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河川法の概要

第1節 河川管理

1 河川管理の目的

この法律は、河川について、洪水、津波、高潮等による災害の発生が防止され、河川が適正に利用され、流水の正常な機能が維持され、及び河川環境の整備と保全がされるようにこれを総合的に管理することにより、国土の保全と開発に寄与し、もつて公共の安全を保持し、かつ、公共の福祉を増進することを目的とする。

河川法 第1条

項目内容
洪水、高潮等による災害発生の防止ダム、堤防等の河川管理施設の新改築、河床掘削、放水路開削、河川に影響を及ぼす行為の規制 etc
河川の適正利用河川水利用の許可制、河川敷の占用の許可制、etc
河川環境の整備、保全河川の清潔の維持、水質浄化事業、親水護岸、多自然型川づくり、魚道の設置、自動車等の乗り入れの禁止 etc
流水の正常な機能の維持一定水位の保持、河川の自然の浄化作用維持 etc

2 河川管理の内容

河川法でいう広義の河川管理を体系的に分類すると、次のとおりとなります。

3 河川管理の原則

河川は公共用物であって、その保全、利用その他の管理は、法第1条の目的が達成されるよう適正に行なわれなければならない。

河川法 第2条第1項

河川台帳

河川管理者は、河川の台帳を調製し、これを保管しなければならない。河川の台帳は、河川現況台帳と水利台帳からなる(法第12条)。ただし、一級河川は国が調整することになっている。

(法第9条第2項、施行令第2条)

河川現況台帳は、河川に関する一般的な台帳で、その記載事項は、河川の延長、河川区域の概要、河川保全区域及び河川予定地、主要な河川管理施設の概要、河川の使用の許可の概要等である。

水利台帳は、水利使用に関する台帳で、その記載事項は、水利使用の許可を受けた者、水利使用の目的、許可水量、許可期間、取水口等である。

河川の占使用

占使用の種類

河川法は、河川が公共用物であることを明らかにしている。

公共用物とは、国、地方公共団体等の行政主体が直接に一般公共の用に供しているものである。河川は、自然公物と呼ばれるように、その発生は自然によるものであって、その本来的な使用は、道路における交通というように、人工公物ほど明らかではないが、流水の占用、舟またはいかだの通航、河川敷地の占用、土砂の採取等に種々の使用関係が存在する。

公物の使用関係は、通常、次のように分類して説明される。

  1. 自由使用
    • 一般公衆が、河川管理者の許可その他のこれを認める処分をまたないで、自由に行うことができる河川の使用のことをいう。水泳、洗濯、魚釣り等がこれに該当する。河川法では自由使用に関する規定は、特に設けていない。
    • 自由使用は、河川が一般公衆の用に供されていることの反射的利益として使用できるにとどまり、使用の権利を有するわけではないので、河川工事、許可使用等によって、その利益を損なわれても、妨害排除や損害賠償の請求はできない。また、同様な他人の自由使用を妨げない範囲で認められるものであることは、その性質からいって当然である。
  2. 特別使用
    1. 許可使用
      • 自由使用の範囲をこえ、他人の共同使用を妨げ、または公共の利益に反するおそれがある河川使用について、一般的にはこれを制限し、申請に基づいて支障がない場合にその制限を解除し、その使用を許可することがある。このような許可に基づく使用を許可使用という。河川区域内における工作物の新築または改築、土地の掘削等がこれに該当する。
      • 河川管理者の許可は、一般的な禁止、制限を解くことであり、特別な権利を与えるものではない。その許可により利益があっても、禁止制限の解除による反射的利益にすぎないと考えられている。
        1. 工作物の新築等(法第26条)
          • 河川区域内の土地(河川管理者以外の者がその権限に基づき管理する土地を除く。)において工作物を新築し、改築し、又は除却しようとする者は、河川管理者の許可を受けなければならない。河川の河口付近の海面において河川の流水を貯留し、又は停滞させるための工作物を新築し、改築し、又は除却しようとする者も同様である。
          • 許可は、工作物の新築等を許容するだけであり、土地を使用する権原までも与えるものではないことから、河川管理者以外の者がその権原に基づいて管理する土地については、別にその者との契約により使用権を取得し、その他の土地については、法第24条の許可を受ける必要がある。
  3. 土地の掘削等(法第27条)
    • 河川区域内の土地(河川管理者以外の者がその権限に基づき管理する土地を除く。)において土地の掘削、盛土若しくは切土その他土地の形状を変更する行為(26条1項の許可に係る行為のためにするものは除く。)又は竹木の植栽若しくは伐採をしようとする者は、河川管理者の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽易な行為はこの限りではない。
    • 本条の対象となる土地は、所有関係等にかかわらず、河川区域内のすべての土地を指す。
    1. 特許使用
      • 河川管理者が特定人のために、一般には許されない特別の使用をすることができる権利を設定する場合に、その権利を設定する処分(許可)を河川使用の特許といい、それに基づく使用を特許使用という。流水の占用、敷地の占用等がこれに該当する。
      • 他の使用の場合と異なり、特定人に対して排他独占的な権利が設定されることになり、これが第三者から侵害されるときは、妨害排除や不法行為として損害賠償を請求することができる。
      • この特許使用に対する河川管理者の許可処分は、河川管理者の自由裁量行為である。しかしながら、与えた許可の期限が到来した際、更新の許可申請があった場合には、それがその河川使用を達成するために必要な最小限の期間内であるときは、河川管理者は、特別の事情がない限り、この更新の許可をすべき拘束を受けるものと考えられている。
        1. 流水の占用(法第23条)
          • 河川の流水を占用しようとする者は、河川管理者の許可を受けなければならない。
        2. 土地の占用(法第24条)
          • 河川区域内の土地(河川管理者以外の者がその権限に基づき管理する土地を除く。)を占用しようとする者は、河川管理者の許可を受けなければならない。
          • 河川区域内の河川管理者が許可を与えることのできる「土地」とは、河川のために取得された国有地(国土交通省名義:旧建設省及び旧内務省名義又は官有地)をいう。
          • 河川工事のために取得した「地方公共団体」名義の土地についても、法第24条の対象となる。
        3. 土砂等の採取(法第25条)
          • 河川区域内の土地(河川管理者以外の者がその権限に基づき管理する土地を除く。)において土砂(砂を含む。以下同じ。)を採取しようとする者は、河川管理者の許可を受けなければならない。河川区域内の土地において土砂以外の河川の産出物で政令で指定したものを採取しようとした者も同様である。
          • 本条が適用されるのは、河川管理者がその権原に基づいて管理している国有地に限る。
    2. 慣習上の使用権に基づく河川使用
      • 河川法が適用される以前から、河川管理者の許可に基づかない慣習上の使用権が成立している場合がある。慣行としての河川の使用がどのような段階から権利として認められるかは難しい問題ではあるが、一般的には、その使用が排他独占的に継続して行われており、社会からその正当性を承認されるに至っているものでなければならないとされている。河川使用としては、灌漑のための流水占用に慣習上の使用権に基づくものが多くみられる(慣行水利権)。これについては、旧河川法も新河川法も河川法による許可を受けたものと取扱っている。

河川管理者の許可又は承認には、必要な条件を附することができる。しかしながら、その条件は、相手方に不当な義務を課するものであってはならない(法第90条)。

監督処分(法第75条)

