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安全管理

労働災害

労働災害の定義と用語

労働災害の定義

労働災害とは、労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等や作業行動その他業務に起因して労働者が負傷し、疾病にかかり、または死亡することをいい、業務外のものは含まれない。

労働安全衛生法 第2条

労働災害に関する統計用語

労働災害の発生頻度やその程度は、一般に、次のような指標で示されています。

年千人率

在籍労働者1,000人あたりの、年間の労働災害による死傷者数を示したもので、発生頻度を示しています。

年千人率 = 年間労働災害による死傷者数 ÷ 在籍労働者数 × 1,000 ・・・(式1)

度数率

100万延べ労働時間あたりの労働災害による死傷者数をもって表したものです。すなわち統計にとった期間中に発生した労働災害による死傷者数(100万倍された)を同じ期間中に危険にさらされた全労働者の延べ労働時間数で除した数値で、発生頻度を示しています。

度数率 = 労働災害による死傷者数 ÷ 延べ労働時間数 × 1,000,000 ・・・(式2)

強度率

1,000延べ労働時間あたりの労働損失日数をもって表したものです。すなわち統計にとった期間中に発生した労働災害による労働損失日数(1,000倍された)を同じ期間中に危険にさらされた全労働者の延べ労働時間数で除した数値で、災害の規模程度を示しています。

強度率 = 延べ労働損失日数 ÷ 延べ労働時間数 × 1,000 ・・・(式3)

損失日数は、災害の程度によって、次のように定められています。

  1. 死亡および永久全労働不能(傷害等級1~3級)は、7,500日。
  2. 永久一部労働不能は、下表によります(労働者災害補償保険法施行規則)。
  3. 一時全労働不能は、暦日による休業日数に300/365(小数点以下切り捨て)をかける。
身体障害者等級(級)4567891011121314
労働損失日数(日)5,5004,0003,0002,2001,5001,00060040020010050
重大災害

一時に3人以上の死傷者があった場合の災害が重大災害と定義されています。

労働災害の発生と防止

建設労働災害の現状

建設業は他の製造業よりも、作業環境および作業の方法が本来的に事故の発生しやすいものです。

さらに、近年の建設工事は、自然環境の厳しい工事や市街地での大型工事の増加などにより、施工条件が複雑化しています。このような状況での事故防止のための安全管理は、施工管理における主要な課題となっています。

建設工事に係る死傷災害の発生状況は、年々減少しているものの、令和4年の死傷者数(4日休業以上)は全産業の約10%を占めています。なお、このうち死亡者数については、全産業に占める割合は高く、令和4年は約36%となっています。

労働災害の発生のしくみ

労働災害は、すべて原因があって、その結果として発生したものです。すなわち、労働災害は、土止め支保工の不備で崩壊があったとか、壁つなぎが不足していて足場が倒壊したとか、作業床の開口部に囲い等がなかったので墜落したとか、要求性能墜落制止用器具を使わずに足場から足をすべらせて転落したというような、物理的原因である不安全状態や人的原因である不安全行為が直接原因となって発生したものです。

しかしながら、これらの直接原因の背景には、土止め支保工の強度計算の誤りや、組立図どおりに組み立てなかったこと、足場の壁つなぎや開口部の囲いを作業の都合上取り外したこと、要求性能墜落制止用器具を意識的に使用しなかったことなどがあり、これらのことを間接原因といいます。

図-2:災害発生の基本的モデル

災害原因の相互関係と分類

実際に起こった労働災害を調べると、物的原因と人的原因が交錯し、直接原因、間接原因などの相互関係も複雑です。

したがって、労働災害の防止対策を立てるためには、すでに発生した災害を分析して、労働災害の原因を探求し、これらの原因を除去するための方策を系統的に考えることが大切です。

厚生労働省では、労働災害の防止対策を講じやすくするため、労働災害の原因を事故の型別、起因物別、不安全な状態別および不安全な行動別に分類し、次のように定義しています。

1 事故の型および起因物別

災害をもたらした直接のものは加害物ですが、この加害物は必ずしも起因物とはなり得ません。災害防止対策を立てる見地からは加害物との関係を明らかにする必要があります。そのため、「事故の型」とは「傷病を受けるもととなった起因物が関係した現象」とし、「起因物」とは「災害をもたらすもととなった機械、装置もしくはその他のものまたは環境等」としています。

2 不安全状態および不安全行動

労働災害の発生は、ある状況のもとにその作業をしている作業者と、その状況の一部をなす物や環境との適合に矛盾があったため、あるいはそのバランスを失ったために起こります。このことから、「不安全な状態」とは、事故を起こしそうな状態、または事故の要因をつくり出しているような状態といいます。また、「不安全な行動」とは、災害の要因となった人の行動といいます。

災害防止の可能性

不安全な状態や不安全な行動は、すべて人がつくり出すものです。人がつくり出すものを取り除けないはずはありませんので、災害防止は必ずできるものです。

よく不注意によって災害が起こったといわれ、不注意が災害原因のひとつであるようにいわれています。すべての災害には、不注意という要素が含まれていますが、不注意は結果であって、原因ではありません。労働災害の防止対策の対象として不注意をとりあげることは、適当ではありません。

人間の注意力は、決して持続的、連続的ではなく、刻々と変化するのが実態です。主観的には自分で注意力が持続していると思っていても、1つの物を15秒間注視することは困難だといわれています。

したがって、労働災害の防止を、人間の注意力に依存するやり方で行おうとしても効果を期待できないことに注意しなければなりません。

建設工事の労働災害防止対策

建設工事の災害防止体制とその活動

労働安全衛生管理組織

建設工事現場の安全衛生管理組織

生産のために組織があるように、労働安全衛生管理を進めるためにもその組織が必要です。しかし、作業員の数が少なく、規模の小さい工事現場では、安全係というような所長を補佐する専門の組織を作り、その立案、勧告によって所長から安全の命令が現場に流れていくというやり方は、一般にはできません。したがって、工事施工の職制そのものが同時に安全管理の仕事を企画し、実施するかたちになることが多くなります。

このかたちは、所長や工事主任といった工事の責任者が安全に関してもその長となって、安全作業を現場で実施させるというやり方です。このかたちの安全衛生管理組織は、安全の専門職がいないので、安全に関する企画が不十分になりやすいという短所があります。しかし、安全と工事は、本来一体となって実践されるべきものであるので、生産と安全が同一の責任者によって企画実施される意味は大きいです。

現場が相当に大規模な場合には、安全の仕事の企画や立案の量が増大するとともに、専門的に安全衛生管理の進め方を考え、あるいは現場の安全衛生管理の進みぐあいをチェックする専門組織や、工法全体について安全の立場から検討する専門組織が必要となります。しかし、この場合においても、安全な作業の実施、設備の点検・保守などは、工事施工のラインにおいて実施すべきものであることに変わりはありません。

また、一般の建設工事にみられるように、ゼネコン(元請業者)が施工の管理面を担当し、サブコン(下請業者)が実際の作業を担当するというような仕組みのもとでは、それに合わせて安全衛生管理組織が工夫されなければなりません。この場合にも、安全と工事が一体となって実践されるべきことと、ゼネコンとサブコンの組織がそれぞれの立場で適切な役割を果たすことが必要です。

建設現場の安全衛生管理体制について、厚生労働省の資料で例示されています。

図-3:現場の安全衛生管理体制組織図

企業の安全衛生管理組織

企業の規模が大きくなり、本店、支店、営業所といったような組織をもつようになると、それに応じて、工事現場における安全衛生管理の基本方針を樹立したり、企業全体として、あるいは支店、営業所全体として安全衛生管理を効率的に進めることが大切になります。そのためには、本店、支店、営業所、工事現場などが、それぞれ工事の施工についてのいろいろな役割を果たしているように、安全衛生管理についてもそれぞれが適切な役割を果たすことが必要となります。

労働安全衛生管理の進め方

リスクアセスメントの導入

従来の労働災害防止対策は、発生した労働災害の原因を調査し、類似災害の再発防止対策を確立し、各職場に徹底していくという手法が基本でした。しかし、災害が発生していない職場であっても、潜在的な危険性や有害性は存在しており、これが放置されると、いつかは労働災害が発生する可能性があります。

技術の進展等により、多種多様な機械設備や化学物質などが生産現場で用いられるようになり、その危険性や有害性が多様化してきています。

これからの安全衛生対策は、自主的に職場の潜在的な危険性や有害性を見つけ出し、事前に的確な対策を講ずることが不可欠です。これに応えたものが、職場のリスクアセスメントです。

リスクアセスメントは、労働災害防止のために、職場における危険性や有害性を評価し、そのリスクを低減するための対策を講じる手法です。そのメリットとして以下が挙げられます。

  1. 労働災害の未然防止に役立つ
  2. 職場環境の改善に役立つ
  3. 労働者の安全意識の向上に役立つ
リスクアセスメントの基本的手順

手順1 危険性または有害性の特定

機械・設備、原材料、作業行動や環境などについて、労働者に負傷や疾病をもたらす可能性のある危険性または有害性を特定します。 危険性または有害性とは、作業者が接近することにより危険な状態が発生することが想定されるものを指します。

危険性または有害性は「ハザード」とも呼ばれます。

手順2 危険性または有害性ごとのリスクの見積り

特定したすべての危険性または有害性について、リスクの見積りを行います。

リスクの見積りは、負傷または疾病の重篤度と発生可能性の度合の両者の組み合わせで行います。

手順3 リスク低減のための優先度の設定・リスク低減措置内容の検討

危険性または有害性について、それぞれ見積られたリスクに基づいて優先度を設定します。

手順4 リスクの低減措置の実施

リスクの優先度の設定の結果に従って、リスクの除去や低減措置を実施します。

リスク低減措置は、基本的に、次の優先順位で検討し、合理的かつ選択した方法を実施します。

  • 設計や計画の段階における危険な作業の廃止、変更等
  • インターロックの設置等の工学的対策
  • マニュアルの整備等の管理的対策
  • 個人用保護具の使用

実施時期

  1. 設備、原材料、作業方法などを新規に採用し、または変更するなどリスクに変化が生じたときに実施
  2. 機械設備等の経年劣化、労働者の入れ替わり等を踏まえ、定期的に実施
  3. 既存の設備、作業については、計画的に実施
リスクの見積り

マトリクスを用いた方法

「負傷または疾病の重篤度」と「負傷または疾病の発生可能性の度合」をそれぞれ横軸と縦軸とした表(行列:マトリクス)に、あらかじめ重篤度と可能性の度合に応じたリスクの程度を割り付けておき、見積り対象となる負傷または疾病の重篤度に該当する列を選び、次に発生可能性の度合に該当する行を選ぶことにより、リスクを見積る方法です。

数値化による加算法

「負傷または疾病の重篤度」と「負傷または疾病の発生可能性の度合」を一定の尺度によりそれぞれ数値化し、それらを数値演算(かけ算、足し算など)してリスクを見積もる方法です。

それぞれの詳細については、厚生労働省の資料を参照してください。

リスクの低減措置の優先順位

リスク低減措置は法令で定められた事項がある場合、それを必ず実施することを前提としたうえで、以下の優先順位で可能な限り高い優先順位のものを実施します。

  1. 設計や計画段階における措置
    • 危険な作業の廃止や変更
    • 危険性や有害性の低い材料への代替
    • より安全な施工方法への変更 等
  2. 工学的対策
    • ガード
    • インターロック
    • 安全装置
    • 局所排気装置 等
  3. 管理的対策
    • マニュアルの整備
    • 立入り禁止措置
    • ばく露管理
    • 教育訓練 等
  4. 個人用保護具の使用
    • 個人用保護具の使用は、上記1~3の措置を講じた場合においても、除去または低減しきれなかったリスクに対して実施するものに限る
リスクアセスメントの導入効果
  1. 職場のリスクが明確になる。
    • 職場の潜在的な危険性または有害性が明らかになり、危険の芽(リスク)を事前に摘むことができる。
  2. リスクに対する認識を共有できる。
    • リスクアセスメントは、現場の作業者の参加を得て、管理監督者とともに進めるので、職場全体の安全衛生のリスクに対する共通の認識を持つことができるようになる。
  3. 安全衛生対策の合理的な優先順位が決定できる。
    • リスクアセスメントの結果を踏まえ、事業者はすべてのリスクを低減させる必要があるが、リスクの見積り結果などによりその優先順位を決めることができる。
  4. 残留リスクに対して、「守るべき決めごと」の理由が明確になる。
    • 技術的、時間的、経済的にすぐに適切なリスク低減措置ができない場合、暫定的な管理的措置を講じたうえで、対応を作業者の注意に委ねることになる。
    • この場合、リスクアセスメントに作業者が参加していると、なぜ、注意して作業しなければならないかの理由が理解されているので、守るべき決めごとが守られるようになる。
  5. 職場全員が参加することにより、「危険」に対する感受性が高まる。
    • リスクアセスメントを職場全体で行うため、ほかの作業者が感じた危険についても情報が得られ、業務経験が浅い作業者も職場に潜在化している危険性または有害性を感じることができるようになる。
記録

