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密度流

7.1 概説 (General remarks)

7.1.1 密度流とは

淡水と塩水、温水と冷水あるいはシルトや粘土を多量に含んだ濁水と清水などのように、密度の異なった2種類以上の流体が共存して流動するとき、密度差が流体の運動を規定する一要素となってくる。このような流れを密度流 (density current) という。

密度流には水と塩水のように互いに混合する場合と、水と油のように非混合の場合とがある。混合可能な場合も重い流体が軽い流体の下に潜り込んだ場合のように比較的シャープな内部境界面が形成される流れと、流体の接触面で境界面の不安定に伴って生ずる渦や流れ自身のもつ乱れまた境界面での分子運動などにより流体が互いに混合して連続的な密度勾配の場が形成される流れとがある。いずれの場合も単一流体と異なり、密度差に起因する特異な流れが生じることになる。

7.1.2 水の密度と温度、塩分の関係

海水の密度を ρs\rho_s とすれば常温では

ρs=1.0201.030 g/cc\rho_s = 1.020 \sim 1.030 \text{ g/cc}

温度による水の密度の変化を図-7.1に示しているが、15°C と25°C の水の密度差は 0.00206 g/cc であるから、一般的には温度差による密度差は淡水と海水の密度差に比べると小さい。

海水の 1kg 中に含まれる塩類のグラム数を塩分と呼び千分率 (‰) で表わす。塩分 SS (‰) は塩素量 ClCl (‰) と次の関係で結ばれる。

S = 0.030 + 1.8050 Cl \tag{7.1}

濁水では 1ℓ の水中に CC (g) の土砂が含まれる場合 CC (‰) の濁度という。水および土粒子の密度をそれぞれ ρ\rhoρs\rho_s とすれば、水の体積は 1000C/ρs1000 - C/\rho_s なので濁水の密度 ρ\rho'

\rho' = \rho \left[ 1 + \frac{C}{1000} \left( \frac{1}{\rho} + \frac{1}{\rho_s} \right) \right] \tag{7.2}

となる。

例えば ρ=1 g/cc\rho = 1 \text{ g/cc}ρs=2.3 g/cc\rho_s = 2.3 \text{ g/cc}C=30 gC = 30 \text{ g} ならば、ρ=1.017 g/cc\rho' = 1.017 \text{ g/cc} となる。

7.2 密度流の開水路流的取扱い[58], [59] (Densimetric open channel flow)

7.2.1 2層密度流における内部フルード数

図-7.2に示すように静止した密度 ρ1\rho_1 の流体の下を密度 ρ2\rho_2 の重い流体 (ρ2>ρ1\rho_2 > \rho_1) が潜って突起をこえて流下する場合を考える。2点 a, b 間にわたって下層流に対して Bernoulli の定理を適用し、境界面での圧力の連続性を用いると

\frac{u_2^2}{2g} + \frac{\rho_2}{\rho_1} H = \frac{\Delta \rho}{\rho} gH \tag{7.3}

が得られる。いま、ρ1\rho_1 を空気、ρ2\rho_2 を水とすると Δρρ\Delta \rho \fallingdotseq \rho であるから、この場合は自由水面の式となる。このことから2層流の流れは重い下層の流体に働く重力の加速度が gg から (Δρ/ρ2)g(\Delta \rho/\rho_2)g に減少したときの自由水面の流れと一致することがわかる。したがって自由水面をもつ開水路流れでフルード数 (Fr=u/gh)(Fr = u/\sqrt{gh}) が果した役割と同じ役割を2層密度流では

F_i = \frac{u}{\sqrt{(\Delta \rho/\rho)gh}} = \frac{u}{\sqrt{\varepsilon gh}} \left( \varepsilon = \frac{\Delta \rho}{\rho} \right) \tag{7.4}

がもつことが予想できる。この FiF_i を内部フルード数という。

7.2.2 2層流の基礎方程式

内部境界面をはさんで密度 ρ\rho、流速 uu、水深 hh の異なる2つの流れが存在する2層密度流では、境界や底面の勾配があまり大きくなく、圧力に静水圧分布が仮定できる場合には開水路の漸変流と同様な取扱いができる。

