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河川の調査・計画

河川の調査

調査の目的·種類

河川計画のための調査には、大きくわけて洪水防御計画の調査と、河川環境調査があります。

洪水防御計画のための調査としては、降水量調査・水位調査・流量調査・内水調査・治水経済調査などがあり、必要に応じて各々の調査を実施します。

さらに、河川環境調査(動植物調査・水量水質調査・河川利用調査等)については、河川計画(洪水防御計画)に必要な項目について調査します。

洪水防御計画のための調査

降水量調査

河川計画を行う際には、流出解析の基礎となる降雨データを得ることが重要です。この降水量調査の目的は、降雨量、時間分布(降雨波形)、地域分布を把握することにあります。これらの情報を適切に収集・分析することで、河川計画の精度を高めることができます。

高水水位調査

水位調査では、水防上の基本となるデータを得るとともに、H-Q図を使用することにより流量を算定するための基礎データを得ることを目的としています。この調査を通して、水位計設置地点の河川水位の時間的な変化を把握することができます。これらのデータは、河川管理や洪水対策を行う上で非常に重要な情報となります。

洪水痕跡調査

洪水痕跡調査は、水防上の基本となるデータを得るとともに、逆算粗度係数算定のための基礎データを得ることを目的としています。この調査では、洪水直後に左右岸の洪水痕跡を計測し、最高水位を縦断的に把握します。これらのデータは、洪水流の解析や河川の粗度係数の推定に役立ち、河川管理や洪水対策を行う上で重要な情報となります。

高水流量観測

流量調査では、流量データを直接得るとともに、水位データを流量データに換算するためのH-Q図を得ることを目的としています。この調査では、浮子測法等により測定した流速と洪水断面積から流量を把握します。さらに、数種の水位時に調査を実施することで、水位と流量の関係を表すH-Q図を作成することができます。このH-Q図は、水位データから流量を推定する際に非常に重要な役割を果たします。

内水調査

内水調査では、地盤高、河川・下水道(雨水)・排水施設整備状況、浸水実績等を調査し、内水対策検討のための基礎データを得ることを目的としています。この調査で得られたデータは、浸水実績図作成、氾濫解析、ハザードマップ作成など、様々な内水対策の検討に活用されます。内水による浸水被害を防止するためには、これらの基礎データを適切に収集・分析し、効果的な対策を立案することが重要です。

治水経済調査

治水経済調査では、「治水経済マニュアル」に従って、治水事業に必要な費用と、治水事業を行うことによって洪水被害を軽減できる期待額を算定します。この調査の目的は、治水事業に必要な費用と、治水事業による洪水被害軽減の期待額を比較し、経済的な効果を把握することにあります。この結果は、治水事業の妥当性を評価する上で重要な判断材料となり、効率的な河川管理に役立てることができます。

河川環境調査

動植物調査

動植物調査では、河川に関わる環境を把握するために、必要に応じて動植物の生育・生息についての調査を行います。この調査では、河川周辺に生息する動物や植物の種類、分布、個体数などを詳細に記録し、河川生態系の現状を評価します。これらの情報は、河川管理や環境保全対策を立案する上で重要な基礎データとなります。また、経年変化を追跡することで、河川環境の変化や人間活動の影響を明らかにすることができます。

水量水質調査

水量水質調査では、流水の正常な機能の維持を検討するための基礎データを得ることを目的として、低水水位調査、低水流量観測、水質調査を行います。この調査では、流域内の数カ所で通年的かつ継続的に調査を実施することにより、河川流況、水量と水質の関係などの重要な情報が得られます。これらのデータは、河川管理や水資源利用計画の策定、水質保全対策の立案など、様々な分野で活用されます。また、長期的なデータの蓄積により、気候変動や土地利用の変化が河川環境に与える影響を評価することも可能となります。

河川利用調査

河川利用調査では、流水の正常な機能の維持を検討するための基礎データを得ることを目的として、親水利用、漁業、舟運、水利用等の調査を行います。この調査を通して、河川が持つ様々な機能や役割を把握し、それらを適切に維持・管理するための情報を収集します。得られたデータは、河川管理計画の策定や河川整備の優先順位の決定、利水調整などに活用され、河川の多面的な利用と保全のバランスを図る上で重要な役割を果たします。また、地域住民等との協働を通じて、河川に対する理解や関心を深めることにも繋がります。

河川計画

計画規模

中小河川の計画規模は、基本的に降雨量の年超過確率で評価することとし、その設定に当っては、河川の重要度、既往洪水による被害の実態、経済性、上下流のバランス等を総合的に考慮して定める。

中小河川計画の手引き(案)p. 17

河川の計画規模は、一般に水文量の年超過確率で表されます。中小河川の場合、雨量資料は水位・流量等に比べ蓄積度合いが高く、流域や河道の改変による人為的影響を受けないことに加え、大河川と比べると降雨の地域的な一様性が高く、雨量と流量の規模の相関が高いことなどの理由から、雨量を計画の外力として扱うのが合理的です。