次に掲げる事項を記録します。

  1. 洗い出した作業
  2. 特定した危険性または有害性
  3. 見積ったリスク
  4. 設定したリスク低減措置の優先度
  5. 実施したリスク低減措置の内容
安全施エサイクル活動の実施

安全管理活動の定着化を図るため、以下の活動をサイクルとして行います。

  1. 毎作業日の実施事項
    • 安全朝礼
    • 安全ミーティング (K.Y.K. を含む)
    • 作業開始前点検
    • 作業所長の現場巡視
    • 職長等による作業中の指導·監督
    • 安全工程打合せ
    • 持場後片付け
    • 終業時の確認·報告
  2. 毎週の実施事項
    • 週間安全工程打合せ
    • 週間点検
    • 週間一斉片付け
  3. 毎月の実施事項
    • 安全衛生協議会(災害防止協議会)の開催
    • 定期点検,自主検査
    • 災害事例等による安全衛生教育
    • 職長会の開催
    • 安全(衛生)大会
  4. 随時行う活動
    • 入場予定業者との事前打合せ
    • 新規入場者教育
    • 持込機械の届出
安全施工サイクルのポイント

毎作業日

  • 安全朝礼
    • 毎朝または作業開始前に、作業所内の広場等で実施します。
    • 作業所全員が参加し、呼びかけ体操、全員挨拶、連絡調整と指示伝達、シュプレヒコール、解散を行います。
    • 目的は、心構えづくり、連絡調整(指示徹底)、指導教育と安全意識の向上です。
  • 安全ミーティング
    • 毎日の作業開始前に、詰所、休憩所、作業場所等で実施します。
    • 職長等が中心となり、作業員と作業安全打合せ書をもとに当日の作業予定を指示、作業の危険予知、服装、体調のチェックなどを行います。
    • 目的は、作業指示の徹底、作業間の連絡調整の徹底、作業方法および作業手順の徹底、作業能率の向上、安全意識の高揚、作業員の適正配置と健康管理等です。
  • 作業開始前点検
    • 作業開始前に、作業場所等で実施します。
    • 職長、作業主任者、運転(取扱)者、作業員が、材料、設備、機械等について点検を行い、点検表に記録し、結果を責任者に報告します。
    • 目的は、作業前、使用前の安全確認(正常な状態での作業の実施)です。
  • 作業所長の巡視
    • 1日1回以上午前1回、午後1回、作業所全域にわたって実施します。
    • 作業所長(統責者)または元方安全衛生管理者が、作業所全域にわたり巡視し確認、是正指示を行います。
    • 目的は、安衛法第29条、第30条による指導および指示業務を重点としています。
  • 作業中の指導監督
    • 作業中随時、作業場所で実施します。
    • 安全衛生責任者、職長·作業主任者(および元請)が、作業の中で指示、打合せ、教育したことが実行されているかを監督·指導します。発見した不安全行動(および状態)について改善指導します。
    • 目的は、安全に、良く·早く、安く施工するため作業の流れとルールが守られているかをチェック、異常の早期発見、点検の補完です。
  • 安全工程打合せ
    • 毎日一定時刻に、元請事務所で実施します。
    • (元請)統責者、元方安全衛生管理者、係員、安全担当者(業者)安全衛生責任者、職長が参加し、翌日の作業調整·指示(作業安全打合せ書の作成)を行います。特に、上下作業の時間帯の調整、作業方法の確認、危険箇所の周知、立入禁止の徹底を行います。
    • 目的は、作業の連絡調整を含め、工事の安全、品質、能率の確保です。
  • 持場片付け
    • 毎日作業終了前5~10分間、作業場所、安全通路、材料置場で実施します。 (作業場所)作業を行った業者(通路,置場等の共用部分)元請が指名した者が、使用した材料、工具、不要材などの整理整頓清掃、仮置材整理、集積場所などの整理整頓を行います。 目的は、翌日の作業の準備、作業環境の維持、災害防止、能率の向上です。
  • 終業時の確認
    • 作業終了時、作業所全域とその周辺で実施します。
    • (元請)係員、安全当番(業者)職長が、後片付け状況、火気の始末、重機のキー取外し、電源カット、第三者防護設備等の確認を行い、元請へ報告します。
    • 目的は、安全の確保、防火および盗難、第三者災害などの防止です。

毎週

  • 週間安全工程打合せ
    • 週1回、曜日、時刻などを決めて定例的に、元請事務所で実施します。
    • (元請)統責者、元方安全衛生管理者、係員、安全担当者(業者)安全衛生責任者、職長が参加し、前日までの経過と評価、各職間の作業調整と予定、危険箇所の周知、通路·仮設物の設置·段取り替え等を行います。
    • 目的は、作業工程の円滑な進捗(能率向上)、混在作業による危険防止です。
  • 元請,下請週間点検
    • 週1回、週末などの定期に、設備、機械等の設置場所で実施します。
    • (元請)安全当番、機電担当者、安全担当者(業者)職長、機電取扱者が、作業環境、設備、機械、工具類を点検表を用いて点検します。
    • 目的は、能率の向上、災害の未然防止(より良好な状態の保持)です。
  • 週間一斉片付け
    • 週1回、曜日、時刻などを決めて定例的に、作業所内外全域で実施します。
    • 統責者が指揮をとり、元請、下請、全員が実施します。
    • 不要材、発生材の搬出準備、未使用材の整理、主要通路の確保を行います。
    • 目的は、作業環境の安全化、所内の規律維持、能率の向上、翌週の準備です。

毎月

  • 安全衛生協議会(災害防止協議会)
    • 毎月1回以上、定期的に、元請事務所で実施します。
    • (元請)統責者、元方管理者、安全担当者、店社の工事施工,安全管理の責任者(業者)店社の工事施工安全管理の責任者、経営幹部、安全衛生責任者、職長等が参加します。
    • 規約に従い、月間(工程)計画、各職種間の作業調整、発生災害の原因対策検討、教育訓練等の行事予定、その他提案事項の審議を行います。
    • 目的は、統括管理の円滑な運営、混在作業に伴う諸問題の解決、災害の未然防止です。
  • 定期点検·自主検査
    • 毎月1回定期的に、設置場所で実施します。
    • (元請)担当者(業者)担当者が、法定の機械、設備について点検、自主検査(所定の点検表により)を行います。
    • 目的は、機械·設備管理の向上、災害の未然防止です。
  • 安全衛生教育
    • 毎月1回以上、定期的に、元請事務所で実施します。
    • (元請)統責者、安全担当者(下請)作業員全員が参加します。
    • 労働災害事例等により全体討議、安全教育ビデオ等による指導を行います。
    • 目的は、労働災害の再発防止、公共工事における半日教育です。
  • 安全(衛生)大会
    • 毎月特定日に時刻を決めて、作業所内の広場等で実施します。
    • 作業所全員が参加します。
    • 前月の安全衛生実績の評価、今後1か月の工程説明、具体的な安全衛生対策の説明、安全表彰など(災害事例等を利用して)を行います。
    • 目的は、安全衛生意識の高揚です。
  • 職長会
    • 毎月1回以上、定例的に、事務所等で実施します。
    • 各社の職長が参加します。
    • 自主的に勉強会,現場巡回,レクリエーション,安全施工サイクルの推進,連絡調整,福利施設の自主運営を行います。
    • 目的は、相互の意思疎通,連帯感向上,自主性,積極性の向上です。

随時

  • 新規入場者受け入れ教育
    • 現場新規入場時、事務所等で実施します。
    • (元請)安全担当者ほか(業者)安全衛生責任者,職長が参加します。
    • 当作業所の規律等注意,指示事項,現場の特殊性と具体的な安全対策,健康状態,資格等の確認など(手引き·心得等のパンフレットを準備)を行います。
    • 目的は、作業所内の規律維持,災害防止と生産性の向上,安全意識の高揚です。
  • 入場予定業者との事前打ち合わせ
    • 業者決定後入場半月または1か月前、元請事務所で実施します。
    • (元請)統責者,担当係員(業者)店社工事施工の責任者,安全衛生責任者,担当職長が参加します。
    • 計画,施工要領,使用機械等について打ち合わせる(施工要領書,作業手順書等を作成のうえ)を行います。
    • 目的は、作業の円滑な進捗(生産性の向上),災害の未然防止です。
  • 業者持込機械などの承認
    • 現場持込み時、作業場所等で実施します。
    • 元請担当社員(専門機電係)が、持込み機械などの承認を行います。
    • 機械等正常な機能を有するかどうかを確認,確認後のステッカーなどの交付を行います。
    • 目的は、安全性の確保,機械等の管理,災害の未然防止です。
労働災害防止活動の系統的な実施

安全管理を効果的に進めるためには、工事現場のみならず、本杜、支店、営業所、下請の店社、さらには、労働災害防止関係団体、業種別団体、職種別団体、発注者、設計監理業者などがそれぞれ役割を分担して、系統的に災害防止活動を実施することが大切です。

厚生労働省が推奨している「建設業における安全衛生管理の実施主体別実施事項」を次に示します。

元方事業者 (元請) - 工事現場

  1. マネジメント指針に基づく現場における安全衛生方針(工事安全衛生方針)の表明
  2. 過重の重層請負の改善、請負契約における労働災害防止対策の実施者およびその経費の負担者の明確化
  3. 店社および関係請負人との連携による危険性または有害性等の調査およびその結果に基づく措置(以下「危険性または有害性等の調査等」という。)の実施事項の決定
  4. 危険性または有害性等の調査等に基づく工事安全衛生目標の設定および工事安全衛生計画の作成
  5. 協議組織の設置・運営等元方事業者による建設現場安全管理指針に基づく統括管理の実施
  6. マネジメント指針に基づく工事安全衛生計画の実施、評価および改善
  7. 工事用機械設備の点検等による安全性の確保
  8. 安全な施工方法の採用
  9. 関係請負人の法令違反を防止するための指導および指示
  10. 土砂崩壊等のおそれがある作業場所についての安全確保のための関係請負人に対する指導
  11. 移動式クレーン等を用いての作業に係る仕事の一部を請負人に請け負わせて共同して当該作業を行う場合における作業内容等についての連絡調整の実施
  12. 関係請負人が現場に持ち込む機械設備(以下「持込機械等」という。)の安全化への指導および有資格者の把握
  13. 関係請負人が行う新規入場者教育に対する資料、場所の提供等
  14. 関係請負人に対し健康管理手帳制度の周知、その他有害業務に係る健康管理措置の周知等
  15. 現場作業者に対する安全衛生意識高揚のための諸施策の実施

元方事業者 (元請) - 店社(本支店・営業所等)

  1. マネジメント指針に基づく店社全体の安全衛生方針の表明、安全衛生目標の設定、安全衛生計画の策定
  2. 統括安全衛生責任者、元方安全衛生管理者等の選任等工事現場の安全衛生管理組織の整備の促進
  3. 施工計画時の事前審査体制の確立
  4. 工事現場の危険性または有害性等の調査等の実施事項の決定支援
  5. 工事現場の危険性または有害性等の調査等に基づく工事安全衛生計画の作成支援
  6. 店社安全衛生管理者等による安全衛生パトロールの実施等工事現場の安全衛生管理についての指導
  7. 工事用機械設備の点検基準、安全衛生点検基準等の整備
  8. 設計技術者、現場管理者等に対する安全衛生教育の企画、実施および関係請負人の行う安全衛生教育に対する指導、援助
  9. 関係請負人、現場管理者等に対する安全衛生意識高揚のための諸施策の実施
  10. マネジメント指針に基づく店社の安全衛生計画の実施、評価および改善
  11. マネジメント指針に基づくシステム監査の実施およびシステムの見直し
  12. 下請協力会の活動に対する指導援助
  13. 災害統計の作成、災害調査の実施、同種災害防止対策の樹立等
  14. 各種安全衛生情報の提供

関係請負人(下請·孫請) - 工事現場

  1. 安全衛生責任者の選任等安全衛生管理体制の確立
  2. 元方事業者の行う統括管理に対する協力
  3. 店社および元方事業者と連携した危険性または有害性等の調査等の実施
  4. 作業主任者,職長等による適切な作業指揮
  5. 使用する工事用機械設備等の点検整備および元方事業者が管理する設備についての改善申出
  6. ツールボックスミーティングの実施等による安全な作業方法の周知徹底および安全な作業方法による作業の実施
  7. 移動式クレーン等を用いる作業に係る仕事の一部を関係請負人に請け負わせる場合における的確な指示の実施
  8. 持込機械等に係る点検基準,安全心得,作業標準,安全作業アニュアル等の遵守
  9. 新規入場者に対する教育の実施
  10. 仕事の一部を他の請負人に請け負わせて作業に係る指示を行う場合における的確な指示の実施
  11. 建設業労働災害防止協会が示す専門職種に応じた労働安全衛生マネジメントシステムに基づくシステムの構築

