Skip to main content

開水路流

4.1 開水路水理の基礎(Fundamentals)

4.1.1 開水路1次元方程式

河川流のように自由水面をもつ水路流を開水路流と呼ぶ. 1つの水路流を工学的に取り扱う場合には、水路断面内で平均化ないし積分された諸量(平均流速、平均水位、流量など)が時間ttおよび流下距離xxに対して変化するようすを問題とすることが多い.このような取扱いを「1次元的取扱い」と称する.

全水頭〔式(2.28)参照〕が流れ方向にifi_fの率で減少するとして水路断面内で平均化すると次式を得る. \beta\frac{\partial v}{\partial t}+\alpha\frac{v}{g}\frac{\partial v}{\partial x}+\frac{\partial h}{\partial x}=i_0-i_f \tag{4.1} ここに、vvは断面平均流速、hhは水深、i0i_0は水路床勾配、ifi_fはエネルギー勾配、ggは重力加速度である. β\betaα\alphaは水路断面内で流速が一様でない度合を表わす補正係数で、β\betaは運動量補正係数、α\alphaは運動エネルギー補正係数と呼ばれる. λ\lambdaは圧力が静水圧分布からはずれる度合を表わす補正係数で圧力補正係数と呼ばれる.各々次のように表わされる. \beta=\frac{1}{Av^2}\int\left(\frac{u}{v}\right)^2dA \tag{4.2} \alpha=\frac{1}{Av^3}\int\left(\frac{u}{v}\right)^3dA \tag{4.3} \lambda=\frac{1}{Ah_G}\int\left(\frac{p}{pg}+z\right)dA \tag{4.4} ここに、uuは断面内の各点の流速、AAは断面積、ppは圧力、wwは水の単位体積重量zzは水路床から鉛直上向きに測られた距離である.流速が断面内で一様の場合はβ=1\beta=1α=1\alpha=1となるが、一般には1よりもやや大きな値をもつ.また圧力が静水圧分布のときλ=1\lambda=1、 静水圧より高い場合にλ>1\lambda>1、低い場合にλ<1\lambda<1となる. これらの係数は、 現実の流れが完全な1次元運動でないことの影響を補正するものである.特にλ\lambdaは水路断面内の力の不均衡を表わしλ\lambdaが1より顕著に変化する流れは、実質的には1次元的取扱いが不可能である.

流体の体積の保存は次式で表わされる(連続条件式). \frac{\partial A}{\partial t}+\frac{\partial Q}{\partial x}=-q^* \tag{4.5} ここに、QQは流量qq^*は単位流下距離当り水路から流出する水量(流入の場合は負値をとる)である.

4.1.2 流れの分類

状態が時間的に変化する流れを「不定流」、時間的に変化しない流れを「定常流」という.定常流のうち、状態が流下距離によって変化する流れを「不等流」、変化しない流れを「等流」という.また圧力補正係数λ\lambdaが流下方向に顕著に変化する流れを「急変流」、λ1\lambda\approx 1とみなせる流れを「漸変流」という.以上の分類を表-4.1に示す.

表-4.1 開水路流の分類(Classification of open-channel flow)

流れの分類細分類数学的表現圧力分布
定常流等流vt=0\frac{\partial v}{\partial t}=0, vx=0\frac{\partial v}{\partial x}=0静水圧
不等流-漸変流vt=0\frac{\partial v}{\partial t}=0, vx0\frac{\partial v}{\partial x}\neq 0静水圧
不等流-急変流vt=0\frac{\partial v}{\partial t}=0, vx0\frac{\partial v}{\partial x}\neq 0非静水圧
不定流漸変不定流vt0\frac{\partial v}{\partial t}\neq 0, vx0\frac{\partial v}{\partial x}\neq 0静水圧
急変不定流vt0\frac{\partial v}{\partial t}\neq 0, vx0\frac{\partial v}{\partial x}\neq 0非静水圧

