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労働安全衛生法

基本的事項

目的

労働安全衛生法(安衛法)は、危害防止基準の確立、事業所内における責任体制の明確化、事業者の自主的活動の促進措置などの総合的な対策を推進することにより、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な作業環境の形成の促進を目的とする。

用語の定義

労働災害とは、労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、または作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、または死亡することをいう。労働者とは、職業の種類を問わず事業に使用される者で、賃金を支払われる者をいう(労基法第9条)。

事業者とは、事業を行う者で、労働者を使用する者をいう。すなわち、個人にあってはその事業主個人を、会社その他法人にあっては法人そのものを指す(安衛法第2条)。

事業者の講ずべき措置等

事業者は、労働者の危険や健康障害を防止するために以下の措置を講じなければならない。

  1. 危険を防止するための措置を講ずること(安衛法第20条)

    • 機械、器具その他の設備による危険
    • 爆発性の物、発火性の物、引火性の物等による危険
    • 電気、熱その他のエネルギーによる危険
  2. 掘削、採石、荷役、伐木等の作業方法から生ずる危険を防止するための措置を講ずること(安衛法第21条第1項)

  3. 労働者が墜落するおそれのある場所等に係る危険を防止するための措置を講ずること(安衛法第21条第2項)

  4. 土砂等が崩落するおそれのある場所等に係る危険を防止するための措置を講ずること(安衛法第21条第2項)

  5. 以下の健康障害を防止するための措置を講ずること(安衛法第22条)

    • 原材料、ガス、蒸気、粉じん、酸素欠乏空気、病原体等による健康障害
    • 放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害
    • 計器監視、精密工作等の作業による健康障害
    • 排気、排液または残さい物による健康障害
  6. 労働者を就業させる建設物その他作業場における、労働者の健康、風紀および生命の保持に必要な措置を講ずること(安衛法第23条)

  7. 労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するために必要な措置を講ずること(安衛法第24条)

  8. 労働災害発生の急迫した危険があるときの作業中止措置および作業場からの退避させる措置を講ずること(安衛法第25条)

元方事業者の講ずべき措置等

元方事業者とは、同一の場所において行う事業の一部を請負人に請け負わせている者のうち最も先次の注文者をいう(元請ほか、自ら事業を行う発注者も含まれる)。元方事業者は、以下の措置等を講じなければならない(安衛法第29条)。

  1. 関係請負人または関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、安衛法またはこれに基づく命令の規定に違反しないよう指導すること
  2. 関係請負人または関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、安衛法またはこれに基づく命令の規定に違反していると認めるときは、是正のために必要な指示を行うこと

特定元方事業者等の講ずべき措置

元方事業者のうち、多くの労働者が同一場所で混在して作業を行う建設業およびその他政令で定める業種(造船業)を行う者を特定元方事業者という(安衛法第30条)。

複数の関係請負人の労働者が同一の場所で作業する場合の措置

特定元方事業者は、関係請負人および関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、必要な以下の措置を講じなければならない。

  1. すべての関係請負人が参加する協議組織を設置し、その会議を定期的に開催すること
  2. 特定元方事業者と関係請負人との間および関係請負人相互間における連絡および調整を随時行うこと
  3. 毎作業日に、少なくとも1回は、作業場所の巡視を行うこと
  4. 関係請負人が行う労働者の安全または衛生のための教育について、教育を行う場所や教育に使う資料の提供等指導および援助を行うこと
  5. 仕事の工程に関する計画および作業場所における機械、設備等の配置に関する計画を作成するとともに、当該機械、設備等を使用する作業に関し、関係請負人が安衛法またはこれに基づく命令の規定に基づき講ずべき措置についての指導を行うこと
  6. 当該作業がクレーン等を用いて行うものであるときは、クレーン等の運転に関する合図を統一的に定め、これを関係請負人に周知すること
  7. 当該場所に法令等で定める事故現場等があるときは、当該事故現場等を表示する標識を統一的に定め、これを関係請負人に周知すること
  8. 当該場所に有機溶剤等の容器が集積されるときは、集積する箇所を統一的に定め、これを関係請負人に周知すること
  9. 発破等が行われる場合および火災、土砂の崩壊、出水、なだれが発生した場合または発生するおそれがある場合に行う警報を統一的に定め、これを関係請負人に周知すること
  10. ずい道等の建設作業を行う場合は、特定元方事業者および関係請負人が行う避難等の訓練について、その実施時期および実施方法を統一的に定め、これを関係請負人に周知すること

安全衛生管理組織

個々の事業場単位の安全衛生管理組織

総括安全衛生管理者

建設業においては、常時使用する労働者の数が100人以上の事業所においては、安全管理者、衛生管理者、または安衛法の規定により技術的事項を管理する者を指揮し、当該事業所における安全衛生に関する業務を統括管理するための総括安全衛生管理者の選任が事業者に義務づけられる(安衛法第10条)。

総括安全衛生管理者が統括管理する業務は以下のとおりである(安衛則第3条の2)。

  1. 安全衛生に関する方針の表明に関すること
  2. 危険性または有害性等の調査およびその結果に基づき講ずる措置に関すること
  3. 安全衛生に関する計画の作成、実施、評価および改善に関すること

総括安全衛生管理者が旅行、疾病、事故その他やむを得ない理由によって職務を行うことができないときは、代理者を選任しなければならない。

安全管理者

建設業においては、常時使用する労働者の50人以上の事業所にあっては、総括安全衛生管理者を補佐し、安全に関する技術的事項を管理するものとして、安全管理者の選任が義務づけられる。なお、総括安全衛生管理者が選任されている場合は、総括安全衛生管理者の指揮に従う(安衛法第11条)。

