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道路の管理

道路の管理

「道路の管理」とは、道路法等の法令に起因する道路の管理全般を示します。道路の新設、改築、災害復旧、維持、修繕等を行い、占用の許可をし、道路のための公用負担を課し、沿道制限を行い、道路標識の設置を行う等はいずれも管理の内容に含まれるものであり、それらの作用の性質から分類すれば、占用許可、承認工事の承認などの公法上の行為、敷地の売買契約などの私法上の行為及び道路の新設工事などの単なる事実行為の三種に分けられます。

道路管理権

道路管理権とは、道路の管理を行う道路管理者の権能をいいます。

内容

道路管理の内容には、一般交通の用に供する施設としての道路本来の目的を達成するために行う新設、改築、維持、修繕等の積極的作用と、道路の目的に対する障害の防止、除去その他の規制等の消極的作用とがあります。後者は、道路管理権の作用として行われるものも多いですが、道路警察権の作用としても行われるので、両者の調整を図る必要があります。

道路管理の内容の概略を示すと、次のとおりです。

  • 道路の新設または改築
  • 道路の維持、修繕または災害復旧
  • 道路の区域の決定または変更及び供用の開始または廃止
  • 有料の橋または渡船施設の設置、管理
  • 自動車駐車場の駐車料金及び割増金の徴収
  • 道路台帳の調製及び保管
  • 道路の占用の許可及び占用料の徴収
  • 沿道区域の指定及び制限
  • 道路標識等の設置
  • 通行及び車両の禁止または制限
  • 土地の立入り、一時使用等の公用負担
  • 違法放置物件及び長時間放置車両に関する措置
  • 監督処分

道路台帳

意義

「道路台帳」とは、道路管理者が管理する道路についての基礎的事項を記載した台帳です。道路及びその沿道については、種々の公法上の規制が働くため、その基礎的事項を明らかにしておくことは利害関係を有する私人にとって必要ですし、また一方で、道路管理者にとってもその管理事務を円滑に遂行する上で、道路の区域、道路の構造、占用物件等の道路管理上の基礎的事項を総括して把握しておくことが必要です。道路台帳の制度は、このような趣旨に基づき設けられたものです。

しかし、近時は、地方交付税の交付の算定基礎に使われる等、道路の現況を把握する面を重視して運用される傾向にあります。

調製及び保管

道路管理者は、自ら管理する道路について、道路台帳を調製し、これを保管しなければなりません(法28I)。道路台帳の記載事項その他その調製及び保管に関し必要な事項は、国土交通省令で定められています(法28Ⅱ、施行規則4の2)。

閲覧

道路管理者は、道路台帳の閲覧を求められた場合においては、これを拒むことができません(法28Ⅲ)。

管理権の及ぶ範囲

道路管理権が行使される範囲は、道路区域、沿道区域及び道路予定地であります。それ以外の場所であっても、土地の立入り等道路管理権が行使される場合もあります。

道路の範囲は、平面的には道路区域の決定により定まり、立体的には、通常は、支壁その他の物件の存する部分はもとより、道路の区域の全般にわたり、道路の構造の保全、交通の危険防止その他道路管理上必要な範囲と解されます。

なお、法47条の6の規定により、道路の立体的区域を設定する場合は、空間又は地下に上下の範囲を区切って定められた立体的区域とすることができます。

権原の取得と道路の範囲

道路が道路として成立するためには、供用開始行為が必要であり、供用開始行為が有効に成立するためには、その前提として、道路管理者は、道路の範囲となるべき部分について、所有権その他の権原が取得されていなければなりません。

他の道路との関係

路線の重複

国道の路線と都道府県道または市町村道の路線とが重複する場合においては、その重複する道路の部分については、国道に関する規定が適用されます(法11Ⅰ)。

都道府県道の路線と市町村道の路線とが重複する場合においては、その重複する道路の部分については、都道府県道に関する規定が適用されます(法11Ⅱ)。

境界地

地方公共団体の区域の境界に関する道路については、関係道路管理者(国土交通大臣である道路管理者を除く。)は、協議してその管理の方法を定めることができます(法19I)。