関係請負人(下請·孫請) - 店社(本支店・営業所等)

  1. 安全衛生推進者の選任等安全衛生管理体制の確立
  2. 店社全体の安全衛生方針の表明,安全衛生目標の設定および安全衛生計画の策定
  3. 元方事業者と連携した工事現場における危険性または有害性等の調査等の実施支援
  4. 安全衛生教育の企画,実施
  5. 安全衛生意識高揚のための諸施策の実施
  6. 安全衛生パトロールの実施
  7. 持込機械等に係る点検基準,安全心得,作業標準,安全作業マニュアル等の作成による作業等の安全化の促進
  8. 下請協力会の行う災害防止活動への積極的参加
  9. 災害統計の作成,災害調査の実施等
  10. 建設業労働災害防止協会が示す専門職種に応じた労働安全衛生マネジメントシステムの構築

建設業労働災害防止協会、総合工事業団体、専門工事業団体

  1. 危険性または有害性等の調査等(危険有害特定モデル)ならびに労働安全衛生マネジメントシステムの普及啓発
  2. 設備,施工方法および作業の安全化についての調査研究の実施およびその結果についての周知
  3. 安全衛生教育の実施および勧奨
  4. 安全衛生意識高揚のための広報活動等諸施策の実施
  5. 各種情報の分析および提供
  6. 安全衛生診断,安全衛生相談,安全衛生点検等の実施
  7. 安全衛生パトロールの実施
  8. 専門職種に応じた安全作業マニュアル,労働安全衛生マネジメントシステム等の作成·普及

発注者

  1. 施工時の安全衛生の確保に配慮した工期の設定,設計の実施等
  2. 施工時の安全衛生を確保するために必要な経費の積算
  3. 施工時の安全衛生を確保するうえで必要な場合における施工条件の明示
  4. 適正な施工業者の選定および施工業者に対する指導
  5. 分割発注等により工区が分割され複数の元方事業者が存在する工事の発注者にあっては、次の事項
    • 個別工事間の連絡および調整
    • 工事全体の災害防止協議会の設置
  6. 入札参加者指名時における安全成績の優良な業者の選定および労働安全衛生マネジメントシステム等自主的な安全衛生活動の取組みを評価する仕組みの導入

労働安全衛生法

基本的事項

目的

労働安全衛生法(安衛法)は、危害防止基準の確立、事業所内における責任体制の明確化、事業者の自主的活動の促進措置などの総合的な対策を推進することにより、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な作業環境の形成の促進を目的としている。

労働安全衛生法 第1条

用語の定義

労働災害とは、労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、または作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、または死亡することをいいます。労働者とは、職業の種類を問わず事業に使用される者で、賃金を支払われる者をいいます。(労基法第9条)

事業者とは、事業を行う者で、労働者を使用する者をいいます。すなわち、個人にあってはその事業主個人を、会社その他法人にあっては法人そのものを指します。(安衛法第2条)

事業者の講ずべき措置等

事業者は、労働者の危険や健康障害を防止するために以下の措置を講じなければなりません。

  1. 危険を防止するための措置を講ずること。(安衛法第20条)
    • 機械、器具その他の設備による危険
    • 爆発性の物、発火性の物、引火性の物等による危険
    • 電気、熱その他のエネルギーによる危険
  2. 掘削、採石、荷役、伐木等の作業方法から生ずる危険を防止するための措置を講ずること。(安衛法第21条第1項)
  3. 労働者が墜落するおそれのある場所等に係る危険を防止するための措置を講ずること。(安衛法第21条第2項)
  4. 土砂等が崩落するおそれのある場所等に係る危険を防止するための措置を講ずること。(安衛法第21条第2項)
  5. 以下の健康障害を防止するための措置を講ずること。(安衛法第22条)
    • 原材料、ガス、蒸気、粉じん、酸素欠乏空気、病原体等による健康障害
    • 放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害
    • 計器監視、精密工作等の作業による健康障害
    • 排気、排液または残さい物による健康障害
  6. 労働者を就業させる建設物その他作業場における、労働者の健康、風紀および生命の保持に必要な措置を講ずること。(安衛法第23条)
  7. 労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するために必要な措置を講ずること。(安衛法第24条)
  8. 労働災害発生の急迫した危険があるときの作業中止措置および作業場からの退避させる措置を講ずること。(安衛法第25条)
  9. 政令で定める仕事を行う場合に、爆発、火災等が生じたことに伴い労働者の救護に関する措置がとられるときの労働災害の発生を防止するための以下の措置を講ずること。(安衛法第25条の2第1項)
    • 労働者の救護に関し必要な機械等の備付けおよび管理を行うこと
    • 労働者の救護に関し必要な事項についての訓練を行うこと

ここで、政令で定める仕事とは次の通り(労働安全衛生法施行令第25条の2及び第31条の2)

  1. ずい道等の建設の仕事
    • 出入口からの距離が1、000m以上の場所において作業を行うもの
    • 深さが50m以上となるたて坑(通路として用いられるものに限る)の掘削を伴うもの
  2. 圧気工法による作業を行う仕事
    • ゲージ圧力が0.1MPa以上で行うもの

元方事業者の講ずべき措置等

元方事業者とは、同一の場所において行う事業の一部を請負人に請け負わせている者のうち最も先次の注文者をいいます(元請ほか、自ら事業を行う発注者も含まれます)。元方事業者は、以下の措置等を講じなければなりません。(安衛法第29条)

  1. 関係請負人(下請、孫請)または関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、安衛法またはこれに基づく命令の規定に違反しないよう指導すること。
  2. 関係請負人または関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、安衛法またはこれに基づく命令の規定に違反していると認めるときは、是正のために必要な指示を行うこと。

特定元方事業者等の講ずべき措置

元方事業者のうち、多くの労働者が同一場所で混在して作業を行う建設業およびその他政令で定める業種(造船業)を行う者を特定元方事業者といいます。(安衛法第30条)

複数の関係請負人の労働者が同一の場所で作業する場合の措置

特定元方事業者は、関係請負人および関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、必要な以下の措置を講じなければなりません。(第1項)

  1. すべての関係請負人が参加する協議組織を設置し、その会議を定期的に開催すること。
  2. 特定元方事業者と関係請負人との間および関係請負人相互間における連絡および調整を随時行うこと。
  3. 毎作業日に、少なくとも1回は、作業場所の巡視を行うこと。
  4. 関係請負人が行う労働者の安全または衛生のための教育について、教育を行う場所や教育に使う資料の提供等指導および援助を行うこと。
  5. 仕事の工程に関する計画および作業場所における機械、設備等の配置に関する計画を作成するとともに、当該機械、設備等を使用する作業に関し、関係請負人が安衛法またはこれに基づく命令の規定に基づき講ずべき措置についての指導を行うこと。
  6. 当該作業がクレーン等を用いて行うものであるときは、クレーン等の運転に関する合図を統一的に定め、これを関係請負人に周知すること。
  7. 当該場所に法令等で定める事故現場等があるときは、当該事故現場等を表示する標識を統一的に定め、これを関係請負人に周知すること。
  8. 当該場所に有機溶剤等の容器が集積されるときは、集積する箇所を統一的に定め、これを関係請負人に周知すること。
  9. 発破等が行われる場合および火災、土砂の崩壊、出水、なだれが発生した場合または発生するおそれがある場合に行う警報を統一的に定め、これを関係請負人に周知すること。
  10. ずい道等の建設作業を行う場合は、特定元方事業者および関係請負人が行う避難等の訓練について、その実施時期および実施方法を統一的に定め、これを関係請負人に周知すること。

発注者が同一の場所で複数の請負工事を発注する場合

発注者(特定元方事業者を除く)が1の場所において2以上の請負工事を発注する場合、特定元方事業者が講ずべき措置を講ずる者を1名指名しなければなりません。発注者による指名がないときは、労働基準監督署長が指名します。(第2項・3項)

注文者の講ずべき措置

工事で使用する建設物等に対する注文者としての安全措置義務

注文者(発注者を除く)は、建設物、設備または原材料(以下「建設物等」といいます。)を、当該仕事を行う場所においてその請負人(後次のすべての下請負人を含む)の労働者に使用させるときは、当該建設物等について、当該労働者の労働災害を防止するため積載荷重の表示、点検等の必要な措置を講じなければなりません。なお、数次の請負契約により同一の建設物等について注文者の安全措置義務を負う者が2以上あるときは、最も先次の注文者のみが義務を負います。(安衛法第31条)

特定作業に対する安全措置義務

2以上の事業者の労働者が1の場所において特定作業を行う場合、特定作業に係る仕事を行う者で当該仕事の一部を他の者に請負わせている者(特定発注者)は、特定作業に従事するすべての労働者の労働災害を防止するため、必要な措置(作業の内容、作業に係る指示の系統および立入禁止区域について必要な連絡および調整)を講じなければなりません(図-5)。(安衛法第31条の3第1項関係)



労働省労働基準局長通達 平成4年 基発第四八〇号

ここで、特定作業とは以下の機械に係る作業をいう

  • 機体重量が3t以上のパワーショベル、 ドラグショベル、クラムシェル
  • 杭打機、杭抜機、アースドリル、アースオーガ
  • つり上げ荷重が3t以上の移動式クレーン

特定作業に係る安全のため必要な措置を講ずるべき者がいないときは、特定元方事業者が 講ずべき措置を実施する者が、特定作業に係る安全に必要な措置を行う者を指名する等によ り、当該場所において特定作業に従事するすべての労働者の労働災害を防止するため必要な 配慮をしなければならない。(安衛法第31条の3第2項関係)



労働省労働基準局長通達 平成4年 基発第四八〇号

安全衛生管理組織

個々の事業場単位の安全衛生管理組織

総括安全衛生管理者

建設業においては、常時使用する労働者の数 が 100人以上の事業所においては、安全管理者、衛生管理者、または安衛法の規定により技術的 事項を管理する者を指揮し、当該事業所における安全衛生に関する業務を統括管理するための総 括安全衛生管理者の選任が事業者に義務づけられている。(安衛法第10条)

総括安全衛生管理者が統括管理する業務は以下のとおりである。(安衛則第3条の 2)

  1. 安全衛生に関する方針の表明に関すること。
  2. 危険性または有害性等の調査およびその結果に基づき講ずる措置に関すること。
  3. 安全衛生に関する計画の作成、実施、評価および改善に関すること。

また、 総括安全衛生管理者が旅行、疾病、事故その他やむを得ない理由によって職務を行うこ とができないときは、 代理者を選任しなければならない。

安全管理者

建設業においては、常時使用する労働者の 50人以 上の事業所にあっては、総括安全衛生管理者を補佐し、安全に関する技術的事項を管理するもの として、安全管理者の選任が義務づけられている。なお、総括安全衛生管理者が選任されている 場合は、 総括安全衛生管理者の指揮に従う。(安衛法第11条)

衛生管理者

常時使用する労働者の数が 50 人以上のすべての事業所において、総括安全衛生管理者を補佐 し、衛生に関する技術的事項を管理するものとして、衛生管理者の選任が義務づけられている。 なお、 総括安全衛生管理者が選任されている場合は、総括安全衛生管理者の指揮に従う。 衛生管理者はその事業所に専属の者でなければならない。(安衛法第12条)

作業主任者

事業者は、安衛令に規定される労働災害を防止するための管理を必要とする以下に示す作業に ついては、当該作業に関する資格を有する作業主任者を選任しなければならない。

また、作業主任者の氏名およびその者に行わせる事項を作業場の見やすい位置に掲示する等に より、関係労働者に周知させなければならない。(安衛法第14条、安衛令第6条)

  1. 高圧室内作業(潜函工法または圧気工法等)
  2. アセチレン溶接装置またはガス集合溶接装置を用いて行う金属の溶接、溶断または加熱の作業
  3. コンクリート破砕器を用いて行う破砕作業
  4. 掘削面の高さが2 m以上となる地山の掘削の作業
  5. 土止め支保工の切りばりまたは腹起しの取付けまたは取り外しの作業
  6. ずい道等の掘削の作業またはこれに伴うずり積み、ずい道支保工の組立て、ロックボルトの取付けもしくはコンクリート等の吹付けの作業
  7. ずい道等の覆工の作業
  8. 型枠支保工の組立てまたは解体の作業
  9. つり足場、張出し足場または高さが5m以上の構造の足場の組立て、解体または変更の作業
  10. 高さが5m以上または支聞が30m 以上の橋梁の上部構造の架設、解体または変更の作業
  11. 高さが5m以上のコンクリート造の工作物の解体または破壊の作業
  12. 酸素欠乏危険場所における作業
  13. 屋内作業上またはタンク、船倉もしくは坑の内部等において、有機溶剤を製造しまたは取り扱う業務で、厚生労働省令で定めるものに係る作業

