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河川法の変遷

昭和39年制定 河川法

明治29年制定の河川法は、制定以来、我が国の治水、利水に関する河川行政の基本法として約70年間適用された。

その後の社会経済情勢の変化により、治水・利水両面にわたり、地先ごとの利害の対立を超えた水系一貫の総合的・統一的な河川管理に対する世間の認識と要求の大きな高まりに応えるため、明治29年制定の旧河川法の全面改正作業が進められ、昭和39年に河川法が制定された。

改正に当たっての重点事項は、以下のとおりである。

  • 従来の区間主義河川管理制度を改め、河川を水系別に重要度に応じて区分する水系主義河川管理制度を採用し、一級河川は大臣、二級河川は都道府県知事、準用河川は市町村長が管理することとし、河川管理のあり方を明確化

  • 水利使用を中心とする河川使用関係の規定を整備

  • ダムによる災害の防止に関する規定を整備

昭和39年河川法の概要

昭和39年制定の河川法の概要は次のとおりである。

  1. 河川管理の目的

    • 洪水、高潮等による災害発生の防止
    • 河川の適正な利用
    • 流水の正常な機能の維持
  2. 河川の種類と河川管理者

    • 一級河川
    • 二級河川
    • 準用河川
  3. 河川工事

    • 河川工事の内容
      • 河川の流水によって生じる公利を増進するための河川工事
      • 河川の流水によって生じる公害を除却し、又は軽減するための河川工事
  4. 河川の使用及び河川に関する規制

  5. 水利調整

  6. ダムに関する特則

昭和47年改正

流況調整河川工事・特別水利使用者負担金制度の創設

都市化の発展、産業の発展等社会経済情勢の変化によって生じた都市地域における水需要の増大と治水環境の悪化などに対応するため、二以上の河川を接続して、これら河川の余剰水を利用しながら流水の状況を調整し、洪水防御、内水排除、維持用水の確保を図るとともに、併せて水の効率的な利用を図るべく、「流況調整河川工事」を行うことになった。この流況調節河川工事を行う場合、当該工事により新たに河川の流水を利用することが可能となる者に適正な費用の負担をさせることが適当であることから、専用の施設を新設又は拡張して流水を占用する者(特別水利使用者)に対して当該工事に要する費用の一部を負担させることができることとし、流況調整河川工事の促進が図られた。

準用河川制度の拡大

準用河川の指定の対象は、当初、一級河川の水系及び二級河川の水系以外の水系に係わる河川とされていたため、一級水系及び二級水系の末端の小河川は普通河川として取り残された状況にあった。これら河川については、河川管理者の許可を受けずに不法に工作物を設置する事例、形状を変更して河川を埋没させる事例など、河川の管理が適正に行われず、河川としての機能が損なわれ、降雨による浸水被害等地域住民の生活環境に悪影響を与えるようになっていた。

このため、一級水系又は二級水系の末端の河川についても河川法を準用して管理する途を開き、その管理の強化を図ることとなった。

昭和62年改正

市町村施行の河川工事・維持制度の創設

近年、河川工事等を実施するに当たって、まちづくりの一環として行われる他事業との調整、地域住民の意向の的確な反映、地域の個別事情へのきめ細かい配慮等が求められるようになった。こうした状況のもと、まちづくりの観点から景観、親水性等河川の環境機能を十分に発揮させたいという市町村の要望に適切に応えるべく、受益の範囲が広域に及ばず、水系全体に著しい影響を与えないような河川工事・維持について、市町村長が行えるようにした。

市町村長が施行できる河川工事は、例えば、高水敷の整備、小規模な堰や流水の浄化施設の設置又は改築、堤防の小段又は側帯の整備等である。

平成3年改正

高規格堤防特別区域制度の創設

後背地に人口、資産等が高密度に集積する低平地を抱える大河川においては、計画高水流量を超える超過洪水時の破堤による甚大な被害を回避するため、堤内地側に緩い傾斜を有する幅の広い(堤防の高さのおおむね30倍)堤防(高規格堤防)をつくる必要がある。