立体交差

立体交差している道路については、法11条の適用はありませんが、関係道路管理者は、協議してその管理の方法を定めることができます(法19の2)。

他の公共施設との関係(兼用工作物)

管理協定

道路と堤防、護岸、ダム、鉄道または軌道用の橋、踏切道、駅前広場その他公共の用に供する工作物または施設(以下「他の工作物」といいます。)とが相互に効用を兼ねる場合においては、当該道路の道路管理者及び他の工作物の管理者は、協議して当該道路及び他の工作物の管理の方法を定め、並びにその管理に関する費用について、その分担すべき金額及び分担の方法を定めることができます。ただし、他の工作物の管理者が私人である場合においては、道路については、道路に関する工事及び維持以外の管理を行わせることはできません(法20·55)。

権限代行

協議に基づき、他の工作物の管理者が道路を管理する場合においては、その者は、当該道路の道路管理者に代わってその権限を行います。ただし、次に掲げる権限は行うことはできません(法27Ⅲ、施行令5)。

  • 道路区域の公示
  • 道路台帳の調製及び保管
  • 沿道区域の指定及び公示
  • 道路一体建物協定の公示及び閲覧等
  • 利便施設協定の公示及び閲覧
  • 道路保全立体区域の指定及び公示
  • 市町村分担金の負担命令

不服申立て

協議に基づき、他の工作物の管理者が道路管理者に代わってした処分に対する不服申立てについては、特別の定めがあります(法96Ⅲ)。(第16章参照してください。)

権限の代行・委任

代行・委任

道路の管理は、道路管理者の権限及び義務に属し、他の者が関与しないのが原則ですが、道路法その他の法律により、次のような場合には、道路管理者の権限の代行又は委任が認められています。

この場合、代行者は、道路管理者の地位に立ち、その限りにおいては、本来の道路管理者は権限を行使できず、また代行者を指揮監督できません。これに対し、受任者は、その委任の範囲内で自己の権限として、自己の名と責任においてその権限を行使するが、委任者は受任者を指揮監督できます。

国土交通大臣は、指定区間外の一般国道の新設、改築又は災害復旧を行うことができますが、この場合には、国土交通大臣は、道路管理者の権限の一部を代行します(法12・13Ⅲ・27Ⅰ、施行令4・6)。

国土交通大臣は、指定区間内の一般国道の維持、修繕及び災害復旧以外の管理を当該部分の存する都道府県又は指定市が行うこととすることができます(法13Ⅱ、施行令1の2~1の4)。

指定市以外の市町村は、都道府県の行うこととされている歩道の新設等の一部を行うことができますが、この場合には、当該市町村は、道路管理者の権限の一部を代行します(法17Ⅲ・27Ⅱ、施行令4の2・6)。

地方公共団体の区域の境界に係る道路については、関係道路管理者は、協議して別に管理の方法を定めることができ、この場合には、管理を行う道路管理者は、他の道路管理者の権限を代行します(法19・27Ⅱ、施行令5)。

道路と他の公共施設とが相互に効用を兼ねる場合には、当該他の施設の管理者と道路管理者とが協議して、別に管理の方法を定めることができ、この場合、当該他の施設の管理者が道路の管理を行うときは、当該者は道路管理者の権限を代行します(法20・27Ⅲ、施行令5)。

道の区域内の一般国道については、国土交通大臣が道路管理者の権限の全部を行い、いわゆる開発道路については、国土交通大臣がその全部又は一部の権限を代行します(法88Ⅱ、施行令34)。

国土交通大臣の権限は、その一部を地方整備局長(沖縄総合事務局長を含む。)又は北海道開発局長に委任することができます(法97の2、施行令39、内閣府設置法44Ⅰ・45I)。

