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8.1 道路網計画

道路は、われわれの暮らしに最も身近な存在であり、社会経済活動はすべて道路を介して営まれているといっても過言ではない。日常生活を支える重要なインフラである道路の計画に当たっては、都市の骨格形成はもとより重要な交通拠点との連絡性の確保、上位計画や他の施設計画等との整合を図ることが肝要である。

近年では、社会環境の変化や価値観の多様化等により、道路整備に対する要求や条件も厳しくなってきており、道路計画者はこれらの制約条件の中で道路網計画の考え方を明確に示すことが求められるようになってきている。

8.1.1 道路の計画・設計手順

(1) 道路網計画の要諦

道路計画の中にあって、道路網計画は最上流に位置し、道路ネットワーク全体で達成すべき目標を設定して策定すべきものである。高速道路のように国土の骨格を形成する道路から地域の生活基盤となる道路に至るまで、その目標や解決すべき課題によって対象とするエリアの規模や、適用する道路の種類等が異なる。

道路網計画の策定に当たっては、対象エリアにおける道路ネットワークとしての機能が十分に発揮されるよう、交通課題等の現状を踏まえ、当該地域の環境条件への配慮、鉄道・バス・空港・港湾等の交通結節点との連結、災害時のリダンダンシーの確保、シビルミニマムの確保、国土計画や地域計画および都市計画等との関係等に十分配慮する必要がある。

(2) 道路計画・設計の進め方

道路計画は、高規格な高速道路から地先の市町村道に至るまで、道路の種類によって事業の進め方および手続きに多少の違いはあるが、一般的に、① 予備調査(道路網調査)に始まり、② 概略計画、③ 路線選定、④ 道路設計の流れで計画を策定する(図8.1参照)。

① 予備調査(道路網調査):計画地域の経済状況や道路交通状況および計画上の制約条件を把握した上で、計画道路の実現可能性を検討する。なお、経済調査ではおもに人口、所得、事業所数、工業出荷額等を把握する。交通調査では、おもに断面交通量やOD交通量等を把握する。技術調査では、自然条件・関連公共事業・環境条件・文化財・公共施設等のコントロールポイントを把握する。

② 概略計画:連絡する拠点や通過する地域等を概略的に示し、個別の路線計画の集合体である道路網の整備計画を立案する。高規格幹線道路網計画や広域道路整備基本計画等がこれに当たる。

③ 路線選定:② で策定された道路網計画のうち、優先度の高い区間から計画を具体化していく上で、基本となる区間単位の計画を立案する。

④ 道路設計:事業実施のための測量や設計を行い、事業費の算定や工程計画を勘案した事業計画のための実施設計を行う。

上記① 予備調査から② 概略計画、③ 路線選定を経て都市計画が決定され、事業着手となる。事業着手後に現地測量を実施して④ 道路設計から道路中心線を設定する。関係機関協議(周辺土地利用計画との調整、環境保全の具体的な対応、関連道路との接続方法等)を経て用地幅杭を設置し、用地取得、工事着手の手順を踏む。なお、② 概略計画から④ 道路設計までの詳細は8.1.2項で後述する。④ 道路設計のうち、幾何構造設計に関する詳細は8.1.3項で後述する。

(3) 道路事業の手続き

道路計画の策定プロセスにおいて、近年では、透明性や客観性、合理性、公正性を確保するためのパブリックインボルブメント(public involvement, PI)の導入や、限られた予算の中で効率的かつ重点的に対策を行うため客観的指標によって交通課題や事業成果を把握・整理し、これを再度計画に反映させるPDCA(plan → do → check → act)サイクルで道路事業を照査する行政マネジメントの導入が進んでいる。このように目標とするサービス水準を設定し、現状の課題を客観的データで明確化した上で、重点的かつ早急に対策すべき箇所から事業を実施し、短期計画から長期計画に至るまでの計画の体系化や、各計画を定期的に照査するプロセスの重要性が見直されている。

なお、事業化後においては、新規採択時および事業採択時から定められた期間を経過して未着工あるいは継続中の事業を対象に行う再評価時、完成後に行う事後評価時において、費用便益比(cost-benefit ratio, B/C)を含む客観的な評価指標を用いた事業評価分析が義務付けられている。

8.1.2 路線計画

(1) 道路機能に応じた路線配置

(1) 道路の機能分類 道路の機能は図8.2に示すように、自動車や歩行者・自転車それぞれについての交通機能として、通行機能・アクセス機能・滞留機能があり、空間機能として、市街地形成機能、防災機能、環境機能、収容機能がある。

図8.2 道路の機能分類

道路は、拠点都市間あるいは地域間を連絡する都市間道路と、地域・都市内における域内交通に対応するための都市内道路とで、その主たる機能が異なる。

都市間道路は高速性・定時性といった通行機能が重視され、一般により長距離で幹線道路の機能を有する都市間道路ほど高速走行・大量輸送が求められる。一方で、山間部の集落相互を結ぶような都市間道路では、高速走行や大量輸送はそれほど重要ではなく、安全かつ円滑に往来できること、そして接続信頼性が高いことが重要となる。

都市内道路は通行機能に加えてアクセス機能、空間機能も重視される。都市の骨格を形成し、防災機能や環境機能等の空間機能を求められると同時に、高速・大量の通行機能も併せ持つ都市内の幹線道路では、沿道施設へのアクセス機能は限定的とすべきである。反対に、幹線道路以外の住区内道路は、空間機能と併せて沿道施設へのアクセス機能が重視されることから、通行機能は必要最小限に制約されるべきである。

(2) 路線配置計画 道路網計画の策定に当たっては、対象エリアにおける道路ネットワークとしての機能が十分に発揮できるように、道路の規格・構造等を決定することが重要である。この際、さまざまなレベルの道路網について道路の階層性や、上位計画・他の施設計画等との整合性を確保することが重要である。道路の階層性とは、例えば高規格な幹線道路と生活道路等、性質の大きく異なる道路どうしを直接連絡することは適切ではなく、道路の機能が近いものから段階的に接続するといった考え方である。

(2) 都市間道路の路線計画

(1) 概略計画 構想段階は道路の計画帯の選定や基本的な道路構造を概略的に決定する段階であり、縮尺1/50000~1/10000のスケールの地形図上に考えられる路線をフリーハンドで描いて検討する。あらかじめ大まかな起終点を設定し、計画路線に求められる機能と将来交通量に応じた構造規格を定め、対象地域の社会経済的、地形・地質的条件を考慮して、所与の線形条件の下で実現性の高いいくつかの候補路線を選定する。この段階では、巨視的な判断が必要であり、周辺道路網の現状および将来計画との対応を十分把握するとともに、地域計画や都市計画、土地利用計画等、当該路線の計画に影響する関連情報を広範に収集して、計画に反映することが必要である。