上層および下層に対する運動方程式は

\frac{\partial h_1}{\partial t} + \frac{\partial h_1}{\partial x} + u_1 \frac{\partial}{\partial x} \left( \frac{u_1^2}{2g} \right) + \frac{1}{g} \frac{\partial u_1}{\partial t} + if_1 = 0 \tag{7.5}

\frac{\partial h_1}{\partial t} + (1-\varepsilon) \frac{\partial h_2}{\partial x} + u_2 \frac{\partial}{\partial x} \left( \frac{u_2^2}{2g} \right) + \frac{1}{g} \frac{\partial u_2}{\partial t} + if_2 = 0 \tag{7.6}

連続方程式は長方形断面の場合は

\frac{\partial h_1}{\partial t} + u_2 \frac{\partial h_1}{\partial x} + h_1 \frac{\partial u_1}{\partial x} = 0 \tag{7.7}

\frac{\partial h_2}{\partial t} + u_1 \frac{\partial h_2}{\partial x} + h_2 \frac{\partial u_2}{\partial x} = 0 \tag{7.8}

となる。ここに、添字 1, 2 は上層と下層の区別を示し、ii は底勾配、α\alpha は補正係数、if1if_1, if2if_2 は摩擦勾配であって、水路幅が広く側面の摩擦が無視されるときは内部境界面および底面に作用するせん断応力をそれぞれ τi\tau_i, τb\tau_b、それらの摩擦損失係数をそれぞれ fif_i, fbf_b として次式で与えられる。

if_1 = \frac{\tau_i}{\rho_1 g h_1} = f_i \frac{|u_1 - u_2| (u_1 - u_2)}{2 g h_1} \tag{7.9}

if_2 = f_b \frac{u_2 |u_2|}{2 g h_2} - f_i \frac{|u_1 - u_2| (u_1 - u_2)}{2 g h_2} \tag{7.10}

2層流の不等流的な性質を調べるために、いま定常流を考え、エネルギー補正係数 α=1\alpha = 1 とおし上層・下層の内部フルード数

F_{i1}^2 = \frac{u_1^2}{\varepsilon g h_1}, \quad F_{i2}^2 = \frac{u_2^2}{\varepsilon g h_2} \tag{7.11}

を導入すると式(7.5) ~ (7.8) より微小項を無視して、h1h_1 および h2h_2 に関してそれぞれ次のような常微分方程式が導かれる。

\frac{dh_1}{dx} = \frac{- F_{i2}^2(i - if_2) + (1/\varepsilon) (if_2 - if_1)}{1 - F_{i1}^2 - F_{i2}^2} \tag{7.12}

\frac{dh_2}{dx} = \frac{- F_{i1}^2(i - if_1) + (1 \varepsilon/)(if_1 - if_2) + i - if_1}{1 - F_{i1}^2 - F_{i2}^2} \tag{7.13}

また水面勾配 isi_s

i_s = i - \frac{F_{i2}^2 if_2 - F_{i1}^2 if_1}{1 - F_{i1}^2 - F_{i2}^2} = \frac{F_{i2}(1 - F_{i2}) - i f_2 F_{i1}^2}{1 - F_{i1}^2 - F_{i2}^2} \tag{7.14}

となる。式(7.12)(7.13) は2層流の不等流現象に関する基礎式であるが一般の場合についての解析解を求めることは困難であり、数値計算法に頼らざるをえない。ただ、上層だけが流れている場合 (u10u_1 \neq 0, u2=0u_2 = 0) や下層だけが流れている場合 (u1=0u_1 = 0, u20u_2 \neq 0) には摩擦損失係数 fif_ifbf_b が定数とみなせれば境界面形状を解析的に解くことが可能である。なお、開水路流と同様、基本方程式(7.12)(7.13) の分母が 0 となるとき、すなわち

1 - F_{i1}^2 - F_{i2}^2 = 0 \tag{7.15}

において密度流的な限界状態が現れる。

7.2.3 u10u_1 \neq 0, u2=0u_2 = 0 の場合の境界面形状

h=h1+h2h = h_1 + h_2, h2/h=η2h_2/h = \eta_2, i=0i = 0 とおけば、式(7.13) は次のようになる。

\frac{d \eta_2}{dx} = \frac{if_1}{\varepsilon h \eta_2 \left( 1 - \eta_2 \right)^2 \left[ (F_{i1}')^2 - \frac{1}{\left( 1 - \eta_2 \right)^2} \right]} \tag{7.16}

