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施工計画

施工計画の概説

施工計画の目的

施工計画の目的は、設計図書に基づき、施工手段を効率的に組み合わせて、適切な品質の目的構造物を、環境保全を図りつつ、最小の価格で工期内に安全に完成させることにあります。

施工計画は、施工の安全性を前提として工事の品質、経済性および工期の確保という3つの条件の調和を保ちながら、施工方法、労働力、資材、資金など利用できるあらゆる生産手段を選定し、これらを活用するために最適な計画を立て、施工に移すための具体的方法を決める作業です。

本章で用いる用語を確認しておきます。

契約図書

契約図書は、契約書および設計図書を指します。

契約書のひな形として、「公共工事標準請負契約約款」が中央建設業審議会から発表されています。

設計図書

設計図書は、公共土木工事において、仕様書、契約図面(図面)、現場説明書、現場説明に対する質問回答書および工事数量総括表(「土木工事共通仕様書」による)を指します。

仕様書

仕様書には、共通仕様書と特記仕様書があります。

  • 共通仕様書
    • 共通仕様書は、各建設作業の順序、使用材料の品質、数量、仕上げの程度、施工方法など、工事を施工する際に必要な技術的要求や工事内容を定型的に盛り込んだものです。公共土木工事では、国土交通省が作成した「土木工事共通仕様書」が広く準用されています。
  • 特記仕様書
    • 特記仕様書は、共通仕様書を補足し、当該工事の施工に関して詳細または固有の技術的要求を定める図書です。

参考までに、国土交通省と地方自治体の共通仕様書のリンクを以下に示します。

施工計画作成の手順

施工計画を作成する場合の一般的な手順を流れ図で表したものが、下図です。

その大まかな作成手順は次のとおりとなります。

事前調査の実施

主要な工種について、施工方法の概略や技術的検討、経済性の比較を行います。

基本計画の作成

主要な工種について、施工方法の概略や技術的検討、経済性の比較を行います。

詳細計画の作成

  1. 基本計画に基づき、機械の選定や人員配置、作業量、工程などを決定します。
  2. 仮設備の規模や配置などを決めます。
  3. 工種別詳細工程を立案します。
  4. 工程に基づき、労務や資材、機械の調達・使用計画を立てます。
  5. 工事費の積算を行います。

管理計画の作成

上記の計画を確実に実行するために、現場組織や配員計画、資金計画、安全衛生計画、実行予算などの諸計画を策定します。

施工計画作成時の検討課題等

設計図書を発注者から受け取った場合、通常、目的構造物の形状、寸法、品質などが示されていますが、その構築方法に関してはほとんど指示されていないことが一般的です。また、施工用仮設備工事については、特に重要なものは仕様書で一部規定されたり、あるいは発注者の承認を得るよう定められている場合がありますが、それ以外は施工者に任されることが多いです。したがって、施工者は工事を実施する手段や方法について、自身の技術と経験を最大限に活用して検討し、決定しなければなりません。

施工計画を作成する際には、さまざまな検討事項がありますが、特に注意深く確認または調査・検討する必要がある事項は次のとおりです。

  1. 発注者より指示された契約条件(契約書、設計図書など)
  2. 現場の工事条件
  3. 全体工程表
  4. 施工法と施工順序
  5. 施工用機械設備の選定
  6. 仮設備の設計と配置計画

1や2の事前調査は、施工計画の検討全体の前提条件となるため、特に念入りに確認する必要があります。

施工計画作成時の留意点

施工計画の作成にあたって留意すべき基本的な事項は、以下の通りです。

  1. 発注者の要求品質を確保するとともに、安全を最優先にした施工計画とすること。
  2. 施工計画の決定にあたっては、従来の経験のみで満足せず、常に改良を試み、新しい工法、新しい技術に積極的に取り組む心構えを持つこと。
  3. 過去の実績や経験だけでなく、新しい理論や新工法を総合的に検討して、現場に最も合致した施工計画を大局的に判断すること。
  4. 施工計画の検討にあたっては、関係する現場技術者に限定せず、できるだけ会社内の他組織の協力も得て、全社的な高度の技術水準を活用すること。
  5. 手持資材や労働力および機械類の確保状況などによっては、発注者が設定した工期が必ずしも最適工期になるとは限らないので、契約工期内に収まり経済的となる工程を検討すること。
  6. 施工計画を決定する場合は、1つの計画のみでなくいくつかの代案を作り、経済性、施工性、安全性などの長所短所を比較検討して、最も適した計画を採用すること。

施工計画書

施工計画書の作成

「土木工事共通仕様書」(以下、「共通仕様書」と呼ぶ。)第1編1-1-1-4には、次のように規定されています。「受注者は、工事着手前に工事目的物を完成するために必要な手順や工法等についての施工計画書を監督職員に提出しなければならない。」この規定により、以下の事項の記載が求められます。

  1. 工事概要
  2. 計画工程表
  3. 現場組織表
  4. 指定機械
  5. 主要船舶·機械
  6. 主要資材
  7. 施工方法(主要機械、仮設備計画、工事用地等を含む)
  8. 施工管理計画
  9. 安全管理
  10. 緊急時の体制および対応
  11. 交通管理
  12. 環境対策
  13. 現場作業環境の整備
  14. 再生資源の利用の促進と建設副産物の適正処理方法
  15. その他

これらのうち、契約図書に指定されている事項について作成し、発注者の監督職員に提出する必要があります。

施工計画書の内容および留意点

施工計画書の各項目の内容および留意点については、各地方整備局から「土木工事書類作成の手引き」が公表されていますので、その要点を以下に述べます。実際には、各発注者が定める記載要領に従う必要がありますが、以下の内容は標準的なものと考えてください。