(2) 路線選定 概略計画において検討された候補路線について、さらに小スケールの1/5000~1/2500の地形図を用いて、具体的な路線位置の選定を行う。この段階ではおもに平面線形に重点が置かれるが、等高線から概略の地盤高を縦断図に記入し、切盛状況や土量バランスに配慮した縦断線形についても概略で検討する。また、橋梁・トンネル等の構造型式も想定する。これを2~3案の比較路線について実施し、以下の観点から各候補路線の優劣を比較検討する。

① 交通渋滞解消、事故減少、走行時間短縮、災害時の防災機能向上、広域ネットワーク形成等

② 環境:騒音、大気汚染、地球温暖化、景観、生態系への影響、集落や公共公益施設への影響等

③ 土地利用・市街地整備:地域間交流、工業・農業・農地利用への影響、市街地の防災性、沿道商業施設への影響等

④ 事業性:事業費、維持管理費、事業期間、施工性、用地取得の容易性等

なお、比較線の数は2~3案とされることが多いが、一般には比較線の数が多いほどより良い解を得やすいため、できるだけ多くの比較線を検討することが望ましい。ただし、単に数を増やすのではなく、それぞれの比較線は、地域特性を踏まえた計画意図を持つことが重要である。

路線選定の段階では、コントロールポイントの情報精度も向上させ、地形条件や開発計画、地質、文化財等の資料等から詳細に設定することが必要である。おもなコントロールポイントを表8.1に示す。

(3) 道路設計 路線選定による比較線検討の結果、選択された路線について都市計画決定されると、事業化の段階に入る。この段階では、現地測量を実施し、詳細なコントロールポイントを確認しながら、1/1000~1/500の地形図上に実施設計を展開し、道路中心線を設定する。

つぎに、等高線を基に縦断図を作成し、縦断的な制約条件(河川、水路、鉄道、立体交差道路等のクリアランス等)との関係を確認するとともに、平面線形と縦断線形の調和・連続性等の観点から吟味する。さらに、横断図を作成して、土工量、構造物の位置・寸法等の条件を吟味する。

表8.1 おもなコントロールポイント1

項目一次コントロール二次コントロール備考
地形山脈、山塊、渓谷、峠大切土、大盛土、長大切土法面、長大トンネル、長大橋梁の位置決定、主要河川の渡橋地点、湖沼、池、中小河川
自然条件地質土質大規模な地すべり地帯、軟弱地盤地帯、崖錐地帯、崩壊地帯、断層の方向
気象大規模雪崩地区、標高の高い波霧多発地区および路面凍結予想地区標高800m以上はできるだけ低位を選択、吹きだまり地、雪崩、強風の予想箇所
関連公共事業インターチェンジ位置と取付け道路との関係インターチェンジ付近の線形、交差箇所
重要な主要道路や鉄道との交差位置
農業構造改善事業(改良、新設事業とも)、区画整理事業、都市計画事業仮換地の期間が長い
社会環境集落、工場、工業団地学校、病院、老人ホーム、養護施設、住宅密集地
厚生自然環境保全地域自然環境保全地域、特別地区
環境条件自然環境国立公園特別地域第二、第三種および普通地域、国立公園特別保護地区国定公園特別地域第二、第三種および普通地域、国定公園特別保護地区、県立公園
文化財国宝、重要文化財文化財、社寺、仏閣有形文化財のうち、建造物のみ
特別名勝、特別史跡、記念物
特別天然記念物
名勝、史跡、記念物
公共施設空港、大規模鉄道駅、大規模港湾鉄道、道路、港湾、漁港、電波受信施設、貯水池、大規模発電所等電波発信所施設、送電線

(3) 都市内道路の路線計画

都市内道路にあっても路線計画の基本的な考え方は、都市間道路と同様であり、① 予備調査(道路網調査)、② 概略計画、③ 路線選定、④ 道路設計のプロセスを経て策定する。しかし、都市間道路に対して都市内道路ではアクセス機能や空間機能の重要性が高まることから、以下に都市内道路の路線計画における特徴を解説する。

(1) 道路の機能分類 都市内の既存道路ネットワークを構成する各路線・区間を、都市高速道路等の自動車専用道路、主要な幹線道路、幹線道路、市街地道路といった各階層に機能分類する。規格の高い階層の道路は通行機能に特化すべきであるのに対し、低い階層の道路はアクセス機能を重視すべき道路となる。通行機能とアクセス機能には相互に排他的な特徴があるため、1本の道路に両方の機能を持たせることは原則として適切ではない。しかし、わが国の既成市街地を勘案すると、当該路線を通行機能とアクセス機能のいずれかに特化することは難しいことから、各道路の階層や沿道立地条件に合わせて、道路の各機能間のバランスを図ることが重要である。

(2) 市街地との調和 都市内の道路計画においては、交通機能よりも空間機能の重要性が高まる。都市内の道路計画、特に道路の新設と拡幅は、人々の生活・行動パターンの変化をもたらし、長期的には都市内の市街地形成に影響を及ぼす。一方で、既成市街地を分断する可能性もあることから、保存すべき町割りに配慮した計画とすることも必要である。

(4) 交差道路の接続計画

(1) 接続方式選択の重要性 道路ネットワークの機能が十分発揮されるためには、道路の幾何構造はもとより、道路相互の交差接続方式に配慮することが重要である。例えば、長距離高速交通を処理する自動車専用道路では、フルアクセスコントロールするとともに、アクセス間隔に配慮する。都市内道路では、通行機能の要素が高い路線もあれば、短距離利用の生活交通に資するアクセス機能の要素の高い路線も混在する。都市内にあって通行機能の要素の高い路線を相互に接続する場合には、交差接続する位置を限定する、あるいは立体化することが必要である。一方で、アクセス機能の要素が高い道路では、単純な平面交差型式を基本とするとともに、通過交通型の幹線道路とは直接接続しないことが望ましい。このように、交差道路との接続方法の検討に当たっては、地域の交通計画を踏まえて、当該道路の機能、規格、交通量、交差間隔、さらには地形、沿道環境、土地利用状況等を勘案して決定することが必要である。

(2) 交差接続方式の分類 道路相互の交差接続方式は、一般に平面交差と立体交差に大別される。平面交差はさらに、信号交差点、環状交差点(以下、ラウンドアバウト(roundabout, RAB)という)、無信号交差点に分類され、立体交差はさらに、単純立体交差、交差点立体交差、インターチェンジ(ジャンクション)に分類される。

平面交差は、三枝以上の道路が同一平面上で交差するものであり、交通量の大小に応じて信号処理の有無を決定する。交通量の多い交差点では方向別の通行権を明確にするため信号制御が必要となる。交通量の少ない交差点では信号制御しないケースが多いが、衝突事故の危険性の高い交差点や、五枝以上の複雑な交差点ではラウンドアバウトの採用が有効である。ラウンドアバウトとは、「環道交通流に優先権があり、かつ環道交通流は信号機や一時停止等により中断されない、円形の平面交差部の一方通行制御方式」のことをいう。ラウンドアバウトの標準的な構成要素を図8.3に示し、各地における導入事例を図8.4に示す。