河川法では、河川管理の適正を確保するため、監督処分に関する規定を設けている。河川管理者は、次のような場合には、許可の取り消し、現状回復その他必要な措置をとることを命ずることができる。

  1. 河川法関係法令、これらに基づく処分またはこれに附した条件に違反した場合。
  2. 河川法に基づく許可または承認にかかわる行為が他の法令の規定による処分により実行不能となった場合又は河川法に基づく許可または承認に関わる行為を廃止した場合。
  3. 河川の現状が変化し、河川管理上支障を生ずることになった場合。
  4. 河川工事のためその他公益上やむを得ない必要がある場合。

監督処分に伴う損失補償等(法第76条)

河川工事のため、やむを得ない必要があるとき又は河川工事以外の公益上やむを得ない必要があるときに監督処分を行い、当該処分により損失を受けた者があるときには河川管理者は損失を受けた者に対して、損失補償をする義務がある。

廃川処理事務

第2節 河川法の対象

公共の水流及び水面

一級河川、二級河川及び準用河川の指定の対象となり得る河川は「公共の水流及び水面」 です。(法第4条、第5条、第100条)

これらの河川以外の河川は、一般に「普通河川」と呼ばれています。

水流及び水面の意義

水流及び水面は、流水及び敷地との統一体をいいます。

公共の水流及び水面であること

「公共」とは、直接一般の公衆の用に供されるという意味です。

したがって、特定の目的を有する人工水流及び人工水面は河川となり得ません。

一級河川、二級河川及び準用河川

河川法は、河川を水系的にみて重要度の高い順から、一級河川、二級河川及び準用河川に分類して、それぞれの手続に従って、河川法の対象河川としています。なお、治水上、利水上の両面から河川管理について水系一貫管理の原則をとっています。

水系一貫管理の原則とは、同一の水系については、一の管理者が同一の法の適用のもとに管理するという原則です。

河川を分類すれば次のとおりです。

河川の分類

準用河川については、水系一貫主義の原則は当てはまらず、一級河川の水系の上流部や二級河川の上流部を指定することもできます。

  • 一級河川
    • 国土保全上又は国民経済上特に重要な水系で政令で指定したものに係る河川で国土交通大臣が指定した河川(河川法第4条)
    • 一級河川は直轄管理区間と指定区間に分けられる。直轄管理区間は国土交通大臣が管理し、指定区間は都道府県知事が管理する。
  • 二級河川
    • 一級水系以外の水系で公共の利害に重要な関係があるものに係る河川で都道府県知事が指定した河川(河川法第5条)
    • 二級河川は都道府県知事が管理する。
  • 準用河川
    • 一級河川及び二級河川以外の河川で市町長が指定した河川(法第100条)
    • 準用河川は市町長が管理する。
  • 普通河川
    • 一級河川、二級河川及び準用河川のいずれにも当たらない公共の水流及び水面で河川法の規定が適用、又は準用されないもの
    • 普通河川は市町長が管理する。

国土交通省>水管理・国土保全

第3節 河川管理の主体

河川管理者

河川管理者は、河川の種類によって異なります。

  • 一級河川:国土交通大臣(法第9条1項
  • 二級河川:都道府県知事(法定受託事務)(法第10条
  • 準用河川:市町長(自治事務)(法第100条

権限の委任

指定区間内の一級河川(知事委任区間)

国土交通大臣が指定する区間内の一級河川については、管理の一部を都道府県知事に委任しています(法第9条2項、政令第2条)。委任の範囲は、政令2条1項各号列記以外の権限であり、水系一貫管理上重要な権限は国土交通大臣に留保し、その他はすべて委任しているという趣旨です。

指定区間の指定手続きは、都道府県知事の意見聴取(法第9条3項)と公示(法第9条4項、省令第3条)を行います。

指定区間外の一級河川(直轄管理区間)

地方整備局長に委任(法第98条)され、政令53条列記以外の権限が委任されます。

政令指定都市の長への管理権限の委任

政令指定都市の長が管理できる区間は、当該政令指定都市の区域に存する区間のうち、以下の区間です。

  • 一級河川の指定区間:国土交通大臣が、関係都道府県知事及び政令指定都市の長の意見を聴いて指定した区間(法第9条5項
  • 二級河川:関係都道府県知事が、政令指定都市の長の同意を得て指定した区間(法第10条2項

委譲される管理権限の範囲は、一級河川では政令第2条1項各号列記以外の権限、二級河川ではすべての管理(流水占用料等の徴収に関する事務を除く)となります。

国土交通大臣の認可等

河川法上の認可

知事は、指定区間内の一級河川の管理で政令で定めるものを行おうとするときは、国土交通大臣の認可を受けなければなりません(法第79条1項、政令第45条)。二級河川における知事の管理で法令で定めるものは、国土交通大臣に協議しなければなりません(法第79条2項、政令第46条、第46条の2、第47条)。

国土交通大臣の指示

指定区間内の一級河川又は二級河川において、洪水、高潮等により、災害が発生するおそれがあるなど河川管理上の支障があると認められるときは、管理の一部を知事に代わって行い(一級河川)、又は知事に必要な措置をとるべきことを指示(二級河川)することができます(法第79条の2)。

以上のように、河川管理の主体と権限委任は、河川の種類や区間によって異なり、法律に基づいて細かく定められています。これらの規定により、河川の適切な管理と災害防止が図られています。

第4節 河川区域

法第6条では、河川区域の範囲が明確にされており、この区域内では河川管理者による適切な管理が行われています。

では、具体的にどのような土地が河川区域に含まれるのでしょうか。大きく分けて2つのタイプがあります。

河状を呈している土地の区域

法第6条第1項第1号では、以下のような土地が河川区域とされています。

河川は、自然の状態で公共の利用に供されている実態があります。そのため、その土地の区域は、社会通念上、河川の区域であると認められます。したがって、河川管理者による指定等の行為を必要とせず、法律上、当然に河川区域とされています。

  • 流水が継続して存する土地
  • 草木の生茂の状況、その他の状況が上記に類する状況を呈している土地
    • あし、かや等の水生植物が生えている
    • 石、砂等が露出している
    • 頻繁に水につかるため岩が変色している
  • 河岸の土地(天然河岸や人工河岸(護岸等)を含む)

ただし、洪水などの異常な自然現象によって一時的にこのような状況を呈している土地は除外されます。

河川管理施設の敷地である土地の区域

法第6条第1項第2号では、ダム、堤防、護岸等の河川管理施設の敷地が河川区域に含まれます。

これらの区域は、社会通念上「河川の区域」と認められるため、河川管理者の指定等を経ずに法律上当然に河川区域となります。

河川の管理区分は下図のとおりとなっています。(出典:国土交通省>荒川下流河川事務所


国土交通省>荒川下流河川事務所

河川管理者の指定によって定まる河川区域

堤外の土地のうち、いわゆる高水敷地の部分、あるいは山付き堤の箇所のように機能的に堤外地に類する土地は、河川の流水を安全に流下させる区域として管理していく必要があります。その必要とする範囲は外見上明確でなく、個別的判断を要するので河川管理者の指定行為によって定まることとしたものです。(法第6条1項3号、第6条2項、3項の区域)

堤外の土地

  • 堤外の土地: 堤防から見て流水の存する土地
  • 堤内の土地: 堤防から見て人家の存する土地

政令で定める堤外の土地に類する土地(政令第1条1項)

