河川計画
計画規模
中小河川の計画規模は、基本的に降雨量の年超過確率で評価することとし、その設定に当っては、河川の重要度、既往洪水による被害の実態、経済性、上下流のバランス等を総合的に考慮して定める。
河川の計画規模は、一般に水文量の年超過確率で表される。中小河川の場合、雨量資料は水位・流量等に比べ蓄積度合いが高く、流域や河道の改変による人為的影響を受けないことに加え、大河川と比べると降雨の地域的な一様性が高く、雨量と流量の規模の相関が高いことなどの理由から、雨量を計画の外力として扱うのが合理的である。
以下に、計画規模の設定にあたっての基本方針を示す。
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計画規模の設定に当たっては、河川の大きさ、流域の社会経済的重要性、想定され る被害の実態、過去の災害の履歴、経済効果に加え、上下流バランス、流域の将来の姿などに配慮する。
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河川の重要度を評価する流域の指標として、流域面積、流域の都市化状況、氾濫区域の面積、資産、人口、工業出荷額等が考えられるが、このほか水系として一貫した上下流、本支川でバランスが保たれ、また都道府県内の他河川とのバランスにも配慮して決定するものとする。
さらに、計画規模決定にあたっては、以下の点を総合的に考慮することが必要である。
- 県庁所在地をはじめとする県内の主要な都市を流れる河川である場合
- 過去に大規模な洪水被害を受けている場合
- 大規模開発が計画されている場合
これらの流域の状況を十分に考慮し、適切な計画規模を設定することが重要である。
高水計画
計画降雨
計画降雨の作成
計画降雨は流域の規模、降雨特性、計画対象施設の種類、さらには雨量資料の存在状況等を勘案して、適切に作成する。
基本高水を設定する方法としては、洪水の成因となる降雨を計画外力として、所定の計画規模に対応する計画降雨を定め、この計画降雨から流量に変換する方法を基本とする。
計画降雨は、降雨量、降雨量の時間分布及び地域分布の 3 要素で表されるが、その作成にあたっては流域の規模や降雨特性といった自然条件、洪水調節施設計画の有無といった検討目的を十分把握し、さらに雨量資料の存在状況等も勘案する必要がある。
降雨強度式
流域の規模等から降雨量の地域分布を無視しえると判断される場合は、降雨強度式を用いて計画降雨を作成する。
降雨強度式は、基本的に流域面積が 50km2 未満程度の合理式を用いる河川に適用されることが多いが、降雨量の時空間分布の検証を行い、降雨量の地域分布が無視しえる河川に適用することも可能である。
この場合、計画降雨の 3 要素のうち、降雨量(洪水到達時間内降雨強度)のみを考慮することとなる。なお、降雨強度式を適用するにあたり洪水到達時間をあらかじめ設定しておく必要がある。
中小河川の洪水到達時間内の短時間降雨強度式は、各都道府県で作成されたものを用いることとする。ただし、対象河川流域が短時間降 雨強度式の作成に用いられた観測所と離れていたり、降雨特性が明らかに異なると考えられる場合には、近傍の気象庁アメダス観測所による確率短時間降雨強度式を用いることができる。
高水流量
高水流量決定の原則
河川整備基本方針で定める「基本高水のピーク流量·計画高水流量」(以下「高水流量」という)は、原則として、策定時点における最適手法により算定する。これによることが河川計画上著しく不合理となる場合には、個別に検討する。
工事実施基本計画·全体計画との整合
河川整備基本方針・河川整備計画策定時に、既に工事実施基本計画・全体計画で高水流量が定められ、事業を実施している場合には、新たに高水流量を設定するにあたり、下記のとおり留意する。
従前の計画に比べ高水流量が下がる場合
- 既設構造物の評価
- 既に完成した構造物は、現時点では余裕があるが、事業実施時点では適切な安全度であったと評価する。(原則として HWL は変更しない。ただし、これらによることが不合理な場合は適宜判断する。)
- 今後の事業実施について
- 今後の事業については新しい計画に基づいて実施するが、完成済み区間と隣接する場合等には、一連区間の河川計画の連続性を考慮して現場での対応を行う。
従前の計画に比べ高水流量が上がる場合
- 既設構造物の評価
- 既に完成した構造物は、事業実施時点では適切な安全度であったと評価するが、現時点では流下能力が不足することとなる。よって、再改修が必要となる。
- 今後の事業実施について
- 事業実施にあたっては、未改修区間と事業実施済み区間の優先度を判断する。未改修区間を先に実施する場合は、上下流バランスを考慮したうえで、手戻りのない計画で事業実施する。
従前の計画と高水が同じ場合
- 既設構造物の評価
- 既に完成した構造物は、現時点で評価しても、適切な安全度であると評価する。
- 今後の事業実施について
- 事業実施については、新しい計画に基づくものとして実施する。