ラウンドアバウトの長所には、以下のようなものが挙げられる。

① 安全性:速度抑制による交通事故の減少

② 円滑性:無信号による無駄な待ち時間の解消

③ 環境性:信号待ちの解消によるCO2の削減

④ 経済性:信号機の設置・維持管理費の削減

⑤ 自律性:災害時や停電時も自律的に機能

ラウンドアバウトには上記のような長所がある一方で、導入に当たってはつぎの点に十分留意することが必要である。

① ラウンドアバウトの交通容量は、一般的な平面信号交差点に比べて低いため、交通渋滞対策を目的とした導入には適さない。

② ラウンドアバウトの長所は、おもに自動車に対するものであるが、歩行者・自転車に対しては、安全性の確保に十分注意を払うことが必要である。

立体交差は道路が交差接続する場合に、相互の交通流が同一平面内で交差しないように立体化するもので、交差部の交通容量や走行速度の低下を回避し、円滑な交差処理を行うこと、交差部における交通事故の減少を図ることを企図する。単純立体交差は道路が互いに立体的に交差するのみで、交差道路相互間の連絡路が交差地点の近傍にないものを指す。交差点立体交差は、主方向の右左折交通のみに対して、立体交差構造物に沿ってランプ(連絡路)を設け、平面交差により従道路と接続するものである。インターチェンジは、交差する道路相互を完全に立体交差化すると同時に、右左折交通をランプで交差道路に接続する。

8.1.3 道路の設計

(1) 道路構造の技術的基準

道路構造の技術的基準は、道路法第30条において政令で定めるよう規定しており、道路構造令はこの趣旨に沿って制定された政令である2。道路構造令で規定されている技術基準は、根幹的なもの、一般的なもの、行政上規定の必要なものなどにとどめられていると同時に、ある程度の運用幅を想定したものとなっている。これにより、当該道路の状況に応じた構造や経済的な構造の採用を可能とするものである。道路構造令の基準値を弾力的に運用しつつ、道路の機能に十分留意しながら適切な値を選定して設計することが求められる。ここでは、道路設計のうち幾何構造設計について、道路の横断面構成、平面および縦断線形設計を中心に解説する。

(2) 横断面の構成要素

道路の横断面はおもにつぎのような要素から構成される。① 車道、② 中央帯、③ 路肩、④ 停車帯(車道の一部)、⑤ 歩道、⑥ 自転車道、⑦ 自転車歩行者道、⑧ 植樹帯、⑨ 副道、⑩ 軌道敷等

道路の横断面構成を検討する際には、それぞれの道路で必要とされる交通機能や空間機能等、当該道路が有すべき機能に応じて、必要な横断面構成要素を組み合わせて道路の横断面を形成する。一般に、交通機能はそれぞれの道路に必要な横断面構成要素の幅員を確保すればよく、総幅員はこれら構成要素の幅員により決定される。車線、路肩、中央帯といった横断面構成要素は、設計速度が高く計画交通量の多い路線ほど規格の高いものとなる。規格の高い構成要素とすることは、往復交通を分離することなどによって安全性の向上にも資する。一方、市街地形成や収容等の空間機能を確保するためには、必要な総幅員を確保する必要がある。前述の交通機能と併せて、当該道路で必要な道路の機能ができる限り充足するように調整し、総合的な判断によって総幅員と横断面構成要素の幅員を決定する必要がある。

(3) 線形設計

道路線形は、平面線形と縦断線形で構成される。平面線形とは、道路の立体図形を上空から水平面に投影した図形の描く形状をいう。縦断線形は、平面線形の中心線に沿って縦断方向に鉛直曲面を設定し、この曲面上の水平な道のり方向に対して道路の中心線が鉛直方向に描く形状をいう。道路線形は、自動車の運動力学的要求を満たしつつ、安全・円滑・快適な走行空間を提供することが肝要であるとともに、環境や風景と調和し、経済的にも妥当であることが必要である。また、道路線形は、道路幾何構造の中でもきわめて基本的かつ重要な設計要素である。線形設計に際して留意すべき一般的事項としては、つぎのようなものがある。

① 地形および地域の土地利用との調和

② 線形の連続性

③ 平面線形、縦断線形、および横断構成との調和

④ 線形の視覚的検討

⑤ 交通の安全性、円滑性、および快適性

⑥ 建設費および維持管理費等の経済性

⑦ 施工上の制約条件

⑧ 地質、地形、地物等の制約条件

(1) 平面線形 平面線形は直線、円曲線、緩和曲線によって構成される。直線は計画・設計・施工が簡単で、かつ運転者にとっても進行方向が明瞭であるというメリットがある一方、走行環境変化に乏しく、単調になりがちであることに注意が必要である。

円曲線は計画設計・施工が比較的簡単であり、地形に添わせた線形とすることで、運転者に進行方向の変化を自然に示すことができ、適度な刺激を与えることもできる。ただし、設計速度や前後の相対的な関係の中で、採用する曲線半径の大きさに配慮することが重要である。

直線と円曲線は、曲率が変化しないといった点で共通性がある。すなわち、直線と円曲線を直接接続すると曲率が不連続となり、曲線半径の比較的小さい区間では運転者に急激なハンドル操作をもたらす。そこで、車道の屈曲部には曲率が徐々に変化する緩和曲線を挿入することが望ましく、わが国では緩和曲線として一般にクロソイド曲線(clothoid curve)が用いられている。

クロソイド曲線は、距離(曲線長)に比例して曲率が一様に変化する曲線である。ハンドルの回転角と旋回曲率に比例関係があることを前提として、等速走行している運転者がハンドルを一定の角速度で回転させるとき、旋回曲率は走行距離に比例して一様に変化し、その車両の描く軌跡はクロソイド曲線に一致する。

ここで、等速走行時のtt秒後における曲率ゼロの点(直線区間の端)からの走行距離をL(t)L(t)、その地点における接円の曲線半径をR(t)R(t)とすると、上記の関係は次式で表される。

1R(t)=CL(t)\frac{1}{R(t)}=C\cdot L(t) ...(8.1)

さらに、定数CC1/A21/A^2と置くことで

R(t)L(t)=A2R(t)\cdot L(t)=A^2 ...(8.2)

となる。このときAA(単位m)をクロソイドパラメーターという。円曲線において曲線半径RRが定まれば円の大きさが定まるように、クロソイドパラメーターAAが定まると、クロソイド曲線の大きさが定まる。

