河川工事
河川工事の意義
河川工事とは
この法律において「河川工事」とは、河川の流水によつて生ずる公利を増 進し、又は公害を除却し、若しくは軽減するために河川について行なう工事をいう。
河川工事の種類と目的
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利水工事(河川の公共利益を増進するための工事)
- 目的:河川の流水がもたらす公共の利益を拡大する
- 具体例:
- 船舶の航行を改善するための河道浚渫
- 河川の利用可能な水量を増やすためのダム建設
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治水工事(河川災害を防止・軽減するための工事)
- 目的:洪水や河川災害から人々を守る
- 具体例:
- 洪水調節用のダムの建設
- 堤防、護岸、床止めなどの新設・改修・補修
- 洪水の流れを改善するための放水路建設や河道浚渫
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「公共性」の考え方
- 河川工事における「公共」とは、特定の個人や団体ではなく、不特定多数の人々の利益を指す
- 一般的な公共の利益のために実施される工事が対象となる
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河川工事に含まれない事例
- 発電所や水道施設のためのダム建設
- 土地改良区による頭首工の工事
- 理由:これらは特定の事業者や団体の利益を目的とするため
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実施主体
- 原則として河川管理者が河川管理権に基づいて実施する
このように、河川工事は公共の利益を目的とし、主に利水と治水の二つの側面から河川を整備・管理するものである。特定の個人や団体の利益のみを目的とする工事は、河川工事の定義には含まれない。
改良工事、修繕、維持
河川法では、「河川工事」「改良工事」「修繕」及び「維持」なる語を用いている。
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維持
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改良工事
- 定義:河川の機能を向上させ、公共利益の増進や災害防止を図る工事
- 特徴:
- 河川に新たな機能を付加する
- 既存の機能を強化する
- 河川工事の中心的な役割を果たす
- 例:新規のダム建設、堤防の強化など
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修繕
- 定義:河川や河川管理施設の機能低下を元の状態に回復させる工事
- 法的位置づけ:河川工事に含まれる
- 例:損傷した護岸の補修、老朽化した施設の更新など
このように、河川法では工事や管 理行為を目的に応じて明確に区分している。「改良工事」と「修繕」は河川工事に含まれるが、「維持」は日常的な管理行為として別個の概念とされている。この区分は、それぞれの行為の性質や目的の違いを反映したものである。
砂防工事、森林工事
河川工事は、河川法に基づく工事である。したがって、砂防工事及び森林工事は、一種の治水工事(河川に流出する土砂を防止する為に河川の上流において施工される)であるが、それぞれ砂防法、森林法に基づく工事であって、河川工事には該当しない。
河川管理施設
河川管理施設の意義
この法律において「河川管理施設」とは、ダム、堰せき、水門、堤防、護岸、床止め、樹林帯その他河川の流水によつて生ずる公利を増進し、又は公害を除却し、若しくは軽減する効用を有する施設をいう。
概括的には、河川工事の中心である改良工事施行の結果、河川管理者が設置した施設(厳密には、権原を有していればよい)が河川管理施設と考えてよく、河川法は、公利増進、公害除却、という効用に着目し、かかる効用を有するものは、河川管理者の認定等を要せずに法律上当然河川管理施設であるとして、河川の中に含ましめ(河川法第3条1項)、河川法の適用の対象としたものである。
ただし、河川管理者以外の者が設置した施設については、当該施設を権原に基づき管理する者の同意を得なければ、当該施設を河川管理施設となし得ない(河川法第3条2項ただし書)。
- 土地改良区が設置した堤防
- 会社、工場等が設置した護岸等
兼用工作物は、ただし書の適用外で本文による河川管理施設である。