以下に、計画規模の設定にあたっての基本方針を示します。

  1. 計画規模の設定に当たっては、河川の大きさ、流域の社会経済的重要性、想定される被害の実態、過去の災害の履歴、経済効果に加え、上下流バランス、流域の将来の姿などに配慮します。

  2. 河川の重要度を評価する流域の指標として、流域面積、流域の都市化状況、氾濫区域の面積、資産、人口、工業出荷額等が考えられますが、このほか水系として一貫した上下流、本支川でバランスが保たれ、また都道府県内の他河川とのバランスにも配慮して決定するものとします。

さらに、計画規模決定にあたっては、以下の点を総合的に考慮することが必要です。

  • 県庁所在地をはじめとする県内の主要な都市を流れる河川である場合
  • 過去に大規模な洪水被害を受けている場合
  • 大規模開発が計画されている場合

これらの流域の状況を十分に考慮し、適切な計画規模を設定することが重要です。

高水計画

計画降雨

計画降雨の作成

計画降雨は流域の規模、降雨特性、計画対象施設の種類、さらには雨量資料の存在状況等を勘案して、適切に作成する。

中小河川計画の手引き(案)p. 35

基本高水を設定する方法としては、洪水の成因となる降雨を計画外力として、所定の計画規模に対応する計画降雨を定め、この計画降雨から流量に変換する方法を基本とします。

計画降雨は、降雨量、降雨量の時間分布及び地域分布の3要素で表されますが、その作成にあたっては流域の規模や降雨特性といった自然条件、洪水調節施設計画の有無といった検討目的を十分把握し、さらに雨量資料の存在状況等も勘案する必要があります。

降雨強度式

流域の規模等から降雨量の地域分布を無視しえると判断される場合は、降雨強度式を用いて計画降雨を作成する。

中小河川計画の手引き(案)p. 35

降雨強度式は、基本的に流域面積が50km2未満程度の合理式を用いる河川に適用されることが多いですが、降雨量の時空間分布の検証を行い、降雨量の地域分布が無視しえる河川に適用することも可能です。

この場合、計画降雨の3要素のうち、降雨量(洪水到達時間内降雨強度)のみを考慮することとなります。なお、降雨強度式を適用するにあたり洪水到達時間をあらかじめ設定しておく必要があります。

中小河川の洪水到達時間内の短時間降雨強度式は、各都道府県で作成されたものを用いることとします。ただし、対象河川流域が短時間降雨強度式の作成に用いられた観測所と離れていたり、降雨特性が明らかに異なると考えられる場合には、近傍の気象庁アメダス観測所による確率短時間降雨強度式を用いることができます。

高水流量

高水流量決定の原則

河川整備基本方針で定める「基本高水のピーク流量·計画高水流量」(以下「高水流量」という)は、原則として、策定時点における最適手法により算定する。これによることが河川計画上著しく不合理となる場合には、個別に検討する。

中小河川計画の手引き(案)p. 74

工事実施基本計画·全体計画との整合

河川整備基本方針・河川整備計画策定時に、既に工事実施基本計画・全体計画で高水流量が定められ、事業を実施している場合には、新たに高水流量を設定するにあたり、下記のとおり留意します。

従前の計画に比べ高水流量が下がる場合
  1. 既設構造物の評価
    • 既に完成した構造物は、現時点では余裕があるが、事業実施時点では適切な安全度であったと評価する。(原則として HWL は変更しない。ただし、これらによることが不合理な場合は適宜判断する。)
  2. 今後の事業実施について
    • 今後の事業については新しい計画に基づいて実施するが、完成済み区間と隣接する場合等には、一連区間の河川計画の連続性を考慮して現場での対応を行う。
従前の計画に比べ高水流量が上がる場合
  1. 既設構造物の評価
    • 既に完成した構造物は、事業実施時点では適切な安全度であったと評価するが、現時点では流下能力が不足することとなる。よって、再改修が必要となる。
  2. 今後の事業実施について
    • 事業実施にあたっては、未改修区間と事業実施済み区間の優先度を判断する。未改修区間を先に実施する場合は、上下流バランスを考慮したうえで、手戻りのない計画で事業実施する。
従前の計画と高水が同じ場合
  1. 既設構造物の評価
    • 既に完成した構造物は、現時点で評価しても、適切な安全度であると評価する。
  2. 今後の事業実施について
    • 事業実施については、新しい計画に基づくものとして実施する。

流出解析

流出解析手法

降雨から流量への変換にあたっては、流域の規模および流量観測資料の有無や計画対象施設の種類、内水河川の扱い等の計画条件、将来の土地利用の変化や河道改修による流出特性の変化等考慮して適切な流出計算手法を採用する。

中小河川計画の手引き(案)p. 31

中小河川の流出計算手法としては、一般に以下の方法が用いられています。

合理式

合理式の特色は、流域の最遠点から考慮地点まで雨水が流下集中した時に最大流量が生じると考え、その時間を洪水到達時間と呼んでいることです。この方法は中小河川でよく用いられています。

合理式の長所は、ピーク流量算出にあたって最も簡便であり、適用例が多いことです。一方、短所としては、ハイドログラフを求めることができないので、ダム等の貯留施設の計画には用いることができません。また、実測値との検証についても困難です。さらに、流域面積が大きくなると適用が困難になります。