平面線形設計に当たっては、直線と円曲線とクロソイド曲線の組合せを検討するとともに、つぎの点に留意することが必要である。

① 長い直線はできるだけ避けること

② 連続した円曲線相互の曲線半径の比を適切なものとすること

③ 緩和曲線は、前後の円曲線の半径とバランスしたものとすること

④ 同方向に屈曲する曲線の間に短い直線が入ること(ブロークンバックカーブ)を避ける

⑤ 長い直線の終端に曲線半径が小さい円曲線が入ることを避ける

⑥ 道路交角が小さい場合に曲線長が短い円曲線が入ることを避ける

(2) 縦断線形 縦断線形は、直線と円曲線によって構成される。縦断線形における円曲線は一般に縦断曲線という。縦断線形の設計に当たっては、まず地形条件や設計速度、交通容量等を考慮して縦断勾配を直線で設定し、次いで縦断勾配が変化する箇所に、自動車に対する衝撃緩和および視距確保を企図して縦断曲線(放物線)を挿入していく。縦断勾配に影響を受けるものとして、自動車の登坂性能と路面排水がある。特に余剰出力の少ないトラックは勾配がきつくなるに従って走行速度の低下が顕著となり、他車の走行阻害や交通錯綜につながり、ひいては道路の交通容量低下の原因となることから、縦断勾配は自動車の登坂性能に配慮することが重要である。

なお、縦断線形の設計に当たっては、以下に示すような縦断線形相互の組合せは避けることが望ましい。

① 同方向に屈曲する縦断曲線の間に短い直線が入ること(ブロークンバックカーブ)を避ける

② 短区間で凹凸を繰り返す縦断曲線になることを避ける

③ サグ部に必要以上に大きな縦断曲線を入れることを避ける

(3) 平面線形と縦断線形の組合せ 道路の線形設計は、平面設計と縦断設計のそれぞれについて二次元的に検討した後、これらを組み合わせて三次元設計へと展開する(図8.5参照)。平面線形と縦断線形の組合せに際しては、透視形態上の円滑性確保や排水性確保を考慮して、つぎの点に留意することが必要である。

① 平面曲線と縦断曲線の位相を合わせる。

② 平面曲線と縦断曲線との大きさの均衡を保つ。

③ 適当な合成勾配(縦断勾配と片勾配または横断勾配とを合成した勾配)の得られる線形の組合せを選ぶ。

そのほかの注意事項として、以下のような組合せを避けることも望ましい。

① 急な平面曲線と急な縦断勾配の組合せを避ける。

② 下り勾配で直線の先に急な平面曲線を接続することを避ける。

③ 凸型縦断曲線の頂部または凹型縦断曲線の底部に急な平面曲線を入れることを避ける。

④ 凸型縦断曲線の頂部または凹型縦断曲線の底部に背向曲線の変曲点を配することを避ける。

⑤ 一つの平面曲線内で、縦断曲線が凹凸を繰り返すことを避ける。

⑥ 平面線形が長い直線となっている区間に凹型縦断曲線を入れることを避ける。

(4) 横断勾配 路面の横断勾配は、第一に安全な走行性を確保すること、第二に路面に降った雨水を側溝または排水路に導くために必要なものである。

安全性の確保に関して、曲線区間において横断勾配を設けていない道路では、遠心力による路外逸脱のおそれがあることから、曲線半径の大きさに応じて適切な横断勾配を設定することが重要である。

路面排水に関して、排水性に着目すれば一般に横断勾配は大きい方がよいが、自動車のハンドル操作性の確保や、凍結路面や湿潤路面における横すべり防止のためには横断勾配は小さい方がよいため、併せ持って適切な値を採用することが必要である。

(4) 視距

視距(sight distance)とは、運転者から見通すことができる範囲を当該車線の中心線上の道のり距離として表したものである。視距には、制動停止のために必要な「制動停止視距」と、往復2車線道路で追越しに必要な「追越し視距」の2種類がある。

(1) 制動停止視距 制動停止視距は、「設計速度に応じた走行速度で走行する車が、車線の中心線上1.2mの高さから当該車線の中心線上にある高さ10cmの障害物を発見して停止するのに必要な距離」として定義される。曲線部において切土法面の影響で視距が確保できない場合には、切土法面の後退・段切り・路肩拡幅等を行う。また、中央分離帯の防護柵・眩光防止綱等の影響で視距が確保できない場合には中央分離帯の拡幅により視距を確保することが必要となる。

(2) 追越し視距 追越し視距とは、「対向交通の下で安全な追越しを行うに必要な距離」と定義され、「全追越し視距」と「最小必要追越し視距」に区分される。全追越し視距とは、追越し車両が被追越し車両の後端に追いつき、追越しの動作を開始してから完了するまでに、追越し車両と対向車が走行する距離の和であり、最小必要追越し視距とは、追越し車両が対向車線に出た地点から追越しが完了するまでに、追越し車両と対向車が走行する距離の和である。道路設計に当たって、全区間に追越し視距を確保することは実質的に難しいことから、最低1分間走行するうち1回、やむを得ない場合でも3分間走行するうちに1回は追越し視距を確保した区間を設置することが望ましい。

8.1.4 高速道路の計画

(1) 高規格幹線道路網計画の必要性

(1) 背景と計画策定経緯 わが国の高速道路網は、1963年の名神高速道路(栗東~尼崎)開通を皮切りに、東名高速道路、中央自動車道と続き、著しいモータリゼーションの中、高度経済成長を支えてきた。農業・漁業産地から食卓に届く新鮮な食材の輸送、地域経済や雇用に寄与する工業団地の立地促進、レジャー観光の広域化と観光地振興、さらには国道・主要地方道等の道路網と一体化した救急医療、災害時の支援活動といった点でも、高速道路はわれわれの生活に欠かせないものとして重要な役割を担うに至り、「速さ」と「時間の正確」な効率的な輸送を可能とする質の高い道路ネットワークづくりが要請されてきた。また、地域の振興と活性化を図り、国土の均衡ある発展と活力ある経済・社会確立の基盤施設として、質の高い幹線道路ネットワークの拡充が要請されてきた。

(2) 高規格幹線道路網計画の方向性3 上記の背景から、1977(昭和52)年の第三次全国総合開発計画では、全国的な幹線交通体系の長期構想として、既定の国土開発幹線自動車道を含む高規格幹線道路網の必要性が提唱された。さらに、1987(昭和62)年の第四次全国総合開発計画(四全総)では、21世紀に向け多極分散型の国土を形成するため、「交流ネットワーク」構想を推進する必要があるとされ、これを実現するため、全国一日交通圏の構築として、全国の主要都市間の移動に要する時間をおおむね3時間以内、地方都市から複数の高速交通機関へのアクセス時間をおおむね1時間以内で結ぶこと、交通網の安定性の確保として、大都市相互など国土の中枢部において複数ルート(多重系交通網)の形成、施設容量の不足による交通機能の低下や大規模な災害等の発生による交通途絶の防止等を図ることが必要であるとされた。

高規格幹線道路網の拡充は、交流ネットワーク構想を実現するための重要な施策とされ、「全国的な自動車交通網を構成する高規格幹線道路網については高速サービスの全国的な普及、主要拠点間の連結強化を目標とし、中枢・中核都市、地域の発展の核となる地方都市およびその周辺地域等からおおむね1時間程度で利用が可能となるよう、およそ14000kmで形成する」との方向性が示された。