衛生管理者

常時使用する労働者の数が50人以上のすべての事業所において、総括安全衛生管理者を補佐し、衛生に関する技術的事項を管理するものとして、衛生管理者の選任が義務づけられる。なお、総括安全衛生管理者が選任されている場合は、総括安全衛生管理者の指揮に従う。衛生管理者はその事業所に専属の者でなければならない(安衛法第12条)。

作業主任者

事業者は、安衛令に規定される労働災害を防止するための管理を必要とする以下に示す作業については、当該作業に関する資格を有する作業主任者を選任しなければならない。

また、作業主任者の氏名およびその者に行わせる事項を作業場の見やすい位置に掲示する等により、関係労働者に周知させなければならない(安衛法第14条、安衛令第6条)。

  1. 高圧室内作業(潜函工法または圧気工法等)
  2. アセチレン溶接装置またはガス集合溶接装置を用いて行う金属の溶接、溶断または加熱の作業
  3. コンクリート破砕器を用いて行う破砕作業
  4. 掘削面の高さが2m以上となる地山の掘削の作業
  5. 土止め支保工の切りばりまたは腹起しの取付けまたは取り外しの作業
  6. ずい道等の掘削の作業またはこれに伴うずり積み、ずい道支保工の組立て、ロックボルトの取付けもしくはコンクリート等の吹付けの作業
  7. ずい道等の覆工の作業
  8. 型枠支保工の組立てまたは解体の作業
  9. つり足場、張出し足場または高さが5m以上の構造の足場の組立て、解体または変更の作業
  10. 高さが5mまたは支間が30m以上の橋梁の上部構造の架設、解体または変更の作業
  11. 高さが5m以上のコンクリート造の工作物の解体または破壊の作業
  12. 酸素欠乏危険場所における作業
  13. 屋内作業場またはタンク、船倉もしくは坑の内部等において、有機溶剤を製造しまたは取り扱う業務で、厚生労働省令で定めるものに係る作業

下請混在現場における安全衛生管理組織

統括安全衛生責任者

特定元方事業者は、元方安全衛生管理者を指揮するとともに安衛法で規定される特定元方事業者の講ずべき措置を統括管理させるため、すべての労働者の数が常時50人以上(ずい道工事、厚生労働省令で定められた橋梁工事、圧気工法による工事の場合は、常時30人以上)従事させる場合には、統括安全衛生責任者の選任が義務づけられる(安衛法第15条)。

統括安全衛生責任者が旅行、疾病、事故その他やむを得ない理由によって職務を行うことができないときは、代理者を選任しなければならない。

元方安全衛生管理者

統括安全衛生責任者を選任しなければならない事業所には、統括安全衛生責任者の指揮を受け、その統括管理すべき事項のうち技術的事項を管理する者として、その事業所に専属の元方安全衛生管理者の選任が義務づけられる(安衛法第15条の2)。

安全衛生責任者

統括安全衛生責任者との連絡のため、統括安全衛生責任者を選任すべき事業者以外の請負人は、安全衛生責任者の選任が義務づけられる(安衛法第16条)。

店社安全衛生管理者

建設業の中小規模現場における安全衛生責任の充実を図るため、労働者の数が一定数以上である建設工事を行う場合には、請負契約を締結している事業所ごとに一定の資格を有する者のうちから、店社安全衛生管理者の選任が義務づけられる。

ただし、選任対象現場であっても、すでに統括安全衛生責任者および元方安全衛生管理者を選任し、その職務を行わせている場合においては、店社安全衛生管理者の選任を要しない(安衛法第15条の3)。

建設工事の計画の届出および安全性に関する事前審査制度

厚生労働大臣への仕事の計画の届出

事業者(仕事を自ら行う発注者または元請負人に限る)は、重大な労働災害が生じるおそれのある、以下に示す、特に大規模な建設の仕事については、厚生労働大臣へ仕事の開始の日の30日前までに、その計画を届け出なければならない(安衛法第88条第2項、安衛則第89条)。

  1. 300m以上の塔の建設の仕事
  2. 堤高が150m以上のダムの建設の仕事
  3. 最大支間500m以上(つり橋にあっては、1,000m以上)の橋梁の建設の仕事
  4. 長さ3,000m以上のずい道等の建設の仕事

労働基準監督署長への仕事の計画の届出

建設工事のうち、次の仕事を開始しようとする事業者(仕事を自ら行う発注者または元請負人に限る)は、その仕事の開始の日の14日前までに、労働基準監督署長にその仕事の計画を届け出なければならない(安衛法第88条第3項、安衛則第90条)。

  1. 最大支間50m以上の橋梁の建設、改造、解体または破壊(以下「建設等」という)の仕事
  2. 最大支間30m以上50m未満の橋梁(人口の集積が著しい地域で交通の輻輳している箇所のもの)の上部構造の建設等の仕事
  3. ずい道等の建設等の仕事(ずい道の内部に労働者が立ち入らないものを除く)
  4. 掘削の高さまたは深さが10m以上となる地山の掘削の作業(掘削機械を用いる作業で、掘削面の下方に労働者が立ち入らないものを除く)を行う仕事

工事の差止、計画の変更命令

厚生労働大臣および労働基準監督署長は、その仕事の計画または工事の計画がその法律の規定に違反すると認めるときは、工事の開始を差し止め、または計画の変更を命ずることができる(安衛法第88条第6項)。