合理式の適用河川は、基本的に流量観測値がなく上流に洪水調節施設が存在しない河川とし、流域面積50km2未満程度が目安となります。

合成合理式

合成合理式は、基本的に洪水到達時間(tc)毎のハイエトグラフを作成し、tc毎の合理式によるピーク流量を連ねてハイドログラフを作成するものです。

その長所は、簡易にハイドログラフが作成できることです。一方、短所としては、実測値との検証が困難であり、流域面積が大きくなると適用が困難になります。

合成合理式の適用河川は、合理式の適用が可能な河川でハイドログラフの算出が必要な場合に用いることができます。なお、合成合理式の考え方には、通常の合理式と同様に流量検討地点の上流を単流域として扱う方法と、流出モデルのように流域分割を行い河道の遅れ時間を考慮して合成ハイドログラフを算定する方法があります

貯留関数法

貯留関数法は、貯留高と流出高との間に比較的簡易な式で非線形性を表現した手法で、日本のほとんどの一級河川で使用されています。この手法は、10 km2から数100km2程度の流域で単流域として適用されており、土地利用の変化を考慮した方法も提案されています。

貯留関数法の長所は、特に山地が多くの割合を占める流域での適合度が良いことです。また、流域分割や流出系統作成の巧拙があまり問題にならない方法でもあります。一級河川での適用例が多く、定数検証は主にKKT1T1の修正で済み、比較的容易です。

一方、短所としては、実用的ではあるものの、定数について水理学的裏付けが弱いことが挙げられます。小出水の際の定数を用いた場合、大出水の再現性に問題があります。また、一般に平地や都市域での適合度に劣ります。

準線形貯留型モデル

合理式の到達時間内降雨強度の考え方を取り入れ、非線形性を表現した各地目毎の指数単位図です。この手法は、降雨流出の非線形性が扱え、流域の開発等の地目変更に伴う流出変化が扱えることから、開発が著しい流域で適用例が多くなっています。

合成単位図法の長所は、地目毎の流出計算結果を合成しているため、地目の改変や地目毎の貯留、浸透対策河川に適用性が高いことです。また、流域分割や流出系統の作成のしかたの巧拙は、特性曲線法ほど精度に影響しません。

一方、短所としては、計画論的に有効なモデルである反面、実績の再現性に難点がある場合があることが挙げられます。地目別定数Cについての総合化の程度に問題を残しています。また、山地部のように貯留効果が大きいところでは、特に低減部再現性に難点があります。

特性曲線法(等価粗度法)

特性曲線法は、流域を幾つかの矩形斜面と流路が組み合わされたものと見なし、雨水流を水理学的に追跡した計算手法です。

この手法の長所は、流域の性状を等価粗度で表すところが特徴的で、流域開発の変化を反映させることができることです。比較的表面流が卓越する都市域について適合度が高くなります。

一方、短所としては、定数の構成要素が多く、かつそれぞれの要素を比較的高い精度で求める必要があり、手間がかかることが挙げられます。また、流域分割や流出系統作成のしかたの巧拙により精度が問題となります。

合理式の流出定数

合理式の洪水到達時間、流出係数については、流域及び河道の特性を踏まえて適切な値を採用するものとする。

中小河川計画の手引き(案)p. 57

洪水到達時間

一般に中小河川において適用し易い方法としては、次の3つが挙げられます。

  1. クラーヘン (Kraven)式
  2. 等流流速法
  3. 土研式

このうち、クラーヘン式についてはその根拠が不明ですが、従来より慣用的に用いられています。

等流流速法はクラーヘン式の変形であり、洪水伝播速度を等流流速とするものです。

土研式は都市域と自然流域を対象に式が示されており、土地利用の変化に伴う洪水到達時間の変化を考慮でき、根拠が明らかであるため適用しやすいですが、適用事例は少ないです。土研式は流出試験地等の水文資料より、計画上の安全側を見込んで、洪水遅れ時間実測値の下限値を採用し、それを2倍して洪水到達時間としています。

吉野らによれば平均的には洪水到達時間は、クラーヘン式>土研式とされますが、勾配のとり方や流入時間の考え方等、本文で示した方法と異なることが考えられます。現実の計算例ではクラーヘン式による洪水到達時間は、土研式によるものよりも概ね小さ目を与えることが多いです。

クラーヘン式

クラーヘン式では、一般に雨水が流域から河道に至る流入時間と河道内の流下時間の和で示されます。

流入時間

流入時間の設定については、以下のように整理されています。

  • 山地流域:2km22km^{2} 3030
  • 特に急傾斜面区域:2km22km^{2} 2020
  • 下水道整備区域:2km22km^{2} 3030

基本的には、当該河川の流域から流入域2km22km^{2}を先取りし、上記の値を用いて流入時間を設定するとともに、流入域を除いた流域の河道延長を用いて河道流下時間を算定します(流入時間の最大値は上記値となります)。