ア 堤防類地

地形上堤防が設置されているのと同一の状況を呈している土地のうち (政令第1条1項1号)

  • (a) 堤防に隣接する土地
  • (b) 堤防に隣接する土地の対岸に存する土地
  • (c) 堤防の対岸に存する土地
  • (d) (a)、(b)、(c)の土地と1号地の間に存する土地
イ ダム貯水池

ダムによって貯留される流水の最高の水位における水面が土地に接する線によって囲まれる地域内の土地(政令第1条1項3号)

政令で定める遊水池

河川整備計画において、計画高水流量を低減するものとして定められた遊水池

指定の要件、手続

  • ア 上記に該当する土地のうち、法第6条第1項第1号の土地と一体として 管理を行う必要があること(流水地中心主義)(法第6条1項3号)
  • イ 指定等の公示(法第6条4項、省令第2条)
    • 国土交通大臣・・・官 報
    • 都道府県知事・・・都道府県の公報
  • ウ 港湾区域又は漁港区域との重複指定
    • 港湾区域又は漁港区域に3号地の指定又はその変更を行う場合は、港湾管理者又は 農林水産大臣と協議する必要があります(法第6条5項)。逆の場合は協議があります (港湾法第6条、漁港法第5条8項)
河川予定地

河川予定地で、河川管理者が権原を取得した後においては、当該土地の区域が河川区域となる前においてもその土地は、河川区域内の土地とみなされます(法第58条)。

河川区域の効果

河川区域と私権

河川区域と私権については、次のような考え方があります。

  1. 私権の成立を一切認めない考え方(旧法)
    • 旧法第3条では、「河川並其ノ敷地若ハ流水ハ私権ノ目的トナルコトヲ得ス」とされていました。立法理由書によると、「私人若ハ公共団体等ノ所有ニ属セザルノミナラズ又国有ニモ属セザルコト猶領海ノ如シ」とされています。
  2. 流水の敷地は土地が滅失したとみなし、私権は存在しないとする考え方(法務省)
    • 法務省の見解では、流水の敷地は土地が滅失したとみなすべきであり、私権は存在しないとされています。
  3. 私権の成立を認めた上で、その行使を制限する考え方(道路法)
    • 道路法第4条では、「道路を構成する敷地、支壁その他の物件については、私権を行使することができない。ただし、所有権を移転し、又は抵当権を設定し、若しくは移転することを妨げない。」と規定されています。
  4. 私権の成立を認め、河川管理上の必要な制限のもとでその行使を認める考え方(新法)
    • 新法では、以下のような考え方が採用されています。
      • 河川の敷地は、本来私権の目的となり得るものである(旧法準用河川及び普通河川の敷地、判例)。
      • 流水の冠している土地は、必ずしも土地所有権の使用収益処分(財産的支配)の実体が不可能なわけではない(土地滅失論には無理がある)。
      • 高水敷地は何年かに1度冠水するだけであり、土地利用になじむ。
      • 私権を認めた方が補償問題も起こらず、行政上も便利である。

河川区域の効果

  1. 河川管理者が管理権を持つ河川区域内の土地(通常は国有地)
    • 土地の占用許可(河川法第24条):国有財産法の特則として扱われる
    • 土石等の採取許可(河川法第25条)
    • 工作物の新築等の許可(河川法第26条)
    • 土地等の掘削等の許可(河川法第27条)
    • 舟やいかだの運航制限(河川法第28条、河川法施行令第16条の2)
    • 竹木流送の許可(河川法第28条、河川法施行令第16条の3)
    • 河川管理上支障を及ぼすおそれのある行為の禁止、制限、許可(河川法第29条、河川法施行令第16条の4~16条の8)
    • 廃川敷地等の交換、譲与:国有財産法の特則として扱われる
  2. 民有地である河川区域(河川管理上必要な制限あり)
    • 工作物の新築等の許可が必要
    • 土地等の掘削等の許可が必要
    • 河川管理上支障を及ぼすおそれのある行為の禁止、制限、許可が適用される

旧法の規定による河川敷地等の国有帰属

新河川法の施行時点で、旧河川法の規定によって私権の対象とならないとされていた河川敷地や附属物、その敷地は、国の所有となります(施行法第4条)。

しかし、この国有地となった土地の取り扱いには特別な例外規定があります(施行法第18条第19条)。

河川保全区域(法第54条、第55条)

河川管理施設、特に堤防は、河川の流水によって生ずる災害の発生を防止するために必要な機能を果たしています。河川保全区域とは、その機能を保全するために、機能に支障を及ぼすおそれのある行為を一定の範囲で厳重に取り締まるため、河川管理者が指定した区域のことです。

河川保全区域において、盛土又は切土その他土地の形状を変更する行為や工作物の新築又は改築を行うときには、河川管理者の許可が必要となります。ただし、政令で定める簡易なものについては、許可を要しません。

河川予定地(法第56条、第57条)

河川予定地とは、河川工事を推進するため、河川工事の施行に支障を与えるおそれのある行為を制限するために、河川管理者が河川工事の施行により新たに河川区域内の土地となるべき土地を指定したものです。

河川予定地においても、盛土又は切土その他土地の形状を変更する行為や工作物の新築又は改築を行うときには、河川管理者の許可が必要となります。ただし、政令で定める簡易なものについては、許可を要しません。

第5節 河川計画

平成9年12月1日施行の河川法改正により、治水及び利水の統一された河川管理を目的とした従前の河川法について、その目的規定を抜本的に見直し、新たに河川環境の保全と整備が法の目的に位置づけられました。

このため、従来の「工事実施基本計画」を、河川整備を行うにあたっての長期的な基本方針及び河川整備の基本となるべき事項を定める「河川整備基本方針」と、具体的な河川整備に関する事項を定める「河川整備計画」に区分して定めることとなりました。このうち、「河川整備計画」については、具体の施設の整備内容等について定めるものであることから、地方公共団体の長から意見を聴取する手続きの導入を図り、地域住民や学識経験者の意見を反映させるために必要な措置を講ずることとされました。

河川整備基本方針

河川整備基本方針は、河川管理者が水系ごとに定める長期的な河川整備の方針です。この方針は、全国的なバランスを考慮しながら、水系全体を見渡して決定する必要があり、基本高水や主要地点の計画高水流量などの重要な事項が定められます。

  1. 当該水系に係わる河川の総合的な保全と利用に関する基本方針
  2. 河川の整備の基本となるべき事項
    • 基本高水ならびにその河道及び洪水調節ダムへの配分に関する事項
    • 主要な地点における計画高水流量に関する事項
    • 主要な地点における計画高水位及び計画横断形に係わる川幅に関する事項
    • 主要な地点における流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関する事項

一級河川の場合、河川整備基本方針は従来の工事実施基本計画と同様に、国土交通大臣が河川審議会の意見を聴いた上で定めることになっています。二級河川では、都道府県河川審議会が設置されている場合、その意見を聴いた上で、都道府県知事が定めることとされました。

なお、河川整備基本方針の策定にあたっては、地域の意見を反映するための手続きが義務付けられていません。これは、河川整備基本方針が長期的な観点から、国土全体のバランスを考慮し、基本高水や計画高水流量などの抽象的な事項を科学的かつ客観的に定めるものだからです。

