品質管理の方法
品質管理の目標
土木工事における品質管理の直接の目標は、次の2点を確認することである。
- 構造物が規格を満足していること。
- 工程が安定していること(工程とは、工期工程とは異なり、品質が作り出される過程をいう)。
土木工事の品質管理においては、発注者が要求した規格や品質を十分なゆとりをもって満足させながら、土木構造物を最も経済的に造られなければならない。したがって、まず、検査した個々のデータがゆとりを持って規格値を満足することが必要である。ただし、全体として規格値に対してゆとりがありすぎる場合、その原因が必要以上に高級な材料の使用であったり、必要以上に丁寧な施工であれば不経済な工事となり、適切とはいえない。次に、個々のデータは規格値を満足しても、そのバラツキが異常に大きい場合、工程が安定しているとはいえず、検査しなかった部分の品質に対する信頼性が低下するので、工程が安定している必要がある。このようなことから、上記2点を適切な範囲で同時に満足させることが品質管理の目標となる。なお、一般に、構造物の品質を確認する方法として、ヒストグラムや工程能力図が用いられ、工程の安定性を確認する方法として管理図が用いられる。
工程能力図
- 特徴
- 横軸に時間や測定No.、縦軸に品質特性値をとり、規格値を示す線を記入して、データを時間の順序に打点した図である。
- 規格値で管理する。
- 目的・利点
- 時間的な品質変動や傾向がわかる。
- 規格値との関係がわかる。
- 欠点:
- 統計的手法が使われていないため、工程の異常は判断できない。
ヒストグラム
- 特徴
- 横軸に品質特性値、縦軸に度数をとり、規格値を示す線を記入して、品質特性の分布状態を表した度数分布図である。
- 規格値で管理する。
- 目的・利点
- 分布の 状態から規格値、中心位置(平均値)の関係がわかる。
- 工程の状態を把握できる。
- 欠点
- 時間的変化や変動の様子がわからない。
管理図
- 特徴
- 品質データを統計的に処理し平均値やバラツキの範囲などに対する管理限界線を求めて記入し、その後のデータの平均値やバラツキの範囲を打点した図である。
- 管理限界線で管理する。
- 目的・利点
- 工程が安定しているかどうかを評価する。
- 欠点
- 時間的変化や変動の様子がわからない。
- 規格値との関係はわからない。
品質管理の手順
品質管理の手順として、工程能力図、ヒストグラムや管理図の作成に入る前に、品質特性の選定、特性に関する品質標準の設定、品質標準を守るための作業標準の決定などについて、十分検討することが必要である。
- 手順1:品質特性の選定
- 管理しようとする品質特性を選定する。一般的な品質特性の例はこちらを参照。
- 手順2:品質標準の設定
- 選んだ品質特性に関する品質標準を設定する。品質標準は、設計図· 仕様書に定められた規格をゆとりをもって満足するための施工管理の目安を設定するものである。実施可能な値でなければならず、一般的には、平均値とバラツキの幅で設定する。
- 手順3:作業標準の決定
- 品質標準を満足させるための作業標準(作業の方法)を決定する。品質標準を満足する構造物を施工するために、作業ごとに用いる材料、作業手順、作業方法等をできるだけ詳細に決める。
- 手順4:データ採取
- 作業標準に従って施工し、一定の期間、データを採る。試験方法および検査方法の標準を定める。
- 手順5:分析確認
- 処理: 各データが十分ゆとりをもって品質規格を満足しているかどうかを工程能力図、ヒストグラム等により確かめたのち、管理図をつくり、工程が安定しているかどうかを確かめる。
- 手順6:作業方法の見直し
- 施工の途中で管理図により工程に異常が生じたと判定された場合、原因を追求し、再発しないよう作業方法を見直すなどの処置をとる。
- 手順7:作業の継続
- 処理: 引き続き作業を続け、データを監視しながら、前回と同程度の期間(例えば1か月)、あるいは、データが一定の数(例えば20点)に達したら、手順5以下を繰り返す。
この手順は、具体的に品質管理を進めるときに実行していく順序であるが、手順5から7における統計的手法として、工程能力図、 ヒストグラムや管理図などが用いられる。
品質特性の選定
品質管理の第一歩は、構造物に要求されている品質・規格(設計品質)を正しく把握することである。設計品質は、一般に、設計図書、特に仕様書に示されているが、それらを満足させるためには、何を具体的な品質管理の対象項目とするかをあらかじめ整理しておく必要がある。品質管理におけるこのような具体的な対象項目を品質特性という。(管理特性、管理項目と呼ぶこともある)
なお、品質管理の対象とする品質特性は、次のようなものであることが望ましい。
- 工程(作業)の状態を総合的に表すものであること。
- 品質に重要な影響を及ぼすものであること。
- 代用特性(真の品質特性と密接な関係があり、その代わりとなり得る品質特性)また は、工程要因を品質特性とする場合は、真の品質特性との関係が明らかなものであること。
- 測定しやすいものであること。
- 工程に対して処置がとりやすいものであること。
- 早期に結果が得られるものであること。
- できるだけ工程の初期段階において測定できるものであること。
工程要因を品質特性とする場合とは、例えば、土の締固め管理の基準には乾燥密度などを規定する品質規定方式と締固め機械や転圧回数などの施工方法を基準とする工法規定方式があるが、工法規定方式を用いる場合がこれに相当する。
品質標準の設定
品質標準とは、施工に際して実現しようとする品質の目標であり、従来は設計品質そのものを採用している場合が多いが、品質特性のバラツキが大きい場合は、設計品質を満足しないものが出てくるおそれがある。したがって、品質標準は設計品質に対して余裕のある設定としなければならないが、統計的理論だけから合理的で妥当な品質標準を設定すると困難なことが多くなる。
そこで、土木工事においては、過去の実績や試験施工などをもとに当初の概略標準を定め、施工の過程に応じて結果をフィードバックしながら、標準を改訂していく方法をとる場合が多い。