工事概要

工事概要については、工事名、工事場所、工期、請負代金、発注者連絡先、受注者連絡先を記載します。また、工事内容については、工事数量総括表に基づいて、工種、種別、数量などを記載します。設計図書との齟齬が生じないように留意します。

計画工程表

各工程(部分工事)の始まりと終わりがわかるネットワーク式工程表やバーチャートなどを作成します。作成にあたっては、以下の点に留意します。

  1. 降雨、気温等によって工期に影響を受ける工程については、過去のデータ等に基づいて、計画に反映させる。
  2. 各工種ごとの工期が、施工量や施工時期に対して無理のないこと。
  3. 契約図書の工程表と整合がとれていること。
現場組織表

現場組織表は、現場における組織の編成および命令系統ならびに業務分担がわかるように記載します。また、担当技術者や専門技術者を置く工事についてもそれらを明示します(図-2)。

作成にあたっては、組織の編成および業務分担(責任と権限)、指揮命令系統が明確であることに留意します。また、下請総額に対して主任技術者または監理技術者の選択を適切に行うよう注意します。

指定機械

設計図書で指定されている機械(騒音振動、排ガス規制、標準操作等)について、その使用計画を記載します。

主要船舶·機械

工事に使用する船舶や機械で、設計図書で指定されている機械(騒音振動、排ガス規制、標準操作等)以外の主要なものの使用計画を記載します。

特殊車両通行許可申請手続きなど、運搬方法について留意する必要があります。

主要資材

指定材料および主要資材、また品質確認の方法(材料試験方法、品質証明書等)および材料納入時期等について記載します。

特に資材納入時期と工程の整合、特殊車両通行許可申請の要否について留意します。

施工方法

「主要な工種」ごとの作業フロー

該当工種に関する作業フローを作成し、各作業段階における以下の事項について記載します。

  1. 施工実施上の留意事項および施工方法
    • 工事箇所の作業環境(周辺の土地利用状況、自然環境、近接状況等)や主要な工種の施工実施時期(降雨時期、出水·渇水時期等を考慮)等。
    • これを受けての施工実施上の留意事項および施工方法の要点、制約条件(施工時期、作業時間、交通規制、自然保護等)、関係機関との調整事項等。
    • 準備工として工事に関する基準点、地下埋設物、地上障害物に関する防護方法。
  2. 使用機械
    • 該当工種における、使用予定機械。
  3. 工事全体に共通する仮設備の構造、配置計画等
    • 工事全体に共通する仮設備の構造、配置計画等について位置図、概要図等を用いて具体的に記載する。
    • 足場·支保工等については、安全確認のための応力計算等の検討結果を添付する。
  4. 段階確認·品質証明の時期内容
    • 段階確認の時期内容と、品質証明員による品質証明時期の内容等。
  5. その他
    • 仕様書において示された、承諾を要する事項および施工計画書に記載すべき事項が網羅されているか留意する。
    • また、隣接工区との関連や技術提案事項があれば、具体的な施工管理上の対応について記載する。

各工種の用語は、設計図書や数量総括表の表記に従い、上記にあるような契約書、設計図書が求める必要事項を記入します。

施工管理計画

施工管理計画については、設計図書「土木工事施工管理基準及び規格値(案)」「写真管理基準(案)」等に基づき、その管理方法について記載します。

  1. 工程管理
    • 工程管理表として、ネットワーク式工程表やバーチャートなどを使用します。工事遅延のリスクと遅延に対する対策についても必要に応じて記述します。
  2. 品質管理
    • その工事で行う品質管理の「試験項目」(試験)について、「土木工事施工管理基準及び規格値(案)」等に沿って、品質管理計画表を作成します。
    • 品質管理計画の作成にあたっては、必要な工種(種別)の記載、試験方法の妥当性·規格値、試験頻度の過不足、協議·承諾事項の有無について留意します。
  3. 出来形管理
    • 出来形管理の「測定項目」について、「土木工事施工管理基準及び規格値(案)」等に沿って、出来形管理計画表を作成します。作成にあたっては、必要な工種の設定、測定基準(頻度)の妥当性に留意する必要があります。
  4. 写真管理
    • 工事写真については、「写真管理基準(案)」等により、写真の着目点、目的、表現が明確になるように撮影し編集します。写真管理計画作成にあたっては、品質や出来形の確認のために必要で、工程の終了後や竣工後に不可視となる部分の撮影を漏らさないよう明記します。また、撮影頻度や整理条件など、基準に適合するよう留意します。
  5. 段階確認
    • 設計図書で定められた段階確認項目についての計画を記載します。記載にあたり、施工フローとの整合に留意します。
  6. 品質証明
    • 品質証明員等が行う社内検査項目、検査方法、検査段階について記載します。記載にあたり、施工フローとの整合に留意します。
安全管理