国土交通大臣は、指定区間外の一般国道の修繕をすることができ、この場合には、国土交通大臣は道路管理者の権限の一部を代行します(道路の修繕に関する法律2、同法施行令7)。

会社、機構及び地方道路公社は、国土交通大臣の許可を受けて、高速道路等の新設、改築等を行うことができ、この場合には、道路管理者の権限の一部を代行します(道路整備特別措置法3Ⅰ・4・8・9・10I・12I・14・15I・17)。

また、独立行政法人都市再生機構は、道路管理者の同意を得て、その管理者に代わってその工事を行うことができます(独立行政法人都市再生機構法18Ⅰ・Ⅱ。この中には、共同溝及び電線共同溝についての権限代行も含まれています。)。

管理の委託

事実行為としての道路の管理は、第三者に委託することができます。法律上の権限については、法律に特別の規定がなければ、第三者に任せることはできません。

道路外利便施設協定

道路の区域外に存する並木、街灯等で道路の付属物と同等の効果を発揮している工作物・施設については、道路外利便施設協定(法48の17)を締結することにより、当該工作物、施設の所有者等の協議の内容に従って、道路管理者が当該工作物、施設を管理することが可能です。

道路の維持・修繕の基準

道路の維持・修繕の目的

いったん供用開始が行われた道路も、その後の維持、修繕その他の管理が不十分では、その効用を全うすることができません。この意味において、道路の維持及び修繕は、道路管理者の重要な責務です。特に最近の自動車交通量の著しい伸びにより、道路管理者が維持・修繕を怠った場合には、単に交通の渋滞等を招来するばかりでなく、重大な交通の危険状態をもたらすことも少なくないことを銘記する必要があります。

道路の維持の定義

道路の維持とは、反復して行われる道路の機能を保持するための行為であり、撒水、除草、除雪、コンクリートの舗装の目地の手入れ、砂利の補充等をいいます。

道路の修繕の定義

道路の修繕とは、道路を新設し、または改築したときの構造が損傷したときに、これを原状程度に復旧することであり、オーバーレイ、舗装の打換等が含まれます。

道路の維持・修繕の基準

道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つように維持し、修繕し、もって一般交通に支障を及ぼさないように努めなければなりません(法42)が、維持・修繕の具体的な基準は、政令に委任されています。この政令は未制定ですが、別途「道路の維持修繕等管理要領について」(昭和37年8月28日道発368号道路局長通達)により基本的方針が定められています。

なお、このほか、道路の維持・修繕に関しては、次の通達等を参照してください。

  • 「道路工事執行要領について」(昭和37年8月7日道発331号・都発190号)
  • 「異常気象時等における道路交通情報連絡活動要領について」(昭和52年5月10日道交発30号道路局長通達)
  • 「道路交通法等の一部改正に伴う道路管理上の措置等について」(昭和53年12月1日道交発102号・道企発59号)
  • 交通上の障害となっている路上放置車両の処理方法について(平成5年3月30日道交発25号)

道路の維持・修繕を怠った場合

道路の維持・修繕に怠りがあり、他人に損害を生じたときは、道路管理の瑕疵として、国または地方公共団体は賠償の義務を負いますが、この点については、第16章3国家賠償(316頁)以下参照してください。

道路の災害

道路の災害に対する道路管理者の責務

道路管理者は、台風等の災害の発生が予知できる場合は、あらかじめ管理体制を強化し、関係諸機関との連絡を密にして、被害を最小限に留めるよう努めなければなりません。必要に応じ、道路モニター制等を活用することも望ましいです(「道路管理の強化について」昭和49年12月24日道交発56号道路局長依命通達等参照)。不幸にして災害が発生したときは、道路管理者は、速やかに復旧に努め、交通の確保を図らなければなりません。