4.1.3 比エネルギーと比力

水路底から測った水頭を比エネルギーと呼ぶ. E=\frac{v^2}{2g}+\lambda h=\alpha\frac{v^2}{2g}+\lambda h \tag{4.6}

矩形断面水路でα\alphaλ\lambdaが1とみなせる流れでは、単位幅流量をq(=vh)q(=vh)とすると、比エネルギーは次式で表わされる. E=\frac{q^2}{2gh^2}+h \tag{4.7}

単位時間に水路断面を通過する運動量と流体圧の合力の和を、流体の単位体積重量で除した量を比力と呼ぶ. F=\frac{1}{wgA}\int\left(\frac{p}{wg}-wv^2+\frac{p}{wg}\right)dA=\beta\frac{Q^2}{gA}+\lambda'Ah_G \tag{4.8} ここに、hGh_Gは断面の図心の深さである.λ\lambda'は圧力が静水圧分布からずれる度合を表わす係数で、次式で表わされる. \lambda'=\frac{1}{Ah_G}\int\frac{p}{wg}dA \tag{4.9}

矩形断面水路でβ\betaλ\lambda'が1とみなせる水路では、単位幅当りの比力(F=F/BF'=F/B)は次式で表わされる. F'=\frac{q^2}{gh}+\frac{h^2}{2} \tag{4.10} 流れ方向に外力が作用しなければ比力は保存される(運動量保存則).

4.1.4 限界水深と常流、射流

式(4.7)と式(4.10)をq=q=一定の条件で図示すると図-4.1(a)となる.つまりEEFF'はある水深でともに極小値をとる.この水深を限界水深(hch_c)と呼ぶ.また式(4.7)においてEEを一定とした場合および式(4.10)でFF'を一定とした場合のqqhhの関係を図示すると図-4.1(b)となる.すなわち水深が限界水深に等しいときにqqは極大値をとる.したがって限界水深は以下の条件を満足する水深として定義される. \left(\frac{\partial E}{\partial h}\right)_q=0, \quad \left(\frac{\partial F}{\partial h}\right)_q=0, \quad \left(\frac{\partial q}{\partial h}\right)_E=0, \quad \left(\frac{\partial q}{\partial h}\right)_{F'}=0 \tag{4.11}

矩形断面以外の断面をもつ水路については式(4.6)と式(4.8)を用いて、次式を満足する水深が限界水深とされる. \left(\frac{\partial E}{\partial h}\right)_Q=0, \quad \left(\frac{\partial F}{\partial h}\right)_Q=0, \quad \left(\frac{\partial Q}{\partial h}\right)_E=0, \quad \left(\frac{\partial Q}{\partial h}\right)_F=0 \tag{4.12} しかしこの場合には各々の定義によって値が若干異なる.

水深と限界水深の相対的大きさによって流れの状態を次のように分類する. h>hch>h_c: 常流、 h=hch=h_c: 限界流、 h<hch<h_c: 射流

式(4.11)を変形すると、次の関係が得られる. \frac{v}{\sqrt{gh}}=1 \quad (\text{限界流について}) \tag{4.13} v/ghv/\sqrt{gh}はフルード数(FrFr)と呼ばれ、 開水路流の状態を表わす重要な無次元数である. 常流ではFr<1Fr<1、射流ではFr>1Fr>1となる.

図-4.2(a)のような水路底のわずかな変化に対する水深の応答の基本的特性を調べるために、式(4.1)の左辺第1項と右辺第2項を無視し、α\alphaλ\lambdaを1とおいて変形すると次式を得る. \frac{dh}{dx}=\frac{1}{Fr^2-1}\frac{dz}{dx} \tag{4.14} ここにzzは水路底の高さ(dz/dx=i0dz/dx=-i_0)である. すなわち水路底がわずかに上昇すると、 常流(Fr<1Fr<1)ならば水深が減少し、射流(Fr>1Fr>1)ならば水深が増加する.