なお、高規格幹線道路網の路線要件としては、既定の国土開発幹線自動車道等および本州四国連絡道路およびこれらと接続するもので、以下の六つの条件のいずれかに該当するものとされた。

① 拠点都市間の連絡路:地域の発展の拠点となる地方の中心都市を効率的に連絡し、地域相互の交流の円滑化に資するもの

② 三大都市圏の環状軸の強化:大都市圏において、近郊地域を環状に連絡し、都市交通の円滑化と広域的な都市圏の形成に資するもの

③ 他の交通拠点との連携強化:重要な空港・港湾と高規格幹線道路を連絡し、自動車交通網と空路・海路の有機的結合に資するもの

④ 高速サービスの全国的普及:全国の都市、農村地区からおおむね1時間以内で到達し得るネットワークを形成するために必要なもので、全国にわたる高速交通サービスの進展に資するもの

⑤ 代替性のあるネットワークの形成:既定の国土開発幹線自動車道等の重要区間における代替ルートを形成するために必要なもので、災害の発生等に対し高速交通システムの信頼性の向上に資するもの

⑥ 既定区間の混雑解消:既定の国土開発幹線自動車道等の混雑の著しい区間を解消するために必要なもので、高速交通サービスの改善に資するもの

(3) 四全総以降の動向 四全総以降、1998(平成10)年に策定された「21世紀の国土のグランドデザイン」では、地域の自立の促進と美しい国土の創造を目指し、① 国民意識の大転換、② 地球時代、③ 人口減少・高齢化時代、④ 高度情報化社会の時代変化を捉え、太平洋ベルト地帯への一軸集中から東京一極集中へとつながってきたこれまでの方向から、西日本国土軸、北東国土軸、日本海国土軸、太平洋新国土軸の四つの国土軸が相互に連携することにより形成される多軸型の国土構造を目指すとされた。

さらに、2014(平成26)年に策定された「国土のグランドデザイン2050」では、対流促進型国土の形成を目指し、以下に示す時代の潮流と課題に対して、「コンパクト+ネットワーク」による国土形成を掲げている。

① 急激な人口減少、少子化

② 異次元の高齢化の進展

③ 都市間競争の激化等グローバリゼーションの進展

④ 巨大災害の切迫、インフラの老朽化

⑤ 食料・水・エネルギーの制約、地球環境問題

⑥ ICTの劇的な進歩等技術革新の進展

上記のような課題に加え、わが国はさまざまな社会経済的制約条件に直面している。今後ますます厳しくなっていく制約条件下においても、国民の安全・安心を確保し、社会経済の活力を維持・増進していくためには、限られたインプットから、できるだけ多くのアウトプットを生み出すことが求められる。その鍵は、地域構造を「コンパクト+ネットワーク」という考え方にある。これにより、「新しい集積」を形成し、効率性を高め、より大きな付加価値を生み出すような国土構造としていくこと、いわば国全体の生産性を高める国土構造を構築していくことが、新たな国土づくりの基本的な考え方として必要である。これらの課題に対する道路網計画にあって、高規格幹線道路はその中心的存在となるであろうと考える。

(2) 高速道路網計画の策定手順

高規格幹線道路は、高速道路と一般国道の自動車専用道路の両者で策定手順や手続きが異なる。高速道路は、国土開発幹線自動車道建設法(もしくは高速自動車国道法)において予定路線として路線名、起終点、主たる経過地が位置付けられ、この中から路線別に基本計画、続いて整備計画が策定される。基本計画では建設路線の区間や主たる経過地、標準車線数、設計速度、道路等との主たる連結地、建設主体が定められ、整備計画では経過する市町村名、車線数、設計速度、連結位置および連結予定施設、工事に要する費用の概算額、その他必要な事項(施行主体)が定められ、これらは国土開発幹線自動車道建設会議において決定される。

一方、地域高規格道路は、広域道路整備基本計画において広域道路(交流促進型)として位置付けられたものの中から選定する。まず地域の要望を踏まえ、地域高規格道路としての要件を満足し、地域高規格道路として整備を進める妥当性・緊急性について基礎的な調査を進める「候補路線」を選定する。その中から路線要件・構造要件を満足し、路線内に調査の熟度や事業化の熟度が高い区間を有し、今後地域高規格道路として必要な調査を実施する路線を「計画路線」として指定する。さらに「計画路線」として指定されたもののうち、整備の優先度や調査の熟度、地域活性化への効果等を勘案し、ルート選定、整備手法の検討、都市計画、環境影響評価等の調査を進める「調査区間」と、事業着手に向け、都市計画決定手続き、環境影響評価手続、予備設計等を進める「整備区間」を指定する。

(3) 有料道路制度

(1) 導入経緯と概要 道路の建設および管理は行政主体である国・地方公共団体の責任に属し、租税等一般財源を充当する公共事業として行われ、建設された道路は無料で一般交通の用に供されるのが通常である。これが道路無料公開の思想であり、産業革命以降資本主義が発展するとともに形成されてきた考え方である。しかし、欧米諸国に比べ大きく立ち遅れた道路事情と、厳しい財政事情の中にあって、限られた一般財源による公共事業費のみではとても増大する道路交通需要に対処することは困難であった。そこで、1952(昭和27)年に旧道路整備特別措置法が制定され、国・地方公共団体が道路を整備するに当たり、財源不足を補う方法として借入金を用い、完成した道路から通行料金を徴収してその返済に充てるという方式が認められることになった。これは有料道路制度を本格的に認めるものであり、揮発油税等の道路特定財源制度、道路整備緊急措置法に基づく道路整備五箇年計画と並んで道路整備事業の進展に大きく寄与することとなった。その後、1956(昭和31)年にそれまでの道路整備特別措置法が廃止され、新たな道路整備特別措置法が制定された。それと同時に日本道路公団が設立されて本格的な有料道路時代を迎えることになった。

なお、有料道路制度は、本来公共事業によって建設し無料で公開すべき道路について、財源不足による建設の遅延を避け、緊急に整備するために採用されている特別の措置であるから、その建設に要する費用の財源は、ほとんど借入金に頼っている。この借入金は、完成後の通行料金により償還される。

(2) 有料道路の種類 有料道路には道路法上の道路として高速自動車国道、都市高速道路、一般有料道路(道路整備特別措置法に基づくもので有料の一般国道、都道府県道または市町村道)、有料橋・有料渡船施設(道路法に基づくもの)がある。

(3) 通行料金の決定 通行料金の考え方は、道路法の対象となる有料道路と同法の対象とならない有料道路とで大分される。道路法の対象となる有料道路の場合、その公共性から利用者の負担は必要最低限とし、事業遂行による利潤を求めないのに対して、道路運送法上の一般自動車道の料金は、適正な利潤が認められている。