道路の災害復旧の意義

道路法上、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法2条2項に規定する災害復旧事業、すなわち、災害によって必要を生じた事業で、災害を被った施設を原形に復旧することを目的とするものを、特に「修繕」と区分して「災害復旧」といいます(原形に復旧することが不可能な場合において当該施設の従前の効用を復旧するための施設とすることを含む)。

道路の災害復旧の主体

道路の災害復旧の施行主体は、指定区間内の国道については国土交通大臣、指定区間外の国道については原則として都道府県・都道府県道又は市町村道については、それぞれ都道府県又は市町村です。なお、指定市、北海道の国道等に関する特例が認められています。

指定区間外の国道に関する災害復旧を国土交通大臣が行う特例

国土交通大臣は、工事が高度の技術を要する場合、高度の機械力を使用して実施することが適当であると認める場合、又は都道府県の区域の境界に係る場合には、都道府県に代って自ら指定区間外の国道の災害復旧に関する工事を行うことができます(例新潟県中越地震)(法17Ⅲ)。この場合において、国土交通大臣は、あらかじめ工事を行う旨を当該都道府県に通知しなければなりません。

異常気象時及び災害時の道路管理

異常気象時及び災害発生時における報告及び連絡

道路管理者は、異常気象時の通行規制状況や災害発生時等の緊急事態における刻々の道路状況、気象状況等を迅速かつ的確に把握し、情報の伝達を確実なものとすることにより交通の危険を防止し、一般交通への支障を減少させ、あわせて災害復旧等を容易にすることが必要です。

異常気象時及び災害時の道路管理

道路管理者は、道路の破損・欠壊又はその可能性の高い場合等交通の危険を招来したときは、適宜、通行の禁止・制限等必要な措置をとらなければなりません(法46I)。特に、異常気象時及び災害時においては、通常の場合と比べ、迅速かつ臨機応変の措置をとることが要求されます。

交通状況の広報活動

道路管理者は、必要に応じ新聞、ラジオ等報道機関を通じて交通状況(全面交通止、片側通行止、迂回路等)を一般に周知させることが必要です。

非常災害時における土地の一時使用等

道路管理者は、道路に関する非常災害のためやむを得ない必要がある場合においては、災害の現場において、必要な土地を一時使用し、または土石、竹木その他の物件を使用し、収用し、若しくは処分することができます。また、道路管理者は、非常災害により道路の構造又は交通に対する危険を防止するためやむを得ないと認められる場合においては、災害の現場に在る者又はその付近に居住する者を防災に従事させることができます。ただし、これらの処分により損失を受けた者に対しては、通常生じるべき損失を補償しなければなりません(法68・69I)。

承認工事

「承認工事」の意義

道路管理者以外の者は、道路に関する工事の設計及び実施計画について道路管理者の承認を受けて道路に関する工事又は道路の維持を行うことができます(法24)。

道路管理者の承認を要しない場合

道路の損傷を防止するために必要な砂利又は土砂の局部的補充その他道路の構造に影響を与えない軽易な道路の維持については、道路管理者の承認を受けることを要しません(法24ただし書、施行令3、昭和33年8月25日道路局長通達「指定区間内の一級国道の管理について」参照してください)。

道路管理者以外の者

道路管理者以外の者とは、法18条1項に規定する道路管理者以外のすべての者を含みます。国の行政機関、地方公共団体、私人等のいずれであるかを問わないです。

道路に関する工事

道路に関する工事とは、道路の新設、改築又は修繕に関する工事をいいます(法20I)。

承認工事の具体例

法面埋立工事、農林漁業用揮発油税財源身替農道整備事業による道路改築工事、車両乗入れのための歩道切下げ又はガードレールの撤去工事等が承認工事の典型です。

承認に附する条件

道路管理者の承認には、道路の構造を保全し、交通の危険を防止し、その他円滑な交通を確保するため必要な条件を附することができます(法87Ⅰ)。

承認工事に要する費用

承認工事に要する費用は、請願者が負担します(法57)。

工事施行命令(原因者工事)