安全管理に必要なそれぞれの責任者や組織づくり、安全管理についての活動方針について記載します。

  1. 工事安全管理対策
    1. 安全管理組織
    2. 危険物を使用する場合は、保管および取扱いについて
    3. その他必要事項
  2. 第三者施設への安全対策
    1. 家屋、商店、鉄道、道路、ガス、電気、電話、水道等の第三者施設と近接して工事を行う場合の対策
    2. 近傍の通行車両、歩行者への対策
  3. 工事安全教育および訓練についての活動計画
    • 安全管理活動として実施項目、参加予定者、開催頻度等
  4. 病院等の緊急時の連絡先、位置
    • 労働安全衛生法、建設工事公衆災害防止対策要綱等の法令等への準拠に留意します。安全責任者や安全巡視者の施工者との雇用関係についても確認します。
    • 関連する主な法令等は以下の通りです。
      • 労働安全衛生法および関連規則
      • 建設工事公衆災害防止対策要綱
      • 土木工事安全施工技術指針
      • 建設機械施工安全技術指針
      • 建設機械施工安全マニュアル
      • 建設業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン
    • 労働安全衛生法で定められた責任者に応じて、各々記載します。
    • 大規模(労働者常時50人以上、トンネル、圧気、特定の橋梁は常時30人以上)な下請混在の現場においては、統括安全衛生責任者の下に、元方安全衛生管理者、下請各社の安全衛生責任者の専任や協議会など、元請(特定元方事業者)を中心とした組織を構築する必要があります。
緊急時の体制および対応

大雨、強風等の異常気象時または地震発生時の、災害防災および災害が発生した場合に対する、災害対策組織および連絡系統を記載します。

交通管理

工事に伴う交通処理および交通対策については、共通仕様書第1編1-1-33(交通安全管理)に基づいて記載します。

迂回路を設ける場合には、迂回路の図面および安全施設、案内標識の配置図ならびに交通整理員等の配置について記載します。

また、具体的な保安施設配置計画、支道および出入口対策、主要機械および主要材料の搬入・搬出経路、積載超過運搬防止対策等についても記載します。

環境対策(排ガス対策型建設機械および低騒音·低振動型建設機械を除く)

工事現場地域の生活環境の保全と、円滑な工事施工を図ることを目的として、環境保全対策関係法令に準拠して、次のような項目の対策計画を記載します。

  1. 騒音、振動対策
  2. 水質汚濁
  3. ゴミ、ほこりの処理
  4. 事業損失防止対策(家屋調査、地下水観測等)
  5. 産業廃棄物の対応
  6. その他
現場作業環境の整備

現場作業環境の整備に関して、次のような項目の計画を記載します。

  1. 仮設関係
  2. 安全関係
  3. 営繕関係
  4. 現場環境改善対策の内容
  5. その他
再生資源の利用の促進と建設副産物の適正処理方法

再生資源利用の促進に関する法律に基づき、次の項目について記載します。

  1. 再生資源利用計画書
    • 搬入する建設資材(土砂、採石、アスファルト混合物)に占める再生資源の利用量および再生資源の供給元を記入する。
  2. 再生資源利用促進計画書
    • 建設副産物(建設発生土、コンクリート塊、アスファルトコンクリート塊、建設発生木材、建設汚泥および建設混合廃棄物等)の搬出量および再生資源化施設またはほかの工事現場への搬出量を記入する。
  3. 指定副産物搬出計画(マニフェスト等)
その他

官公庁への手続き(警察、市町村)、地元への周知、休日作業等、その他重要な事項について、必要に応じて記載します。

事前調査

事前調査の目的

建設工事は、発注者の指定する場所に指定する構造物を施工する、という単品受注生産です。一つ一つがすべて新しい仕事であり、その都度その工事に適した施工法を選定しなければなりません。したがって、目的構造物の設計図書について精通するとともに、契約条件や現場条件を十分理解して工事にのぞむ必要があります。特に、建設工事は自然を相手に取り組むものであるから、現場の自然環境、気象条件および立地条件などを事前に十分調査·把握することが、安全で確実な施工計画の立案や適切な工事価格の見積り、さらには工事全体の成功につながるので、ことに重要です。

契約条件の確認

施工計画を作成するにあたっては、現場で考えられるあらゆる事態に適切に対処できるよう、まず、契約書および設計図書の内容を精査し、工事の目的ならびに契約金額、目的構造物に要求されている品質、工期について十分精通しておく必要があります。この場合、特に確認すべき点は、次のとおりです。

契約内容の確認

  1. 事業損失、不可抗力による損害に対する取扱い方法
  2. 工事中止に基づく損害に対する取扱い方法
  3. 資材、労務費の変動に基づく変更の取扱い方法
  4. 瑕疵担保の範囲等
  5. 工事代金の支払条件
  6. 数量の増減などによる変更の取扱い方法

設計図書の確認

  1. 図面と現場との相違点および数量の違算の有無
  2. 図面、仕様書、施工管理基準などによる規格値や基準値
  3. 現場説明事項の内容

その他の確認

  1. 監督職員の指示、承諾、協議事項の範囲
  2. 当該工事に影響する附帯工事、関連工事
  3. 工事が施工される都道府県、市町村の関係条例とその内容

なお、契約内容に疑問がある場合は、発注者に問い合わせ、あるいは協議して、文書を交換し、契約の範囲や責任の範囲を明瞭にしておく必要があります。

現場条件の調査

現場条件の事前調査の結果がその後の施工計画の良否を決めるので、個々の現場に応じた適切な事前調査を実施する必要があります。現場調査の一般的な項目は、次のとおりです。

自然·気象条件の把握

  • 地形·地質·土質·地下水(設計との照合も含む)
  • 施工に関係のある水文気象データ

仮設計画の立案

  • 施工方法、仮設方法·規模、施工機械の選択方法
  • 動力源、工事用水の入手方法

資機材の把握

  • 材料の供給源と価格および運搬路
  • 労務の供給、労務環境、賃金の状況

輸送の把握

  • 道路の状況、運賃および手数料、現場搬入路

近隣環境の把握

  • 工事によって支障を生ずる問題点
  • 用地買収の進行状況
  • 隣接工事の状況
  • 騒音、振動などに関する環境保全基準、各種指導要綱の内容
  • 文化財および地下埋設物などの有無