このうち、道路法の対象となる有料道路の料金を決定する場合は、「償還主義の原則」、「公正妥当主義の原則」、および「使用者主義の原則」に則ることとされている。全国路線網に属する高速自動車国道および一般有料道路、地域路線網に属する首都高速道路、阪神高速道路および本州四国連絡高速道路ならびに指定都市高速道路にあっては、償還主義の原則として貸付料、管理費等の費用を、料金徴収期間内に償還できるよう料金を決定するとともに、公正妥当主義の原則として、他の交通機関の運賃との均衡、利用者の負担能力、車種間比率、便益等を総合的に勘案して社会的に見て正当で合理的な料金を決定することになる。一方、一つの路線に属する一般有料道路および地方道路公社または道路管理者が管理する一般有料道路にあっては、償還主義の原則と併せて、便益主義の原則として、道路の通行・利用により通常受ける利益の限度を超えない範囲で決定することになる。

(4) 料金割引制度 2004(平成16)年に道路関係四公団民営化関係4法が成立し、2005(平成17)年に六つの高速道路株式会社と独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構が発足、国土交通大臣が定めた協定期間を経て2006(平成18)年から民営化会社による本格的な高速道路事業がスタートした。これに伴い、新会社は民営化の帰結として道路を保有し、その建設・運営についてインセンティブを持つこととされたため、料金の性格については「適正な利潤」を含み、新会社の経営者が自主的に決定することが基本となったが、民営化後の料金については、これまでの料金水準を引き継ぎ、貸付料の支払いに支障を与えない範囲でさらに弾力的な料金設定を実施するものとされた。

高速道路の通行料金はこれまでも利用促進、地域振興あるいは障害者の自立支援等を目的として、さまざまな割引制度が適用されてきた。

上記の背景から近年ではこれらに加えて、料金割引社会実験や利便増進事業のスキームにより、表8.2に示すように多種多様な割引制度が適用されてきている。

(4) インターチェンジの計画

高速道路の構造的条件には、往復分離であることや、完全出入制限であること等が挙げられる。一般的に完全出入制限された一般道路からの出入口を「インターチェンジ」といい、高速道路どうし(その他自動車専用道路も含む)を連結する交差部を「ジャンクション」という。ジャンクションは基本的に完全立体交差とするが、時に平面交差するケースも見られる。また、これらの交差接続する道路相互を連結する道路を「ランプ」という。ここでは、インターチェンジおよびランプの計画について解説する。

(1) インターチェンジの配置計画 インターチェンジは、交通条件、社会条件、自然条件等を総合的に勘案して計画する。まず、一般国道等重要な幹線道路との交差または近接地点や、高速道路利用勢力圏人口が十分な都市近郊、重要な港湾・空港・物流施設・観光地へアクセスする路線との交差または近接地点を基に、大まかな配置計画を立案し、隣接するインターチェンジとの相互関係の検討を加える。インターチェンジ設置間隔はできるだけ短く、出入口を多くして利用者の利便性を図り、交通需要を空間的に分散させることが望ましい。しかし、建設費や料金収受管理コストの観点から、インターチェンジが多くなりすぎることは好ましくない。そのため、わが国の都市間高速道路における平均設置間隔は10km程度となっている。その他、接続道路および都市計画との関係性等の調整、さらに経済性と公共性の両面からの検討を加えて決定する。

(2) インターチェンジの型式選定 有料道路のインターチェンジの型式選定に当たっては、当該道路の料金体系を考慮して検討する必要がある。有料道路の料金体系は、一般に対距離料金制と均一料金制に大別される。

対距離料金制は、もっぱら都市間高速道路で採用され、料金徴収は原則としてインターチェンジ内で行う。この場合、インターチェンジ料金徴収施設、管理事務所、積雪地域では雪氷分室等が併設されるため、大きな敷地面積を要するとともに、交通管理の便宜性、維持、管理に要する費用の経済性等についての検討を加えて型式の選定を行う必要がある。

均一料金制は、一般有料道路において広く採用されており、特に用地制約の大きい都市高速道路に多く見られる。対距離料金制のインターチェンジと比べて、比較的コンパクトに設置できることが特徴であり、都市高速道路においては単に「入口」、「出口」と呼ばれている。また、場合によっては区間均一料金とすることで、出入口では料金徴収を行わず、料金単位区間ごとに本線上で料金徴収を行う方法もある。

(3) 代表的な型式 上記のとおり、均一料金制の下でインターチェンジの型式は限定的となることから、ここでは対距離料金制インターチェンジについて、通常適用される型式を三枝交差と四枝交差に区分して解説する。

① 三枝交差の代表的なインターチェンジ型式には、トランペット型とY型がある(図8.6参照)。これらの型式は料金所を1箇所に集約できる利点があるので、有料道路では最も適用性のある型式である。

図8.6 三枝交差の代表的なインターチェンジ型式

② 四枝交差の代表的なインターチェンジ型式には、ダイヤモンド型や不完全クローバー型がある。ダイヤモンド型はきわめて単純な形をしていることから、用地面積も少なく、ランプ上の余分な迂回も回避できる一方、料金所が4箇所に分散してしまう欠点がある。不完全クローバー型は、ダイヤモンド型に比べて用地面積は広いが、料金所を集約することできる。いずれも一般道路の交通量が多い地点では処理能力上の課題があるため、このような地点では三枝交差で紹介したトランペット型を組み合わせたダブルトランペット型の採用を検討する(図8.7参照)。

図8.7 四枝交差の代表的なインターチェンジ型式

(4) スマートインターチェンジ ETCの導入により、料金所の原則無人化やキャッシュレス化が実現したことで、インターチェンジのコンパクト化が可能になった。図8.8は、利用がETC車に限定することでETC専用車線を四つのランプ上に分散配置したダイヤモンド型で、本線直結式スマートインターチェンジの例である(整備事例が多いのはSA・PA接続型)。

図8.8 スマートインターチェンジの設置事例

スマートインターチェンジを追加整備することにより、既設インターチェンジへの交通需要の空間的分散、交通需要の転換による一般道路の沿道環境や交通の安全性の改善、インターチェンジへのアクセス時間の短縮、災害のおそれのある一般道路区間の代替、地域イベント等地域活性化施策の効果が見込まれる。

(5) 休憩施設設計 完全アクセスコントロールされている高速道路では、連続高速走行の疲労と緊張を解きほぐし、また運転者の生理的欲求を満たし、あるいは自動車の給油に対する用を満足するために、休憩施設の設置が必要である。休憩施設の種類は「サービスエリア」と「パーキングエリア」に大別される。サービスエリアは、運転者と自動車が必要とするサービスをほとんど満足する休憩施設をいい、駐車場、園地、トイレ(身体障害者対応を含む)、無料休憩所に加えて食堂、給油所、売店等のサービス機能を備える。パーキングエリアは、運転者の生理的欲求を満たし、また疲労と緊張を解くための必要最小限のサービス施設として、駐車場、園地、トイレおよび売店を備えた休憩施設をいう。