「工事施行命令」の意義

道路管理者は、道路に関する工事以外の工事(「他の工事」)により必要を生じた道路に関する工事又は道路を損傷し、若しくは汚損した行為若しくは道路の補強、拡幅その他道路の構造の現状を変更する必要を生じさせた行為(「他の行為」)により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持を、当該工事の執行者又は行為者に施行させることができます(法22I)。この場合の道路に関する工事又は道路の維持を「原因者工事」といいます。

他の工事により必要を生じた道路に関する工事

「他の工事により必要を生じた道路に関する工事」とは、堤防の嵩上工事に伴う橋の改築工事又は取付道路の嵩上工事、ダム建設工事により水没する道路の代替道路の建設工事等です。

他の行為により必要を生じた道路に関する工事

「他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持」とは、自動車が破壊したガードレールの復旧工事、水道管の漏水によって破損した道路を復旧する工事、トラックがこぼした砂利等の清掃等です。

原因者に工事を施行させる場合

道路管理者が原因者に当該道路に関する工事を施行させることができる場合は、原因者に施行させても道路管理上支障のない場合に限られます。

河川工事との調整

原因者工事の原因となった他の工事が河川工事であるときは、河川管理者が当該河川工事の附帯工事(河川法19)として処理せず、道路管理者が法22条2項の規定により施行命令を発することとなります。

原因者工事に関する費用の負担

道路管理者は、原因者工事費用については、その必要を生じた限度において、他の工事又は他の行為につき費用を負担する者に、その全部又は一部を負担させるものとします(法58I)。

道路の美化及び愛護運動

道路の美化及び愛護の必要性

道路の美観はもとより、道路環境の浄化がどのように行われるかは、道路の構造の保全と密接な関連を有しており、交通の安全に関わる大きな問題です。道路は、国民一般の共有財産であるため、道路の美化及び愛護は、第一義的には国民一般の責務であると言えます。しかし、道路管理者も、国民一般の協力を待つだけではなく、積極的にその促進に努めなければなりません。

道路を守る月間

道路の正しい使い方と、道路愛護の思想の周知徹底を図り、道路を広く美しく使用する気運を高めることにより、道路の環境の整備及び交通の安全を図ることを目的として、国土交通省の主催により、昭和33年以降毎年8月に「道路を守る月間」の国民運動が実施されています。この運動は、昭和61年度に制定された「道の日」(8月10日)を中心に展開されています。

道路の美化及び愛護の内容

道路の美化及び愛護は、第一義的に国民一般の責務であるが、道路管理者も道路の不正使用の是正、土砂、ごみ等の堆積の排除等、道路の正しい使い方の啓蒙、指導を積極的に進めるとともに、特に占用物件によっては、必要に応じて定期に点検を行い、占用者に対する指導、監督を十分に行わなければなりません。

禁止行為

禁止行為の内容

次に掲げる道路に対する侵害行為(法43)です。

  • みだりに道路を損傷し、または汚損すること。例えば、正当な権限に基づかないで道路を掘り返したり、道路にごみ、汚物等を捨てたりすることです。
  • みだりに道路に土石、竹木等の物件をたい積し、その他道路の構造または交通に支障を及ぼすおそれのある行為をすること。たとえば、正当な権限に基づかないで道路に工事用の土砂等を放置したり、商品を並べたりすることです。

「みだりに」の意義

「みだりに」とは、正当な権限または正当な事由に基づかない場合をいうです。道路管理者が権限として行う工事等はもちろん、道路管理者の命令、承認、許可に基づいて第三者が行う原因者工事(法22I)、承認工事(法24)、占用工事(法32Ⅰ・35)等は該当しません。

