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品質管理の概説

品質管理の定義

品質管理とは、設計図および仕様書に示された形状と規格を十分満足するような土木構造物を最も経済的に作るための、その工事のすべての段階における品質の管理体系である。工事の問題点を把握するとともにその改善方法を見出すことにより、構造物の欠陥を未然に防ぎ、工事に対する信頼性を増すものである。

日本産業規格 JISZ8101-1981(1999 年に廃止され、ISO9000 ファミリー(またはシリーズ)に統合)では、品質管理を「買手の要求に合った品質の品物またはサービスを経済的に作り出すための手段の体系」と定義している。考え方は以下のとおりである。

  1. 顧客に提供する品物やサービスが顧客の要求する品質、価格、納期になっていること
  2. 品物やサービスなどを、各職場や部署で他社より安く早く効率よく提供できること
  3. それらを実行するために、固有技術だけではなく統計を利用した管理技術を全社的に行うこと

また、品質管理を効果的に実施するためには、市場調査、研究、製品の企画、開発、設計、生産準備、購買、外注、製造、検査、出荷、販売およびアフターサービス、財務・経理、人事、総務などの企業の全部門で品質管理活動を進めていく必要がある。

品質管理の範囲では、「狭義の品質管理」と「広義の品質管理」があり、以下のとおり定義されている。

  • 狭義の品質管理とは、製品のみの品質管理活動を行う顧客に提供する活動である。
  • 広義の品質管理とは、顧客や社会の要求を満たし、ニーズに合った製品やサービスを作って提供するための活動「TQM」(総合的品質管理)や「TQC」(全社的品質管理)である。

なお、本書で取り扱う品質管理は、主として統計的手法を利用した、工事の施工段階での品質向上のための手法としての狭義の品質管理であり、統計的品質管理に関するものである。

品質管理に関する ISO の規格体系

ISO 規格とは、国際標準化機構(ISO)が定めている国際規格のことである。現在、建設業で取り組まれている主なものとしては、ISO9000 ファミリー(品質マネジメントシステム)と ISO14000 ファミリー(環境マネジメントシステム)の 2 種類がある。ISO 規格の認証取得は、組織(受注者)が、国際的にも国内的にも顧客(発注者)の要求事項や社会的要求事項、組織の要求事項に適合しうる能力を保持していることを第三者である審査登録機関により証明されることにある。

日本では公益財団法人日本適合性認定協会が「認定機関」として ISO に加盟しており、日本にある複数の審査登録機関を審査し認定する役割を負っている。

図-1:ISOマネジメントシステム審査登録の仕組み

ISO9000 ファミリー

組織(企業等)が顧客の要求に応えるために、要求に関する情報を吸い上げ(インプット)、製品やサービスに反映して提供する(アウトプット)必要がある。このインプットをアウトプットに変換することを「プロセス」と呼んでいる。絶えず変化する顧客の要求に応えるために、プロセスを継続的に改善していくことを品質マネジメントシステムという。品質マネジメントシステムは、顧客の信頼と満足を得ることを目標に、品質方針や品質目標を設定して、これらを達成するために組織を適切に指揮·管理する仕組みのことであり、組織の構造、責任区分、業務手順、工程、経営資源など、受注·生産·販売活動に関わるすべてを指す。品質マネジメントシステムの基本·用語定義、要求事項、組織のパフォーマンス改善、マネジメントシステムの監査について定めているのが、ISO9000 ファミリーである。

ISO9000 ファミリーの全体構成

ISO9000 ファミリーは、次の 4 つのコア規格から構成されており(図-2)、これらをひとつのセットとして活用することにより最大限のメリットが引き出せるようになっている。

図-2:ISO 9000ファミリーの構成図

ISO9000 ファミリーの特徴

  1. あらゆる業種および規模への適用可能性の向上
    • あらゆる産業および規模の組織にも適用できるような用語の選択、要求事項の記述がされている。
  2. 品質マネジメントの原則の採用
    • 品質マネジメントの原則は『3 品質マネジメントの原則』に示す 7 個である。これらの原則を理解し、実行することで品質マネジメントの目的を達成することができる。
  3. プロセスアプローチの採用
    • 品質マネジメントシステムの構築、実施、改善においてプロセスを明確にし、一連のプロセスシステムとして適用することを採用する。
  4. 顧客志向の重視
    • 顧客満足、顧客のニーズの把握、要求事項の理解、顧客とのコミュニケーションなど、顧客の重要性を強調する。
  5. 継続的改善の導入
    • 品質マネジメントシステムの運営において、継続的な改善を全面的に導入している。
  6. 資源の運用管理の充実
    • 品質マネジメントにおける資源(人、設備、資材、資金、技術、情報、作業環境等)の重要性を認識し、記述を充実する。
  7. トップマネジメントの責任および役割の拡大ならびに明確化
    • 組織運営におけるトップマネジメント(経営者)の役割の重要性を認識し、トップマネジメントが実施すべき事項を明確に規定する。