ただし、流入域2km22km^{2}を除いた流域面積が極端に小さくなる場合には、地形図上で河道を示す青線の上流端の上流域を流入域とし、その流入時間を次のような方法で算定するとともに、青線の上流端から下流を河道として河道流下時間を算定する手法も用いられています。

参考

この他にルチーハ(Rziha)式、角屋式他種々の推定式が提案されている。
ルチーハ式は、わが国の河川に適用すると洪水到達時間が過大に算定される傾向にあると報告されている。
角屋式はその式中に到達時間内降雨強度を有し、未知数を含むこととなるのでトライアルの計算となり扱いが繁雑となる。

河道流下時間

河道流下時間TTは次式で与えられます。

T(min)=160×LWT(min) = \frac{1}{60} × \frac{L}{W}

ここに、

  • LL:河道上流端(流域から流入域2km²を除いた流域の最遠点、又は1/25,0001/25,000地形図で示されている水色の部分の最上流)から流量検討地点までの流路の距離(m)
  • WW:洪水伝播速度(m/s)

であり、クラーヘン式は洪水伝播速度として以下を与えています。

流路勾配II1/100以上1/100~1/2001/200以下
洪水伝播速度WW3.5 m/s3.0 m/s2.1 m/s

ここで、II : 河道上流端と懸案地点の標高差H(m)H(m)を流路長(LL)で割ったもの

一般に河川は上流へいくほど勾配が急であることから、河道の縦断勾配の変化が大きい場合には、図に示すように適切な箇所に勾配変化点を設定し、区間毎に流路長、勾配を設定して、河道の流下時間を合算して求めます。

A~Cの平均勾配とすると勾配が全区間1/100以上となり流速を過大に見積もる恐れがあります。

等流流速法

等流流速法は、クラーヘン式と同様に洪水到達時間を流入時間と河道流下時間の和で与える方法です。流入時間はクラーヘン式の場合と同じ値が用いられます。

河道流下時間はクラーヘン式の洪水伝播速度Wを以下のマニング式で求めるものです。

W=1nR23I12W = \frac{1}{n} R^{\frac{2}{3}} I^{\frac{1}{2}}

ここに、

  • WW:洪水伝播速度(m/s)
  • nn:河道の粗度係数
  • RR:河川代表断面の径深(m)R=ASR=\frac{A}{S}
  • II:河床勾配
土研式

土研式は、土木研究所が全国の流出試験地等の水文データより、到達時間TT(hrhr)、流路延長LL(mm)、流域勾配SSの関係について整理し、導いたものです。

都市流域:T=2.40×104(LS)0.7T = 2.40 \times 10^{-4} \left(\frac{L}{\sqrt{S}}\right)^{0.7}

自然流域:T=1.67×103(LS)0.7T = 1.67 \times 10^{-3} \left(\frac{L}{\sqrt{S}}\right)^{0.7}

ここに、

  • LL:流域最遠点(流域界)から流量検討地点までの主流路の距離(m)
  • SS:流域最遠点(流域界)から流量検討地点の標高差を流路長(LL)で割ったもの

ただし、土研式の適用範囲は、

  • 都市流域で流域面積A<10km2A < 10\mathrm{km}^2S>1300S > \frac{1}{300}
  • 自然流域で流域面積A<50km2A < 50\mathrm{km}^2S>1300S > \frac{1}{300}

なお、都市流域と自然流域が混在する場合は、100%都市流域、自然流域とした場合の洪水到達時間を面積加重平均より算定する。

T=AT×TT+AS×TSAT+AST = \frac{A_T \times T_T + A_S \times T_S}{A_T + A_S}

ここに、

  • ATA_T:都市流域面積
  • ASA_S:自然流域面積
  • TTT_T:100%都市流域とした場合の到達時間
  • TST_S:100%自然流域とした場合の到達時間
クラーヘン式と土研式

土研式は流出試験地等の水文資料より、計画上の安全側を見込んで、洪水遅れ時間実測値の下限値を採用し、それを2倍して洪水到達時間としている。吉野らによれば平均的には洪水到達時間は、クラーヘン式 > 土研式とされるが、勾配のとり方や流入時間の考え方等、本文で示した方法と異なることが考えられる。現実の計算例ではクラーヘン式による洪水到達時間は、土研式によるものよりも概ね小さ目を与えることが多い。

これらの式を使うにあたり、どちらが大きい流量を与えるかという点ではなく、流域の土地利用の変化をどのように予測し、河川計画を策定すべきかについて考える必要がある。すなわち、両者の特徴は以下のように示される。

  1. クラーヘン式
    • 洪水到達時間に流域の土地利用の変化を表現することができない。土地利用変化は流出係数で表現するのみであるから、例えば原野からビルの密集した市街地に変化したとしても、流出係数は高々0.7から0.9に変化するだけで、計画高水流量は約3割しか増加しない。
    • 土地利用の動向は不明であるが、余裕をもって河川計画を策定したいときに適している。
  2. 土研式
    • 流域の土地利用の変化を洪水到達時間と流出係数の2つのパラメータで表現することができるので、流域の特性を評価しやすい。
    • 将来の土地利用変化をある程度予測することができ、流域の特性を表現した合理的な河川計画を策定したいときに適している。