一方、このような高規格堤防は、その構造上通常の土地利用が堤防上で行われても河川管理上支障はなく、また、まちづくりの観点からはむしろ当該堤防上の土地を有効活用することが望ましい。このため、高規格堤防の河道部や通常の堤防の天端に当たる部分を除き、その区域を高規格堤防特別区域として河川区域規制を緩和し、住宅やビルの建築、道路、公園の設置等の通常の土地利用を認めることとし、高規格堤防の整備を促進することとした。

平成7年改正

河川立体区域制度の創設

近年、流域の開発が進み、都市化の進展が著しい河川では、放水路、調節池等の河川管理施設を整備しようとしても、当該地域の土地利用が稠密で、権利関係が複雑であることから用地取得が難航し、事業の進歩がかんばしくない状況にある。このような状況を改善し、都市の中で治水対策の実施を効果的に進めるため、一定の河川管理施設について、河川法に基づく規制の及ぶ範囲である河川区域の範囲を上下について立体的に限定(河川立体区域)し、その上部空間の利用を基本的に自由にすることとした。

平成9年改正

近年では、社会経済情勢の変化、世界的な自然環境への意識の高まりなどもあり、河川には治水・利水だけではなく、うるおいのある水辺空間や多様な生物の生息環境としての役割が求められるようになった。また、地域の風土と文化を形成する重要な用として個性を活かした川づくりも求められている。

このような時代の背景の変化もあって、平成8年6月には河川審議会において、「川の365日」など河川行政の転換を求めるものとして、「21世紀の社会を展望した今後の河川整備の基本的方向について」答申が出され、さらに12月、その具体的な制度化のための提言「社会経済の変化を踏まえた今後の河川制度のあり方について」が建設大臣に対して行なわれた。これらの答申及び提言にもとづき、平成9年6月、「河川法の一部を改正する法律」が施行された。

改正の概要

  1. 河川環境の整備と保全の目的の一つに

    • 河川の持つ多様な自然環境や水辺空間に対する国民の要請の高まりに応えるため、河川管理の目的として、「治水」、「利水」に加え、「河川環境」(水質、景観、生態系等)の整備と保全を位置付けた。
  2. 新たな計画制度の導入

    • 地域の意向を反映した河川整備計画を導入した。
      • 河川整備基本方針(長期的な方針)
        • 計画高水流量等の基本的な事項について、河川管理者が河川審議会の意見を聴いて定める。
      • 河川整備計画(具体的な整備の計画)
        • ダム、堤防等の具体的な整備の計画について、河川管理者が地方公共団体の長、地域住民等の意見を反映させて定める。
  3. 異常渴水時の円滑な水利使用の調整のための措置

    • 円滑な水利使用の調整を図るため、水利使用者は早い段階から協議に努め、また、河川管理者は情報提供に努めるとともに、水融通に許可が必要とされる場合の手続の簡素化を図る。
  4. 樹林帯の整備と保全

    • 堤防やダム貯水池の機能を維持・増進するため、堤防やダム貯水池周辺の一定の幅の樹林帯を、保安林制度等と調整の上、河川管理施設として適正に整備又は保全することができるよう措置する。
  5. その他

    • 水質事故処理等の原因者施行・原因者負担
      • 油の流出など水質事故等について、原因者に処理させ、又は費用を負担させることができる。
    • 不法係留対策の推進
      • 河川管理者が不法係留船舶等の売却、廃棄等の措置を迅速な手続で行うことができる。

平成12年改正

社会の様々な変化に対応して、国、地方自治体、市民等の適正かつ効率的な責任との役割の分担を検討し、的確な河川管理体系を確立する必要があるとの観点から平成11年8月「河川管理に関する国と地方の役割分担について」と題する河川審議会の答申があった。この中で、河川管理についての役割分担の基本方針として、個性豊かな自立型地域社会の形成を進めるため、流域における多様な主体の河川管理への幅広い参画が不可欠であると指摘された。

平成12年1月の「河川管理への市町村参画の拡充方策について」の答申では、市町村工事制度の拡充や政令指定都市への権限委譲が必要であるとの提言があった。これらを受けて平成12年4月に河川法が改正された。その要点は次のとおりである。

  1. 指定区間について、政令指定都市に河川管理権限を付与する。

  2. 一級河川の直轄区間で市町村長が河川工事を行えるようにする。