(1) 休憩施設の配置計画 休憩施設配置に当たっては、当該路線の利用交通量やトリップ特性、連絡等施設との位置関係、路線近傍の都市の位置や規模、当該地点の線形および沿道地形条件、物資供給のための接続道路、景観上の配慮事項、建設費等を総合的に考慮する必要がある。例えば、大都市近傍の交通量が多い区間では、一般的に休憩施設の需要も多いので比較的規模の大きい休憩施設が必要となる。また、著名観光地近傍にあって、景勝地を眺められるような区間では、眺望に配慮することが望ましいし、業務トラックが高い比率を占める区間では、運転手の休憩のため駐車施設配置も重要となる。さらに、一つの休憩施設での許容能力を超える需要が想定される場合には、隣接施設との連携が必要となるケースもある。

なお、高速道路における休憩施設の設置間隔は、生理的要求を考慮して15~25kmを標準とし、サービスエリアに限っていうと、諸外国の例や名神高速道路の経験から50kmを標準として整備されてきている。

(2) 休憩施設の型式選定 サービスエリアの型式は、分離式と集約式に大別される。分離式は、本線に沿って往復分離された車道ごとにそれぞれ駐車場を配置する型式であるが、施設配置によって以下の五つに分類される(図8.9参照)。

(a) 外向型:駐車場が本線側に位置し、各施設(食堂、売店、無料休憩所、トイレ等)が本線から外側に配置された型式であり、最も基本的な型式である。休息に適した環境が休憩施設の外側に存在するような開けた眺望を持つ丘陵地に適している。

(b) 内向型:外向型とは反対に、駐車場が外側に位置し、各施設(食堂、売店、無料休憩所、トイレ等)が本線側に配置された形式である。周囲が市街地化されている、あるいは外側への眺望が開けていないような場合に採用される。この場合、施設を本線および駐車場より高く配置するなどして、利用者に眺望を楽しんでもらったり、本線との隔絶感を出す工夫が必要である。

(c) 本線上空型:内向型の変形であり、本線を挟んで向かい合って位置する食堂等の施設を本線上空に配置する型式である。高速道路利用者にとって、走行中のランドマークとして、また平坦部でのアクセントとして有効であるが、採用されることはきわめてまれである。

(d) 片側集約型:内向型の変形であり、駐車場や給油所、トイレは両側にそれぞれ配置されるが、食堂が片側にだけに配置される型式である。どちらかの敷地が狭小であるか、上下線別では食堂経営が採算に合わない場合等に採用される。

(e) 外向内向型:上下線で外向型と内向型を併用する型式である。本線の片方に景勝地が広がるなど、眺望が特定の方向に集約されるような場合に採用される。双方からの眺望が確保できるよう片方の休憩施設を高くする、あるいは互い違いにずらして配置する等の工夫が必要である。

集約式は、片側集約型と中央集約型に分類される。

(f) 片側集約型:本線の片側に上下両車道の駐車場を持つ型式である。本線の片方に景勝地が広がるなど、眺望が特定の方向に集約されるような場合に採用される。駐車場は上下線で分離されるが、食堂やトイレ等の施設は共有されることが多い。

(g) 中央集約型:上下両車道の中央に施設を集約する型式であるが、土地の狭小なわが国では適用の可能性はほとんどないといってよい。

図8.9 サービスエリアの基本型式

(3) 無料区間での対応 新直轄道路における無料区間では休憩施設の配置運用が困難な状況がある。そこで、インターチェンジに「道の駅」を併設することで、休憩施設設置に変える事例が多く見られるようになってきている。図8.10は、松江自動車道の事例である。

図8.10 インターチェンジと一体となった「道の駅」の整備事例

8.1.5 歩行者・自転車道の計画

(1) 歩行空間・自転車走行空間の機能

歩道や自転車道の機能には、歩行者・自転車の通行機能やアクセス機能、滞留機能の交通機能に加え、空間機能がある。

(1) 交通機能 歩行者空間は、1) 高齢者や子供を含む歩行者が安全・円滑・快適に目的地まで移動できる通行機能、2) 歩行者が歩道から沿道施設や車道に容易に接近できるアクセス機能、3) 歩行者の信号待ちやバス・タクシー待ち、あるいは立ち話や休憩等の滞留機能を併せ持つ。このため、自動車交通と歩行者交通とを空間的に分離して安全性を確保したり、歩行者空間をバリアフリーな空間とすることなどが必要となる。また自転車走行空間も同様に、通行機能、アクセス機能、滞留機能を持つ。

(2) 空間機能 道路には、各種の路上物件や地下埋設物が存在する。道路の本来的な機能に必要不可欠な道路標識・交通信号・道路照明等や、道路交通の機能を維持・向上させるための施設、道路を利用した集配や消防活動に必要な郵便ポスト・消火栓等の大半は、歩行者空間に設置される。電気・ガス、上下水道等、市民生活の維持や都市機能の保持に欠かせない各種供給処理施設は、道路ネットワークを利用して各戸へ接続することが必要であり、電柱は歩道に、上下水道の本管以外は歩道に埋設される。

さらに、植栽等良好な歩行空間を形成する施設も歩道に設置される。このように、歩行者空間は、都市活動やアメニティの維持のために各種の物件や施設によって多目的に利用されており、この点での歩行者空間の果たす空間機能としての役割も大きい。

(2) 歩行者・自転車・自動車分離の考え方

車道に対する歩行空間・自転車走行空間の形態に関しては、自転車交通が自動車よりも歩行者の交通の近い特質を持つわが国の特性を念頭に置いて検討することも重要である。この結果、歩行者と自転車が混在する空間では、歩行者の安全確保を第一に考えるべきである。よって、自転車と歩行者の交錯が発生するような道路では、歩行者と自転車を分離することが必要になる。このように自転車空間の計画は、自動車対自転車、歩行者対自転車の間で、交通全体の安全性と走行性を確保するといった観点から検討する必要がある。歩行者・自転車・自動車の分離の基本的な考え方を以下に示す。

① 歩行者の安全性を考慮し、歩行空間は車道等自動車が利用する空間と分離することを基本とする。

② 自転車の交通量が少ない場合には、自転車が自動車または歩行者と同一の空間を利用することはやむを得ないと考えられる。この場合、自動車の交通量が多く、自転車の車道走行が危険となる場合には、自転車は歩行者と同一の空間を共用する。

③ 自転車の交通量が多い場合、自転車の車道走行は危険性が大きく、自転車と自動車を分離する必要がある。この場合、歩道部における歩行者と自転車の錯綜も考えられることから、歩行者と自転車および自動車を分離し、それぞれが通行する専用空間を設ける。