河川整備計画

河川管理者は、河川整備基本方針に基づいて、計画的に河川工事などの河川整備を進める区間について、具体的な河川整備計画を作成することになりました。

定める整備内容の計画対象期間は、一連区間において河川整備の効果を発現させるために必要な期間とし、おおよそ計画策定時から20~30年間程度を1つの目安とします。河川整備計画で定める事項は、以下のとおりです。

  1. 河川整備計画の目標に関する事項
  2. 河川整備の実施に関する事項
    • 河川工事の目的、種類及び施行の場所並びに当該河川工事の施行により実施される河川管理施設の機能の概要
    • 河川の維持管理の目的、種類及び施行の場所

この河川整備計画を作成する際には、必要に応じて学識経験者の意見を聞くことが求められます。また、公聴会の開催などを通じて、関係住民の意見を計画に反映させるための措置を講じることが義務付けられています。

第8節 河川工事

河川工事の意義

河川工事とは

この法律において「河川工事」とは、河川の流水によつて生ずる公利を増進し、又は公害を除却し、若しくは軽減するために河川について行なう工事をいう。

河川法 第8条

河川の流水によって生ずる公利を増進するため河川について行う工事 (いわゆる「利水工事」)

例えば、

  • (a) 舟運の便を良くするための河道の浚渫
  • (b) 河川の利用可能な流量を増加させるために行われるダムの建設等

公害の除却、軽減のために河川について行う工事 (いわゆる「治水工事」)

例えば、

  • (a) 洪水調節ダムの建設
  • (b) 堤防、護岸、床止め等の新築、改築、修繕
  • (c) 洪水の流通をよくする為の放水路の築造、河道の浚渫等

公利及び公害の「公」の観念

不特定多数の人のために、すなわち、一般公共利益のために行われるものを指します。

したがって、以下は河川工事の概念に入りません。

  • (a) 発電、水道等のためのダムの建設
  • (b) 土地改良区が施工する堤(頭首工)工事は、特定人の利益のためにのみ行うもの

河川工事とは、原則的には河川管理者が河川管理権に基づき施行するものです。

改良工事、修繕、維持

河川法では、「河川工事」「改良工事」「修繕」及び「維持」なる語を用いています。(法第8条、第16条の3、第20条、第60条、第61条)

  1. 維持
    • 「維持」は、河川の保存のための行為であり、 河川工事には含まれないと解されています。
    • 理由:法第16条の3、第20条は「河川工事又は河川の維持」と規定しているため。
  2. 改良工事
    • 「改良工事」とは、公利増進、公害除却のための施設を設置し、又は行為を行うものです。
    • 河川の従前以上の機能を付与して、その積極的増進を図ろうとするものであり、河川工事の中枢をなすものです。
  3. 修繕
    • 「修繕」は、河川又は河川管理施設につき生ずるマイナスを現状に回復するための工事です。
    • 「修繕」は、河川工事に含まれます。

砂防工事、森林工事

河川工事は、河川法に基づく工事です。したがって、砂防工事及び森林工事は、一種の治水工事(河川に流出する土砂を防止する為に河川の上流において施工される)ですが、それぞれ砂防法、森林法に基づく工事であって、河川工事には該当しません。

河川管理施設

河川管理施設の意義

この法律において「河川管理施設」とは、ダム、堰せき、水門、堤防、護岸、床止め、樹林帯その他河川の流水によつて生ずる公利を増進し、又は公害を除却し、若しくは軽減する効用を有する施設をいう。

河川法 第3条第2項

概括的には、河川工事の中心である改良工事施行の結果、河川管理者が設置した施設(厳密には、権原を有していればよい)が河川管理施設と考えてよく、河川法は、公利増進、公害除却、という効用に着目し、かかる効用を有するものは、河川管理者の認定等を要せずに法律上当然河川管理施設であるとして、河川の中に含ましめ(法第3条1項)、河川法の適用の対象としたものです。

ただし、河川管理者以外の者が設置した施設については、当該施設を権原に基づき管理する者の同意を得なければ、当該施設を河川管理施設となし得ません。(法第3条2項ただし書)

  • 土地改良区が設置した堤防
  • 会社、工場等が設置した護岸等
注意

兼用工作物は、ただし書の適用外で本文による河川管理施設です。

河川管理施設等の構造の基準

河川管理施設又は、法第26条の許可を受けて設置される工作物は、水位、流量、地形、地質その他の河川の状況及び自重、水圧、その他の予想される荷重を考慮した安全な構造のものでなければなりません。(法第13条1項)

(類似規定)

  • 道路法 第29条
  • 海岸法 第14条

河川管理施設又は法第26条の許可を受けて設置される工作物のうち、ダム、堤防その他の主要なものの構造について、河川管理上必要とされる技術的基準は、政令で定める。(法第13条2項)

  1. 河川管理施設等構造令(昭和51政令199条)
  2. 河川管理施設等構造令施行規則(昭和51 建設省令13号)
  3. 国土交通省の内部基準として「河川砂防技術基準」(案)
  4. 工作物設置許可基準

(類似規定)

  • 道路法第30条
  • 道路構造令(昭和45 政令320号)

河川管理施設の操作規則

河川管理者は、その管理する河川管理施設のうち、ダム、堰、水門その他の操作を伴う施設で政令で定めるものについては、政令で定めるところにより、操作規則を定めなければなりません。(法第14条1項)

  • 操作を伴う河川管理施設にあっては、その操作のいかんが治水上又は利水上重要な影響を与えるため、あらかじめ操作規則を定め、これにより操作の適正化を確保しようとするものです。
  • 操作規則を定めなければならない河川管理施設-政令第8条
  • 操作規則に定めなければならない事項-政令第9条

操作規則を定め、又は変更しようとするときは、予め政令で定めるところにより関係行政機関の長に協議し、又は関係都道府県知事、関係市町村長等の意見をきかなければならない。(法第14条2項)

附帯工事の施行(法第19条)

意義

河川管理者は、河川工事により必要を生じた他の工事又は河川工事を施行するために必要を生じた他の工事を当該河川工事とあわせて施行することができます。

  1. 河川の工事により必要を生じた他の工事の例
    • 河川の引堤工事のため必要となった樋門樋管の付替
  2. 河川工事を施行するため必要を生じた他の工事の例
    • 河川工事施行のための材料運搬用道路の拡幅、路盤の補強工事
  3. 本条は強権規定であり、樋門樋管の管理者が反対しても、附帯工事として他の工事をあわせて施行できる。ただし、他の法律に基づく同意等の手続きを要することはいうまでもない。
  4. 予算上の附帯工事は、附帯工事費(予算費目)をもって施行される工事をいうが、本条の附帯工事と、その範囲は必ずしも一致しない。

附帯工事の範囲

対象施設の管理者の同意があれば、当該施設の改良を含めて施行できますが、管理者の意志に反しては行なえません。

対象施設が河川区域内に設けられる場合には、河川区域内の土地を占用し、工作物を設置する等の権利は、当該施設の管理者が自ら取得しなければなりません。

費用負担(法第68条)

他の法律による原因者工事の適用

道路法第22条2項

土石の無許可採取の禁止

土石の無許可採取は、窃盗罪を構成する場合があります。最高裁判例(昭32.10.25)は、窃盗罪の保護法益は、「占有」であり、河川砂利には河川管理者による「占有」にあたる行為はないとするが、最近の庭石用転石の無許可採取については、一定の場合、占有の行為があると認めて窃盗罪が適用されています。