建設副産物の適正処理

  • 建設副産物の処理方法·処理条件など

その他

  • その他

なお、具体的な調査項目、調査方法、頻度などは、それぞれの現場に応じて適切に設定する必要があります。現場条件の事前調査項目は、数が多いため、項目を見落とさないように、下表のようなチェックリストを作成するようにしてください。

【現場条件事前調査チェックリスト】

  • 準備持参品
    • 調査参加者の決定、調査項目分担、集合場所時間打合せ、出先等への連絡、利用交通手段、 調査時間スケジュール、予定日の天気予報、地図、設計図書、野帳、スケール、テープ、 カメラ、資料入ビニール袋、双眼鏡、 ハンドレベル、ポール、ハンドオーガー、コーンぺ ネトロメーター、ハンマー、作業衣、長靴、スコップ、磁石、 トランシーバー、カメラ
  • 地形
    • 工事用地、センター杭、幅杭、高低差、地表勾配、切取高、危険防止箇所、設計図書と現 地の相違点、土取場、土捨場、骨材採取場、材料貯蔵場、排水
  • 地質
    • 粒度、締固め特性、自然含水比、硬さ、混有物、岩質、亀裂、断層、地層、落石、地すべ り、たい積層、地盤の強さ、支持力、 トラフィカビリティ、地下水、伏流水、湧水、 既存 の資料、柱状図、近接地の例、地元からの情報収集
  • 気象
    • 降雨量、降雨日数、降雪開始時期、積雪量、融雪期、気温、日照、風向、風力、台風、波浪、 ハザードマップ
  • 流況
    • 各季節ごと(梅雨期、台風期、冬期、融雪期)の低水位と高水位、平水位、洪水(洪水位、 洪水量、危険水位、出水時間、ひん度などについての過去の記録を調査、また本川より支 川への逆流、たん水時間、排水ポンプ能力)、潮位の河川への影響、干満差、最高最低潮位、 付近の聞き込み
  • 電力水
    • 工事用電源(電圧、容量、引込距離、配線)、電力以外の動力源の必要性
    • 工事用水(水道か井戸か地表水か、水量、場所、水質、取水設備、既得取水者)
  • 仮設建物施工施設
    • 事務所、宿舎、倉庫、車庫、建設機械の設置場および修理施設、材料貯蔵所、材料試験場、 プラント、火薬庫、変電所、給油所、電話、電灯、上水道、下水道、燃料ガス、既存の病院· 保健所·修理工場などの有無
  • 輸送
    • 搬入道路(幅員、路面、路盤の強度、舗装の有無、カーブ、交通量、交差点、踏切、交通 規制、荷重制限、高さ制限、 トンネル、橋梁)
    • 鉄道軌道(運行回数、始終発時刻、最寄り駅までの距離、荷役施設、運賃および手数料)
    • 船舶(水路、水深、きっ水、こう門、港までの距離、荷役施設)
  • 材料
    • 砂、砂利、栗石、砕石、石材、盛土材料、木材、鋼材、生コンクリート、 コンクリートニ 次製品などについて生産地、生産量、距離、貯蔵量、生産品質、単価、調達において競合 する他工事の有無
  • 労力
    • 賃金、地元募集可能人数、他地方移入可能人員、農繁期の出役可能人員、婦人労働力、熟 練度、特殊技能者、他工事との競合、地元下請業者、遠距離の場合のマイクロバス輸送
  • 工事用地
    • 買収済の用地境界、未解決の用地および物件、解決済の未移転物件、未解決の場合の解決 見込、借用地、借地料、耕作物
  • 支障物件
    • 地下埋設物(電力、通信、ガス、上下水道、排水路、用水路)
    • 地上障害物(送電線、通信線、索道、鉄塔、電柱、やぐら)
    • 文化財
  • 環境問題
    • 交通問題(交通量、定期バス有無と回数、通学路、作業時間に対する制限、祭礼行事障害、 観光ルート、回り道)
    • 公害問題(騒音、振動、煙、ごみほこり、取水排水などが学校、病院、商店、住宅に与え る影響)
    • 相隣関係(公害問題以外に掘削による近接家屋への影響、耕地の踏み荒しおよび樹木の伐 採補償、土砂および排水の流入)
  • 権利関係
    • 水利権、漁業権、林業権、土捨権、採取権、鉱業権、地上権、地役権、特許
  • 工事関連
    • 将来の追加工事の可能性、設計変更の可能性のある箇所、付帯工事、関連別途工事、隣接 している他業者の工事

また、現場調査の実施にあたっては、工法、段取り、建設機械の機種選定、工期などを常に頭に浮かべながら踏査します。また、ベテランの意見を聴いたり地元からの情報収集などにも努めるようにしてください。重要な工事の調査項目については、判断の偏りをなくすために、複数の者で調査したり、時期を改めて調査することも重要です。

基本計画

施工方法と施工手順

決定の手順

設計図等と事前調査を基に、図2.8に示す手順を経て、施工方法と施工手順を決定します。

重点工種

施工方法と施工手順の決定にあたっては、次に示す工種について、特に重点的に検討します。

  • 数量、工費の大きい工種
  • 高度の技術が要求される工種
  • 安全面での危険度の高い工種
  • 環境に影響を及ぼすことが予想される工種

基本方針

施工手順の検討にあたっては、次の基本方針に留意します。

  • 全体工期、全体工費に及ぼす影響の大きい工種を優先して考える。
  • 工事施工上の制約条件(環境・立地・部分工期)を考慮して機械、資材、労働力など工事の円滑な回転を図る。
  • 全体のバランスを考え、作業の過度な集中を避ける(作業の平準化)。
  • 繰り返し作業を増すことにより習熟を図り、効率を高める。