図-4.2(b)のように水路幅が減少する水路では、同様の解析を行うと、常流であれば水面が低下し、 射流であれば上昇するという結果が得られる.

微小振幅長波の波速ccgh\sqrt{gh}であるから、フルード数は流速vvと波速ccの比となっている.常流ではc>vc>vだから下流で生じた水面撹乱が流れを遡れる.一方、射流ではc<vc<vなので、水面撹乱は流れを遡れない.以上のように常流と射流では流れの性質が著しく異なる.

図-4.1(a)からわかるように、一つの比エネルギーの値に対して1常流と射流の状態が1つずつ存在する.この1対の水深を交代水深という.また1つの比力の値に対しても2つの状態が存在する.この1対の水深を共役水深という.

4.2 等流と平均流速公式 (Uniform flow and uniform flow formulae)

4.2.1 等流

流れの状態が時間的にも空間的にも変化しないとき、「等流」と呼ばれる.等流では式(4.1)の左辺が零となるので、 i_f=i_0 \tag{4.15} すなわち、重力のなす仕事率とエネルギー損失率の等しい状態である.

4.2.2 平均流速公式

水路の断面形状、勾配、水路面の粗さなどと等流流速を結びつける関係式を平均流速公式と呼ぶ.以下にその主なものを紹介する

(1) Chezyの平均流速公式

水路面に働くせん断力をτ0\tau_0、潤辺長をPP、平均流速をvvとすると、単位長さの流下距離で流体のなすせん断仕事率はτ0vP\tau_0vPとかける.また単位時間に通過する流体の重量はρgvA\rho gvAと表わされる.エネルギー勾配は両者の比であるので、 i_f=\frac{\tau_0P}{\rho gA} \tag{4.16} ここに、(R=A/PR=A/P)は径深である.流れが乱流の場合にはτ0\tau_0はおおむねρv2\rho v^2に比例するので次の関係が期待できる. v=C\sqrt{Ri_f} \tag{4.17} ここに、CCはシェジー係数である.等流ではif=i0i_f=i_0だから v=C\sqrt{Ri_0} \tag{4.18} シェジー係数CCは、はじめは各水路固有の定数と考えられたが、実測結果から水理条件によって多少変化することがわかり、CCに関するいくつかの経験式が提案されている.一例としてGanguillet-Kutter(ガンギレ・クッタ)の式[8]を示す. C=\frac{23+\frac{0.00155}{i_0}}{1+\frac{23+\frac{0.00155}{i_0}}{n\sqrt{R}}} \quad (\text{単位:}\ \text{m-s}) \tag{4.19} ここに、nnはKutterの粗度係数と呼ばれ、表-4.2に示すManningの粗度係数nnと同じ値が用いられる.

(2) Manningの平均流速公式[10]

v=\frac{1}{n}R^{2/3}i_0^{1/2} \quad (\text{単位:}\ \text{m-s}) \tag{4.20} ここに、nnはManningの粗度係数と呼ばれ、代表的な値が表-4.2に示されている. Manningの式は形が簡単であり適合性も良いことから、最近は広く用いられている.

以上の公式に含まれる粗度係数は次元をもっているので、計算にあたっては水理量の単位に注意を要する.表-4.2の値を用いるときには(m-s)単位を使用しなければならない.

表-4.2 Manningの粗度係数[7] (Manning's roughness coefficient)

水路の種類nn
閉管路(暗渠)
真鍮管0.009-0.013
鋳鉄管0.010-0.016
鋲接鋼管0.013-0.017
純セメント平滑管0.010-0.013
コンクリート管0.011-0.016
人工水路
滑らかな木材0.010-0.014
コンクリート巻き0.011-0.020
切石モルタル積み0.013-0.017
粗石モルタル積み0.017-0.030
粗石空積み0.023-0.035
土を開削した水路、直線・等断面0.016-0.025
土を開削した水路、蛇行・不整断面0.023-0.030
岩盤に開削した水路、滑らか0.025-0.040
岩盤に開削した水路、粗い0.035-0.050
自然河川
線形、断面とも規則正しく、水深大0.025-0.033
同上、河床が礫、草岸0.030-0.040
蛇行していて、瀬と淵あり0.033-0.045
蛇行していて、水深が小さい0.040-0.055
水草が多いもの0.050-0.080