流出係数

「建設省河川砂防技術基準(案) 計画編 p. 19」に記載されている以下の値を標準値とし、土地利用ごとの流出係数を用いて、当該河川の土地利用面積で加重平均し、流域平均の流出係数を設定します。

土地利用区分流出係数
密集市街地0.9
一般市街地0.8
畑、原野0.6
水田0.7
山地0.7
合理式の流出係数

合理式の流出係数は、総降雨量と総流出高の比である洪水の総流出率とは異なり、ピーク流量に寄与する到達時間内の降雨の流出率を示すものです。

一般に降雨流出過程においては、すべての降雨が洪水流出に寄与するのではなく、降雨初期には森林による降雨の遮断や葉面からの蒸発散、土壌中への浸透等によって流出に寄与する降雨(有効降雨)は比較的少ないです。降雨が継続するにつれ、全降雨に占める有効降雨が増加し、流域が飽和した状態ではほとんどすべての降雨が流出に寄与するようになります。

以上のことを、総雨量と総損失量の関係で示したものが下図です。ある飽和点(図では山地でA点、市街地でB点)に達するまでは、雨量の増加とともに損失量も増加しますが、飽和点に達した段階で損失量は一定に近くなり、すべての降雨が流出に寄与することとなります。

実際の洪水時には流域の湿潤状態や降雨量あるいは降雨強度により図の関係は変化します。また、地目による損失量が異なることから、流出係数は地目別に設定されています。

合理式における流出係数は、現実の降雨~流出機構が総雨量や降雨強度により変化するにもかかわらず、洪水ピーク時には流域が飽和に近い状態にあることを前提としています。従って、他の流出計算手法では前期降雨も含めてその外力となる降雨の計画規模を定めているのに対し、合理式では流域がある程度湿潤した状態で計画規模の降雨が生起した場合の流出量を算出しているため、他の流出計算手法に比べて大きめの流量が算出されることになります。流域が合理式自体の前提となる飽和状態に達していない場合には計画規模の降雨が生起したとしても、合理式で算出された流量は生起しません。このことが住民感覚との乖離を生む原因となっていると考えられます。これらのことから表に示した流出係数は、合理式自体の仮定に基づく種々の誤差を含んだ計画に用いる定数として扱うことが重要です。なお、全国流出試験地の資料を参考に吉野らが調べた結果によると、表に示したピーク流出係数fpf_{p}は、洪水の総流出率FFに対し fp=(1.0 1.4)Ff_{p}=(1.0~1.4)Fの関係が得られています。

河道計画

粗度係数の設定

粗度係数は、河道状況および対象とする洪水規模を踏まえ適切に設定する。

中小河川計画の手引き(案)p. 118

粗度係数は、水理量(水位・流速)に最も影響を与える要因の一つです。しかし、その値は一定値ではなく、河道状況(形状・河床材料・植生分布等)および洪水規模(水深)により変化し、様々な値をとります。そのため、河道計画においては河道状況および想定する洪水規模を踏まえ、適切な粗度係数を設定することが必要です。

特に、計画河道及び計画高水位を検討する場合は、改修直後の計画河道を想定して粗度係数を設定するのではなく、将来の維持管理状況をも考慮し、長期的な視点から組度係数を設定する必要があります。

仮に標準断面(多自然型などを考慮しない場合)のみから組度係数を設定した場合、組度係数は実際の値よりも小さく設定され、下表に示すように治水上、危険側の計画となることがあります。

検討項目検討結果想定規模の洪水が発生した場合
河道の断面設定流下能力が過大評価されている危険
護岸等の施設設計流速が大きく評価されている安全
遊水地等の越流量の算定水位が低く算定され、越流通が過小評価されている遊水地は危険、河道は安全

拡幅・掘削等の河川改修を行うことにより、河床形状・河床材料等の河道特性が大きく変化する場合は、特に注意して組度係数を適切に設定しなければなりません。

組度係数の設定方法としては、大きく分けて以下の2つの方法があります。

  1. 既往洪水データから逆算した組度係数を設定(逆算組度係数)
  2. 河床や護岸などの組度状況から粗度係数を設定(合成粗度係数)

当該河川において洪水時に水位・流量観測、痕跡水位の測定が行われ、精度上、十分な量と質の実測データが存在する場合に、組度係数を逆算から求めて設定する方法が採用できます。また、十分な実測データがない場合、もしくはデータが存在していても精度に問題がある場合において、河道の粗度状況(河床材料、植生、護岸等)を合成して組度係数を設定する方法があります。

逆算粗度係数の長所は、実績データを用いるため、様々な要素による洪水流への影響が集約されていることです。一方、短所としては、逆算の対象とする洪水と計画対象洪水の生起とでは河床の状況が大きく異なることがあるため、1洪水のみで粗度係数を設定することはリスクを伴うことと、実績データの精度に大きく左右されることが挙げられます。