ここに、(Fi1)2=q12/εgh3(F_{i1}')^2 = q^2_1/\varepsilon g h^3, q1q_1 は上層の単位幅流量である。そこで全水深が一定とみなされる場合には Fi1=F_{i1}' = const. とし、式(7.16) を積分して境界条件を x=0x = 0Fi1=1F_{i1} = 1 とおくと、次の結果が得られる。

x &= \frac{2h}{\varepsilon if_1} \left\{ \frac{1}{(1 - \eta_2)^2} - \frac{1}{(1 - \eta_{20})^2} + \frac{2}{1 - \eta_{20}} - \frac{2}{1 - \eta_2} + 2 \ln \frac{1 - \eta_2}{1 - \eta_{20}} \right\} \\ &\quad + \frac{h}{if_1} (F_{i1}')^2 \left[ \frac{1}{1 - \eta_2} - \frac{1}{1 - \eta_{20}} + \ln \frac{1 - \eta_2}{1 - \eta_{20}} \right] \end{aligned} \tag{7.17}$$ 上述の境界条件は図-7.3に示す河口密度流の塩水くさびに対応しており、塩水くさびの侵入長 $L$ は上式で $x = -L$、$\eta_2 = 0$ とおくことにより求められる $$L = \frac{2h}{\varepsilon if_1} \left[ \frac{1}{3} + \frac{1}{1 - \eta_{20}} - \frac{1}{(1 - \eta_{20})^2} - \ln (1 - \eta_{20}) \right] + \frac{h}{if_1} (F_{i1}')^2 \left[ \frac{1}{1 - \eta_{20}} - 1 - \ln (1 - \eta_{20}) \right] \tag{7.18}$$ ## 7.3 2層流の抵抗と混合 (Resistance and mixing in two-layered flow) ### 7.3.1 抵抗法則 2層密度流の基礎方程式を解析的もしくは数値計算で解く場合、内部境界面や底面に働くせん断応力 $\tau_i$ および $\tau_b$ についての情報が必要である。一般に密度流では密度差による安定効果のため、上下層の相対速度が多少大きくなっても層流状態を保ち、主として分子粘性による抵抗が働いていることが多い。 上下層の相対速度がさらに増加して、内部境界面に内部波が発生するようになると、内部波のエネルギー散逸量からせん断応力 (造波抵抗) を求めることが必要となってくる。 上下層の相対速度がもっと大きくなって、上下層の間に混合が生じるようになると混合現象に基づく見かけの摩擦抵抗が働くと考えられる。したがって境界面に働くせん断力はこれらの成分の和となる。 ### 7.3.2 層流型 の抵抗則 Ippen・Harleman[60] は下層流について解析と実験を行った。動水勾配とせん断応力のつり合いから、 $$if_2 = \frac{\tau_i}{\rho_2 g h_2} = \frac{1}{8} f_i Re_2^{-1/2}J \tag{7.19}$$ $$J = \left( \frac{f_i}{8} \right)^{1/3} \frac{h_2}{h} \frac{\nu}{(g' h)^{1/2}} \tag{7.20}$$ が得られる。ここに、$J = \sqrt{\nu u_1 / (g' h)}$、$g' = \varepsilon g$。 下層流の水路底および内部境界面に働くせん断応力 $\tau_b$, $\tau_i$ をそれぞれ次のように表わす。 $$\tau_b = f_b \frac{\rho_2 u_2^2}{8}, \quad \tau_i = f_i \frac{\rho_2 u_2^2}{8} \tag{7.21}$$ $$\begin{aligned} f_b &= \frac{8}{Re_2} = \frac{8}{\sqrt{J^2 Re_2}} = \frac{8}{Re_2^{1/2}} \frac{1}{J} \\ f_i &= \frac{1}{Re_2^{1/2}} \frac{1}{J} \end{aligned} \tag{7.22}$$ $J = F_{i2}/Re_2^{1/2}$、$Re_2 = u_2 h_2 / \nu$、$u_2$ : 下層平均流速。 