滑な道路の交通の確保その他道路の管理上必要な施設又は工作物で、次に掲げるものをいう。

  1. 道路上の柵又は駒止め
  2. 道路上の並木又は街灯で第十八条第一項に規定する道路管理者の設けるもの
  3. 道路標識、道路元標又は里程標
  4. 道路情報管理施設(道路上の道路情報提供装置、車両監視装置、気象観測装置、緊急連絡施設その他これらに類するものをいう。)
  5. 自動運行補助施設で道路上に又は道路の路面下に第十八条第一項に規定する道路管理者が設けるもの
  6. 道路に接する道路の維持又は修繕に用いる機械、器具又は材料の常置場
  7. 自動車駐車場又は自転車駐車場で道路上に、又は道路に接して第十八条第一項に規定する道路管理者が設けるもの
  8. 特定車両停留施設
  9. 共同溝の整備等に関する特別措置法第三条第一項の規定による共同溝整備道路又は電線共同溝の整備等に関する特別措置法第四条第二項に規定する電線共同溝整備道路に第十八条第一項に規定する道路管理者の設ける共同溝又は電線共同溝
  10. 前各号に掲げるものを除くほか、政令で定めるもの

政令で定める道路の附属物

法第二条第二項第十号の政令で定める道路の附属物は、次に掲げるものとする。

  1. 道路の防雪又は防砂のための施設
  2. ベンチ又はその上屋で道路管理者又は法第十七条第四項の規定による歩道の新設等若しくは法第四十八条の二十二第一項の規定による歩行者利便増進改築等を行う指定市以外の市町村が設けるもの
  3. 車両の運転者の視線を誘導するための施設
  4. 他の車両又は歩行者を確認するための鏡
  5. 地点標
  6. 道路の交通又は利用に係る料金の徴収施設
Q: 公安委員会が設置する道路標識は、道路の附属物か、占用物件か。

A: 道路法第2条において、道路標識は道路の附属物として位置づけられていますが、道路の附属物の設置は、国土交通大臣が自ら行う国道の新設又は改築に伴う場合を除き、当該道路の道路管理者の権限です(道路法第85条)、道路管理者以外の者である公安委員会が設置する道路標識は道路法第32条第1項該当の占用物件と解されます。

Q: 橋梁に設置する耐震計は、道路の附属物に該当するか。

A: 道路の附属物です(道路法第2条第2項「4」)。

Q: カーブミラーは、道路の附属物か。

A: 道路の附属物です(道路法施工令 第34条の3「4」)。

Q: 非常電話その他の通信施設は道路の附属物か。

A: 道路の附属物です(道路情報管理施設であり、道路の附属物です(道路法第2条第2項「4」)。 )。

Q: 横断歩道橋、トンネルの排気設備、交通信号機は道路の施設か、道路の附属物か。

A: 横断歩道橋及びトンネルの排気設備は、道路そのもの(道路と一体となってその効用を全うするもの)です。また、交通信号機は、公安委員会が道路管理者に協議して設置する占用物件です。

Q: スノーシェッドは道路の附属物か。

A: 道路本体であって附属物ではありません(「直轄道路災害復旧事業事務取扱要綱の運用について」昭和46年5月22日道一発70号国道第一課長通達第25表)。

Q: チェックバリアー(検札所)は道路の附属物か。

A: 道路の附属物です(道路法施工令 第34条の3「7」)。

Q: 道路の附属物である自転車駐車場において駐車料金を徴収できるか。

A: 無料開放を原則とする道路の使用に関して道路管理者が料金を徴収できるのは、法律に特別の定めがある場合(道路法第24条の2、25条、道路整備特別措置法)に限られます。自転車駐車場については平成19年の法改正により、道路管理者である地方公共団体の条例(指定区間内の国道にあっては政令)で定めるところにより、駐車料金を徴収することができることとされました(道路法第24条の2)。
なお、道路の附属物で自動車駐車場については、平成3年の法改正により、上記の自転車駐車場と同様の定めが設けられています。

Q: 道路附属物である道路上の自動車駐車場と、道路交通法上のパーキング·メーター等とはどのように違うか。

A: 道路交通法により公安委員会が設置するパーキング・メーター等は、交通規制の観点から、時間制限駐車区間(時間を限って同一の車両が引き続き駐車することが道路標識等により指定されている道路の区間)における駐車の適正を確保するために設置される施設であり、駐車場という概念でとらえられるものではありません。これに対し、道路管理者により設けられる道路上の自動車駐車場は、路外駐車場では対応できない短時間の駐車需要に対応するため、主に交通量の多い幹線道路において、路上駐車が交通支障を及ぼすことのないよう、道路の附属物として車道とは分離した構造により設置されるものです。また、その料金は、道路という公共物の特別の使用料金としての占用料的な性格と、受益者負担的な性格とを併せ有するものであるといえます。

Q: 道路附属物として道路の地下に整備する自動車駐車場の出入庫口については道路区域に入れないことが許されるか。

A: 少なくとも1つの出入庫口は、道路区域にかかり、道路の一部を構成するよう措置しておくことが必要です。

道路の成立から廃止までの手続

道路の成立から廃止までの手続を概観すると、次のとおりです。

  1. 路線の指定又は変更等及びその旨の政令の改廃、路線の認定又は変更等及びその公示(法 5~10)
  2. 道路の区域の決定又は変更及びその公示(道路法第18条第1項
  3. 当該区域内の土地について権原の取得( 道路法 第91条第2項)
  4. 工事の施行
  5. 供用の開始及びその公示(法 18Ⅱ)
  6. 供用中の道路の管理
  7. 供用の廃止及びその公示(法 18Ⅱ)
  8. 不用物件の管理 (道路法 第92条

道路の区域の決定又は変更の時期

従来から道路の区域の決定は、当該道路の供用の開始の直前に行う例が多いですが、本来は、道路となる土地について権原を取得する前に行うべきものです。