施工図面等の作成

決定した施工方法、施工手順を、発注者をはじめ関係諸機関、施工に携わる関係者に説明できるよう、施工図面、表および文章にしてまとめます。記載すべき主な内容は、次のとおりです。

  • 工事全体の流れを示す施工手順フロー図ならびに主要工種に関する施工手順図、手順など
  • 仮設備に関する設備配置図、設備図面、設備名称、仕様・規格、能力、容量、設置数量など
  • 主要工種における機械・設備等の配置図、機械設備の名称、仕様・規格、能力、台数など
  • 重要仮設物に関する構造設計計算書

工程計画

工程計画の意義

工程計画は、施工計画の根幹となるだけでなく、工程管理の基本ともなる重要な計画であります。その直接の目的は工期内に工事を完成させることですが、工事目的物の品質は各工程においており込まれ、また、工事の原価も各工程において生じるものですから、工程計画は、施工管理の目的であるところの「より良く」、「より安く」、「より早く」の実現、すなわち、工事の成否を左右する重要な計画であるといっても過言ではありません。

工程計画の目的と作成手順

工程計画の立案における主な目的は、次のとおりです。

  1. 各工程(各部分工事)の施工順序を決めること。
  2. 各工程(各部分工事)に必要な作業可能日数、1日平均施工量など作業日程を算定すること。
  3. 機械、設備の規模・台数などの組合せを決定すること。
  4. 全体の実施工程表を作成すること。

また、各部分工事の実施工程計画の作成手順は、図-1に示すとおりです。最終的にはそれらの検討結果を総合して各種の図表に表し、別に述べる工程管理に使用します。

施工方法の選定

施工方法の選定について、建設機械の選定を例に説明すると、一般に、

  1. 工事条件に最も適した建設機械の選定(工事現場への適合性)
  2. 最も経済的な建設機械の調達と運用方法(経済性)
  3. 最も合理的な建設機械の組合せ(建設機械の組合せ)

の3つについて具体的に検討することが大切です。その要点は、以下に列挙するとおりです。

工事現場への適合性

土工機械を例とした場合は、

  • 取り扱う土の種類、土質条件、地下水の状況
  • 工事量、掘削深さ、運搬距離
  • 機械作業の自由度

などの工事条件に適した機種・容量の建設機械について検討し、機種をしぼり、その数種の機種について経済性と合理的組合せを検討します。

経済性

建設機械が経済的であるか否かの検討は、以下の条件を考慮して決めます。

  • 工事単価
  • 工事規模・施工速度(1時間平均施工量)
  • 機械損料・運転経費
  • 納期
  • 運搬条件・設置場所
  • 運転手の能力
  • 市場に出回っている普及度の高い機械(標準機械)

機械の合理的な組合せ

建設機械の合理的な組合せを計画する際の考え方は、次のとおりです。

  • 組合せ作業の主作業を明確に選定する。
  • 主作業を中心に各分割工程の施工速度を検討する。
  • 組合せ機械による流れ作業の各分割工程の所要時間を一定化する。
  • 流れ作業の場合、施工効率は単独作業の場合より低下し、最大施工速度は、各分割工程のうち、最小の施工速度によって決める。

作業の主体となる主機械の能力に合わせ、従機械は主機械の作業能力と同等、あるいは若干上回らせ、全体的に作業能力のバランスがとれるよう計画します。従機械の選定: 例えば、1日あたり500m3の土量を運搬する場合、積込み機(従機械)は500m3以上の作業能力をもった機械とします。

組合せ機械については、機械故障等による全体の作業休止を防ぎ、主機械の能力を最大限に発揮させるため、作業全体の効率化が図られるよう検討します。

作業可能日数の算定

作業可能日数の意味

具体的な工程計画を作成するには、まず、その基本条件となる作業可能日数を明確にします。計画した施工方法の1日の平均施工量で、与えられた工事を完成するのに必要な所要作業日数を算定して、基本の作業可能日数以内とします。この関係を示したものが式1です。

作業可能日数 ≧ 1日平均施工量 ÷ 工事量 ・・・(式1)

また、日程計画は、式2で算定される1日の平均施工量を基準に作成します。

1日平均施工量 ≧ 工事量 ÷ 工事量作業可能日数 ・・・(式2)

作業可能日数の算定

作業可能日数は、工期中の暦日数から定休日、天候その他に基づく作業不能日数を差し引いて推定します。

作業可能日数 = 暦日数 –(定休日 + 天候等による作業不能日数 – 重複日数) ・・・(式3)

作業可能日数の算定は、工程計画の基本であり、下記事項を勘案し検討します。

  • 休日、祭日、夏休み、年末年始、地域行事などにより作業を休止する日数
  • 降雨、降雪や出水など自然的要因により作業を休止する日数
  • 市街地などにおける騒音、振動の規制による作業時間の制約
  • 降雨後、どの程度作業不能となるか、現地土質(含水比による土への影響)、重機のトラフィカビリティの関係
  • 休日と作業不能日の重複日数

休日と作業不能日の重複日数 = 作業不能日数 × ( 休日数 ÷ 暦日数 ) ・・・(式4)

1日平均施工量の算定

1日平均施工量は、工事量から、式2を満足するようにしなければなりません。また、1日平均施工量は、次式で算定されます。

1日平均施工量 = 1時間平均施工量 × 1日平均作業時間 ・・・(式5)

1日平均作業時間

1日平均作業時間は、季節や工事の種類などで異なり、一般的な工事では8時間程度、トンネル工事などの昼夜施工(2交替)となる工事では16時間程度です。また、建設機械の1日平均作業時間は、1日の運転時間であり、運転員の拘束時間から機械の休止時間と日常整備や修理時間を差し引いたものです。