このほか、土地の掘削を伴う場合には、無許可土地掘削となり、河川法第102条の罰則が適用されます。

河川法の変遷

昭和39年制定 河川法

明治29年制定の河川法は、制定以来、我が国の治水、利水に関する河川行政の基本法として約70年間適用された。

その後の社会経済情勢の変化により、治水・利水両面にわたり、地先ごとの利害の対立を超えた水系一貫の総合的・統一的な河川管理に対する世間の認識と要求の大きな高まりに応えるため、明治29年制定の旧河川法の全面改正作業が進められ、昭和39年に河川法が制定された。

改正に当たっての重点事項は、以下のとおりである。

  • 従来の区間主義河川管理制度を改め、河川を水系別に重要度に応じて区分する水系主義河川管理制度を採用し、一級河川は大臣、二級河川は都道府県知事、準用河川は市町村長が管理することとし、河川管理のあり方を明確化
  • 水利使用を中心とする河川使用関係の規定を整備
  • ダムによる災害の防止に関する規定を整備

昭和39年河川法の概要

昭和39年制定の河川法の概要は次のとおりである。

  1. 河川管理の目的
    • 洪水、高潮等による災害発生の防止
    • 河川の適正な利用
    • 流水の正常な機能の維持
  2. 河川の種類と河川管理者
    • 一級河川
    • 二級河川
    • 準用河川
  3. 河川工事
    • 河川工事の内容
      • 河川の流水によって生じる公利を増進するための河川工事
      • 河川の流水によって生じる公害を除却し、又は軽減するための河川工事
  4. 河川の使用及び河川に関する規制
  5. 水利調整
  6. ダムに関する特則

昭和47年改正

流況調整河川工事・特別水利使用者負担金制度の創設

都市化の発展、産業の発展等社会経済情勢の変化によって生じた都市地域における水需要の増大と治水環境の悪化などに対応するため、二以上の河川を接続して、これら河川の余剰水を利用しながら流水の状況を調整し、洪水防御、内水排除、維持用水の確保を図るとともに、併せて水の効率的な利用を図るべく、「流況調整河川工事」を行うことになった。この流況調節河川工事を行う場合、当該工事により新たに河川の流水を利用することが可能となる者に適正な費用の負担をさせることが適当であることから、専用の施設を新設又は拡張して流水を占用する者(特別水利使用者)に対して当該工事に要する費用の一部を負担させることができることとし、流況調整河川工事の促進が図られた。

準用河川制度の拡大

準用河川の指定の対象は、当初、一級河川の水系及び二級河川の水系以外の水系に係わる河川とされていたため、一級水系及び二級水系の末端の小河川は普通河川として取り残された状況にあった。これら河川については、河川管理者の許可を受けずに不法に工作物を設置する事例、形状を変更して河川を埋没させる事例など、河川の管理が適正に行われず、河川としての機能が損なわれ、降雨による浸水被害等地域住民の生活環境に悪影響を与えるようになっていた。

このため、一級水系又は二級水系の末端の河川についても河川法を準用して管理する途を開き、その管理の強化を図ることとなった。

昭和62年改正(市町村施行の河川工事・維持制度の創設)

近年、河川工事等を実施するに当たって、まちづくりの一環として行われる他事業との調整、地域住民の意向の的確な反映、地域の個別事情へのきめ細かい配慮等が求められるようになった。こうした状況のもと、まちづくりの観点から景観、親水性等河川の環境機能を十分に発揮させたいという市町村の要望に適切に応えるべく、受益の範囲が広域に及ばず、水系全体に著しい影響を与えないような河川工事・維持について、市町村長が行えるようにした。

市町村長が施行できる河川工事は、例えば、高水敷の整備、小規模な堰や流水の浄化施設の設置又は改築、堤防の小段又は側帯の整備等である。

平成3年改正(高規格堤防特別区域制度の創設)

後背地に人口、資産等が高密度に集積する低平地を抱える大河川においては、計画高水流量を超える超過洪水時の破堤による甚大な被害を回避するため、堤内地側に緩い傾斜を有する幅の広い(堤防の高さのおおむね30倍)堤防(高規格堤防)をつくる必要がある。

一方、このような高規格堤防は、その構造上通常の土地利用が堤防上で行われても河川管理上支障はなく、また、まちづくりの観点からはむしろ当該堤防上の土地を有効活用することが望ましい。このため、高規格堤防の河道部や通常の堤防の天端に当たる部分を除き、その区域を高規格堤防特別区域として河川区域規制を緩和し、住宅やビルの建築、道路、公園の設置等の通常の土地利用を認めることとし、高規格堤防の整備を促進することとした。

平成7年改正(河川立体区域制度の創設)

近年、流域の開発が進み、都市化の進展が著しい河川では、放水路、調節池等の河川管理施設を整備しようとしても、当該地域の土地利用が稠密で、権利関係が複雑であることから用地取得が難航し、事業の進歩がかんばしくない状況にある。このような状況を改善し、都市の中で治水対策の実施を効果的に進めるため、一定の河川管理施設について、河川法に基づく規制の及ぶ範囲である河川区域の範囲を上下について立体的に限定(河川立体区域)し、その上部空間の利用を基本的に自由にすることとした。

平成9年改正

近年では、社会経済情勢の変化、世界的な自然環境への意識の高まりなどもあり、河川には治水・利水だけではなく、うるおいのある水辺空間や多様な生物の生息環境としての役割が求められるようになった。また、地域の風土と文化を形成する重要な用として個性を活かした川づくりも求められている。

このような時代の背景の変化もあって、平成8年6月には河川審議会において、「川の365日」など河川行政の転換を求めるものとして、「21世紀の社会を展望した今後の河川整備の基本的方向について」答申が出され、さらに12月、その具体的な制度化のための提言「社会経済の変化を踏まえた今後の河川制度のあり方について」が建設大臣に対して行なわれた。これらの答申及び提言にもとづき、平成9年6月、「河川法の一部を改正する法律」が施行された。

改正の概要

  1. 河川環境の整備と保全の目的の一つに
    • 河川の持つ多様な自然環境や水辺空間に対する国民の要請の高まりに応えるため、河川管理の目的として、「治水」、「利水」に加え、「河川環境」(水質、景観、生態系等)の整備と保全を位置付けた。
  2. 新たな計画制度の導入
    • 地域の意向を反映した河川整備計画を導入した。
      • 河川整備基本方針(長期的な方針)
        • 計画高水流量等の基本的な事項について、河川管理者が河川審議会の意見を聴いて定める。
      • 河川整備計画(具体的な整備の計画)
        • ダム、堤防等の具体的な整備の計画について、河川管理者が地方公共団体の長、地域住民等の意見を反映させて定める。
  3. 異常渴水時の円滑な水利使用の調整のための措置
    • 円滑な水利使用の調整を図るため、水利使用者は早い段階から協議に努め、また、河川管理者は情報提供に努めるとともに、水融通に許可が必要とされる場合の手続の簡素化を図る。
  4. 樹林帯の整備と保全
    • 堤防やダム貯水池の機能を維持・増進するため、堤防やダム貯水池周辺の一定の幅の樹林帯を、保安林制度等と調整の上、河川管理施設として適正に整備又は保全することができるよう措置する。
  5. その他
    • 水質事故処理等の原因者施行・原因者負担
      • 油の流出など水質事故等について、原因者に処理させ、又は費用を負担させることができる。
    • 不法係留対策の推進
      • 河川管理者が不法係留船舶等の売却、廃棄等の措置を迅速な手続で行うことができる。