違反行為に対する措置

違反行為があったら、道路管理者は直ちに行為の中止、物件の除却命令等(法71Ⅰ)を発し、必要があれば代執行手続をとって違反状態を排除しなければなりません。そのまま放置し事故が発生した場合には、道路管理者が損害賠償責任を問われる場合があります。

罰則

禁止行為をした者は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる(法1003)です。更に、道路管理者の中止命令等に従わなかった者は、100万円以下の罰金を課される(法1024)です。悪質な違反者に対しては、告発(刑事訴訟法239Ⅱ)の手続をとるべきです(昭和30年10月6日建設省道北開第11号道路局長通達参照してください)。

道路予定地

道路予定地の場合にも同様です(法91Ⅱ、法1003、法1024)。

その他

法43条は、道路の本来の目的を達成するためのものであり、公物管理上の要請に基づくものです。交通警察権の作用に服する禁止行為については道路交通法に規定されています(同法76条)。

沿道制限

沿道制限の趣旨

道路の機能を確保するためには、道路区域内の道路自体を保全するだけでは十分ではありません。沿道から道路に及ぼされる障害を防止する必要がありますが、沿道制限はこの趣旨に基づき、沿道の一定の区域内の土地等の管理者に対して課される公法上の制限です。

沿道制限の権限

道路管理者は、道路の構造に及ぼすべき損害を予防し、または道路の交通に及ぼすべき危険を防止するため、道路に接続する区域を、条例(指定区間内の国道にあっては、政令)で定める基準に従い、道路の各一側について幅20メートルの範囲内で、沿道区域として指定することができます(法44I)。

沿道区域内の土地、竹木または工作物が道路の構造に損害を及ぼし、または交通に危険を及ぼすおそれがある場合、当該土地、竹木または工作物の管理者は、その損害または危険を防止するための施設を設け、その他その損害または危険を防止するため必要な措置を講じることを要します(法44Ⅲ)。道路管理者は、特に必要があると認める場合は、当該管理者に対し、損害または危険を防止するために必要な施設を設け、その他必要な措置を講ずべきことを命ずることができます(法44IV)。

沿道区域の指定基準

指定区間内の一般国道の沿道区域の指定の基準に関する政令は未制定ですが、その他の道路の沿道区域の指定の基準に関する条例の制定にあたっては、屈曲部中心半径が特に小さい場合、積雪地域で特に除雪用地の必要がある場合などについて具体的な基準を定める必要があります(「新道路法の施行について」昭和27年12月5日道発420号通達参照)。

指定の公示

道路管理者は、沿道区域を指定した場合においては、遅滞なくその区域を公示しなければなりません(法44Ⅱ)。公示により指定の対外的効力が生じます。

必要な措置

沿道区域内の土地等の管理者は、路上に木の枝が突き出して交通に危険を与えている場合の当該樹枝の切断、沿道の土地において採石を行う場合の排水施設の設置などの必要な措置を講ずる義務があります(法44Ⅲ)。

必要な措置命令と罰則

道路管理者は、特に必要があると認める場合には、自己の権限として措置命令を発することができます。道路に接続する土地について採石が行われる場合に、安息角を確保して採掘することを命ずることも、措置命令の内容に含まれます(「沿道区域の指定等について」昭和41年11月11日道路発30号路政課長回答参照)。

なお、措置命令に違反した者は、30万円以下の罰金に処せられます(法104)。

禁止制限の意義

一般に通行の禁止または制限には、法令の規定そのものにより禁止制限される場合(法48の11Ⅰ、高速自動車国道法17Ⅰ、道路交通法2章・3章・4章の2等)と、行政処分として禁止制限される場合とがあります。 後者の場合、通行の禁止または制限を行う者は、道路管理者または公安委員会若しくは警察署長であります(法46、道路交通法8)。なお、禁止制限を行う場合には、相互に関係機関に意見聴取または協議しなければなりません(法95の2、道路交通法110の2Ⅲ・IV)。