(3) 対数形の平均流速公式

十分幅の広い水路の乱流の流速分布は対数則で近似できることが知られている[15]. そこで流速の鉛直分布を対数則で与えて水路底から水面まで平均し、 水深hhを径深RRで置き換えた式が対数形の平均流速公式である. \frac{v}{u_*}=6.0+5.75\log_{10}\frac{R}{k_s} \tag{4.21} ここに、u(=τ0/ρ)u_*(=\sqrt{\tau_0/\rho})は摩擦速度、ksk_sは相当粗度である.ksk_sは水路面の凹凸のスケールに比例する量で、水路面が平均粒径ddの砂礫で覆われている場合には、ks=(0.54.0)dk_s=(0.5\sim4.0)dとなる.

4.2.3 等流水深

v=Q/Av=Q/Aという関係と平均流速公式を連立して等流水深(h0h_0)を求めることができる. 例として幅の十分広い水路の等流水深をManningの平均流速公式を用いて求めると次のようになる. h_0=\left(\frac{nQ}{Bi_0^{1/2}}\right)^{3/5} \tag{4.22} ここに、BBは水路幅である.

4.3 不等流(Spatially varied flow)

4.3.1 漸変流の基礎方程式

漸変流の運動は、式(4.1)の左辺第1項を省略し、α\alphaを一定値.λ\lambdaを1とおいた次式で記述される. \alpha\frac{v}{g}\frac{d}{dx}(v^2)+\frac{dh}{dx}=i_0-i_f \tag{4.23} v=Q/Av=Q/Aの関係を用い、抵抗則としてChezyの式(4.17)を用いれば次式となる. \frac{d}{dx}\left(\frac{Q^2}{A^2}\right)+g\frac{dh}{dx}=gi_0-\frac{Q^2}{C^2RA^2} \tag{4.24} 上式は水深hhに関しての1階常微分方程式であり、流量QQおよび各流下距離におけるAAhhの関係を与えて解くことができる.

4.3.2 漸変流の基本的性質

漸変流の基本的性質を、幅の十分広い水路の側方流出入のない流れを例にして示す.式(4.24)は次のように変形される. \frac{dh}{dx}=\frac{i_0-i_f}{1-Fr^2/\alpha} \tag{4.25} 上式の解は、i0i_0の符号とhhh0h_0hch_cの大小関係によって分類される. 各々の解の性質を図-4.3と表-4.3に示す. 表-4.3の急勾配水路とは等流状態が射流となる水路を、緩勾配水路とは等流状態が常流となる水路を指す.

表-4.3 水路の分類 (Classification of channels)

水路の分類水面形hh, hch_c, h0h_0の関係流れの状態
急勾配水路
i>ici>i_c
S1S_1h>hc>h0h>h_c>h_0常流
S2S_2hc>h>h0h_c>h>h_0射流
S3S_3hc>h0>hh_c>h_0>h射流
限界勾配水路
i=ici=i_c
C1C_1h>h0=hch>h_0=h_c常流
C2C_2h=h0=hch=h_0=h_c限界等流
C3C_3h0=hc>hh_0=h_c>h射流
緩勾配水路
i<ici<i_c
M1M_1h>h0>hch>h_0>h_c常流
M2M_2h0>h>hch_0>h>h_c常流
M3M_3h0>hc>hh_0>h_c>h射流
水平水路
i=0i=0
H2H_2h>hch>h_c常流
H3H_3hc>hh_c>h射流
逆勾配水路
i<0i<0
A2A_2h>hch>h_c常流
A3A_3hc>hh_c>h射流

4.3.3 漸変流計算の境界条件

4.1.4で述べたように、流れが射流の場合には水面撹乱が遡上できず、水面形は下流側の水位変化の影響を受けない.したがって射流の漸変流計算の境界条件は常に上流側で与えられる.一方、常流の漸変流計算の境界条件は通常は下流側で与えられる.