平成12年改正

社会の様々な変化に対応して、国、地方自治体、市民等の適正かつ効率的な責任との役割の分担を検討し、的確な河川管理体系を確立する必要があるとの観点から平成11年8月「河川管理に関する国と地方の役割分担について」と題する河川審議会の答申があった。この中で、河川管理についての役割分担の基本方針として、個性豊かな自立型地域社会の形成を進めるため、流域における多様な主体の河川管理への幅広い参画が不可欠であると指摘された。

平成12年1月の「河川管理への市町村参画の拡充方策について」の答申では、市町村工事制度の拡充や政令指定都市への権限委譲が必要であるとの提言があった。これらを受けて平成12年4月に河川法が改正された。その要点は次のとおりである。

  1. 指定区間について、政令指定都市に河川管理権限を付与する。
  2. 一級河川の直轄区間で市町村長が河川工事を行えるようにする。

河川審議会答申

河川審議会の構成は概ね次のとおりとなっている。なお、河川審議会は、現在は社会資本整備審議会河川分科会となっている。

「今後の河川環境のあり方について」答申平成7年3月(概要)

河川環境については、昭和56年に「河川環境管理のありかたについて」答申があり、これに基づき、河川環境基本計画など新たな河川環境の取り組みが始められた。しかし、その後、河川環境については、まちづくりの観点からの要請、生態系の重視、安全でおいしい水に対する関心の高まりなど、新しい観点からのニーズが増大してきた。

このため、河川審議会では、上記の河川環境に対する新たなニーズを踏まえて、河川環境に関する基本的な考えを改めて確立すべく、平成7年3月、答申を行ったものである。

その概要は次のとおりである。

(1) 生物の多様な生息・生育環境の確保

  • 多様な河川形状の採用
  • 上下流の連続した環境条件の確保
  • 貴重な動植物の絶滅を防止するための取り組みの推進
  • 河川水辺の国勢調査の充実等

(2) 健全な水環境の確保

  • 河川の自浄機能の保全の水質浄化対策
  • ダム等による渇水時における河川の正常流量の確保
  • 水量、水質、生物等のモニタリングの強化等

(3) 河川と地域の関係の再構築

  • 劣悪な環境となっている河川の再生
  • 人と水とのふれあいの確保
  • 周辺地域を含めた良好な河川景観の形成
  • 地域の意向を反映した河川整備の推進等

以上を基本方針に、河川が地域住民の共有財産であるという認識のもとに、住民、地方公共団体等を含めた流域全体の取り組みを推進することとされた。

「21世紀の社会を展望した今後の河川整備の基本的方向について」答申平成8年6月(概要)

平成7年の答申に引き続いて、翌平成8年6月に、河川審議会から、河川整備の全般にわたって、新しい基本方針を示す答申が出された。これらが今回の河川法改正の直接の契機となった「21世紀の社会を展望した今後の河川整備の基本方針について」の答申である。

(1) 基本認識

  • かつて川が人にとって身近だったように、人と川の関わりを再構築することが必要
  • 洪水や渇水という異常の河川を対象とした従来の河川行政から、平常時の河川も視野に入れた「川の365日」の河川行政に転換

(2) 今後の河川整備の基本的方向と主要施策

  • 壊滅的な被害を回避する新たな治水・利水方式が必要
  • 貴重な水と緑のネットワークの核として河川を位置づけ、河川や水路を回復、再生し、地域やまちの水辺の復活
  • 地域と河川の役割分担を明確にし、地域の意向を反映し、地域の個性発揮を支援

(3) 施策の推進方法

  • 河川整備に関する計画の充実
  • 地域住民、地方自治体、関係機関等との連携強化及び体制の整備等

さらに、その中で、制度面の対応として、以下の点が示された。

  • 良好な河川環境の整備、保全のための制度の検討
  • 地域住民の意向反映のための制度の検討

「社会経済の変化を踏まえた今後の河川制度のあり方について」提言平成8年12月(概要)

平成8年6月の河川審議会答申において宿題とされた、良好な河川環境の整備、保全や地域住民の意向反映のための制度についての検討を行うため、さらに引き続き河川審議会において検討が進められ、平成8年12月、河川審議会から、「社会経済の変化を踏まえた今後の河川制度のあり方について」提言された。

ここでは、基本的に今回の河川法改正につながる次のような提言がなされた。

  1. 河川法の目的への「環境」の位置づけ

  2. 水と緑のネットワークの整備

  • 既存水路を活用した良好な水辺環境の形成
  • 河川周辺の樹林(河畔林、湖畔林)の整備、保全
  1. 水質事故処理対策

  2. 不法係留対策

  3. 地域との連携による治水、利水、環境の総合的な河川整備の推進

  • 河川整備の計画の可視性と計画策定の手続きの整備(地方公共団体の意見聴取、地域住民の意見反映等)
  1. 異常渇水時の円滑な水利調整のための措置
  • 渇水調整協議会の位置づけとその役割の明確化
  • 異常渇水時における一時的な水融通のための特例措置の創設
  1. 河川情報の提供の推進

「新たな水循環・国土管理に向けた総合行政のあり方について」答申平成11年3月(概要)

人間社会において安全・快適で心豊かな生活が確保され、自然環境・生態系の保全に果たす水の機能がで、きるだけ損なわれず、人間社会の持続可能な発展が保たれるよう、より一層の円滑かつ効率的な水管理・国土管理を目指した総合的な施策を展開しなければならないとの観点から、新たな水循環・国土管理に向けた課題として、以下の点が答申された。

(1) 新たな水循環・国土管理に向けた総合行政の展開方策

  • 水循環の概念を取り入れた国土マネジメントの必要性
  • 流砂系における総合的な土砂管理の推進(総合的土砂マネジメント)の必要性
  • 「川に学ぶ」社会の構築
  • 河川を活かした都市の再構築
  • 危機管理施策の展開

(2) 水に関する総合的な体系の確立

  • 人間社会と水循環系の調和、流域単位の水体系の構築、公共の福祉優先、知識・情報の共有、国、地方公共団体、事業者、住民等の適切な役割分担と連携を基本理念とした水に関する総合的な体系の確立が必要

基本的な施策として、次の事項が挙げられている。

  • 水循環アセスメントの実施、水に関する総合的な計画の作成、流域水委員会の設立等の流域における総合的かつ計画的な取り組み
  • 水環境の保全のための取り組み
  • 経済原理を取り入れた誘導策

また、危機管理対応型社会の確立のため、以下の課題と展開について述べられている。

  • 災害に強い土地利用への誘導
  • 広域防災機構の創設
  • 地下鉄・地下街や自動車等の新たな危険への対応

7.2.5 「今後の水利行政のあり方について」提言平成11年3月(概要)

河川を適正に管理するためには、高齢化社会の進展、ライフスタイルの変化、環境意識の高揚、国と地方公共団体との関わり等経済・社会の変化を的確にとらえた、長期的、広域的な視点に立った施策の展開が必要である。そのため、以下の点を今後具体的に推進していくことが提言された。