「禁止または制限」の意義

禁止とは、歩行者や車両などについてすべての通行を禁止することをいいます。制限とは、歩行者あるいは車両などのうち、一部のものの通行を禁止すること(車両通行止、二輪の自動車以外の自動車通行止めなど)および通行の態様の制限(徐行をすべきことなど)をいいます。

禁止制限の方法

行政処分としてなされる通行の禁止制限は、禁止または制限の対象、区間、期間および理由を明確に記載した道路標識によって行われます(法47の4Ⅰ)(公安委員会は、道路標示によって行う場合もあります)。なお、道路標識の様式、表示の意味などについては、「道路標識、区画線および道路標示に関する命令」(以下「標識令」といいます)により定められています。

禁止制限の限界

明文の規定はありませんが、通行の禁止制限は、あくまでも必要最小限度のものにとどまらなければなりません。

道路管理者の行う通行の禁止又は制限

一時的な禁止又は制限

禁止又は制限を行うことができるのは、次の場合です(法46I)。

  • 道路の破損、欠壊その他の事由により交通が危険であると認められる場合
  • 道路に関する工事のためやむを得ないと認められる場合

禁止又は制限の種類

禁止又は制限は、道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するために行われ、道路管理上必要な範囲に限られます。

禁止又は制限は、道路標識を設置して行わなければなりません。なお、法46条に基づき道路管理者の行う禁止又は制限のうち、標識令に定められているものの種類は、次のとおりです。

  • 通行止め(標識令の別表第1・第2中の301)
  • 車両通行止め(302)
  • 車両進入禁止(303)
  • 二輪の自動車以外の自動車通行止め(304)
  • 車両(組合せ)通行止め(310)
  • 指定方向外進行禁止(311A~F)
  • 危険物積載車両通行止め(319)
  • 重量制限(320)
  • 高さ制限(321)
  • 一方通行(326A・B)
  • 徐行(329)

水底トンネルについての特別の禁止制限

水底トンネル(水底トンネルに類するトンネルで国土交通省令で定めるものを含む。)については、その構造の特殊性から、火薬類、高圧ガス等爆発性又は易燃性を有する物件その他の危険物を積載する車両の通行を禁止又は制限することができます(法46Ⅲ)。

「水底トンネルに類するトンネル」は、水際にあるトンネルで当該トンネルの路面の高さが水面の高さ以下のもの又は長さ5000メートル以上のトンネルとしています(施行規則4の9)。

危険物の種類は、施行令19条の12、19条の13に定められています。なお、この禁止制限は、前記7「危険物積載車両通行止め」の標識をもって行われます。

違反に対する措置

違反行為があった場合、道路管理者は直ちにその行為の中止を命じなければなりません(法71I)。

道路管理者は、この権限を道路監理員に行わせることができます(法71IV)。

罰則

違反行為をした者は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます(法1012・3)。更に、道路管理者(道路監理員を含む。)の中止命令に従わなかった者は、100万円以下の罰金に処せられます(法1024・5)。

車両制限

制限の趣旨

道路の構造を保全し、または交通の危険を防止するため、道路と車両との関係を調整する必要があります。制限に関する基準は、政令(車両制限令)で定められています(法47Ⅰ)。

一般的制限

車両は、次の各号に掲げる制限を超えてはなりません(車両制限令3)。

  • (i)幅2.5メートル
  • (ii)総重量20トン(指定道路では25トン)
  • (ⅲ)軸重10トン
  • (iv)隣り合う車軸に係る軸重の合計
    • 隣り合う車軸に係る軸距が1.8メートル未満である場合18トン
    • 隣り合う車軸に係る軸距が1.8メートル以上である場合20トン
  • (v)輪荷重5トン
  • (vi)高さ3.8メートル
  • (iii)長さ12メートル
  • (iii)最小回転半径車両の最外側のわだちについて12メートル