1時間平均施工量

建設機械1台あたり、または作業員1人あたりの1時間あたり施工量は、工程計画、工事費見積り、機械の組合せなどの施工計画の基本事項です。1時間平均施工量は、作業条件、作業環境、地理的条件、季節などにより大きく影響を受けるため、慎重な検討が必要です。

人力施工では、一般に、式5では算出せず、施工歩掛を用います。

施工速度の算定

施工速度と作業効率

施工速度(q): 建設機械の1時間あたり施工量

q=EqRq = E \cdot q_{R}・・・(式6)

  • EE : 作業効率
  • qRq_{R} : 機械の標準施工速度(標準的な作業条件、環境状態における1時間あたり施工量)
作業効率(E): 現場特性に応じた係数で、時間的要素と能力的要素に区分

作業効率(EE)=実時間作業率(EtE_{t})× 現場作業能力係数(EgE_{g}) ・・・(式7)

  • 実時間作業率: 実作業運転時間の運転時間に対する割合0.95~0.55
  • 現場作業能力係数: 標準的作業能力に対する現場条件、工事規模、施工方法等を考慮した作業能力の割合

最大施工速度

最大施工速度とは、好条件下で建設機械から一般に期待しうる1時間あたりの最大施工量で、実時間作業率Et=1E_{t}=1とすると、次式で与えられます。

最大施工速度 = 標準施工速度 × 現場作業能力係数 ・・・(式8)

一般に、機械メーカーから示される公称能力がこれに相当します。例えば、容量28切(0.75m3)のミキサーの最大施工速度を求めると、以下のようになります。

材料投入~練混ぜ~排出までの1サイクルタイムの平均値が2分とすると、

最大施工速度 = 0.75 x 60/2 = 22.5 (m3/時)

最大施工速度は、機械の主エンジンが少しの損失時間もなく、すべて主作業を行っているという状況を指しますが、実際の現場では何らかの損失時聞があるため、最大施工速度を発揮することはありえません。

正常施工速度

1交代または1日の作業時間のうちには、機械の調整、日常整備、燃料補給などのように作業上一般に除くことができない時間損失があります。これらを「正常損失時間」と呼び、正常損失時間によって最大施工速度を修正したものを「正常施工速度」とします。正常施工速度と最大施工速度との関係は、次の式で表されます。

正常施工速度 = 正常時間作業率 × 最大施工速度 ・・・(式9)

正常時間作業率は、次の式で表されます。

正常時間作業率 = 実作業時間 / ( 実作業時間 + 正常損失時間 ) ・・・(式10)

一般に、正常作業時間率として50/60または0.8を採用することができ、前述の28切ミキサーの正常作業時間率を0.8として正常施工速度を求めると、次のようになります。

正常施工速度 = 0.8 × 22.5 = 18(m3/ 時)

平均施工速度

一般に、着工当初や工事終末期における不可避的な遅延、機械の故障、施工段取り待ち、材料搬入の手待ち、地質不良、悪天候、災害事故、設計変更、その他偶発的障害による時間損失があります。これを「偶発損失時間」と呼びます。正常損失時間および偶発損失時間を考慮した時の施工速度を「平均施工速度」といい、次の式で表されます。

平均施工速度 = 正常時間作業率 × 偶発時間作業率 × 最大施工速度 ・・・(式11)

または、

平均施工速度 = 平均時間作業率 × 最大施工速度 ・・・(式12)

偶発時間作業率は、次の式で表されます。

偶発時間作業率 =(実作業時間+正常損失時間)÷(実作業時間+正常損失時間+偶発損失時間) ・・(式13)

一般に、平均時間作業率は0.6~0.8であることが多く、前述の28切ミキサーの平均作業時間率を0.6として平均施工速度を求めると、次のようになります。

平均施工速度 = 0.6 × 22.5 = 13.5 (m3/ 時)

工程計画の基準となる施工速度

建設機械の施工速度(単位時間あたりの施工量)は、工程計画、工事費見積、機械の組合せ計画などの基礎であります。一般に、どの施工速度を用いるかは、次のようになります。

  • 平均施工速度:工程計画および工事費見積りの算出
  • 最大施工速度および正常施工速度:機械の組合せ計画(作業能力のバランスをとるため)

実施工程表の作成

実施工程表は、施工計画の総合結果を工程図表により表現するものです。

  1. 原則として、横線式工程表用紙に記入し、必ず出来高予定曲線を記入し対比する。また、斜線式工程表を用いたほうが管理しやすい工事については、これを使用しでもよい。
  2. 過去の同種工事の出来高実績曲線に当該工事の出来高予定曲線を記入し対比する。

実際の工程管理では、進度や作業量の変化に応じて検討や修正を加えていくことになります。工程図表は、工事の特性や規模などを考慮して、工事の進捗状況を的確に表現できるものを選択します。作り方が簡単で見やすいという点で、現在最も多く用いられている横線式工程表(バーチャート)を例に取り、作成手順を示します。

横線式工程表は、縦軸に工事を構成する工種(部分工事)を記入し、横軸に工期(日数)を取り、各工種の開始日、終了日、および所要日数を棒状のグラフで表した工程表です。

長所は、作成および修正が容易であり、計画と実績を併記した際に進捗が直視的にわかることです。一方、短所は、作業間の関連が漠然としており、工期に影響する作業が不明確であることです。

