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河川区域

河川法第6条では、河川区域の範囲が明確にされており、この区域内では河川管理者による適切な管理が行われている。

では、具体的にどのような土地が河川区域に含まれるのか。大きく分けて2つのタイプがある。

河状を呈している土地の区域

河川法第6条第1項第1号では、以下のような土地が河川区域とされている。

河川は、自然の状態で公共の利用に供されている実態がある。そのため、その土地の区域は、社会通念上、河川の区域であると認められる。したがって、河川管理者による指定等の行為を必要とせず、法律上、当然に河川区域とされている。

  • 流水が継続して存する土地

  • 草木の生茂の状況、その他の状況が上記に類する状況を呈している土地

    • あし、かや等の水生植物が生えている
    • 石、砂等が露出している
    • 頻繁に水につかるため岩が変色している
  • 河岸の土地(天然河岸や人工河岸(護岸等)を含む)

ただし、洪水などの異常な自然現象によって一時的にこのような状況を呈している土地は除外される。

河川管理施設の敷地である土地の区域

河川法第6条第1項第2号では、ダム、堤防、護岸等の河川管理施設の敷地が河川区域に含まれる。

これらの区域は、社会通念上「河川の区域」と認められるため、河川管理者の指定等を経ずに法律上当然に河川区域となる。

河川の管理区分は下図のとおりとなっている。

国土交通省>荒川下流河川事務所

河川管理者の指定によって定まる河川区域

堤外の土地のうち、いわゆる高水敷地の部分、あるいは山付き堤の箇所のように機能的に堤外地に類する土地は、河川の流水を安全に流下させる区域として管理していく必要がある。

その必要とする範囲は外見上明確でなく、個別的判断を要するので河川管理者の指定行為によって定まる。(河川法第6条)

堤外の土地

  • 堤外の土地: 堤防から見て流水の存する土地
  • 堤内の土地: 堤防から見て人家の存する土地

政令で定める堤外の土地に類する土地

堤防類地

地形上堤防が設置されているのと同一の状況を呈している土地のうち

  • (a) 堤防に隣接する土地
  • (b) 堤防に隣接する土地の対岸に存する土地
  • (c) 堤防の対岸に存する土地
  • (d) (a)、(b)、(c)の土地と1号地の間に存する土地

ダム貯水池

ダムによって貯留される流水の最高の水位における水面が土地に接する線によって囲まれる地域内の土地

政令で定める遊水池

河川整備計画において、計画高水流量を低減するものとして定められた遊水池

指定の要件、手続

  • 上記に該当する土地のうち、河川法第6条第1項第1号の土地と一体として管理を行う必要があること(流水地中心主義)

  • 指定等の公示(河川法第6条4項、河川法施行規則第2条)

    • 国土交通大臣・・・官報
    • 都道府県知事・・・都道府県の公報
  • 港湾区域又は漁港区域との重複指定

    • 港湾区域又は漁港区域に3号地の指定又はその変更を行う場合は、港湾管理者又は農林水産大臣と協議する必要がある(河川法第6条5項)。逆の場合は協議がある(港湾法第6条、漁港法第5条8項)
河川予定地

河川予定地で、河川管理者が権原を取得した後においては、当該土地の区域が河川区域となる前においてもその土地は、河川区域内の土地とみなされる(河川法第58条)。

河川区域の効果

河川区域と私権

河川区域における私権の考え方は、時代とともに以下のように変遷してきた:

  1. 完全否定説(旧河川法)

    • 河川とその敷地、流水は私権の対象とはなり得ないとした
    • 立法理由書では「河川は個人や公共団体の所有物ではなく、国有でもない。領海と同じような性質を持つ」と説明されている
  2. 土地滅失説(法務省見解)

    • 流水の下にある土地は、法的に滅失したとみなされるため、私権は存在しないとする立場である
    • つまり、河川の流水がある場所の土地は、法律上もはや「土地」として扱わないという考え方である
  3. 制限付き私権説(道路法方式)

    • 私権の存在自体は認めるが、その行使を制限する立場である
    • 道路法第4条では「所有権の移転や抵当権の設定は可能だが、それ以外の私権行使はできない」と定めている
  4. 現行の考え方(新河川法)

    • 私権を基本的に認めた上で、河川管理に必要な範囲で制限を加える方式を採用している
    • この考え方を採用した理由: a. 河川敷地は本来、私有財産となり得る(判例でも認められている) b. 流水がある土地でも、所有権の行使が完全に不可能というわけではない c. 高水敷など、滅多に冠水しない土地は通常の利用が可能である d. 私権を認めることで、土地収用時の補償問題が明確になり、行政運営がスムーズになる

このように、河川区域の私権については、完全否定から条件付きの容認へと考え方が変化してきた。現在は、河川管理の必要性と私有財産権のバランスを取る方向で整理されている。

河川区域の効果

  1. 河川管理者が管理権を持つ河川区域内の土地(通常は国有地)
    • 土地の占用許可(河川法第24条):国有財産法の特則として扱われる
    • 土石等の採取許可(河川法第25条
    • 工作物の新築等の許可(河川法第26条
    • 土地等の掘削等の許可(河川法第27条
    • 舟やいかだの運航制限(河川法第28条、河川法施行令第16条の2)
    • 竹木流送の許可(河川法第28条、河川法施行令第16条の3)
    • 河川管理上支障を及ぼすおそれのある行為の禁止、制限、許可(河川法第29条、河川法施行令第16条の4~16条の8)
    • 廃川敷地等の交換、譲与:国有財産法の特則として扱われる
  2. 民有地である河川区域(河川管理上必要な制限あり)
    • 工作物の新築等の許可が必要
    • 土地等の掘削等の許可が必要
    • 河川管理上支障を及ぼすおそれのある行為の禁止、制限、許可が適用される

旧法の規定による河川敷地等の国有帰属

新河川法の施行時点で、旧河川法の規定によって私権の対象とならないとされていた河川敷地や附属物、その敷地は、国の所有となる(河川法施行法第4条)。

しかし、この国有地となった土地の取り扱いには特別な例外規定がある(河川法施行法第18条第19条)。

河川保全区域

河川管理施設、特に堤防は、河川の流水によって生ずる災害の発生を防止するために必要な機能を果たしている。河川保全区域とは、その機能を保全するために、機能に支障を及ぼすおそれのある行為を一定の範囲で厳重に取り締まるため、河川管理者が指定した区域のことである。(河川法第54条)

河川保全区域において、盛土又は切土その他土地の形状を変更する行為や工作物の新築又は改築を行うときには、河川管理者の許可が必要となる。ただし、政令で定める簡易なものについては、許可を要しない。(河川法第55条)

河川予定地

河川予定地とは、河川工事を推進するため、河川工事の施行に支障を与えるおそれのある行為を制限するために、河川管理者が河川工事の施行により新たに河川区域内の土地となるべき土地を指定したものである。(河川法第56条)

河川予定地においても、盛土又は切土その他土地の形状を変更する行為や工作物の新築又は改築を行うときには、河川管理者の許可が必要となる。ただし、政令で定める簡易なものについては、許可を要しない。(河川法第57条