漸変流計算の境界条件の与えられる断面を支配断面と呼ぶ.支配断面では流量と水位の関係が一つに定められる.河口では水位を潮位から与えることが可能なので、河口は支配断面である.堰や水門も支配断面となることが多い.また水路勾配が緩勾配から急勾配に変化する断面では、多くの場合限界水深が生じるが、限界水深の値は流量によって定まるから、その場合は支配断面となる.

流れが常流のみの場合、射流のみの場合、および常流から射流に遷移する場合は、支配断面で与えられる境界条件から流れ全体を計算できる.しかし流れが射流から常流に遷移する場合には、上述の条件だけでは遷移点の位置を特定できない.その場合は、4.3.5 (1)で述べるように、比力のつり合い条件を考慮しなければならない.

4.3.4 横流出入のある漸変流

横流出入によって流量が変化する流れでは、流出入水と主流の流速が異なる場合、摩擦損失以外の付加的なエネルギー損失が生じる. このためifi_fを平均流速公式から求めることができず、式(4.23)は実質的には用いることができない.しかし水路が直線的な場合には、流れ方向の運動量のつり合い式から式(4.23)に代る漸変流方程式を導ける. \alpha\frac{v}{g}\frac{d}{dx}(Qv)+\frac{dh}{dx}=i_0-i_f+\frac{v_s}{gA}\frac{dQ}{dx} \tag{4.26} ここに、vsv_sは流出入水の主流方向の流速、ifi_fは水路面摩擦のみによる損失(平均流速公式から求まる)である.式(4.26)から、横流出入のある漸変流の水深の変化は \frac{dh}{dx}=\frac{i_0-i_f+(2v-v_s)(q_s/gA)}{1-(Q^2B/gA^3)} \tag{4.27} で表わされる.ここに、qsq_sは単位長さの流下距離で流出する水量である.

なおvsv_sの値は横流出入させる構造物の構造に依存するが、ダムの横流入余水吐きではvs=0v_s=0、底部取水口のような流出構造物ではvs=vv_s=vとしてよい.後者の場合には付加的なエネルギー損失はないので、式(4.27)は式(4.23)から得られる結果と一致する.

4.3.5 急変流

流れ方向の水位変化などを算定するうえで断面内の運動を無視できない流れを急変流と呼ぶ. 1次元的な取扱いでは断面内の運動を無視できる状況を想定しているので、式(4.1)をもとに急変流の解析を行うことはできない.

しかし急変流の生じている区間が短い場合には、その上下流の運動量と力のつり合いから、急変流がもたらす変化の積分値を求められる場合も多い.以下その例を述べる.

(1) 跳水

流れが射流から常流に遷移するとき、図-4.4に示すように渦を伴う急激な水位変化を生じる. この現象を跳水という.水平で一様な断面の水路における跳水では、式(4.8)で表わされる比力が保存される.矩形断面水路の場合には式(4.10)から次の関係が導かれる. \frac{h_2}{h_1}=\frac{1}{2}\left(-1+\sqrt{1+8Fr_1^2}\right) \tag{4.28} ここに、h1h_1は上流水深、h2h_2は下流水深、Fr1Fr_1は上流のフルード数である.なおh1h_1h2h_2は共役水深の関係にある. 跳水によって生じる水頭損失は次のように表わされる. \Delta E=\frac{(h_2-h_1)^3}{4h_1h_2} \tag{4.29}