バーチャートの作成手順は以下の通りです。

  1. 全体を構成するすべての工種(部分工事)を縦に列記する。
  2. 利用できる最大工期を横軸にとる。
  3. すべての部分工事の施工に要する時間をそれぞれ計画する。
  4. 工期内に全体工事を完成できるように、3により計画した各部分の所要時間を図表にあてはめて日程を組む。

このうち、日程の組み方には、次の3通りの方法があります。

  1. 順行法は、施工順序にしたがって、着手日から決めてしぺ方法。
  2. 逆算法は、竣工期日からたどって、着手日を決める方法。
  3. 重点法は、季節や現場条件、契約条件などに基づいて、重点的に管理すべき工種の着手日・終了日を固定して、その前後を順行法または逆算法により固めていく方法。

仮設備計画

仮設備計画の要点

工事施工のために必要な工事施設を仮設備といい、その計画を仮設備計画といいます。その要点は、以下のとおりです。なお、仮設備計画には、その設置と維持だけでなく、撤去と後片付け工事も含まれることに留意してください。

  1. 仮設備は、工事の最終目的とする構造物ではなく、臨時的なものです。工事完成後、原則として取り除かれます。
  2. 仮設備については、一般に、本工事と異なり、指定された設計図があるわけではありません。施工業者による工夫、改善の余地が残されているので、工事規模に対して過大あるいは過小とならないよう十分検討し、必要でかつムダのない合理的な計画としなければなりません。
  3. 仮設備は、その使用目的、使用期間等に応じて、作業中の衝撃、振動を十分考慮に入れた設計荷重を用いて強度計算を行うとともに、労働安全衛生規則などの規定に合致するように設計しなければなりません。
  4. 仮設構造物は、使用期間が短いため、安全率は多少割り引いて設計することがあるが、使用期間が長期にわたるものや重要度の大きい場合は、相応の安全率を採る必要があります。
  5. 本工事の工法・仕様等の変更にできるだけ追随可能な、柔軟性のある計画とします。
  6. 材料は一般の市販品を使用し、可能な限り規格を統一します。また、他工事にも転用できるような計画にします。
  7. 仮設備という呼び方につられて、手を抜いたりおろそかにすると事故の原因となり、かえって多くの費用を必要とする場合もあります。
  8. 市街地で施工する場合は、国土交通省通達「建設工事公衆災害防止対策要綱」の厳守が求められます。

指定仮設と任意仮設

仮設備は、契約上の取扱いによって、指定仮設と任意仮設に分かれます。

指定仮設は、土留め、締切り、築島などで、特に大規模で重要なものがある場合に、本工事と同様に発注者が設計仕様、数量、設計図面、施工方法、配置などを指定するものです。仮設備の変更が必要となった場合には、設計変更(数量の増減などの契約内容の変更)の対象となります。一方、任意仮設では、仮設備の経費は契約上一式計上され、特にその構造について条件は明示されず、どのようにするかは施工業者の自主性と企業努力にゆだねられています。また、契約変更の対象とならないことが多いです。

直接仮設と共通仮設

仮設備工事は、本工事施工のために直接必要な仮締切りなどの直接仮設工事と、現場事務所などの仮設建物のような工事の遂行に間接的に必要な共通仮設工事(間接仮設工事)に区分されます。

直接仮設

  • 工事用道路
    • 既設の道路から工事現場に資材、機械その他を搬入するために必要な道路の建設、既設の道路の拡張、既設橋梁の補強およびこれらの維持補修。必要に応じ橋梁、トンネル、信号等も含む。
  • 工事用軌道
    • 工事の種類、地形、運搬する材料によっては、レール敷設による機関車の使用が有利な場合がある。
  • 索道、クレーン
    • 架空索道、軽索、ケーブルクレーン、ジブクレーン、スキップ、エレベータ類。
  • コンベヤ類
    • ベルトコンベヤ、スクリューコンベヤ、チェーンコンベヤ、ロープコンベヤ、バケットコンベヤ、ムカデコンベヤなど。
  • その他運搬設備
    • 水力輸送設備、空気輸送設備。
  • 荷役設備
    • フィーダ、ホッパ、シュート、デリック、ウィンチ、ローダ、クレーンなどの設備とこれらに付帯する工事。
  • 桟橋
    • 港湾、河川その他水中構造物に対する機械足場としたり、また資材運搬用として設備する。
  • 支保工足場
    • 木製足場の足場丸太および角材、鋼製足場のパイプサポート、角パイプ、鋼製梁、鋼板桁、形鋼、鋼製足場板など。
  • 材料置場
    • 工事用資材の貯蔵場所の設備で、現場の地形によっていろいろな方式がとられる。
  • 電力設備
    • 工事用電力設備の計画は、使用機械並びに照明設備などの電気容量とその稼動計画によって決定される。
    • 一般の場合、工事用電力の供給は6、000ボルトにて工事現場附近で与えられることが多く、建設業者はこれから取り入れた2次側電力設備から先を分担する。
    • この取入れ場所が工事現場からどの程度離れているかによって、電力設備費に大きく影響するので、受電位置の確認が大切である。
    • 工事用電力設備は、送電設備、変電設備、配電設備に大別されるが、変圧器その他の変電設備、送配電用電柱、電線、がいし、スイッチ、計器類などである。また、工事現場の夜間照明に必要な配線、投光器なども含む。
  • 給水設備
    • 水道用水利用の場合の計器類、給水管その他設備、井戸設備、河川その他自然水利用の給水設備、ポンプ設備など。
  • 排水・止水設備
    • 地下水などの処理は、土木工事のあらゆる場合に生ずる現象で、これの処置が本工事に大きな影響を及ぼすことが多い。排水設備としては、各種ポンプ、ウェルポイント、排水溝、かま場、水抜孔などがある。止水設備としては、セメント注入、薬液注入、凍結工法、防水工などがある。
  • 給気・排気設備
    • コンプレッサー設備、換気用送風機など。
  • 土留め、締切り
    • 構造物の根掘その他地下掘削、あるいは水中構造物の築造のため、矢板、形鋼などで行うもので、直接工事に含まれないもの。
  • コンクリートの打設設備
    • コンクリートの運搬打設に必要な諸設備。
  • バッチャプラント
    • バッチャプラント設備、骨材貯蔵ビン、骨材セメント輸送設備。
  • 砕石プラント
    • クラッシャー設備、ふるい分け設備、洗浄設備、貯蔵ビン設備、引出設備。
  • ケーソン、シールド用圧気設備
    • コンプレッサー、エアロック、ホスピタルロック(病人ロック)、配管その他設備。
  • 防護施設、安全施設
    • 発破による岩石片の飛来を防ぐための防護柵、防護網、電線・通信線などの防護施設など。仮橋、仮道、照明、案内標示など。
  • その他機械の据付撤去
    • コンプレッサー、ポンプ、ウィンチ、クレーン、デリック、その他の各種機械の設備。