(3) 歩道の計画

(1) 歩道の構造と構成要素 歩道は沿道施設へのアクセス性が重要視されることから、できるだけ沿道市街地と地盤高を合わせると同時に、車道と歩道の境界を明確にすることが重要である。歩道の構造は、計画エリアの沿道立地条件や交通特性から導出される幅員条件によって、車道との段差を付けたマウンドアップ形式と車道との高低差を設けないフラット形式のいずれかを選択することになる。マウンドアップ形式の採用条件は、一般的に歩道幅員が広い場合に適している。しかし、マウンドアップ形式の場合、沿道出入りに対して歩道の切下げが必要になることから、切下げ間隔が短くなるようであればフラット形式を採用することになる。

(2) トリップ特性等に応じた配置 歩行者の移動範囲は、比較的限られた狭い範囲であり、自転車や自動車に比べて、ゆっくりとした速度で通行する。また、歩行行動は非常に自由度が高く、自動車が車線に沿って走行するように、歩行者が一定の通行幅を守って規則正しく歩行するということは少ない。歩行者は、思い思いの方向に歩み、蛇行し、交錯する。このような歩行者にとって重要なのは、単に通行の機能が保障されるということではなく、歩行者の人間的な欲求がどの程度まで充足されるかということである。言い換えれば、歩行者交通では交通容量という量的な限界ではなく、歩行者が交通流の中で享受し得るサービスの質が問題となる。例えば、通勤や通学は、成人層や学生等比較的均質な交通であり、周辺の道路交通事情や土地勘もあるのに対して、買い物や行事・催物等に伴う歩行者交通は、老若男女、子供連れ等、幅広い質の異なる層から構成され、群集行動にも不慣れで、周辺の地理にも不案内である。このように歩行者交通は、その目的や心理状態の違いが大きく、歩行者空間の状況に対する欲求の水準も相違することから、利用者の評価は自動車交通のそれよりも厳しいものとなる。よって、歩行者空間の計画に当たっては、自動車交通を対象とする従来の道路計画よりも、時間的・空間的に微視的な視点で検討する必要がある。

(3) 歩道計画時の留意点 歩行者は、一般成人のみならず、高齢者や子供、身体障害者等さまざまである。特に、バリアフリー化を検討する場合において、移動空間の連続性を確保することがきわめて重要であり、歩道と沿道施設との連続性に配慮したネットワーク計画が重要となる。また、歩行者の行動特性として、できるだけ直線的な移動経路を選択しがちであることから、認識しやすく遠回りにならない配置計画が重要である。例えば、高頻度な沿道施設と横断歩道の配置が悪いと乱横断を招き、交通安全上の問題が生じる。一方、地区交通計画のように面的整備が必要とされる場合の歩行者交通は、交通計画の重要な要素となる。自動車の走行速度や地区への流入交通量を考慮し、地区交通の特性と課題を踏まえた上で、コミュニティ道路として歩車共存を図るか、これに歩行者交通の動線の安全な確保を考慮する必要がある。

(4) 自転車道の計画

(1) 自転車交通の現状と課題 道路交通の混雑によるバスや自家用車の利便性の低下、健康志向等を背景に、日常的交通手段としての自転車利用が増加している。また、いわゆるバイコロジー運動を一つの契機としてサイクリング道路の整備が進められ、レクリエーションとしての自転車利用も増加している。このような需要の急増に対して、駅前放置自転車の問題に見られるように、「自転車はどこを走るか」、「どこに置くか」という現実的かつ基本的な課題すらいまだ十分な解決策を持っていない。よって、自転車交通については多面的な検討が必要であり、以下のような配慮が必要である。

① 自転車は利用者および社会にとって利点の多い短距離交通手段であることから、自転車に都市交通における市民権を与える。

② 自転車を「弱者」とみなすのではなく、他の手段と平等な権利と責任を有するものとみなす。

③ 自転車交通をシステムとして捉え、利用者、ルール、交通施設という3要素について総合化された施策を行う。

(2) 自転車走行空間の計画 都市内の自転車道の計画策定に当たっては、単に一区画の自転車交通の処理だけでなく、自転車の通行経路全体について安全が図られるように、自転車交通の動線に配慮して自転車道網が形成されるように留意する必要がある。さらに、沿道条件や交通量に応じた自転車道路タイプの選択、交差点やバス停留所部分等における安全確保が必要であり、自転車交通と歩行者交通の錯綜が生じないよう適切な幅員を確保するとともに、設置後は不法占用物件等により通行が妨げられないよう十分留意する必要がある。近年では、健康志向から通勤やサイクリング等、比較的長距離を高速で利用するケースも増加している。自転車道の計画に当たっては、地域の道路交通の特性や自転車交通量等を把握して課題を整理した上で、上位計画を踏まえ、安全、健康、環境、観光等地域のニーズに応じた自転車政策の基本方針・計画目標を定め、下記のような面的な自転車ネットワーク構成を検討する。

① 自転車利用の主要路線(公共交通施設、学校、商業等を結ぶ)

② 自転車と歩行者の錯綜、事故等の課題解決すべき路線

③ 積極的に自転車利用促進を進める路線(通勤路、観光地、サイクリング等)

④ 今後利用増加が見込まれる路線

⑤ 自転車専用空間を有する既存路線

⑥ ネットワークの連続性を確保するための路線

(5) 道路空間の再配分

自動車交通のみならず、歩行者、自転車利用者、公共交通利用者等の移動環境を改善し、魅力的な活動の場を提供するために、限られた道路空間をどのように配分すべきかが課題となっている。郊外部では近年、バイパスや環状道路整備によって自動車交通の流れが変化し、旧道から通過交通が排除されることに伴って、旧道の低規格化とそれに応じた再整備の必要性が高まっている。さらに、都心部ではいまだ幹線道路の渋滞・混雑を回避するための抜け道利用が多いことから、歩行者空間の安全性・快適性の確保の観点から、各交通手段に対する街路空間の再配分の必要性は高い。そのためには、① 新たに道路空間を確保して歩行者空間に割り当てること(都市空間全体を再配分)や、② 既存の道路空間内で歩行者交通に割り当てる空間を拡大すること(道路空間内の再配分)が挙げられる。わが国の歩行者空間が非常に狭小であることを考慮すると、① の方向で道路空間全体を拡大し、それに伴って歩行者空間を拡大していくことが望ましいが、これには長い期間と膨大な費用が必要となる。よって、① と② の選択に関しては、対象地区の実情に応じて適切に判断すべきである。特に、歩行者の通行を優先すべき住居系地区等においては、コミュニティゾーンの採用を進める必要性もあろう。通過交通の排除、速度の抑制、路上駐車の適正化は一般にソフト的手法である交通規制等と、ハード的手法である物理的デバイスを組み合わせて用いる。物理的手法の代表的なものとしては、「ハンプ」や「狭さく」、「シケイン」等があり、車両の進入を遮断する「ボラード」等の活用事例も増えてきている。


Footnotes

  1. 日本道路協会:第三次改訂版 道路構造令の解説と運用、丸善、2004.

  2. 日本道路協会:道路構造令の解説と運用、丸善、1983.

  3. 建設省道路局:第四次全国総合開発計画における高規格幹線道路網、道路、1987.7.