下請混在現場における安全衛生管理組織

統括安全衛生責任者

特定元方事業者は、元方安全衛生管理者を指揮するとともに安衛法で規定される特定元方事業者の講ずべき措置を統括管理させるため、すべての労働者の数が常時50人以上(ずい道工事、厚生労働省令で定められた橋梁工事、圧気工法による工事の場合は、常時30人以上)従事させる場合には、統括安全衛生責任者の選任が義務づけられています(安衛法第15条)。

また、統括安全衛生責任者が旅行、疾病、事故その他やむを得ない理由によって職務を行うことができないときは、代理者を選任しなければなりません。

元方安全衛生管理者

統括安全衛生責任者を選任しなければならない事業所には、統括安全衛生責任者の指揮を受け、その統括管理すべき事項のうち技術的事項を管理する者として、その事業所に専属の元方安全衛生管理者の選任が義務づけられています(安衛法第15条の2)。

安全衛生責任者

統括安全衛生責任者との連絡のため、統括安全衛生責任者を選任すべき事業者以外の請負人は、安全衛生責任者の選任が義務づけられています(安衛法第16条)。

店社安全衛生管理者

建設業の中小規模現場における安全衛生責任の充実を図るため、労働者の数が一定数以上である建設工事を行う場合には、請負契約を締結している事業所ごとに一定の資格を有する者のうちから、店社安全衛生管理者の選任が義務づけられています。

ただし、選任対象現場であっても、すでに統括安全衛生責任者および元方安全衛生管理者を選任し、その職務を行わせている場合においては、店社安全衛生管理者の選任を要しません(安衛法第15条の3)。

建設工事の計画の届出および安全性に関する事前審査制度

(1) 厚生労働大臣への仕事の計画の届出

事業者(仕事を自ら行う発注者または元請負人に限る)は、重大な労働災害が生じるおそれのある、以下に示す、特に大規模な建設の仕事については、厚生労働大臣へ仕事の開始の日の30日前までに、その計画を届け出なければなりません(安衛法第88条第2項、安衛則第89条)。

  1. 300 m以上の塔の建設の仕事
  2. 堤高が 150 m 以上のダムの建設の仕事
  3. 最大支間 500 m 以上(つり橋にあっては, 1,000 m 以上)の橋梁の建設の仕事
  4. 長さ3,000 m 以上のずい道等の建設の仕事

(2) 労働基準監督署長への仕事の計画の届出

建設工事のうち、次の仕事を開始しようとする事業者(仕事を自ら行う発注者または元請負人に限る)は、その仕事の開始の日の14日前までに、労働基準監督署長にその仕事の計画を届け出さなければなりません(安衛法第88条第3項、安衛則第90条)。

  1. 最大支間50 m以上の橋梁の建設、改造、解体または破壊(以下「建設等」という)の仕事
  2. 最大支間30 m以上50 m未満の橋梁(人口の集積が著しい地域で交通の輻輳している箇所のもの)の上部構造の建設等の仕事
  3. ずい道等の建設等の仕事(ずい道の内部に労働者が立ち入らないものを除く)
  4. 掘削の高さまたは深さが10 m以上となる地山の掘削の作業(掘削機械を用いる作業で、掘削面の下方に労働者が立ち入らないものを除く)を行う仕事

(3) 労働基準監督署長への工事の計画の届出

型枠支保工、足場、ボイラー等の機械等を設置し、もしくは移転し、またはこれらの主要構造部分を変更しようとする事業者は、工事開始30日前までに、その工事の計画を労働基準監督署長に届け出なければなりません(安衛法第88条第1項、安衛則第86条第1項、安衛則別表第7)。

  1. 型枠支保工(支柱の高さが3.5 m以上のものに限る)
  2. 架設通路(高さおよび長さがそれぞれ10 m以上のものに限る)
  3. 足場(つり足場、張出し足場、およびそれ以外の足場にあっては、高さが10 m以上の構造のものに限る)
  4. ボイラー、クレーン、ゴンドラなど(厚生労働省で定められた規模以上のものに限る)

(4) 計画の作成への有資格者の参画

事業者は、上記(1)および(2)の厚生労働大臣および労働基準監督署長に届け出るべき仕事の計画および(3)の工事の計画のうち1および3を作成するときは、当該仕事から生ずる労働災害の防止を図るため、厚生労働省令で定める資格を有する者を参画させなければなりません(安衛法第88条第5項、安衛則第92条の3、安衛則別表第9)。

(5) 工事の差止, 計画の変更命令

厚生労働大臣および労働基準監督署長は、その仕事の計画または工事の計画がその法律の規定に違反すると認めるときは、工事の開始を差し止め、または計画の変更を命ずることができます(安衛法第88条第6項)。

土木工事の安全対策

安全措置一般

土木工事の安全に関する規程等

土木工事の安全対策は、主として労働安全衛生法およびその関係政省令にしたがって取り組まれます。しかし、労働安全衛生法令は労働者の安全対策が中心であるため、工事関係者以外の第三者の生命・財産への危害についても対策する必要があります。第三者への危害は絶対にあってはなりません。このため、国土交通大臣より「建設工事公衆災害防止対策要綱」が告示されています。公災防は、重要な規範としての位置づけにとどまらず、多くの公共工事において仕様書に遵守義務が明記されているので、この場合遵守しなければ直ちに契約違反となります。また、公災防には、発注者や設計者の責務も明記されています。

また、土木工事に関してこれらの法令・要綱を踏まえてさらに具体的な内容にも言及した「土木工事安全施工技術指針」が国土交通省より示されており、各公共工事発注者の土木工事共通仕様書においては参考にすることが求められています。

本章の土木工事の安全対策は、これらの法令・要綱・指針に沿って解説します。なお、これらの法令等に具体の記載がなくとも、工事現場の責任者たる事業者にとって、現場における危険性の事前評価(リスクアセスメント)を行い、相当の注意をもって労働災害・公衆災害を防ぐ方策を実施することは、法的にも道義的にも本来の責務です。

安全措置の留意事項

1 施工計画、指揮命令系統の周知

施工計画、指揮命令系統および作業の順序、方法等をあらかじめ作業員に周知します(工安針第2章第10節1)。

2 保護具等の着用と使用

保護具等の常備と使用については、次の通りとなります。

  • 呼吸用保護具等
    • 事業者は、著しく暑熱又は寒冷な場所における業務、多量の高熱物体、低温物体又は有害物を取り扱う業務、有害な光線にさらされる業務、ガス、蒸気又は粉じんを発散する有害な場所における業務、病原体による汚染のおそれの著しい業務その他有害な業務においては、当該業務に従事する労働者に使用させるために、保護衣、保護眼鏡、呼吸用保護具等適切な保護具を備えなければならない(安衛則593条)。
  • 皮膚障害等防止用の保護具
    • 事業者は、皮膚に障害を与える物を取り扱う業務又は有害物が皮膚から吸収され、若しくは侵入して、健康障害若しくは感染をおこすおそれのある業務においては、当該業務に従事する労働者に使用させるために、塗布剤、不浸透性の保護衣、保護手袋又は履(はき)物等適切な保護具を備えなければならない(安衛則594条)。
  • 騒音障害防止用の保護具
    • 事業者は、強烈な騒音を発する場所における業務においては、当該業務に従事する労働者に使用させるために、耳栓その他の保護具を備えなければならない。事業者は、労働者に耳栓その他の保護具の使用を命じたときは、遅滞なく、当該保護具を使用しなければならない旨を、作業中の労働者が容易に知ることができるよう、見やすい場所に掲示しなければならない(安衛則595条)。
  • 保護具の数等
    • 事業者は、保護具については、同時に就業する労働者の人数と同数以上を備え、常時有効かつ清潔に保持しなければならない(安衛則596条)。
  • 労働者の使用義務
    • 規定する業務に従事する労働者は、事業者から当該業務に必要な保護具の使用を命じられたときは、当該保護具を使用しなければならない(安衛則597条)。
  • 専用の保護具等
    • 事業者は、保護具又は器具の使用によって、労働者に疾病感染のおそれがあるときは、各人専用のものを備え、又は疾病感染を予防する措置を講じなければならない(安衛則598条)。

保護具等の着用基準については、次の通りです。

保護帽

  • 明り掘削の作業 (安衛則366条)
  • 採石の作業 (安衛則412条)
  • 最大積載量が5t 以上の貨物自動車の荷の積み卸し作業 (安衛則151条の74)
  • 最大積載量が5t 以上の不整地運搬車の荷の積み卸し作業 (安衛則151条の52)
  • ジャッキ式つり上げ機械を用いた荷のつり上げ、つり下げ等の作業 (安衛則194条の7)
  • 高さ2m以上のはいの上における作業 (安衛則435条)
  • 高さ5m以上または支間30 m以上の鋼橋の架設、解体、変更(大規模補修など)の作業 (安衛則517条の10)
  • 高さ5 m以上または支間30 m以上のコンクリート橋の架設、変更の作業 (安衛則517条の24)
  • 高さ5m以上のコンクリート造の工作物の解体等の作業 (安衛則517条の19)
  • 高層建築場等で物体の飛来落下の危険のある作業 (安衛則539条)

要求性能墜落制止用具

  • 高所作業車(作業床が接地面に対し垂直にのみ上昇しまたは下降する構造のものを除く) (安衛則194条の22)
  • 高さ2 m以上の高所作業で墜落の危険がある作業 (安衛則518~521条)
  • つり足場、張出し足場または高さ2 m以上の足場の組立て、解体、変更の作業 (安衛則564条)
  • クレーン、移動式クレーンの専用の搭乗設備に必要があって労働者を乗せる場合 (クレーン則27条 クレーン則73条)
  • ゴンドラの作業床での作業 (ゴンドラ則17条)

防毒マスク

  • 酸素欠乏の危険がある作業 (酸欠則6条)

3 水上作業時の器具

  1. 水上作業には、器具をそろえておくこと。
  2. 水中に転落するおそれのあるときは、器具を使用すること。

4 非常事態における応急処置

非常事態の発生時における連絡の方法、応急処置の方法等を作業員に周知すること。

5 危険箇所の周知

架空工作物、特に高圧電線等は、その危険性について作業員に十分認識させておくこと。

6 作業環境の整備

材料の置き場所、作業に適した場所を選定し、脚、非常口、分電盤、操作盤の前面等は避けること。

7 投下・落下・飛来に関する安全対策

  1. 3m以上の高所から物体を投下するときは、適切な投下設備を設け、監視人を配置するなど、危険を防止するための措置を講ずること。
    • 立入禁止区域を設け、監視員を配置すること。。(工安針第2章第6節3)
    • 投下設備は、ゴミ投下用シュートまたは木製によるダストシュート等、周囲に投下物が飛散しない構造であること。(工安針第2章第6節3)
    • 投下設備先端と地上との間隔は、投下物が飛散しないように、投下設備の長さ、勾配を考慮した設備とすること。(工安針第2章第6節3)
  2. 物体が落下することにより、労働者に危険が及ぶおそれのあるときは、防網(防護網、安全ネット)の設備を設け、立入区域を設するなど、危険を防止するための措置を講ずること。
    • 構造物の出入口と外部足場が交差する場所の入口上部には、飛来落下の防止措置を講じること。(工安針第2章第6節1)
  3. 物体が飛来することにより、労働者に危険が及ぶおそれのあるときは、飛来防止の設備を設け、保護具を使用するなど、危険を防止するための措置を講ずること。
  4. 足場、鉄骨等物体の落下しやすい高所には物を置かないこと。また、飛散物を仮置きする場合は緊結するか、箱、袋に収納すること。やむを得ず足場上に材料等を集積する場合は、集中荷重による足場のたわみ等の影響に留意すること。(工安針第2章第6節4)
    • 作業床端、開口部、のり肩等の1m以内には集積しないこと。作業床の開口部等では、幅木等により、落下を防止する措置を講じること。(工安針第2章第6節4)
  5. 上下作業は極力避けること。やむを得ず上下作業を行うときは、事前に両者の作業責任 者と場所、内容、時間等をよく調整し、安全確保を図ること。(工安針第2章第6節5)

