GISと空間解析
概説
土木計画の策定過程では、前節までに示した空間情報技術を通して取得した地形や土地被覆、土地利用などを表す自然・都市環境データに加え、人口構成や世帯所得分布、産業の経済活動などを表す社会経済データを勘案して、地域の現状を分析・把握し、その将来像を議論することが求められます。
地域分析に必要な情報の大半は、空間的位置との関連性を有する空間情報です。空間情報は、実空間上に存在する実体を空間データモデルに基づき抽象化したものです。この空間情報を、空間的な位置を鍵に統合的に管理し、空間的近接性を考慮した分析やその結果の共有・可視化などを通して、地域の自然環境や社会経済状況の分析できる環境を提供する情報システムが、地理情報システム(geographic information system, GIS)です。
GISの特徴は、空間的位置に基づく情報管理にあります。位置表現には、平面位置のみでも二次元が必要で、一次元の識別子による管理に比べ複雑です。さらに、線や面による抽象化が必要な実体は、多数の頂点座標による表現が必要です。そのため、空間的位置に基づく管理はデータ量が多く、その解析は計算負荷が大きいため、効率的な情報の管理や処理が不可欠となります。そこで、本節では、GISによる空間情報の効率的な管理・分析を支える要素技術を解説します。
空間データモデル
空間データモデルは、実体の空間的な位置や形状を表す幾何学的属性の表現方法により、二つに大別できます。
一方は、実体を空間上の離散的事象と捉えて地物として抽象化するモデルで、その位置や形状を点・線・面などの空間オブジェクトを用いてベクター形式で表現します。
他方は、実体を空間上の連続的事象と捉え、すべての地点に属性値を対応させたフィールドとして抽象化するモデルで、格子領域などの小領域への空間分割を通してフィールドを近似したラスター形式で表現します。
さらに、地物に基づいて抽象化するベクター形式の空間データモデルは、各空間オブジェクトを地物として管理するレイヤーモデルと、複数の空間オブジェクトから地物を定義して管理するオブジェクトモデルに分類できます。