(1) 信頼感ある安全で安心できる国土の形成 (2) 自然と調和した健康な暮らしと健全な環境の創出 (3) 個性あふれる活力のある地域社会の形成

これらを推進するために、経済・社会の様々な変化に対応して、国、地方公共団体、市民等の責任と役割の適正かつ効率的な分担を検討し、適正な河川管理体系を確立する必要がある。このための河川管理に関する国と地方の役割分担等について部分的にとりまとめられ、答申されたものである。

(1) 経済・社会の変化を踏まえた河川管理の役割分担の特徴

(2) 河川管理についての国と地方の役割分担の方向

  1. 役割分担を考えるに当たっての視点
  2. 役割分担の基本方針

(3) 一級水系指定等の考え方及び基準

(4) 環境の観点から指定される一級水系の河川管理における国の役割

(5) 引き続き検討すべき課題

  1. 流域での対応と適正な役割分担の検討
  2. 河川管理への地域参画の拡大の具体方策の検討
  3. 水系にわたって我が国を代表する河川環境等の保全方策の検討
  4. 知事管理区間における河川環境の保全等についての国の役割の検討
  5. 直轄管理区間の指定手続き等の検討

「河川管理に関する国と地方自治体の役割分担について」中間答申平成11年8月(概要)

信頼感ある安全で安心できる国土の形成、自然と調和した健康な暮らしと健全な環境の創出、個性あふれる活力のある地域社会の形成を、今後具体的に推進していくため、経済・社会の様々な変化に対応して、国、地方公共団体、市民等の責任と役割の適正かつ効率的な分担を検討し、適正な河川管理体系を確立する必要がある。このため、河川管理に関する国と地方の役割分担等について部分的にとりまとめられ、中間答申された。

(1) 経済・社会の変化を踏まえた河川管理の役割分担の特徴

(2) 河川管理についての国と地方の役割分担の方向

  1. 役割分担を考えるに当たっての視点
  2. 役割分担の基本方針

(3) 一級水系指定等の考え方及び基準

(4) 環境の観点から指定される一級水系の河川管理における国の役割

(5) 引き続き検討すべき課題

  1. 流域での対応と適正な役割分担の検討
  2. 河川管理への地域参画の拡大の具体方策の検討
  3. 水系にわたって我が国を代表する河川環境等の保全方策の検討
  4. 知事管理区間における河川環境の保全等についての国の役割の検討
  5. 直轄管理区間の指定手続き等の検討

「河川における今後の情報化に向けた施策はいかにあるべきか」答申平成11年8月(概要)

我が国では、高度経済成長期において都市及び産業が急速な発展を遂げたことにより、都市水害の頻発、土砂災害の急増等、河川をめぐる様々な問題が発生してきた。都市化の進展等に伴う被害ポテンシャルの増大に対応すべく、治水施設の整備と併せ、被害を最小化するため水災害・土砂災害に関する正確な情報の提供、平常時からの十分かつ適切な情報提供が求められている。

日常生活における地域と河川との関係が希薄になってきており、河川情報を発信することにより、住民の河川に関する理解を深め、住民が河川とふれあう機会を増やす等、人と河川との関わりの再構築を進める必要がある。

(1) 被害の最小化に向けた情報提供 市町村長、防災機関及び住民の的確な防災行動につながる情報の提供が重要であるとの観点から、以下が重要な視点とされている。

  • 地域の防災活動に責任を有する市町村長、水防団等防災活動に関する組織の判断に役立つ情報の提供
  • 地域住民が災害状況を把握するのに役立つ情報の提供
  • 災害に関する情報の理解に役立つ平常時からの情報の提供

このために、以下の事項についての具体策が述べられている。

  1. 河川に関するデータの一元的管理及び提供体制の確立
  2. 情報の網羅性の確保
  3. 情報のわかりやすさの向上
  4. 情報提供ルートの多様化
  5. 平常時からの災害情報の提供
  6. 防災計画における河川情報の収集・提供に関する内容の充実

(2) 地域と河川の関係を再構築するための情報提供 住民が河川を自分たちのものとして考え、主体的に行動するとともに、河川管理者と共同して河川に関する活動を展開する姿を目指すことが重要であるとの観点から、以下が重要な視点とされている。

  • 地域の住民の河川に対する関心を強めていくための情報の提供
  • 住民が主体的に河川に関わっていくための情報の提供

このために、以下の事項についての具体策が述べられている。

  1. 環境、歴史・文化に関する情報の充実
  2. 画像情報や体験型の情報提供による河川に対する住民の関心の喚起
  3. 地域の住民が主体的に河川に関わるための支援

「経済・社会の変化に対応した河川管理体系のあり方について」答申平成12年1月(概要)

個性豊かな自立型地域社会の形成を進めるため、流域における多様な主体の河川管理への幅広い参画が不可欠である。このためには一級河川の直轄管理区間、同知事管理区間及び二級河川を通じて、河川空間利用における市町村の参画や市町村河川工事の拡充など、地方公共団体、市民、NPO等の参画の推進を図ることが重要であるとの観点から、「河川管理への市町村参画の拡充方策について」提言されたものである。

(1) 河川管理における市町村参画をめぐる状況の変化及び課題

  • 貴重なオープンスペースとしての河川空間の持つ価値が益々増大していること、良好な水辺環境の整備を推進する必要性が一層高まっていることなどから、まちづくりと河川整備の連携に対する要請が一層高まっている。
  • 近年、急激な集中豪雨の発生が頻発する傾向がみられるとともに、大都市の中心部において地下空間の浸水災害が発生するなど、都市部の河川を中心として浸水対策を緊急に実施する必要性が生じている。

(2) 河川管理における市町村参画の拡充の方向

  1. 市町村工事制度の拡充

    • 市町村工事制度の一級河川(直轄管理区間)への拡大
    • 治水上著しい影響を与えない範囲で、市町村長が河川管理者との協議により主体的に市町村工事制度を活用する途を開くことが適切
  2. 政令指定都市への権限委譲

    • 政令指定都市がその人的資源・財政力を有効に活用し、まちづくりと河川整備の連携、緊急的な浸水対策の実施の必要性等の諸課題に的確に対応するためには、従来の市町村工事制度に加え、土地の占用許可、工作物の新築の許可等の権限を含め、都道府県と基本的に同等の河川管理権限を付与することが適切

「川における伝統技術の活用はいかにあるべきか」答申平成12年1月(概要)

近年、住民が再び川との触れ合いを求めるようになり、生物の生息生育環境としての川の重要性が見直されるようになってきた。一方、阪神淡路大震災の経験と反省を踏まえて、想定を超えるような災害に当たっても、その被害を最小限にすべき対応が求められている。これらの変化に応ずるためには、これまでの我が国における川と人の長い歴史を振り返り、先人の智恵に学ぶことが肝要であるとの観点から、「川における伝統技術の活用はいかにあるべきか」について以下の内容について答申された。

(1) 河川伝統技術の特徴と評価

  • 川の自然の力を利用した技術
  • 流域を含めて被害を抑える技術
  • 地域の特性、川の性格に応じた技術
  • 生活の中に維持管理を組み込んだ技術
  • 河川伝統技術の特徴と、今日の河川行政からみた評価