8 墜落による危険を防止するための安全ネット

  1. ネットの材料は、合成繊維とすること。
  2. 網目は、その辺の長さ(一マスの大きさ、目合い)が10cm以下とすること。
  3. 作業床等とネットの取付け位置との垂直距離(以下「落下高さ」という。)は、次の式により計算して得た値以下とすること。
    • 単体ネットの場合
      • L<AL<Aのとき Hl=0.25(L+2A)H_{l} = 0.25 (L + 2A)
      • LAL≥Aのとき Hl=0.75LH_{l} = 0.75L
    • 複合ネット(単体ネットを組み合わせたネット)の場合
      • L<AL<Aのとき Hl=0.20(L+2A)H_{l} = 0.20 (L + 2A)
      • LAL≥Aのとき Hl=0.60LH_{l} = 0.60L
    • ここで、LLAAおよびHlH_{l}は、それぞれ次の値を表すものとする。
      • LL: 単体ネットにあってはその短辺の長さ、複合ネットにあってはそれを構成するネットの短辺の長さのうち最小のもの(単位m)
      • AA: ネット周辺の支持点の間隔(単位m)
      • HlH_{l}: 落下高さ(単位m)
  4. ネットの支持点の間隔は、ネット周辺からの墜落による危険がないものであること。
  5. ネットの損耗が著しい場合、ネットが有毒ガスに暴露された場合等においては、ネットの使用後に試験用糸について等速引張試験を行うこと。
  6. ネットは、紫外線、油、有害ガス等のない乾燥した場所に保管すること。
  7. 次のネットは、使用しないこと。
    • 網糸が規定する強度を有しないネット
    • 人体またはこれと同等以上の重さを有する落下物による衝撃を受けたネット
    • 破損した部分が補修されていないネット
    • 強度が明らかでないネット
  8. ネットには、見やすい箇所に次の事項が表示されていること。
    • 製造者名
    • 製造年月
    • 仕立寸法
    • 網目
    • 新品時の網糸の強度

仮設工事

仮設構造物は、永久構造物とは異なり、特定の期間だけ用いられ、工事完成時には一般的に撤去される構造物のことで、建設工事においては欠くことのできないものです。

仮設構造物に係る事故には、組立てまたは解体作業中および使用中における仮設構造物自体の倒壊と、作業員の墜落や物の落下等による被災があります。発生件数では、墜落災害が多く見られます。

また、仮設構造物の倒壊事故は数こそそれほど多くはありませんが、一度発生すると多数の死傷者を出す重大な災害となりやすいうえ、近年の市街地工事の増大により、第三者を巻き込む事故となる可能性が高まっています。

仮設構造物に係る事故の背景には、仮設構造物はいずれは撤去されるものであることから、あまり重要視されなかったり(油断)、経費節減の対象項目とされやすい(手抜き)ことが挙げられます。

このような仮設構造物に係る事故を未然に防止するためには、当該仮設物の重要性に応じた現地調査や解析を入念に行い、適切な施工計画を立て、個々の仮設構造物ごとに、きめ細かい安全上の対策を講じることが基本となります。

施工者は、工事着手前の施工計画立案時において強風、豪雨、豪雪時における作業中止の基準を定めるとともに、中止時の仮設構造物、建設機械、資材等の具体的な措置について定めておかなければなりません。

  1. 良質な材料を使用すること。
  2. 丈夫な構造とすること(構造物としての剛性を高め、基礎の沈下等を防止する)。
  3. 墜落、転落が起きない構造とすること(足場および手すりの設置、開口部の閉塞)。
  4. 万一、墜落·転落しても事故とならない措置を講ずること(防網、転落防護柵、親綱の使用等)。
  5. 点検を行うこと(設置完了時の点検、作業開始前点検、定期点検)。

安全通路·架設通路 ·昇降設備等

工事現場内または工事現場に通ずる場所には安全な通路を設け、これを有効に保持しなければなりません。通路は、その場所で作業をしている者はもちろん、作業員以外の通行者も利用することがあります。さらに、工事用のダンプトラック等の運搬車、車両系建設機械等が頻繁に通行するため、作業員がこれらの機械に接触、巻き込まれまたは轢かれて被災する災害が多発しています。また、桟橋、階段等から作業員や通行者が墜落する災害も多発しています。

このような災害を防止するために、通路は、危険のない良好な状態を保持するよう維持管理し、見通しの悪い曲がり角や交差点等には標識を立て、誘導員を配置するなどの措置を講じることが大切です。さらに、通路を建設機械等の走行路と作業員等の通行部分とに、柵などによって分離すれば、両者の接触による事故の発生防止に効果的です。

安全通路の設定
  1. 作業場に通じる場所および作業場内には、労働者が使用するための安全な通路を設けること。
  2. 通路面は、つまずき、すべり、踏抜き等の危険がない状態に保持すること。
  3. 通路は、用途に応じた幅員を有すること(機械相互の間、またはこれと他の設備の間に設ける通路は、80cm以上とすること)。
  4. 屋内に設ける通路には、通路面から高さ1.8m以内に障害物を置いてはならない。
  5. 通路には、通行を妨げない程度の採光または照明を設けること。
  6. 安全通路には、通路であることを表示するとともに、常時通路の安全を保持しなければならない。
架設通路(桟橋)

通路のうち、両端が支点で支持され、架け渡されているものを架設通路と呼び、一般に桟橋として知られています。架設通路は、高所に架け渡される場合が多く、構造などに欠陥があれば、墜落、倒壊などにより重大な災害につながるおそれが高いです。このため、架設通路は丈夫な構造とし、両側には墜落防止のための丈夫な手すりなどを設けることが必要です。

1 設置計画の届出

事業者は、高さおよび長さがそれぞれ10 m以上で、かつ、組立てから解体までの期間が60日以上となる架設通路については、あらかじめ、その設置計画を工事の開始日の30日前までに、所轄の労働基準監督署長に届け出ることが義務付けられています(安衛法第88条、安衛則第85条、安衛則別表第7)。

2 架設通路の設置基準(安衛則第552条)

  1. 架設通路は、丈夫な構造とすること。
  2. 架設通路は、30°以下の勾配とすること。ただし、階段を設けた場合、または高さ2m未満で丈夫な手掛かりを設けた場合はこの限りでない。
  3. 勾配が15°を超える場合は、踏桟その他の滑止めを設けること。
  4. 墜落の危険のある箇所には、高さ85cm以上の丈夫な手すりおよび中機等(高さ35cm以上50cm以下の桟またはこれと同等以上の機能を有する設備)を設けること。
  5. 高さ8m以上の登り桟橋には、7m以内ごとに踊場を設けること。
  6. たて坑内の架設通路で、長さが15m以上あるものは、10m以内ごとに踊場を設けること。

3 昇降設備

事業者は、現場内の高さまたは深さが1.5mを超える作業箇所には、労働者が安全に昇降するための昇降設備を設置しなければなりません(安衛則第526条)。昇降設備としては、階段、はしご、登り桟橋、工事用エレベーターなどがあります。これらの設備は、いずれも作業員の墜落、または設備そのものの倒壊などの危険性があるので、十分安全に配慮した構造としなければなりません。

4 はしご道·移動はしご

はしご道とは、はしご状の通行設備で、工事現場において簡易な昇降用として広く用いられています。はしご道および移動はしごに関する留意事項を下記に示します(安衛則第527条、第556条)。

  1. 材料は、著しい損傷、腐食等がないものを使用し、構造は丈夫なものとすること。
  2. 移動はしごの転位を防止するため、すべり止め装置その他の措置を講ずること。
  3. 幅は、 30 cm 以上とすること。
  4. 移動はしごの踏機は、 25 cm 以上 35 cm 以下の等間隔であること。
  5. 移動はしごは、原則として継いで用いてはならない。やむを得ず継いで用いる場合は、 9 m 以下とすること。
  6. はしご道にあっては、 踏様と壁との間に適当な間隔を保たせること。
  7. はしごの上端は、床から 60 cm 以上突き出させること。
  8. 坑内のはしご道で、長さが10m 以上のものは5m 以内ごとに踏だなを設けること。
  9. 坑内のはしご道の勾配は、 80°以内とすること。
  10. 潜函内等のはしご道には、 上記7、8、9の規定は適用しない。

5 非常口 · 避難通路

  1. 事業者は、危険物、爆発性·発火性のものを取り扱う作業場および当該作業場を有する建築物(以下「危険物等を扱う建物等」という。)の避難階(直接地上に通ずる出入り口のある階をいう。)には、2以上の出入口を設けること。なお、出入口の戸は、引戸または外開戸とすること。(安衛則第546条)
  2. 危険物等を扱う建物等の避難階以外の階については、 その階から避難階または地上に通ずる2以上の直通階段または傾斜路を設けること。ただし、それらのうちの1については、 すべり台、避難用はしご、避難用タラップ等の避難用器具をもって代えることができる。(安衛則第 547 条第1項)
  3. 2の、直通階段または傾斜路のうちの1は、屋外に設けること。ただし、すべり台、避難用はしご、避難用タラップ等の避難用器具が設けられているときは、この限りでない。(安衛則第 547 条第2項)
  4. 事業者は、危険物等を扱う建物等または常時50人以上の労働者が就業する屋内作業場には、 非常を知らせるための自動警報設備 設備、非常ベル等の警報用の設備または携帯用拡声器、手動式サイレン等の警報用器具を備えること。(安衛則第 548条)
  5. 事業者は、 常時使用しない避難用の出入口、通路または避難用器具については、避難用である旨の表示をし、かつ、容易に利用できるように保持しておくこと。なお、出入口に設ける戸は、引戸または外開戸であること。(安衛則第 549 条)

作業構台

作業構台とは、建設現場において工事材料、仮設機材等を上部に一時的に集積することを目的として、あるいは建設機械、移動式クレーン等を設置または移動させることを目的として設ける、仮設の支柱および作業床などから構成される高さ2m以上の設備を指します。その種類として、地山の掘削等の工事現場に設けられる乗入れ構台(またはトラック構台)、ビル建築現場等に設けられる荷揚げ構台(いわゆるステージング)などがあります。

一般事項

1 作業構台の構造について

作業構台については、著しいねじれったわみ等が生ずるおそれのない丈夫な構造でなければならない。(安衛則第575条の 3)

2 作業構台に使用される材料(安衛則第 575条の 2)

  1. 作業構台に使用する材料は、著しい損傷、変形または腐食のあるものを使用してはならない。
  2. 作業構台に使用する木材は、強度上の著しい欠点となる割れ、虫食い、節、繊維の傾斜等がないものであること。
  3. 作業構台に使用する支柱、作業床、梁、大引き等の主要な部分の鋼材については、JIS に定める規格に適合したものであること。

3 作業構台の組立図について(安衛則第575条の 5)

  1. 事業者は、作業構台を組み立てるときは、組立図を作成し、かつ、その組立図に基づいて組み立てること。
  2. 組立図には、支柱、作業床、梁、大引き等の部材の配置および寸法が示されていること。

4 作業構台の最大積載荷重(安衛則第575条の 4)

事業者は、作業構台の構造および材料に応じて作業床の最大積載荷重を定め、かつ、これを超えて積載してはならない。また、最大積載荷重を労働者に周知させること。

作業構台についての措置
  1. 事業者は、作業構台の組立て、解体または変更の時期、範囲および順序を作業に従事する労働者に周知させること。
  2. 事業者は、作業を行う区域内には、関係労働者以外の労働者の立入りを禁止すること。
  3. 事業者は、強風(10分間の平均風速が毎秒 10 m 以上)、大雨(1回の降雨量が 50 mm 以 上)、大雪(1回の降雪量が 25 cm 以上)等の悪天候のため、作業実施について危険が予想されるときは、当該作業を中止すること。
  4. 支柱の滑動、沈下を防止するため、地質等に応じた根入れをするとともに、支柱脚部に根がらみを設けること。また、必要に応じて敷板、敷角等を使用すること。
  5. 支柱、梁、筋かい等の緊結部、接続部または取付部は変位、脱落等が生じないよう緊結金具等で堅固に固定すること。
  6. 道路等との取付部においては、段差がないようにすりつけ、緩やかな勾配とすること。 (工安針第5章第6節5) 事業者は、作業構台の組立てまたは解体の時には、下記の事項を当該作業に従事する労 働者に周知すること。(工安針第5章第6節5)
    • 材料、器具、工具等を上げ下ろしするときのつり綱、つり袋を使用。
    • 仮づり、仮受、仮締、仮つなぎ、控え、補強、筋かい、 卜ラワイヤ等による倒壊防止。
    • 適正な運搬・仮置。
作業構台における作業床