(2) 急拡部、急縮部の流れ

図-4.5(a)に示す矩形断面水路の急拡部では、流れに直角な壁面での圧力を静水圧分布と仮定すると、比力のつり合い式が次のようにかける. F_2-F_1=\frac{1}{2}(b_2-b_1)h_1^2 \tag{4.30} これから急拡部前後の水深h1h_1,h2h_2の関係式が得られる. Fr_2^2=\frac{b_2}{b_1}\frac{h_1}{h_2}\left[1-\left(\frac{h_1}{h_2}\right)^2\right]\cdot 2\left[\frac{b_2}{b_1}-\left(\frac{h_1}{h_2}\right)\right] \tag{4.31} 同図(b)に示す急縮部について同様の計算を行うと次式を得る. Fr_1^2=\frac{h_2}{h_1}\left[\left(\frac{h_2}{h_1}\right)^2-1\right]\cdot 2\left[\left(\frac{h_2}{h_1}\right)-\left(\frac{b_2}{b_1}\right)\right] \tag{4.32}

(3) 段落ち、段上り流

図-4.6(a)に示す矩形断面水路の段上り部の流れでは、流れに直角な面に下流水深に対応した静水圧が働いていると仮定すると、比力のつり合い式が次のようにかける. F_1-F_2=\frac{1}{2}\Delta z(\Delta z+2h_2) \tag{4.33} これから段上り部前後の水深h1h_1h2h_2の関係式が得られる. Fr_1^2=\frac{\frac{h_2}{h_1}\left[1-\left\{\left(\frac{\Delta z}{h_2}\right)+\left(\frac{\Delta z}{h_1}\right)\right\}^2\right]}{2\left[1-\left(\frac{h_2}{h_1}\right)\right]} \tag{4.34} 図-4.6(b)に示す段落ち部について同様の計算を行うと、次式を得る. Fr_2^2=\frac{\frac{h_1}{h_2}\left[\left\{1+\left(\frac{\Delta z}{h_2}\right)\right\}^2-\left(\frac{h_1}{h_2}\right)^2\right]}{2\left[1-\left(\frac{h_1}{h_2}\right)\right]} \tag{4.35}

(4) 衝撃波

図-4.7に示すように角度θ\thetaだけ屈折する側壁をもつ水路で射流が生じると、屈折点PPから一定の角度で定在波が発生する.この定在波を衝撃波と呼ぶ.

波面に直角方向の比力の保存式から、波面角度β\betaおよび衝撃波前後の水深h1h_1h2h_2について以下の関係式が導かれる. \frac{h_2}{h_1}=\frac{1}{2}\left(-1+\sqrt{1+8Fr_1^2\sin^2\beta}\right) \tag{4.36} \tan\theta=\frac{[1-(h_1/h_2)]\tan\beta}{1+(h_1/h_2)\tan^2\beta} \tag{4.37}

4.4 不定流(Unsteady flow)

時間的、空間的に変化する流れを不定流と呼ぶ. 不定流も、空間的変化の度合から、漸変流と急変流に分類できる.

4.4.1 漸変不定流

(1) 基礎方程式

式(4.1)において、β\betaα\alphaを一定値、λ\lambdaを1とおいた次式が漸変不定流の運動方程式である. g\beta\frac{\partial v}{\partial t}+g\alpha\frac{v}{g}\frac{\partial v}{\partial x}+\frac{\partial h}{\partial x}=i_0-i_f \tag{4.38} 横流出入がない場合、連続条件式は次のようにかかれる. \frac{\partial A}{\partial t}+\frac{\partial Q}{\partial x}=0 \tag{4.39} 式(4.38)の各項の相対的大きさから、種々のレベルの計算モデルがある.

  • kinematic waveモデル 0=i_0-i_f \tag{4.40}
  • diffusionモデル \frac{dh}{dx}=i_0-i_f \tag{4.41}
  • dynamic waveモデル \beta\frac{\partial v}{\partial t}+\alpha\frac{v}{g}\frac{\partial v}{\partial x}+\frac{\partial h}{\partial x}=i_0-i_f \tag{4.42} 式(4.40)と式(4.41)は時間微分項が省略されているが、式(4.39)の連続式が時間微分項を含んでいるので、これと連立することによって不定流性を表わすことができるのである.

