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事前調査

事前調査の目的

建設工事は、発注者の指定する場所に指定する構造物を施工する、という単品受注生産である。一つ一つがすべて新しい仕事であり、その都度その工事に適した施工法を選定しなければならない。したがって、目的構造物の設計図書について精通するとともに、契約条件や現場条件を十分理解して工事にのぞむ必要がある。特に、建設工事は自然を相手に取り組むものであるから、現場の自然環境、気象条件および立地条件などを事前に十分調査·把握することが、安全で確実な施工計画の立案や適切な工事価格の見積り、さらには工事全体の成功につながるので、ことに重要である。

契約条件の確認

施工計画を作成するにあたっては、現場で考えられるあらゆる事態に適切に対処できるよう、まず、契約書および設計図書の内容を精査し、工事の目的ならびに契約金額、目的構造物に要求されている品質、工期について十分精通しておく必要がある。この場合、特に確認すべき点は、次のとおりである。

契約内容の確認

  1. 事業損失、不可抗力による損害に対する取扱い方法
  2. 工事中止に基づく損害に対する取扱い方法
  3. 資材、労務費の変動に基づく変更の取扱い方法
  4. 瑕疵担保の範囲等
  5. 工事代金の支払条件
  6. 数量の増減などによる変更の取扱い方法

設計図書の確認

  1. 図面と現場との相違点および数量の違算の有無
  2. 図面、仕様書、施工管理基準などによる規格値や基準値
  3. 現場説明事項の内容

その他の確認

  1. 監督職員の指示、承諾、協議事項の範囲
  2. 当該工事に影響する附帯工事、関連工事
  3. 工事が施工される都道府県、市町村の関係条例とその内容

なお、契約内容に疑問がある場合は、発注者に問い合わせ、あるいは協議して、文書を交換し、契約の範囲や責任の範囲を明瞭にしておく必要がある。

現場条件の調査

現場条件の事前調査の結果がその後の施工計画の良否を決めるので、個々の現場に応じた適切な事前調査を実施する必要がある。現場調査の一般的な項目は、次のとおりである。

自然·気象条件の把握

  • 地形·地質·土質·地下水(設計との照合も含む)
  • 施工に関係のある水文気象データ

仮設計画の立案

  • 施工方法、仮設方法·規模、施工機械の選択方法
  • 動力源、工事用水の入手方法

資機材の把握

  • 材料の供給源と価格および運搬路
  • 労務の供給、労務環境、賃金の状況

輸送の把握

  • 道路の状況、運賃および手数料、現場搬入路

近隣環境の把握

  • 工事によって支障を生ずる問題点
  • 用地買収の進行状況
  • 隣接工事の状況
  • 騒音、振動などに関する環境保全基準、各種指導要綱の内容
  • 文化財および地下埋設物などの有無

建設副産物の適正処理

  • 建設副産物の処理方法·処理条件など

その他

  • その他

なお、具体的な調査項目、調査方法、頻度などは、それぞれの現場に応じて適切に設定する必要がある。現場条件の事前調査項目は、数が多いため、項目を見落とさないように、下表のようなチェックリストを作成するようにする。

【現場条件事前調査チェックリスト】

  • 準備持参品
    • 調査参加者の決定、調査項目分担、集合場所時間打合せ、出先等への連絡、利用交通手段、調査時間スケジュール、予定日の天気予報、地図、設計図書、野帳、スケール、テープ、カメラ、資料入ビニール袋、双眼鏡、ハンドレベル、ポール、ハンドオーガー、コーンぺネトロメーター、ハンマー、作業衣、長靴、スコップ、磁石、トランシーバー、カメラ
  • 地形
    • 工事用地、センター杭、幅杭、高低差、地表勾配、切取高、危険防止箇所、設計図書と現地の相違点、土取場、土捨場、骨材採取場、材料貯蔵場、排水
  • 地質
    • 粒度、締固め特性、自然含水比、硬さ、混有物、岩質、亀裂、断層、地層、落石、地すべり、たい積層、地盤の強さ、支持力、トラフィカビリティ、地下水、伏流水、湧水、既存の資料、柱状図、近接地の例、地元からの情報収集
  • 気象
    • 降雨量、降雨日数、降雪開始時期、積雪量、融雪期、気温、日照、風向、風力、台風、波浪、ハザードマップ
  • 流況
    • 各季節ごと(梅雨期、台風期、冬期、融雪期)の低水位と高水位、平水位、洪水(洪水位、洪水量、危険水位、出水時間、ひん度などについての過去の記録を調査、また本川より支川への逆流、たん水時間、排水ポンプ能力)、潮位の河川への影響、干満差、最高最低潮位、付近の聞き込み
  • 電力水
    • 工事用電源(電圧、容量、引込距離、配線)、電力以外の動力源の必要性
    • 工事用水(水道か井戸か地表水か、水量、場所、水質、取水設備、既得取水者)
  • 仮設建物施工施設
    • 事務所、宿舎、倉庫、車庫、建設機械の設置場および修理施設、材料貯蔵所、材料試験場、プラント、火薬庫、変電所、給油所、電話、電灯、上水道、下水道、燃料ガス、既存の病院·保健所·修理工場などの有無
  • 輸送
    • 搬入道路(幅員、路面、路盤の強度、舗装の有無、カーブ、交通量、交差点、踏切、交通規制、荷重制限、高さ制限、トンネル、橋梁)
    • 鉄道軌道(運行回数、始終発時刻、最寄り駅までの距離、荷役施設、運賃および手数料)
    • 船舶(水路、水深、きっ水、こう門、港までの距離、荷役施設)
  • 材料
    • 砂、砂利、栗石、砕石、石材、盛土材料、木材、鋼材、生コンクリート、コンクリートニ次製品などについて生産地、生産量、距離、貯蔵量、生産品質、単価、調達において競合する他工事の有無
  • 労力
    • 賃金、地元募集可能人数、他地方移入可能人員、農繁期の出役可能人員、婦人労働力、熟練度、特殊技能者、他工事との競合、地元下請業者、遠距離の場合のマイクロバス輸送
  • 工事用地
    • 買収済の用地境界、未解決の用地および物件、解決済の未移転物件、未解決の場合の解決見込、借用地、借地料、耕作物
  • 支障物件
    • 地下埋設物(電力、通信、ガス、上下水道、排水路、用水路)
    • 地上障害物(送電線、通信線、索道、鉄塔、電柱、やぐら)
    • 文化財
  • 環境問題
    • 交通問題(交通量、定期バス有無と回数、通学路、作業時間に対する制限、祭礼行事障害、観光ルート、回り道)
    • 公害問題(騒音、振動、煙、ごみほこり、取水排水などが学校、病院、商店、住宅に与える影響)
    • 相隣関係(公害問題以外に掘削による近接家屋への影響、耕地の踏み荒しおよび樹木の伐採補償、土砂および排水の流入)
  • 権利関係
    • 水利権、漁業権、林業権、土捨権、採取権、鉱業権、地上権、地役権、特許
  • 工事関連
    • 将来の追加工事の可能性、設計変更の可能性のある箇所、付帯工事、関連別途工事、隣接している他業者の工事

また、現場調査の実施にあたっては、工法、段取り、建設機械の機種選定、工期などを常に頭に浮かべながら踏査する。また、ベテランの意見を聴いたり地元からの情報収集などにも努めるようにする。重要な工事の調査項目については、判断の偏りをなくすために、複数の者で調査したり、時期を改めて調査することも重要である。