合成粗度係数の長所は、任意断面形状、洪水規模、粗度状況に適用でき、一般性、応用性が高いことです。短所としては、推定精度及び適用範囲に限界や不確定要素が残ること、土丹、岩河川に適用できないこと、河床材料の平面分布、鉛直分布にばらつきが大きい場合、一律に設定することが困難であることが挙げられます。

したがって一般的には、両者の欠点を補う形で2つの設定方法を併用し、組度係数を適切に設定することが現実的な選択肢となります。つまり、以下の方法を取ることが望ましいです。

  1. 河道の組度状況から組度係数を設定する一方で、その設定により既往代表洪水の逆算組度係数あるいは洪水位を再現できるかを確認し、必要に応じて、設定粗度係数を修正します。
  2. 逆算組度係数を設定することを試みる一方、逆算対象の洪水規模・河道状況と組度係数設定対象のそれらとの違いを踏まえ、河床材料などの物理的な粗度係数を加味して、最終的に粗度係数を設定します。

粗度係数の設定区間

粗度係数は、各断面でそれぞれ設定するのではなく、河道区間を縦断的に河床材料、河床勾配、断面形状等により粗度係数がほぼ一定と考えられる区間に分割して、その区間毎に設定します。その際、粗度係数を一律に設定する区間があまり短くならないように注意します。

逆算粗度係数の設定方法

河道の平均的な粗度係数を逆算する方法は、流量観測による実績流量と洪水後に測定される痕跡水位を用いて以下の手順で行います。

  1. 先ず、粗度係数を仮定して不等流計算を行い、得られた計算水位と痕跡水位とを比較します。
  2. そして、その誤差が許容範囲内に収まるまで粗度係数を変化させて計算を行い、逆算対象洪水位を精度良く再現できた時の粗度係数を逆算粗度係数として設定します。

逆算に用いる痕跡水位の選定にあたっては、精度の高い痕跡を重視します。また、以下のような場合でも、それらがデータ的に同一の精度と考えられる限り、計算水位がそれらの平均値を通るように粗度係数を求めるものとします。

  • 左右岸の痕跡水位が大きく異なるような場合
  • 下流の痕跡水位が上流のそれよりも大きいような場合

詳しくは「建設省河川砂防技術基準(案)調査編、6.4粗度係数の逆算法」を参照してください。

合成粗度係数の設定方法

単断面河道における粗度係数の設定方法は、中小河川では川幅水深比が小さく、側壁(護岸法面粗度)の影響が無視できないことを考慮し、断面を河床部と護岸部(法面部)に分けて粗度係数を設定し、これらを合成して求めます。この合成粗度係数は、各部位毎の粗度係数とその潤辺により次式を用いて求めます。

図-5.5.4 各部位毎の粗度係数及び潤辺の取り方(単断面の場合)

複断面河道の場合は、低水路、高水敷、護岸部に分けて粗度係数を設定しこれらを合成して求める。この式は、分割した断面間での流れの干渉(せん断力)を無視し、それぞれの断面で独立して流れが生じていると仮定して導かれたものである。

粗度係数の一般値

河道計画の策定に用いる粗度係数は、複断面等の横断形、河床形態、植生の状況等により適切に定めるものとする。
洪水時に水位·流量観測、痕跡水位の測定が行われ、精度上、十分な量と質の実測データが存在する場合に、粗度係数を逆算から求めて設定する方法を採用する。
改修前と後では河道条件が一変してしまい、かつ洪水資料がない場合には、十分な検討ができないことがあるので、単純な断面の河道では次の値を用いてもよい。

河道の種類粗度係数の範囲
一般河道0.030~0.035
急流河川および河幅が広く水深の浅い河川0.040~0.050

建設省河川砂防技術基準(案)計画編

河道計画に用いる水位計算

河道の水位計算は、基本的に不等流計算を用いる。
また、複断面河道や樹木群の影響等を無視できない河道では、断面を分割して計算を行う準二次元不等流計算の適用についても検討する。

中小河川計画の手引き(案)p. 113

水位に影響を与える要素としては、主に表に示すような項目が挙げられる。表には、検討手法により考慮できるものとできないものを示している。

水位に影響を及ぼす要素等流計算不等流計算
断面形状
河床勾配
低水路·高水敷の粗度
滋一部の粗度
出発水位(河口、合流点水位)×
急拡·急縮等の断面変化×
合流×
河川構造物(橋脚·堰等)×
湾曲
砂州
植生
低水路と高水敷の流れの干渉
下(上)流の影響×

なお、直轄の大河川ではこれらの項目のうち、ほぼ全てを必須項目として水位計算に取り込んで河道計画を策定していますが、中小河川では計算に必要な資料の制約もあることから、検討目的·計算手法により検討項目を適宜、選定することが望ましいです。

一例として、河道形状が縦横断に変化する一般的な河道において、不等流計算と等流計算により得られる水位を比較した事例を図に示します。不等流計算では、任意地点の水位がその地点の下流断面における水位(射流では上流断面水位)から算出されるため、下(上)流水位の影響を適切に反映した連続的な水位を得ることができます。一方、等流計算では、各地点毎に水位が独立して得られるので、検討区間内に断面形状·河床勾配等の縦断的な変化や堰·橋脚等の河川構造物が存在する場合に、それらの影響範囲を評価することができません。