(2) kinematic waveモデル

河川の洪水流のように水位変化が比較的緩慢な流れで、水路勾配がある程度急な場合には、近似的に式(4.40)が成立する. このとき流量QQは断面積AAの関数となるので、式(4.39)は、 \frac{\partial A}{\partial t}+\frac{dQ}{dA}\frac{\partial A}{\partial x}=(v+A\frac{dv}{dA})\frac{\partial A}{\partial x}=0 \tag{4.42} 上式は洪水波が波速c=v+A(dv/dA)c=v+A(dv/dA)で伝播することを示している. これをKleitz-Seddonの法則[12],[13]と呼ぶ.ccの値は平均流速公式から求められる.Manningの公式を用いた場合はc=(5/3)vc=(5/3)v、Chezyの公式を用いた場合はc=(3/2)vc=(3/2)vとなる.

(3) 特性曲線法

特性曲線法はdynamic waveモデルの代表的解法の一つである.以下では水深に比べて幅の十分広い矩形断面水路について取り扱う.またβ\betaα\alphaは近似的に1とおく.式(4.38).式(4.39)は次のようになる. \frac{\partial v}{\partial t}+v\frac{\partial v}{\partial x}+g\frac{\partial h}{\partial x}=g(i_0-i_f)=0 \tag{4.43} \frac{\partial h}{\partial t}+v\frac{\partial h}{\partial x}+h\frac{\partial v}{\partial x}=0 \tag{4.44} 長波の波速をccとし、c2=ghc^2=gh2cdc=d(gh)2cdc=d(gh)という関係を用いると、以下の式を得る. \frac{\partial v}{\partial t}+v\frac{\partial v}{\partial x}+2c\frac{\partial c}{\partial x}=g(i_0-i_f) \tag{4.45} 2\frac{\partial c}{\partial t}+2v\frac{\partial c}{\partial x}+c\frac{\partial v}{\partial x}=0 \tag{4.46} 2式の和と差をとり整理すると次のようになる. \frac{\partial(v+2c)}{\partial t}+(v+c)\frac{\partial(v+2c)}{\partial x}=g(i_0-i_f) \tag{4.47} \frac{\partial(v-2c)}{\partial t}+(v-c)\frac{\partial(v-2c)}{\partial x}=g(i_0-i_f) \tag{4.48} 上式は、速度(v+c)(v+c)および(vc)(v-c)で移動する座標系からみたときの(v+2c)(v+2c)および(v2c)(v-2c)という量の実質的時間変化率がそれぞれg(i0if)g(i_0-i_f)であることを示している. したがって近似的に、 C_+: \frac{dx}{dt}=v+c\text{上で、}\quad \delta(v+2c)=g(i_0-i_f)\Delta t \tag{4.49}
C_-: \frac{dx}{dt}=v-c\text{上で、}\quad \delta(v-2c)=g(i_0-i_f)\Delta t \tag{4.50} このような線.C+C_+CC_-を特性曲線と呼ぶvvccが既知である時空間上の2点から引かれた2本の特性曲線の交点におけるvvccの値を式(4.49)と式(4.50)を連立して求めることができる.

4.4.2 段波

定常状態で流れている開水路流に急に水門を開いて流量を増加させたり、あるいは閉じて急減させたりすると、水面が不連続的に変化する波が発生し伝播する.この現象を段波と呼ぶ.段波は急変不定流の一つである.

水深に比べて幅の十分広い矩形断面水路を一定の波速ccで移動する段波を考える(図-4.8(a)).観測者も段波と同じ速度で移動しながら観察したとすると、図(b)に示すように静止してみえる. これは跳水と同じである.そこで図(b)の流れについて跳水と同じように比力の保存式をたてて波速ccについて解けば次式を得る. c=v_1+v_2\pm\sqrt{gh_1\frac{h_2}{h_1}} \tag{4.51}