1 作業床の組立て

  1. 事業者は、高さが2m以上の箇所での作業およびスレート、床板等の屋根の上での作業においては、作業床を設置すること。(工安針第5章第6節1)
  2. 事業者は、高さが2m以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く)で作業を行う場合において、墜落による危険のおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けること。(安衛則第518条)
  3. 事業者は、作業床を設けることが困難な場合は、防網を張り、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させるなど、労働者の墜落による危険を防止するための措置を講じること。(安衛則第518条、安衛則第575条の6)
  4. 事業者は、高さが2m以上の箇所で作業を行う場合で、要求性能墜落制止用器具等を使用させるときは、要求性能墜落制止用器具等を取り付けるための設備等を設けること。また、要求性能墜落制止用器具等を使用させるときは、要求性能墜落制止用器具等およびその取付け設備等の異常の有無を、随時点検すること。(安衛則第521条)
  5. 高さが2m以上の作業床の床材間のすき間は、3cm以下とすること。また、床材は十分な強度を有するものを使用すること。(安衛則第575条の6)
  6. 高さが2m以上の箇所で作業を行うときは、作業を安全に行うために必要な照度を保持すること。(安衛則第523条)

2 作業床の開口部等について

  1. 事業者は、高さが2m以上の作業床の端、開口部等で墜落の危険のおそれがある箇所には、囲い、手すり、覆い等(以下「囲い等」という。)を設けること。
  2. ただし、囲い等を設けることが著しく困難なとき、または作業の必要上、臨時に囲い等を取り外すときは、下記の措置を講ずること。
    • 作業床の端、開口部等に防網を張る。
    • 要求性能墜落制止用器具等を取り付けるための設備を設ける。
    • 労働者に要求性能墜落制止用器具等を使用させる。
    • 関係労働者以外の者の立入りを禁止する旨の標識を設置する。
    • 監視員を配置する。
  3. 作業の必要上、取り外した囲い等は、作業終了後直ちに復旧すること。
  4. 床上の開口部の覆い上には、原則として材料などを置かないこと、またその旨を表示しておくこと。

3 手すり

事業者は、高さが2 m 以上の作業床の端で、労働者の墜落による危険のおそれがある箇所に手すり等および中機等を設けること。(安衛則第552条、第575条の6、第563条)

  • 手すり等は丈夫な構造とすること。
  • 手すり等の材料は、著しい損傷,腐食等がないものとすること。
  • 手すりの高さは 85 cm 以上とし,中機等(高さ 35 cm 以上 50 cm 以下の桟またはこれと同等以上の機能を有する設備)を設けること。
  • 物体の落下防止措置として,高さ10 cm 以上の幅木,メッシュシートもしくは防網等を設けること。ただし,作業の性質上手すり等を設けることが著しく困難な場合、または作業の必要上臨時に手すり等を取り外す場合は、防網を張り,労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等の措置を講じること。

4 巾木·地覆·車止め(工安針第5章第6節4)

  1. 巾木,地覆,車止めを手すり,柵,仮囲い設置箇所に設置すること。
  2. 巾木の高さは 10 cm 以上とし,地覆,車止めは十分な強度を有するものとし,取付,固定は確実にすること。
点検

1 作業構台の点検時期

事業者は、作業構台における作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、作業を行う箇所に設けた手すり等および中機等の取外しおよび脱落の有無について点検をし、異常を認めたときは、直ちに補修することが求められます。

また、事業者は、下記の時期に作業構台について点検を行い、異常を認めた場合には、直ちに補修することとされています。点検は、作業構台における作業を開始する前に実施します。

  1. 強風(10分間の平均風速が毎秒10m以上)、大雨(1回の降雨量が50mm以上)、大雪(1回の降雪量が25cm以上)等の悪天候の後
  2. 中震(震度4)以上の地震の後
  3. 作業構台の組立て、一部解体もしくは変更の後

2 作業構台の点検項目

作業構台の点検は、下記の事項について行うこと。

  1. 支柱の滑動および沈下の状態
  2. 支柱,梁等の損傷の有無
  3. 床材の損傷,取付けおよび掛渡しの状態
  4. 支柱,梁,筋かい等の緊結部,接続部,取付部の緩みの状態
  5. 緊結材および緊結金具の損傷および腐食の状態
  6. 水平つなぎ, 筋かい等の補強材の取付状態および取外しの有無
  7. 手すり等および中機等の取外しおよび脱落の有無

3 注文者の点検義務の充実

元請事業主等の注文者は、関係労働者(下請など)に作業構台を使用させるときは,当該 作業構台について、次の措置を講じなければならない。(安衛法第31条,安衛則第 655条の 2)

  1. 構造および材料に応じて,作業床の最大積載荷重を定め,かつ、これを労働者に周知する。
  2. 強風(10分間の平均風速が毎秒10m 以上),大雨(1回の降雨量が50 mm 以上),大雪(1 回の降雪量が 25 cm 以上)等の悪天候若しくは中震(震度4)以上の地震または作業構台 の組立て,一部解体もしくは変更の後において,作業構台における作業を行うときは, 作 業を開始する前に、前記2)の項目について点検し、異常を認めたときは直ちに補修しな ければならない。
  3. 点検を行ったときは、次の事項を記録し,足場を使用する作業を行う仕事が終了するま での間これを保存しなければならない。
    • 当該点検の結果
    • 結果に基づいて修理等の措置を講じた場合は、 当該措置の内容

足 場

高さが2m以上の箇所で作業を行う場合で、作業員が墜落する危険のおそれがあるときは、事業者は、足場を組み立てるなどの方法により作業床を設ける必要があります。ただし、床版の上など十分な広さと強度を有する場所を作業床として利用できるのであれば、足場をあらためて設置する必要はありません。

足場とは、作業員を部材の取付け、取外し、塗装、びょう打ちなどを行う作業箇所に接近させて作業させるために設ける仮設の床およびこれを支持する支柱などの構造物を指します。足場は、使用する材料によって木製足場と鋼製足場に分けられ、構造上からは支柱足場、つり足場等に分類されます。支柱足場には、本足場、一側足場、棚足場などがあります。その他、うまを利用したうま足場や、足場の脚部に車輪を備えて移動可能とした移動式足場(ローリングタワー)なども存在します。

足場関係の災害としては、墜落災害が圧倒的に多く、そのほとんどが足場の構造的な欠陥に伴うものであるため、足場を設置するにあたっては、以下の項目に留意する必要があります。

一般事項

1 足場の設置計画の届出

事業者は、つり足場、張り出し足場、およびそれ以外の足場において、高さが10m以上の構造となる足場で、組立てから解体までの期間が60日以上となる場合は、あらかじめ、その設置計画を工事の開始日の30日前までに、所轄の労働基準監督署長に届け出ることが義務付けられています。(安全衛生法第88条、安全衛生則第85条、安全衛生則別表第7)

2 足場の構造について

足場は, 丈夫な構造であること。(安衛則第 561条)

3 足場に使用する材料(安衛則第559条,第560条,第563条)

  1. 足場の材料については、著しい損傷,変形または腐食のあるものを使用しないこと。
  2. 足場に使用する木材は、強度上の著しい欠点となる割れ,虫食い,節,繊維の傾斜等がなく, かつ,木皮を取り除いたものであること。
  3. 鋼管足場に使用する鋼管および附属金具は, JIS A 8951(鋼管足場)の規格に適合したものであること。
  4. 足場に用いる仮設機材の材料,構造,強度等は,安衛則第 560条,第563条および昭和 56年労働省告示 103~105(鋼管足場用部材の規格他)号。

4 足場の最大積載荷重

  1. 事業者は、足場の構造,材料に応じて,作業床の最大積載荷重を定め,かつ、これを超えて積載しないこと。また、労働者に周知させること。(安衛則第562条)
  2. 足場の設計には, 常時作用することのない風,雪荷重,上載するものの荷重などについても考慮すること。(工安針第5章第4節2)
  3. 床材は、支点間隔,作業時の荷重に応じて計算した曲げ応力の値が,下表の値を超えないこと。(安衛則第 563条)
木材の種類許容曲げ応力 (N/cm2)
あかまつ、くろまつ、からまつ、ひば、ひのき、つが、べいまつ、針葉樹べいひ1.32
すぎ、もみ、えぞまつ、とどまつ、べいすぎ、べいつが1.03
かし1.91
くり、なら、ぶな、けやき1.47
アビトンまたはカボールをフェノール樹脂により接着した合板1.62

5 足場の組立て等の作業にかかわる業務の特別教育

事業者は、足場の組立て等の作業にかかわる業務(地上または堅固な床上での補助業務を除く)に労働者を就かせるときは、当該業務に関する安全または衛生のための特別の教育を行わなければなりません。

6 作業主任者および作業指揮者

  1. 足場の組立て等作業主任者の選任と職務(安衛則第565条、第566条)
    • 下記の作業を行う場合は、事業者は、足場の組立て等作業主任者技能講習を修了した者のうちから、「足場の組立て等作業主任者」を選任すること。
      • つり足場(ゴンドラのつり足場を除く)の組立て、解体、変更の作業。
      • 張出し足場の組立て、解体、変更の作業。
      • 高さが5m以上の構造の足場の組立て、解体、変更の作業。
    • 事業者は、足場の組立て等作業主任者に、下記の事項を行わせること。
      • 材料の欠点の有無を点検し、不良品を取り除くこと。
      • 器具、工具、要求性能墜落制止用器具および保護帽の機能を点検し、不良品を取り除くこと。
      • 作業の方法および労働者の配置を決定し、作業の進行状況を監視すること。
      • 要求性能墜落制止用器具および保護帽の使用状況を監視すること。
      • 労働者を指揮すること。(安衛法第14条)
  2. 作業指揮者の指名と職務(安衛則第529条)
    • 事業者は、高さが5m未満の構造の足場の組立て、解体、変更の作業であっても、労働者の墜落による危険のおそれがあるときは、作業指揮者を指名すること(ただし、作業主任者が選任されていない場合)。
    • 作業指揮者に直接作業を指揮させること。
    • あらかじめ、作業の方法および順序を、当該作業に従事する労働者に周知させること。

7 移動式足場の安全基準

移動式足場に労働者を乗せて移動してはなりません。(安全衛生法第28条第1項、移動式足場の安全基準に関する技術上の指針 4-2-3)

足場の組立解体作業における留意事項

1 足場の留意事項一般

つり足場(ゴンドラのつり足場を除く)、張り出し足場または高さが2m以上の構造の足場の組立て、解体または変更の作業を行うときは、事業者は、下記の措置を講じなければなりません。(安全衛生規則第564条)

  1. 組立て、解体または変更の時期、範囲および順序を関係労働者に周知させること。
  2. 組立て、解体または変更の作業を行う区域内には、関係労働者以外の者の立入りを禁止すること。
  3. 強風(10分間の平均風速が毎秒10m以上)、大雨(1回の降雨量が50mm以上)、大雪(1回の降雪量が25cm以上)等の悪天候のため、作業の実施について危険が予想されるときは、当該作業を中止すること。
  4. 足場材の緊結、取外し、受渡し等の作業にあっては、次の措置を講ずる。
    • 幅40cm以上の作業床を設けること。ただし当該作業床を設けることが困難なときはこの限りでない。
    • 要求性能墜落制止用器具を安全に取り付けるための設備等を設け、かつ、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる措置を講ずること。ただし、当該措置と同等以上の効果を有する措置を講じたときは、この限りでない。
  5. 材料、器具、工具等を上げ、または下ろすときは、つり綱、つり袋を使用すること。
  6. 足場の種類、構造、高さを各面に明示すること。(工安針第5章第4節2)
  7. 一側足場、布板一側足場および特殊な足場については、墜落・倒壊防止について十分検討すること。(工安針第5章第4節2)
  8. 足場には、必ず、壁つなぎまたは控えを設けること。壁つなぎまたは控えの間隔は、次の 値以下とする。(安衛則第569条、第570条)
    • 丸太足場
      • 垂直方向: 5.5m
      • 水平方向: 7.5m
    • 鋼管足場(単管足場)
      • 垂直方向: 5m
      • 水平方向: 5.5m
    • 鋼管足場(枠組足場)
      • 垂直方向: 9m
      • 水平方向: 8m
  9. 要求性能墜落制止用器具等を使用するときは、要求性能墜落制止用器具等を安全に取り付けるための設備等を設けること。また、要求性能墜落制止用器具等を使用するときは、要求性能墜落制止用器具等およびその取付け設備等の異常の有無について、随時点検すること。(安衛則第521条)
  10. 高さが2m以上の箇所で作業を行うときは、作業を安全に行うために必要な照度を保持すること。(安衛則第523条)
  11. 架空電路に近接して足場を設けるときは、電路の移設または電路に絶縁用防護具を装着すること。(安衛則第349条、第570条)