品質マネジメントの原則

  1. 顧客重視
    • 品質マネジメントのもっとも重視している視点は、顧客の要求を満たして顧客の期待を上回る努力をすることである。
  2. リーダーシップ
    • すべての階層でのリーダーは、目的と方向性を一致させ、組織の目標を達成させることに人々が参画する状況を構築する。
  3. 人々の積極的参加
    • すべての人々が力量をもち、権限を与えられ、参画することが、組織にとって不可欠である。組織全体にわたって、人々が参画するとき組織の価値創造能力は高まる。
  4. プロセスアプローチ
    • 活動が、一連のシステムとして機能し、相互に関連するプロセス(インプットをアウトプットに変換することを可能にするために経営資源を使って運営管理する活動)が理解され運用されたときに、一貫性があり予測可能な結果が、より効果的で効率的に達成される。
  5. 改善
    • 成功している組織は、継続的な改善を重視している。
  6. 客観的事実に基づく意思決定
    • データ、情報の分析および評価に基づく決定は、望ましい結果を生み出す可能性を高める。
  7. 関係性管理
    • 継続的な成功のためには、組織は協力会社のような、利害関係者との関係をうまく運営しなければならない。

プロセスおよびプロセスアプローチ

プロセスの特色
  • 何を目的として、どのような活動や作業をどの範囲で行い、どのような結果(アウトプット)を得るかを明確にできる。
  • P-D-C-A サイクルがすべてのプロセスに適用可能。サイクルを回すことにより、継続的改善が実施される(図-3)。

P-D-C-A サイクルとは、

  • 顧客要求事項および組織の方針に従った結果を出すために必要な目標およびプロセスを確立する。(Plan)
  • プロセスを実行する。ここでは、その有効性についても検討する。(Do)
  • プロセスおよび製品を、方針、目標および製品に対する要求事項に照らして監視し、測定し、結果を報告する。(Check)
  • プロセスのパフォーマンスを継続的に改善するための処置をとる。(Act)

図-3:品質マネジメン卜のサイクル

プロセスアプローチ
  • プロセスアプローチとは、これらのプロセスを明確にし、その相互作用を把握することによって全体を管理することである。
  • プロセスアプローチの利点は、システム内の個々のプロセス間のつながり、およびそれらの組合せと相互作用を継続的に管理することができることである(図-4)。また、プロセスアプローチを用いることにより、システム全体の活動が整合性の取れた、実際的な流れとして管理することができる。

図-4:プロセスに基づいた品質マネジメン卜システムのモデル図

ISO9001 認証取得の活用

ISO 規格の認証取得は、組織が顧客の要求事項に適合し得る能力があることを第三者である審査登録機関により証明されることにある。したがって、工事発注者は、受注者の持つ要求事項を満足させる能力の実証および評価に活用することができる。 国土交通省および一部地方自治体発注の ISO9001 活用工事では、ISO9001 認証取得した工事受注者の品質マネジメントシステムに基づく自主的な品質管理業務を活用して、監督業務の一部を工事受注者の検査記録の確認に置き換えることで、工事の品質確保と効率化が図られている。

ISO14000 ファミリー

ISO14000 ファミリーは、環境保全のための規制値や基準値を定めるものではなく、組織が自主的に環境方針を定め、それを実行していくための環境マネジメントシステムおよびシステムを支援する様々な手法を規定した一連の規格である(図-5)。

図-5:ISO 14000ファミリーの構成図

ISO9000 ファミリーと ISO14000 ファミリーの比較

ISO9000 ファミリーと ISO14000 ファミリーはいずれもマネジメントシステムと呼ばれる組織の経営運用に関わる仕組みや活用に関する規格であり、各々の要求事項には共通するところが多い。

ただし、各々の規格はその目的が違い、ISO9000 ファミリーは「顧客ニーズ」に対応するために組織内に品質マネジメントシステムを構築し、それを実施·運用することによって顧客が満足する製品やサービスを提供するものであるが、ISO14000 ファミリーは「広い利害関係者のニーズや環境保護に対する社会の新しいニーズ」に対応するために組織内に環境マネジメントシステムを構築し、それを実施·運用することで環境負荷の低減を図ることが目的である。ISO9000 ファミリーおよび ISO14000 ファミリーの中で中心となる規格が、ISO9001 および ISO14001 である。