層流の下層流では Keulegan の研究[61] により $J = 0.138$ であるから、式(7.20) より $\alpha = 0.64$ となり、式(7.22) より $f_b$, $f_i$ は次のようになる。 $$f_b = \frac{8.33}{Re_2}, \quad f_i = 0.64 f_b = \frac{5.66}{Re_2} \tag{7.23}$$ 上層流の場合の境界面の粘性抵抗は嶋・宇佐貝・玉井[62] によって考察され、次式で与えられている。 $$f_i = \frac{1.06}{\sqrt{\left( 1 - \frac{h_1}{h} \right)^{1/2} Re_1}} \fallingdotseq \frac{3.4}{Re_1^{1/2}} \tag{7.24}$$ ### 7.3.3 界面波に基づく抵抗[53b] 2層流において内部波が存在する場合の抵抗係数の値は現地観測・模型実験ともに大きく散らばっているため統一的な表示はいまのところまだ難しいが、概略的には次の形で表わすことができる。 $$f_i = C [Re F_i^2]^{-n} \tag{7.25}$$ ここに、$n$, $C$ は定数、$Re$ は上層のレイノルズ数 $(= u_1 h_1 / \nu)$、$F_i$ は上層の内部フルード数 $(= u_1 / \sqrt{\varepsilon g h_1})$ である。 抵抗係数 $f_i$ の値は模型実験で $10^{-2}$ 程度、自然河川の現地観測で $10^{-4}$ ~ $10^{-6}$ 程度の値となっており、現象の規模の拡大とともに減少する傾向がみられる。図-7.4は各方面で行われた抵抗係数の実験値ならびに実測値を $\psi = F_i Re$ について整理したものである[22]。岩崎[63] は実験ならびに実測値から $C = 7.88$, $n = 0.8356$ を得ている。椎貝[64] は内部波によるエネルギー消費量を計算し、抵抗係数を算出して、$C = 12$, $n = 1$ を導いている。また、$\psi$ の大きな現地の抵抗係数を含めた定式化が金子[65] ($C = 0.2$, $n = 0.5$)、中村ら[66] ($C = 4.23$, $n = 0.71$) によって行われ、特に金子の式は実用面でもよく用いられている。一方、玉井・浅枝[67] は上層部の流れが非粘性部と粘性部の和よりなると考えて、摂動法により粘性境界層内の速度場を求めた。そして粘性境界層内のエネルギー散逸より界面抵抗係数を次式のように求め、実験・実測結果と比較してある程度の一致を得ている。 $$f_i = 0.0896 (Re F_{i1})^{-1/2} \tag{7.26}$$ ### 7.3.4 2層流の混合と連行係数[68] 上下層の流速差により境界面が不安定となって混合が活発になってくると内部境界面を貫切して混入移動が生じることになる。下層流体が境界面でのせん断応力により主流に連行される量 ($Eu$) については体積保存則から次の関係が示される。 $$\frac{d}{dx}(uh) = W_e = Eu \tag{7.27}$$ ここに、$U(x)$ は上層の平均流速、$h$ は上層の厚さであって、$uh = \int_0^h U(x,z) dz$、$U(x,z)$ は $z$ 方向の流速、$E$ は下層水連行係数、$W_e$ は連行速度である。 連行係数 $E$ は、密度効果の程度を表わすパラメータであるoverall Richardson 数 $Ri_o$ の関数であることが知られている。ここに、$Ri_o = \varepsilon gh/U^2$、$\varepsilon = d \rho/\rho$。 2層流の連行係数については須賀・高橋[69] が大型水路を用いて実験を行い、$10^{-1} < Ri_o < 3 \times 10$ の範囲で $$E = 2.0 \times 10^{-3} Ri_o^{-3/2} \tag{7.28}$$ を与えている。また連行には乱れが直接的に関与しており、乱れの発生因が異なっても統一的な記述が可能であることから連行係数を乱流特性量を用いて表わそうとする試みが浅枝・玉井[70]、浦[71]、[白石ら[72] によってなされている。特に浦らは振動格子乱流、吹送流ならびに流動層の乱れ強度を変化させた2層流の実験を行って、連行係数に対する普遍的な表示式として $$E_i = 0.7 Ri_i^{-3/2} \tag{7.29}$$ を提案している。