2 鋼管による本足場についての事業者の留意事項

  1. 足場の脚部には, 足場の滑動または沈下を防止するため,ベース金具を使用し,かつ, 敷板,敷角を用い,根がらみを設ける等の措置を講ずること。(安衛則第570条)
  2. 鋼管の接続部または交差部は,これに適合した付属金具を使用して確実に接続し,または緊結すること。(安衛則第570条)
  3. 筋かいを入れ,補強すること。(安衛則第570条)
  4. 単管を使用する場合には、特に下記の点に留意する。
    • 建地の間隔はけた行方向については 1.85 m 以下,梁間方向については 1.5 m 以下とすること。(安衛則第571条)
    • 地上第1の布は、地上2 m 以下の位置に設けること。ただし,作業の必要上この規定により難い部分がある場合は、2本組等により当該部分を補強すること。(安衛則第571条)
    • 建地の最高部から測って31 m を超える部分の建地は、鋼管を2本組とすること。ただし,建地の下端に作用する設計荷重(足場の重量に相当する荷重に,作業床の最大積載荷重を加えた荷重をいう)が当該建地の最大使用荷重(当該建地の破壊に至る荷重の2分の1以下の荷重をいう)を超えないときは、この限りでない。(安衛則第571条)
    • 単管を用いた一側足場,本足場または張出し足場における,壁つなぎまたは控えの設置間隔は,垂直方向5 m 以下,水平方向5.5 m 以下とすること。(安衛則第570条)
    • 壁つなぎ又は控えを設け,引張材と圧縮材とで構成されているものであるときは,引張材と圧縮材との間隔は,1m以内とすること。(安衛則第570条)
    • 建地間の積載荷重は, 400 kg を限度とすること。(安衛則第571条)
  5. 枠組足場については、事業者は、下記の点に留意する。
    • 梁枠および持送り枠は、水平筋かいその他で横振れを防ぐ措置をとること。(安衛則第571条)
    • 高さ20mを超える場合および重量物の積載を伴う作業を行う場合には、主枠は、高さ2m以下のものとし、かっ、主枠聞の間隔は1.85m以下とすること。(安衛則第571条)
    • 枠組足場を用いた本足場または張出し足場における、壁つなぎまたは控えの設置間隔は、垂直方向9m以下、水平方向8m以下とすること。(安衛則第570条)
    • 最上層および5層以内ごとに水平材を設けること。(安衛則第571条)

3 丸太による本足場についての事業者の留意事項(安衛則第 569条)

  1. 建地の間隔は2.5m以下とし、地上第1の布は3m以下の位置に設けること。
  2. 建地の脚部は、滑動や沈下を防止するため建地の根元を埋め込み、根がらみを設け、皿板を使用するなどの措置を講ずること。
  3. 建地の継手が重合せ継手の場合には、接続部において1m以上を重ねて2箇所以上において縛ること。
  4. 建地の継手が突合せ継手の場合には、2本組みの建地とし、または1.8m以上の添木を用いて4箇所以上において縛ること。
  5. 建地、布、腕木等の接続部および交差部は、鉄線などの丈夫な材料で堅固に縛ること。
  6. 筋かいで補強すること。
  7. 丸太を用いた一側足場、本足場または張出し足場における、壁つなぎまたは控えの設置間隔は、垂直方向5.5m以下、水平方向7.5m以下とすること。

つり足場に関する留意事項

つり足場とは、ワイヤロープやチェーンなどで上部支点から作業床をつり下げた構造の足場を指します。橋梁工事で使用される足場も、つり足場の一種です。つり足場の中でも、専用の巻上げ装置によって作業床が昇降するものは、ゴンドラとして扱われます。

つり足場を使用する事業者は、以下の点に留意する必要があります(労働安全衛生法第574条)

  1. つりワイヤロープ、つり鋼線、つり鋼帯、つり鎖、つり繊維索は、著しい形くずれもしくは腐食のないものを使用すること。
  2. つりワイヤロープは、下記のものは使用しないこと。
    • ワイヤロープは、1よりの間で素線の数の10%以上の素線が切断しているもの。
    • 直径の減少が、公称径の7%を超えるもの。
    • キンクしているもの(図5.18)。
    • 著しい形くずれまたは腐食があるもの。
  3. つり鎖は、下記のものは使用しないこと。
    • 鎖の伸びが、製造時の長さの5%を超えたもの。
    • リンクの断面の直径の減少が、製造時の断面の直径の10%を超えたもの。
    • 亀裂のあるもの。
  4. つり材は、一端を足場桁、スターラップ等に、他端を突起、アンカーボルト、建築物の梁等にそれぞれ確実に取り付けること。
  5. つり足場の作業床については、下記のとおりとする。
    • 作業床の幅は40cm以上とし、隙間はないようにすること。
    • 床材は、転位、脱落しないように、足場桁、スターラップ等に取り付けること。
  6. 動揺、転位を防止するため、足場桁、スターラップ、作業床等に控えを設けること。
  7. つり足場の上で、脚立、はしご等を用いて作業をしてはならない(安衛則第575条)。

足場における作業床

  1. 足場(一側足場を除く)の高さが2m以上の作業場所には、事業者は、下記の要件を満たす作業床を設けなければならない(安衛則第563条)。
    • 幅: 40cm以上
    • 床材間の隙間: 3cm以下
    • 床材と建地との隙間: 12cm未満
  2. 事業者は、墜落による危険のおそれのある箇所については、次の設備を設けること。
    • 枠組足場の場合
      • 交差筋かい+栈(高さ15cm以上40cm以下の位置)
      • 交差筋かい+高さ15cm以上の幅木等
      • 手すり枠
    • 枠組足場以外の足場の場合
      • 手すり等(高さ85cm以上)+中桟等(高さ35cm以上50cm以下の桟またはこれと同等の機能を有する設備)(安衛則第552条)
    • 作業の性質上、足場用墜落防止設備を設けることが著しく困難な場合または作業の必要上臨時に足場用墜落防止設備を取り外す場合において、次の措置を講じたときは適用しない。
      • 要求性能墜落制止用器具を安全に取り付けるための設備等を設け、かつ、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる措置またはこれと同等以上の効果を有する措置を講ずること。
      • 当該箇所には、関係労働者以外の労働者を立ち入らせないこと。
  3. 腕木、布、梁、脚立その他作業床の支持物は、これにかかる荷重によって破壊するおそれがないものであること。
  4. 床材は転位し、または脱落しないように2以上の支持物に取り付けること。3点支持の場合でも、原則として腕木に固定する(つり足場に関しては、前記(3)5ロを参照)。
  5. 物体の落下防止措置として、高さ10cm以上の幅木、メッシュシートもしくは防網等を設けること。
  6. 塗装、鋲打ち、はつり等で、足場板を作業に応じて移動させる場合は、下記による。
    • 幅30cm以上、厚さ6cm以上、長さ4m以上
      • 足場板の支点からの突出部の長さは、10cm以上で、かつ、足場板の長さの18分の1以下とすること。
      • 足場板を長手方向に重ねるときは支点上で重ね、その重ねた部分の長さは20cm以上とすること。
    • 幅20cm以上、厚さ3.5cm以上、長さ3.6m以上
      • 上記の規定を遵守するとともに、当該足場板は3以上の支持物に掛け渡すこと。

点検

1 足場の点検時期

事業者は、つり足場以外の足場で作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、作業を行う箇所に設けた足場用墜落防止設備の取外しおよび脱落の有無について点検をし、異常を認めたときは、直ちに補修すること。(安衛則第 567条) つり足場で作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、足場に係る墜落防止設備および落下防止設備の取外しの有無等の点検をし、異常を認めたときは、直ちに補修すること。(安衛則第 568条)

足場についての点検は、下記の時期に行い、異常を認めたときは、直ちに補修をすること。(安衛則第 567 条)

  1. 強風(10分間の平均風速が毎秒10m以上)、大雨(1回の降雨量が50mm以上)、大雪(1回の降雪量が25cm以上)の悪天候の後
  2. 中震(震度4)以上の地震の後
  3. 足場の組立て、一部解体もしくは変更の後
2 足場の点検項目

前記1~3の場合における足場の点検では、次の事項について行うこと。

  1. 床材の損傷、取付けおよび掛渡しの状態。
  2. 建地、布、腕木等の緊結部、接続部および取付け部の緩みの状態。
  3. 緊結材および緊結金具の損傷および腐食の状態。
  4. 足場用墜落防止設備の取外しおよび脱落の有無。
  5. 幅木等の取付け状態および取外しの有無。
  6. 脚部の沈下および滑動の状態。
  7. 筋かい、控え、壁つなぎ等の補強材の取付けおよび取外しの有無。
  8. 建地、布および腕木の損傷の有無。
  9. 突りょう(突ばり)とつり索(つりワイヤロープ) との取り付け部の状態および、つり装置の歯止めの機能。
3 つり足場の点検項目

前記2の1~5,7および9の事項について点検し、異常を認めたときは、直ちに補修する。(安衛則第 568条)

4 注文者の点検義務の充実

元請事業主等の注文者は、関係労働者(下請など)に足場を使用させるときは当該足場について、次の措置を講じなければならない。(安衛法第31条、安衛則第 655条の2)

  1. 構造および材料に応じて、作業床の最大積載荷重を定め、かつ、労働者に周知する。
  2. 悪天候若しくは地震または足場の組立て、一部解体、変更の後において、足場における作業を行うときは、作業を開始する前に、前記2の項目について点検し、異常を認めたときは直ちに補修しなければならない。
  3. 点検を行ったときは、次の事項を記録し、足場を使用する作業を行う仕事が終了するまでの間これを保存しなければならない。
    • 当該点検の結果
    • 結果に基づいて修理等の措置を講じた場合は、該措置の内容

土留め支保工

安全かつ確実に地盤を掘削する場合、掘削の深さや広さ、掘削後の存置期間、土質の条件、周辺の環境条件を適切に検討し、土止め支保工の設置や掘削工法を決定する必要があります。

土止め支保工の設計に検討すべき土圧は、土質、土止め壁の変形の形状、変位の大きさ、施工方法などによって様々に異なり、一律に定めるのは困難ですが、各企業体、関係機関等では工事中の実測値等をもとに経験的な値を定めています。

また、土止め支保工材の許容応力についても、現在統一されたものはありませんが、発注機関の多くはそれぞれ基準を定めています。

仮設物の許容応力は、一般に、恒久物と比較してかなり大きな値を採用していますが、災害防止の観点から、安易に許容応力を設定することに問題があります。特に、大規模または重要な土止め支保工の設計にあたっては、恒久物と同等の配慮が必要です。

なお、安衛則に、型枠支保工の材料の許容応力的値が定められているので、土止め支保工についても準用するのが望ましいでしょう。

一般事項

1) 土止め支保工の構造
  1. 地盤の掘削においては、掘削の深さ,期間,地盤性状,敷地および周辺の環境条件等を 勘案し、土止めの形式および掘削方法を決める。(公災防第 47)
  2. 事業者は、 土止め支保工の構造については、設置箇所の地山に係る形状,地質,地層, 亀裂,含水,湧水,凍結および埋設物等の状態に応じた堅固なものとしなければならない。 (安衛則第 369条)
  3. 土止め支保工は、変形や位置ずれによって,安全性が損なわれないよう十分注意すると ともに,十分な強度を有すること。(工安針第5章第2節1)
  4. 事業者は、土止·矢板が,根入れ,応力,変位に対して安全であるほか,土質に応じて ボイリング,ヒービング等に対する検討を行い、 これらに対しても安全であることを確認 すること。(工安針第5章第2節1)
  5. 掘削作業を行う場合は、掘削箇所ならびにその周囲の状況を考慮し,掘削の深さ,土質, 地下水位,作用する土圧等を十分に検討したうえで、必要に応じて土圧計等の計測機器の 設置を含め,土止め支保工の安全管理計画をたて,これを実施すること。(工安針第5章 第2節 1)
2) 土止め支保工の設計条件

土止め杭(親杭)または鋼矢板のつりあい深さの計算は、掘削完了時および最下段の切ば りの設置直前の両者について行い、大きい方の値(根入れ長)をとる。

3) 土止め支保工に使用する材料

土止め支保工の材料は、著しい損傷(ひび割れ),変形または腐食があるものを使用しな いこと、また、事前に十分点検確認を行うこと。(安衛則第368条,工安針第5章第2節4)

4) 土止め支保工の組立図について(安衛則第370条)
  1. 事業者は, 土止め支保工を組み立てるときは、あらかじめ組立図を作成し、かつ、その 組立図に基づいて組み立てること。
  2. 組立図には、 矢板,杭,背板(編注:土止め板),腹起し,切ばり等の部材における下 記の事項が明示されていること。
    • 配置,寸法,材質
    • 取付けの時期,順序