今後の川づくりでは、治水面だけでなく環境面にも配慮した河道計画、つまり一様な定規断面による河道計画ではなく、現況河道形状を重視し、河道内樹木の存置による影響等をも考慮した河道計画を行う必要があります。また、流下能力の小さい中小河川では、橋脚や落差工等の構造物が水位に及ぼす影響も大きく、特に構造物設置地点より上流区間の堰上げを適切に考慮しなければなりません。したがって、中小河川においても実際の水理現象の再現性が高く、精度良く水位を評価できる不等流計算を行うことが望ましいです。

なお、水位に影響を及ぼす要素のうち、どの項目を考慮するかは、当該河川の規模及び重要度、沿川の土地利用状況等の諸条件を考慮し、適切に選定するものとします。

ただし、以下の場合については、等流計算により水位を算定することもできます。

  1. 急流河川で、常に射流が現れる
  2. 特に河川構造物もなく、横断面形及び河床勾配が変化しない

射流が現れる目安となる河床勾配は、フルード数Fr>1F_{r}>1の条件の下、マニング式より次式で求めることができます。

I>n2gR13I > {n^2g}{R^{\frac{-1}{3}}}

ここで、IIは河床勾配、nnは粗度係数、RRは径深、ggは重力加速度である。仮に粗度係数を0.030.050.03 \sim 0.05、径深を15m1 \sim 5\mathrm{m}、重力加速度を9.8m/s29.8\mathrm{m}/\mathrm{s}^2とすると、射流が現れる河床勾配はI>1/1641/40I > 1/164 \sim 1/40程度になります。

不等流計算は逐次不等流計算法を標準とするが、複断面河道で高水敷が広く、低水路流れと高水敷流れの相互干渉による抵抗の増加や樹木群の影響等を無視できない河道では、断面を分割して計算を行う準二次元不等流計算を用いる必要がある。計算方法は、「河川砂防技術基準(案)調査編」を参照のこと。

不等流計算式

流量一定で質量の保存則が成立する場合、不等流の運動方程式は図ー5.5.2に示す記号に従い、距離ΔX\Delta Xだけ離れた断面I及びIIについて差分形で表すと次式のようになります。

エネルギー式:

{H1+12g(QA1)2}{H2+12g(QA2)2}=ΔE\biggl\{ H_{1} + \frac{1}{2g} \Bigl( \frac{Q}{A_{1}} \Bigr) ^{2} \biggr\} - \biggl\{ H_{2} + \frac{1}{2g} \Bigl( \frac{Q}{A_{2}} \Bigr) ^{2} \biggr\} = \Delta E

ここに、

  • QQ:流量
  • RR:径深
  • HH:水位=h+z=h+z
  • SS:潤辺
  • hh:水深
  • nn:マニングの粗度係数
  • zz:河床高
  • ΔX\Delta X:断面間距離
  • AA:河積

エネルギー損失ΔE\Delta Eには、壁面のせん断力による損失(摩擦損失)の他に横断面形や縦断形状の急変によく生じる流線のねじれ、壁面からの剥離等に伴う損失(形状損失)があり、水位計算にはこれらの損失を適切に評価する必要があります。

エネルギー損失:

ΔE=ΔE1+ΔE2+ΔE3+ΔE4+\Delta E = \Delta E_1 + \Delta E_2 + \Delta E_3 + \Delta E_4 + \cdots
  • ΔE1\Delta E_1: 摩擦損失
  • ΔE2\Delta E_2: 急拡・急縮による損失
  • ΔE3\Delta E_3: 橋脚による損失(堰上げ)
  • ΔE4\Delta E_4: 縦断形状の急変による損失

摩擦損失に関しては、抵抗則としてマニングの平均流速公式を用い、エネルギー式と同様に差分形で表した次式により算定します。

摩擦損失:

ΔE1=12×{n12R143×A12+n22R244×A22}×Q2×ΔX\Delta E_{1} = \frac{1}{2} \times \Biggl\{ \frac{n_{1}^{2}}{R_{1}^{\frac{4}{3}} \times A_{1}^{2}} + \frac{n_{2}^{2}}{R_{2}^{\frac{4}{4}} \times A_{2}^{2}} \Biggr\} \times Q^{2} \times \Delta X

形状損失に関しては、急拡・急縮による損失は死水域の設定で、橋脚による損失及び縦断形状の急変による損失は、局所的な水位の変化量として把握します(「建設省河川砂防技術基準(案)調査編」参照)。

計算は、常流では下流側の条件の影響が上流に及ぶため、下流から上流に向かって行い、射流では逆に上流から下流に向かって行わなければなりません。そのため、境界条件は流れが常流の場合にはその下流端水位(河口潮位、H~Q曲線水位、支配断面水位)を、射流の場合には上流の支配断面水位を与えます。