ここに、$E_i = W_e/u'$、$Ri_i = \varepsilon g l/u'^2$、$l$ は乱れの積分スケール、$u'$ は水平方向の乱れ強度である。 式(7.29) は図-7.5に示すように乱れの発生因の異なる種々の2層流連行現象をよく説明している。ただし、実用的には乱流リチャードソン数 $Ri_i$ は容易には得られないので、式(7.29) を平均流速型にかきなおして $$E = A Ri_o^{-3/2} \tag{7.30}$$ を与えている。$A$ は乱れ係数 $T_f = (u'/U)^2 (l/h)^{-3/2}$ の関数で図-7.6に示すように次式で表わされ、流れのタイプによって変化する。 $$A = 0.7 T_f \tag{7.31}$$ このように2層流の連行現象が振動格子の乱れによる連行や吹送流の連行などと共通な表示でかき表わされるのは、連行が界面波の砕波と大規模な組織渦によって生じ、微細な乱れが界面に作用して界面に混合層を形成する過程がそれぞれ互いに類似しているためであると思われる。 ## 7.4 密度噴流 (Buoyant jet) ### 7.4.1 表面密度噴流 (1) 均一流体中へ放出される2次元表面密度噴流 図-7.7に示すように静止した密度 $\rho_a$ の流体表面に幅 $h_0$ のスリットから密度 $\rho_0 (< \rho_a)$、流速 $U_0$ の流体が放出される2次元表面密度噴流を考える。流れ方向に $x$ 軸、鉛直方向に $z$ 軸をとる。玉井[72] は積分モデルを採用し、Ellison-Turner により実験的に求められた連行係数値を導入して数値計算を行い、実験結果とかなり一致する理論解を得た。 椿・小松[25] は連行係数を未知数として残し、平均流のエネルギー方程式を基礎式として導入し、さらに乱れ特性に対する密度効果の影響を考察して解析を行っている。得られた基礎式はやや複雑なためここには示さないが、現象が放出口におけるフローフォース $M_0$ と浮力フラックス $N_0$ に規定されるため、仮想原点を導入すると表面流速の半値半幅で定義される噴流水深 $h$ や表面流速 $U_s$、表面浮力 $B_s$ などの噴流特性量の $M_0$, $N_0$ による無次元表示型が無次元距離 $\xi$ の関数として一義的に決定される。ここに、 $$M_0 = \int_0^h \rho U^2 dz + \int_0^h \rho B z dz = \rho_0 U_0^2 h_0 + \frac{\rho_0}{2} B_0 h_0^2 = const \tag{7.32}$$ $$N_0 = \int_0^h \rho U B dz = \rho_0 U_0 h_0 B_0 = const \tag{7.33}$$ ここに、$U(x,z)$ は平均流速、$B$ は単位質量当りの浮力 $(= g(\rho_a - \rho) / \rho_a)$、$B_0$ は放出口における単位質量当りの初期浮力 $(= g(\rho_a - \rho_0) / \rho_a)$、$\xi = x N_0^{1/3} / M_0^{5/4}$、添字 0 は放出口における量を示す。得られた噴流特性量の解析解を図-7.8, 7.9に示す。均一流体の <p align="center"> 0.4 </p> <p align="center"> 0.3 </p> <p align="center"> 0.2 </p> <p align="center"> 0.1 </p> <p align="center"> 0 </p> 表面噴流 --- 理論値 ○ 椿・小松 • Chu □ 嶋・片野 $$ \frac{h}{\left( \frac{N_0^2}{M_0} \right)^{1/5} } $$ <p align="center"> 0 1 2 3 4 5 </p> $$\xi = \frac{x}{M_0^{5/4} N_0^{-1/3}}$$ <p align="center"> 図-7.8 噴流水深 $h$ (2次元)[25] </p> いずれも仮想原点において均一流体による2次元表面噴流の解に接し、無次元距離 $\xi$ の増加とともに密度効果のため、均一噴流の解から離れ、一定値に漸近していくことが明らかにされている。 (2) 均一流体の半無限域に放出される3次元表面密度噴流 半無限域とみなしうる深い水域への温水放流、あるいは塩水中への淡水噴流に関する研究は Harleman-Stolzenbach (ハーレマン・ストォルツェンバッハ)[73] をはじめとして多くの研究者によってなされている。ここでは2次元表面密度噴流との関連から、椿・小松・柴田[26] により行われた解析について述べる。密度 $\rho_a$ の半無限水域の水表面に設 1.0 0.8 0.6 $$ \frac{U_s}{\left( \frac{N_0^2}{M_0} \right)^{1/5} } $$ 0.4 0.2 0.1 --- 実験値 --- 理論値 --- 均一流体の表面噴流 --- 均一流体の表面噴流 0 1 2 3 4 5 $$\xi = \frac{x}{M_0^{5/4} N_0^{-1/3}}$$ <p align="center"> 図-7.9 表面流速 $U_s$ (2次元)[25] </p> 置された点源よりフローフォース $M_0$、浮力フラックス $N_0$ をもつ流体が水平に噴出する場合を考える (図-7.10)。積分モデルによる解析では3次元表面密度噴流の特性量は噴流中心軸上流速 $U_s$、中心軸上浮力 $B_s$、噴流幅 $d$ (単位質量当りの浮力 $B = (\rho_a - \rho)/\rho_a$ が $B_s/2$ となるまでの中心軸からの距離で定義)、噴流水深 $h$ ($B$ が $B_s/2$ となる水深で定義)および水平・鉛直方向の連行係数 $E_u$, $E_y$ の6個である。$E_y$ については2次元表面密度噴流で得られた結果を拡張して使用し、6本の基礎式はモーメント法を用いて導かれている。 フローフォース $M_0$、浮力フラックス $N_0$ は次式で与えられる。 $$\int_0^h \int_{-d}^d \rho U^2 dy dz + \int_0^h \int_{-d}^d \rho B z dy dz = \frac{\pi}{4} d^2 U_s^2 = M_0 = const \tag{7.34}$$ $$\int_0^h \int_{-d}^d \rho U B dy dz = \frac{\pi}{4} d^2 U_s B_s = N_0 = const$$ ここに、$U(x,y,z)$ は平均流速である。 噴流特性量を $M_0$, $N_0$ で無次元化すると $$H = \frac{h}{N_0^{2/5} M_0^{-3/5}}, \quad D = \frac{d N_0^{1/5}}{M_0^{2/5}}, \quad B_s = \frac{B_s M_0^{4/5}}{N_0^{2/5}}, \quad U_s = \frac{U_s M_0^{1/5}}{N_0^{2/5}}$$ となり、これらの特性量は無次元距離 $\xi = N_0^{1/2} x / M_0^{5/4}$ と一義的に関係づけられる。計算結果の一部が図-7.11に示されている。これらの解析結果の実際問題への応用も容易であり、個々のケースに応じた $M_0$, $N_0$ を適用すれば図-7.11から直ちに噴流特性量を求めることができる。 ### 7.4.2 密度噴流の連行係数 密度噴流において連行係数が既知量として与えられれば、連続の式を用いて基礎方程式系を閉じさせることができ、容易に解析解を得ることができる。 2次元表面密度噴流の連行係数を最初に研究したのは Ellison-Turner[74] であって、連行速度は断面の代表速度に比例し、連行係数 $E$ は断面における浮力効果と慣性項との比を示す overall Richardson 数 $Ri_o$ の関数として表示されている。その後、和田・片野[75] や Chu-Vanvari[76] によって実験的研究が行われている。また椿・小松[77] は実験的・理論的に連行係数を求めており、室田・中辻[78] は速度勾配が存在する層の厚さを用いて定義されたリチャードソン数を導入して連行係数を整理し、よりまとまりの良い結果を得ている。 ここでは最近、有田・Jirka・玉井[27] によって整理された連行係数とリチャードソン数の関係を図-7.12に示し、Jirka の理論の修正近似式である次式を記しておく。 $$E_m = 0.06 \exp(-3.3 Ri_n) \tag{7.36}$$ ここに、$E_m = W_e/U_m$、$W_e$ は連行係数、$U_m$ は噴流断面の平均流速、$Ri_n = N_0/U_m^3$、$N_0$ は浮力フラックスである。