なお, 計画された組立図と異なる施工を行う場合は、 入念なチェックを行い, その理由 等を整理し、記録しておくこと。(工安針第5章第2節3)

5) 土止め支保工作業主任者の選任と職務
  1. 事業者は, 土止め支保工の切ばり,または腹起しの取付けまたは取外しの作業について は、 地山の掘削および土止め支保工作業主任者技能講習を修了した者のうちから,「土止 め支保工作業主任者」を選任すること。(安衛則第374条)
  2. 事業者は、土止め支保工作業主任者に、下記の事項を行わせること。(安衛則第 375条)
    • 作業方法を決定し,作業を直接指揮すること。
    • 要求性能墜落制止用器具等および保護帽の使用状況を監視すること。
    • 材料の欠点の有無および器具,工具を点検し、不良品を取り除くこと。

(2) 部材の取付け作業時の安全管理

1) 部材の取付け一般(安衛則第371条)

  1. 切ばりおよび腹起しは脱落防止のため、矢板、杭などに確実に取り付けること。
  2. 圧縮材(火打ちを除く)の継手は突合せ継手とし、部材全体がひとつの直線となるようにすること。(工安針第5章第2節6)
  3. 切ばりまたは火打ちの接続部および切ばりと切ばりの交差部は、当て板をあててボルトにより緊結し、溶接により接合するなどの方法により堅固なものとすること。
  4. 中間杭(中間支持柱)を備えた土止め支保工の場合は、切ばりを中間杭に確実に取り付けること。
  5. 切ばりを建築物の柱など部材以外のものにより支持する場合には、この支持物はこれにかかる荷重に耐えうるものであること。
  6. 土止め支保工の材料を取り付けるまたは取り外すときは、事業者は下記の措置を講ずること。(安衛則第372条)
    • 切ばりまたは腹起しの取付け、取外しの作業を行う箇所には、関係労働者以外の労働者が立ち入ることを禁止する。
    • 切ばりまたは腹起し等の材料、器具または工具の上げ下ろし時は、つり綱、つり袋などを労働者に使用させる。

2) 腹起しの取付け

腹起しは、土止め壁からの荷重を均等に受け、これを切ばり等に平均して伝達させる。腹起しに加わる力としては、曲げモーメントおよびせん断力がある。腹起しは、これらについて検討が必要となる。

  1. 腹起しは、土止め杭または鋼矢板等と十分密着するように設置すること。
  2. 腹起しと土止め杭または鋼矢板等との間にすき間が生じた時は、パッキング材等によって土止めからの荷重を均等に受けられるようにすること。

3) 切ばりの取付け

  1. 切ばりは、腹起しと腹起しの間に接続し、ジャッキ等で堅固に締め付けること。
  2. 切ばりは、ゆるみ等が生じても落下しないよう、中間杭(中間支持柱)にボルト等によって支持させること。
  3. 切ばりに、腹起しからくる土圧以外の荷重が加わるおそれのある場合、または荷重をかける必要がある場合は、それらの荷重に対して必要な補強措置を講ずること。
  4. 切ばりは、座屈のおそれがないよう十分な断面と剛性を有するものを使用すること。
  5. 切ばりは、原則として継手を設けないこと。ただし、掘削幅が大きい等やむを得ない場合は、下記の措置を講ずることにより、継手を設けることができる。
    • 継手位置は中間杭付近に設けるとともに、継手部にはジョイントプレート等を取り付けて補強する。
    • 切ばりの継手は、十分安全な強度を持つ突合せ継手とし、座屈に対しては、水平継材・垂直継材・中間杭(中間支持柱)を介して、切ばり相互を緊結固定すること。

4) 土止め工内部の掘削等、作業時の留意事項

  1. 土止め支保工は、施工計画に沿って所定の部材の取付けが完了しないうちは、次の段階の掘削を行わないこと。(工安針第5章第2節2)
  2. 新たな施工段階に進む前には、必要部材が定められた位置に安全に取り付けられていることを確認すること。(工安針第5章第2節2)
  3. 土止め板(背板)は、掘削面との間に隙間のないように、掘削後速やかにはめ込むこと。隙間ができたときは、裏込め、くさび等で隙間のないように固定すること。(工安針第5章第2節2)
  4. 道路において、土止め杭(親杭)、鋼矢板等を打ち込むため、これに先行して布掘りまたはつぼ掘りを行う場合、その作業範囲または深さは、土止め杭、鋼矢板等の打込み施工の最小範囲内にとどめ、打設後は、速やかに埋め戻し、念入りに締め固めて従前の機能を維持しうるよう表面を仕上げておくこと。(工安針第5章第2節2)
  5. 土止め支保工内の掘削には、適宜通路を設けることとし、切ばり、腹起し等の土止め支保工部材上の通行を禁止すること。(工安針第2章第5節3)

(3) 土止め支保工の存置期間中の安全管理

  1. 土止め工の存置期間中は、点検員を配置して定期的に点検を行い、土止め用部材の変形、緊結部の緩み、地下水位や周辺地盤の変化等に異常を発見した場合は、直ちに作業員全員を避難させるとともに、事故防止対策に万全を期すこと。(工安針第5章第2節2)
  2. 作業中は、指名された点検者が常時点検を行い、異常を認めた時は直ちに作業員全員を避難させ、責任者に連絡し、必要な措置を講じること。(工安針第5章第2節5)
  3. 土止め支保工の点検には、必要に応じて安全のための管理基準を定め、変位等を観測し記録すること。(工安針第5章第2節9)
  4. 土止め工の存置期間中は、定期的に地下水位や地盤の変化を観測、記録し、地盤の隆起、沈下等の異常が認められたときは、作業を中止し埋設物管理者等に連絡して保全の措置を講じるとともに、その旨を発注者その他の関係者にも連絡すること。(工安針第5章第2節2、公災防第51)
  5. 土止め工の存置期間中は、必要に応じて測定計器を使用し、土止め工に作用する土圧、変位を測定すること。(工安針第5章第2節2、公災防第51)

(4) 点検

事業者は、下記1の時期に2の事項を点検し、異常を認めたときは、直ちに土止め支保工を補強、または補修すること。(安衛則第373条)

  1. 土止め支保工の点検時期
    • 設置後7日を超えない期間ごと
    • 中震(震度4)以上の地震の後
    • 大雨(1回の降雨量が80mm以上)等により地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後
  2. 土止め支保工の点検項目
    • 矢板、背板(土止め板)、切ばり、腹起し等の部材の損傷、変形、腐食、変位および脱落の有無および状態
    • 切ばりの緊結の度合
    • 部材の接続部、取付け部および交差部の状態
    • 矢板、背板等の背面の空隙の状態(工安針第5章第2節9)

型枠支保工

型枠支保工とは、橋梁、ビル等の建設物におけるスラブ、けた及び梁などを構築するためのコンクリート打設用型枠を支持する部分で、支柱、梁、筋かい等の部材によって構成される仮設設備をいいます(安衛令第6条第14号)。

型枠支保工には、コンクリートの打設の際大きな荷重がかかるため、その構造は、これに安全確実に耐えうる堅固なものでなければなりません。

型枠支保工に関する災害では、構造的欠陥に基づく倒壊が多く、この場合、一時に多数の作業員が被災する重大災害となります。このため、安衛則では、その材料、構造、組立作業等について詳細な規制がなされています。また、規模の大きな型枠支保工にあっては、あらかじめ設置計画の届出が定められています。

(1) 設置計画の届出

事業者は、支柱の高さが3.5m以上である型枠支保工にあっては、あらかじめ、その計画を工事の開始日の30日前までに、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません(安衛法第88条、安衛則第85条、安衛則別表第7)。

(2) 型枠支保工に使用する材料

  1. 使用する材料は、著しい損傷、変形または腐食がないものであること。(安衛則第237条)
  2. 鋼材は、JISに適合するものであること。(安衛則第238条)
  3. パイプサポート、補助サポートおよびウイングサポートについては、厚生労働大臣の定める構造規格に適合するものであること。(安衛令第13条第3項第十号)

(3) 型枠支保工の構造および設計(安衛則第240条)

  1. 型枠支保工は、型枠の形状、コンクリート打設の方法等に応じた堅固な構造であること。(安衛則第239条)
  2. コンクリートおよび型枠の重量と支柱などの自重のほかに、コンクリート打設時における作業荷重として、少なくとも150kg/m2以上加えたものを設計荷重とすること。 なお、パイプサポート、鋼管枠、組立鋼柱、トラス状に組み立てられた梁など組み合された構造のものである場合の設計荷重は、一般に認められた簡便な計算方法がないため、製造者が指定する最大使用荷重を超えない範囲で定める。
  3. 鋼管枠を支柱として用いる型枠支保工は、その型枠支保工の上端に設計荷重の100分の2.5に相当する水平荷重が作用しても安全な構造とすること。
  4. 鋼管枠以外のものを支柱として用いる型枠支保工は、その型枠支保工の上端に設計荷重の100分の5に相当する水平荷重が作用しても安全な構造とすること。

(4) 型枠支保工の組立図(安衛則第240条)

  1. 事業者は、型枠支保工を組み立てるときは,組立図を作成し、その組立図に従って組み 立てること。
  2. 組立図には、支柱,梁,つなぎ,筋かいなどの部材の配置,接合の方法および寸法が示されていること。
  3. 設計の段階より,その安全性をチェックすること。

(5) 作業主任者の選任と職務

  1. 事業者は、型枠支保工の組立てまたは解体の作業については、型枠支保工組立て等作業主任者技能講習を修了した者の中から「型枠支保工組立て等作業主任者」を選任すること。(安衛則第246条)
  2. 事業者は、型枠支保工組立て等作業主任者に、下記の事項を行わせること。(安衛則第247条)
    • 作業の方法を決定し、作業を直接指揮すること。
    • 材料の欠点の有無ならびに器具、工具を点検し、不良品を取り除くこと。
    • 作業中、要求性能墜落制止用器具等および保護帽の使用状況を監視すること。

(6) 型枠支保工についての措置

1) 留意事項一般

  1. 事業者は、敷角の使用,コンクリートの打設,杭の打込み等により,支柱の沈下を防止 するための措置を講ずること。(安衛則第242条第一号)
  2. 事業者は,支柱の脚部の固定,根がらみの取付け等,支柱の脚部の滑動を防止するため の措置を講ずること。(安衛則第242条第二号)
  3. 支柱の継手は,突合せ継手または差込み継手とすること。(安衛則第 242条第三号)
  4. 鋼材と鋼材との接続部および交差部は,ボルト,クランプなどの金具を用いて緊結する こと。(安衛則第 242条第四号)
  5. 型枠が曲面のものであるときは、控えを取り付けたりして,型枠の浮き上りを防止する こと。(安衛則第242条第五号)
  6. 支柱は大引きの中央に取り付ける等,偏心荷重がかからないようにすること。(工安針 第9章第3 節6)
  7. 事業者は、型枠支保工の組立てまたは解体の作業を行う区域には、関係労働者以外の労 働者の立入りを禁止すること。(安衛則第 245条第一号)
  8. 事業者は、強風(10分間の平均風速が毎秒10 m以上),大雨(1回の降雨量が 50 mm以上), 大雪(1回の降雪量が 25 cm 以上)等の悪天候のため、作業の実施について危険が予想さ れるときは、労働者を従事させないこと。(安衛則第 245条第二号)
  9. 材料,器具または工具を上げるまたは下ろすときは,つり綱,つり袋を使用させること。 (安衛則第 245条第三号)
  10. 取り外した型枠は,高所から投げたり,落下させたりせず,ロープ等を使用して損傷を 与えないよう下ろすこと。(工安針第9章第3節7)

2) 鋼管(パイプサポートを除く)支柱の使用時

鋼管を支柱として用いる場合には、 この鋼管の部分について,事業者は、下記の定めによること。(安衛則第242条第六号)

  1. 高さ2m 以内ごとに2方向に水平つなぎを設け、かつ,水平つなぎの変位を防止すること。
  2. 梁または大引きを上端に乗せる場合には、この上端に鋼製の端板を取り付け, これを梁 または大引きに固定すること。

3) パイプサポートの使用時

パイプサポートを支柱として用いる場合には、このパイプサポートの部分については,事 業者は、下記の定めによること。(安衛則第242条第七号)

  1. パイプサポートを3本以上継いで用いないこと。
  2. パイプサポートを継いで用いる場合には,4個以上のボルトまたは専用の金具を用いること。
  3. 高さが 3.5 m を超える場合には,高さ2m 以内ごとに2方向に水平つなぎを設け,かつ, 水平つなぎの変位を防止すること。

4) 鋼管枠の使用時

鋼管枠を支柱として用いる場合には、 この鋼管枠の部分について,事業者は、下記の定めによること。(安衛則第242条第八号)