バン型のセミトレーラ連結車、タンク型のセミトレーラ連結車、幌枠型のセミトレーラ連結車及びコンテナまたは自動車の運搬用のセミトレーラ連結車並びにフルトレーラ連結車で自動車及び被牽引車がバン型の車両、タンク型の車両、幌枠型の車両またはコンテナ若しくは自動車の運搬用の車両であるものの総重量の最高限度は、高速自動車国道を通行するものにあっては36トン以下、その他の道路を通行するものにあっては27トン以下で、車両の軸距に応じて当該車両の通行により道路に生ずる応力を勘案して国土交通省令で定める値とします。

高速自動車国道を通行するセミトレーラ連結車またはフルトレーラ連結車で、その積載する貨物が被牽引車の車体の前方または後方にはみ出していないものの長さの最高限度は、セミトレーラ連結車にあっては16.5メートル、フルトレーラ連結車にあっては18メートルとします。

トンネル、橋、高架の道路等についての制限

道路管理者は、トンネル、橋、高架の道路その他これらに類する構造の道路について、構造計算または試験に基づき重量または高さの最高限度を定めることができます(法47Ⅲ)。

個別的制限

道路の幅と車両の関係についての個別的制限は、次頁の表のとおりです(車両制限令5・6)。

次のような特殊な道路については、車両の総重量等の最高限度を特別に定めることができます(車両制限令7)。

  • (i)完全な舗装がなされていない都道府県道または市町村道で、これに代わるべき他の道路があるもの
  • (ii)融雪、冠水等のため支持力が著しく低下している道路

特殊な車両の特例

前述の基準に適合しない車両であっても、当該車両を運行させようとする者の申請により、道路管理者が、使用目的による車体の構造または積載する貨物の特殊性によりやむを得ないと許可または認定したものは、基準に適合したものとして通行が認められます。ただし、道路管理者は、運行経路、運転時間の指定等必要な条件を付することができます(法47の2Ⅰ、車両制限令12)。

違反者に対する措置

道路管理者は、前述の基準に適合しない車両を通行させている者に対し、通行の中止、総重量の軽減、徐行その他通行方法について必要な措置をすることを命ずることができます(法47の3Ⅰ、法71I)。

自動車運送事業者等に対する措置の特例

道路管理者は、

  1. 路線を定めて道路を自動車運送事業のために使用しようとする者(路線バス、定期トラック等の事業者)
  2. 反復して同一の道路に車両を通行させようとする者(工場、倉庫等から特定の場所に繰り返して商品等を運搬する者)

の車両が個別的制限の基準に適合していない場合において、これらの者に対して、基準に適合するよう、道路に関して必要な措置(道路の拡幅、路面の補強等)を講ずべきことを命じることができます(法47の3Ⅱ)。なお、この「必要な措置」に要する費用は、その措置を命ぜられた者が負担します(法65)。

罰則

一般的制限に違反して車両を通行させた者または一般的制限を超える車両についての許可に係る運行条件に違反して車両を通行させた者に対しては、100万円以下の罰金が科されます(法1021)。また、法47条3項の規定により、橋等について車両の運行が禁止または制限されている場合において、この禁止若しくは制限に違反した者または当該橋等についての許可に係る通行条件に違反した者に対しては、道路の構造が特殊であることから道路の構造または交通の安全の侵害の度合が強いので、6月以下の懲役または30万円以下の罰金を科することとしています(法1014)。

なお、措置命令に違反した場合にも同様です(法1015)。さらに特殊な車両の通行の際に、許可証を備え付けなかった者に対しては100万円以下の罰金を科することとしています(法1022)。また、これらの罰則の適用については道路法第105条により、いわゆる「両罰規定」となっており、法人の代表者、法人または人の代理人、使用人その他の従業員が、その法人または人(事業主体)の業務に関して違反行為をした場合は、その行為者すなわち運転者が罰せられ、事業主体である法人または人も運転者と同様の罰則が科せられることとなります。