(2) 河川伝統技術の保存・活用に当たっての基本的考え方

  • 人、モノ、智恵の保存
  • 現代の社会状況に合わせた活用
  • 地域の主体的な参加による保存・活用等

(3) 河川伝統技術の保存・活用に当たっての具体的提言

  1. 河川伝統技術の背景も含めた実態調査の充実
  2. 河川伝統技術の分析・評価・研究の推進
  3. 河川伝統技術の保存
    • 河川伝統技術に関する文献・資料を集約した資料館の整備
    • 河川伝統技術に関するデータベースの整備
    • 河川伝統技術用語辞典の編纂
    • 「モノ」として残っている河川伝統技術の保存
    • 河川伝統技術を有する人材の確保・育成
    • 地域における活動への支援
  4. 河川伝統技術の活用
    • 河川計画、工法や環境保全への実際の応用
    • 氾濫原管理・危機管理への智恵の活用
    • 河川の維持管理への活用
    • 個性ある地域づくりへの活用

「流域での対応を含む効果的な治水のあり方について」中間答申平成12年(概要)

わが国のこれまでの治水対策は、雨水を川に集めて、早く安全に流すことが基本であった。しかし、都市化の進展に伴う流出量の増大、近年頻発する集中豪雨による危険性の拡大などにより、通常の河川改修による対応では限界を生ずるようになってきている。効果的な洪水対策を推進するため従来の河川改修と合わせて、流域における対策が重要であり、今後全ての河川で流域対策を検討することを基本とし、洪水対策を進めることが求められている。

(1) 流域治水の概要

流域治水のポイントは、築堤・ダムなどこれまでの河川改修に流域対策を加えて、対策のメニューを多様化することによって地域や河川の特性にあった効果的な治水対策を選択することである。

(2) 流域の特性と課題

地理的条件・土地利用・河川とのかかわりなどから、雨水の流出域、洪水の氾濫域、都市水害の防御域の3地域に区分し、それぞれの特性や課題に応じた対策を講じていくことを基本としている。

(3) 流域対策の基本的な考え方

  • 地域の視点の重視
  • 流域と河川の適正な役割分担
  • 河川の特性に応じた適切な流域対策の選択

(4) 流域対策

  1. 雨水の流出域での対策
    雨水の流出域における流域対策としては、森林の適切な管理などによる保水機能の保全や調整池など貯留施設の設置などを推進する必要がある。

  2. 洪水の氾濫域での対策
    洪水の氾濫域では、被害の最小化や生活基盤の確保の観点から地域の特性を踏まえた対策が必要であり、霞堤による遊水機能の保持、河川沿いの樹林帯の有効活用などを含めて、洪水氾濫形態別に対策を推進すべきである。

  3. 都市水害の防御域での対策

  • 河川事業と下水道事業の連携強化
  • 防御域における施設の耐水化の推進
  • 安全度の向上に資するソフト対策の推進

(5) 具体的方策の提案

  • 河川事業による輪中堤や宅地嵩上げの実施
  • 洪水の氾濫域における土地利用方策
  • 河川と下水道が連携した総合的な都市水害防御計画の策定
  • 水害に強い地域づくりのための情報提供

「河川における市民団体等との連携方策のあり方について」答申平成12年12月(概要)

河川は、多様な生物を育み、地域固有の生態系を支える自然公物であるとともに、「地域固有の財産」であり、河川管理者のみならず、地域住民自らが流域における活動の中で守り育てていくべきものである。よりよい川を実現するという理念のもと、地域住民と行政が「川は地域固有の公共財産」であるという共通認識を持ち、連携した川づくりを行っていくことがきわめて重要である。

近年、市民活動への参加意欲が高まっている。これらの活動を行っている市民団体と行政が連携することにより、実りある市民運動が展開されるとともに、地域固有の豊富な地域などに基づく河川行政への提案なども期待できる。

連携を推進するために今後とるべき具体的方策として以下が提言されている。

  • 前提として、よりよい川を実現するという理念のもと、地域住民も行政も「川は地域共有の公共財産」であるという共通認識をもち、連携していくことが不可欠である。
  • よりよい連携に向け、着実に進展していくためには、現在でも実施が可能なことを着実に実行するとともに、実施例がないものについても、まず試行的に実施し、状況をフォローアップしながら、連携内容を充実させていくことが重要である。
  • 全国画一的な連携形態ではなく、地域の特性や実状に応じた多様な連携形態としていくことも重要である。

(1) 新たな連携形態の導入

  1. 市民団体等からの連携計画の提案制度の導入
  2. 自主運営型システムの導入
  3. ビオトープ、植栽等の計画、整備から管理までを依頼するシステムの導入
  4. 企業等とも連携した方式の導入

(2) 連携を支える仕組みの導入

  1. 情報システムの確立
  2. 取り決め、ルールの確立
  3. 評価システムの導入

(3) 連携に必要な人材の確保のためのシステムの導入

  1. 専門的知識・経験を活かすための人材バンク等のシステムの整備
  2. 市民活動等のコーディネーターを養成する仕組みの導入

(4) 連携を円滑に行うための行政側の体制整備等

  1. 効率的に連携のために行政が講じるべき対応策

「今後の水災防止のあり方について」答申平成12年12月(概要)

水害対策として、これまで水防団を中心とした水災防止活動が被害の軽減に貢献してきたが、近年の短期集中型豪雨の頻発や地下街浸水などに対しては、これまで以上に迅速な対応が要求されるうえ、就業構造の変化によってサラリーマンとして就業する水防団員の増加、災害関係情報の充実、情報通信技術の高度化など、水災防止の環境は大きく変化しており、社会状況の変化に対応した新たな水災防止対策の展開が求められている。

答申は、上記の課題に対応する方策について検討されたものであるが、水災防止について次の点を認識しつつ、今後の施策展開を答申したものである。

(1) 洪水などの水災は、地震などと異なり突発性の災害ではない。したがって普段からの備えと緊急時における的確な情報提供があれば減災効果を高めることができること。

(2) 水災防止には、従来から行政や個人以外に「地域の公(おおやけ)とでもいうべき共同体としての水防団が重要な役割を担ってきた。今後も行政や個々の住民、水防団に加えて、自主防災組織やボランティアなどの活動を有効なものとしていくためには連携が必要である。

  1. 水災防止対策の拡充

①事前の情報提供、予防措置

  • 洪水予報河川の拡充
  • 洪水ハザードマップの作成、公表
  • 地下空間での対応
  • 重要水防箇所の明示

②災害時の情報伝達・共有体制の充実

  • 情報の確実な伝達
  • 情報の共有化
  • 都市型水害に対応した情報の収集と伝達
  1. 水災防止体制の整備

①水防団の活動の充実

  • 水防団員の活動環境の整備
  • 水防団の活動範囲の拡大
  • 河川管理における一部委託の推進

②自主的な防災組織の活用 水災にかかる自主的な防災組織としては、町内会・自治会などを基礎とする自主防災組織、企業内防災組織、災害ボランティアなどがある。これらの組織は、これまでの水防団の活動とは異なった役割が期待でき、各組織の自主性を尊重しつつ水災防止活動に参画できる環境を整備していく必要がある。

  1. 水災防止を支える施設面での対応 ①水防活動拠点の整備 ②情報通信基盤の整備