解法の手順としては、流れが常流の時には、境界条件として最下流端に水位H2H_2(あるいは水深h2h_2)を与え、距離ΔX\Delta Xだけ離れた断面Ⅰにおける水位H1H_1(あるいはh1h_1)を仮定して径深R1R_1、河積A1A_1を断面特性により求め、上式を用いて水位H1H_1(あるいはh1h_1)を計算します。これがさきに仮定したH1H_1と異なる場合は、H1H_1の仮定を修正して同様の計算を行い、計算値が仮定値と一致するまで繰り返し計算を行ないます。仮定したH1H_1と計算したH1H_1が一致すれば、このH1H_1が断面Ⅰにおける水位であり、これが求まるとさらにΔX\Delta Xだけ上流地点の水位を同様の方法で計算し、順次同じ手続きを繰り返し上流に計算していきます。

常流と射流が混在する場合の取り扱い方

流れが常流(Fr<1Fr < 1)の場合、任意地点の水面は流量と下流の水面とによって決定されるが、射流(Fr>1Fr > 1)の場合には下流の水面には関係なく、上流側の水面高によって決定されます。そのため、常流と射流が混在する区間においては、流れの状態によって不等流計算を行う方向が異なるので注意を要します。

実際に計算を行う際には、フルード数FrFrによるチェックを行い、支配断面の有無を確認しておく必要があります。そして、必要に応じて内挿断面を挿入し不等流計算を行います。

詳しくは「建設省河川砂防技術基準(案)調査編、参考6.12.1支配断面が現れる場合」を参照してください。

等流計算式

近似的に流れが等流と見なせる場合、以下に示す摩擦損失のみを考慮したマニングの平均流速公式と連続式を用いて水位を算定します。

ここで、近似的に等流と見なせる流れとは、堰・橋脚等の河川構造物の影響が及ばない区間断面形状の変化が小さい区間での流れが相当します。

マニング式:

v=1nR23I12v = \frac{1}{n} R^{\frac{2}{3}} I^{\frac{1}{2}}

連続式:

Q=A×vQ = A \times v

ここで、

  • vv:平均流速(m/s)
  • nn:粗度係数
  • RR:径深(m)
  • II:エネルギー勾配
  • QQ:流量(m³/s)
  • AA:流水断面積(m²)

等流計算の場合、エネルギー勾配IIは、河床勾配で置き換えることができます。

また、径深RRは潤辺長SS(m)を用いて次式で算定します。

R=ASR = \frac{A}{S}

計算例1:等流の平均流速と等流流量を求める計算

河底幅b=6mb=6\mathrm{m}、護岸の勾配z=2z=2(1:2.0、図3-3-5の台形断面参照)、水路勾配S0=1/625=0.0016S_0=1/625=0.0016、粗度係数n=0.025n=0.025のとき、等流状態での水深yn=2my_n=2\mathrm{m}における等流流量QQを計算する。

流水面積AAA=(b+zyn)×yn=(6+2×2)×2=20m2A = (b+zy_n) \times y_n = (6+2 \times 2) \times 2 = 20\mathrm{m}^2

潤辺PPP=b+2yn1+z2=6+2×21+22=14.94mP = b+2y_n\sqrt{1+z^2} = 6 + 2 \times 2 \sqrt{1+2^2} = 14.94\mathrm{m}

径深RRR=AP=(b+zyn)×ynb+2yn1+z2=2014.94=1.34mR = \frac{A}{P} = \frac{(b+zy_n) \times y_n}{b+2y_n\sqrt{1+z^2}} = \frac{20}{14.94} = 1.34\mathrm{m}

平均流速VVV=1n×R2/3×S01/2=10.025×1.342/3×0.00161/2=1.94m/sV = \frac{1}{n} \times R^{2/3} \times S_0^{1/2} = \frac{1}{0.025} \times 1.34^{2/3} \times 0.0016^{1/2} = 1.94\mathrm{m/s}

等流流量QQQ=A×V=20×1.94=38.8m3/sQ = A \times V = 20 \times 1.94 = 38.8\mathrm{m^3/s}

なお、以上の水理諸量は、z=0z=0とすれば長方形断面のそれになる。

計算例2:等流水深を求める計算

計算例1の水路が等流流量Qn=10m3/sQ_n=10\mathrm{m^3/s}を流している。等流水深yny_nを計算する。

等流流量は連続式のVVにマニング式を代入することにより与えられるから、これにQn=10m3/sQ_n=10\mathrm{m^3/s}n=0.025n=0.025b=6mb=6\mathrm{m}z=2z=2S0=0.0016S_0=0.0016の各値を代入すると、

Qn=10=10.025×{(6+2yn)yn}[(6+2yn)yn6+2yn5]2/3×0.00161/2Q_n = 10 = \frac{1}{0.025} \times \left\{(6+2y_n)y_n\right\}\left[\frac{(6+2y_n)y_n}{6+2y_n\sqrt{5}}\right]^{2/3} \times 0.0016^{1/2}

となり、トライアル&エラーで右辺がほぼ左辺に等しくなるyny_nの値を求める。

等流水深yn=0.964my_n=0.964\mathrm{m}Qn=10.01m3/sQ_n=10.01\mathrm{m^3/s}