共通仮設

共通仮設工事の内容は次のとおりです。

  • 現場事務所
  • 連絡所
  • 現場見張所
  • 下請事務所
  • 各種倉庫
  • 車庫
  • モータープール
  • 修理工場 vコンプレッサー、ウインチ、ポンプ、その他各種機械室
  • 鉄筋、 型枠などの下ごしらえ小屋
  • 試験室
  • 社員宿舎
  • 労務者宿舎
  • 病院、医務室
  • 厚生施設

調達計画

外注計画

直営(元請)と外注(下請)の区分けについては、主体工事や工事材料、建設機械、その他で大きな資金の調達を必要とする部門ならびに工事の管理責任上重要な部門を直営とし、労働力を多く必要とする施工部門または専門的施工技術を要する施工部門を外注とするのが一般的です。

労務計画

労務計画は、工程表より労務予定表を作成し、職種別に、いつ、何人必要であるかを計画します。職種別の労務調達計画を作成するにあたっては、他の職種の工程と相互に調整を図りながら、期間や日々の労働時間を設定します。労務の山積み、山崩しにより、1日あたり最高必要人数をできる限り減らし、かつ人数の変動を少なくするようにしなければなりません。

資材計画、機械計画ならびに輸送計画

建設資材と建設機械の調達およびこれらの輸送の費用が工事費に占める割合は、おおむね40~70%にも及ぶので、これらの計画の成否が工事原価の良否を決める重要な項目となります。

資材計画

材料や仮設材の不足による手待ち時間や無駄な保管費用などの発生を最小限にします。特に、仮設材については、有利な調達契約方法、効果的な転用方法および回収方法まで十分検討します。

機械計画

なるべく機械台数を平準化するよう、機械予定表を作成し、手待ち時間や無駄な保管費用などの発生を最小限にします。機械台数が、月や週ごとに著しく異なることがないかどうかチェックします。

輸送計画

輸送方法は、輸送する資機材の種類・大きさ・重量、輸送距離・経路、荷卸し設備能力などを総合的に勘案して決定します。

原価管理計画

原価管理の目的

原価管理とは、最も経済的な施工計画を立て、これに基づいて実行予算(予定原価)を設定し、工事の進捗とともに実行予算と実際に発生した実施原価(実際原価)とを比較して、差異の原因を分析・検討し、工事利益を確保するための原価引き下げの処置を講じるなど、工事を経済的に施工できるよう費用を予測し、管理することです。

また、原価管理の目的を達成するために、工事の利益を予測するための実行予算を早期に作成すること、実行予算の精度を高めるために継続的に歩掛りなどのデータを整備・蓄積しておくこと、実行予算と実施原価が常に対比できるように整理しておくことなどが重要です。

原価管理業務の概要

業務の流れ

原価管理に関する業務の流れは、図-1に示すとおりです。

まず、工事を受注した後に事前調査を行って、最も経済的な施工計画を立て、これに基づき実行予算を作成する(Plan)。次に、実際の施工に即して発生した原価に関連する各種データを整理・分析し、実施原価を計算し(Do)、実行予算と対比して(Check)損益を予測し、その結果を踏まえて施工計画を修正する(Act)。これを繰り返すことにより、原価管理は行われます。

工事原価管理台帳等の整理

適正で能率的な原価管理を行うためには、まず、それぞれの工事に最も適した工事費の構成を定め、見積書、実行予算書および工事原価管理台帳の原価勘定項目を共通にして、簡単に対照できるよう整理しなければなりません。見積書、実行予算書、工事原価管理台帳などの書類においては、以下の2点が重要です。

  1. 工事費の構成と様式を統一すること。
  2. 実行予算と実施原価が容易に対比できるように、費目を系統的に分類すること。

実施原価の把握

実施原価を把握するため、その基礎資料となる日報、月報、請求書の伝票、就労状況表、機械稼働状況表などには、日時、工種、作業内容、人数、品目、使用量、使用者など、原価の発生日、資源名、責任者名に関する情報を記録します。実施原価は、これらをもとに、工事原価台帳に工事支出金額を正確に整理記載することにより求められます。

現場担当員は、担当する工事の原価が現在どうなっているかを知り、これを管理し、時宜を得た的確な処置をとるために、常に実行予算と工事原価台帳を比較対照しつつ、工種別かつ要素別に実施原価を把握しなければなりません。

原価管理の方法

実行予算の設定

原価管理は、入札時に算定した見積りに再検討を加えた実行予算を算定することから始まります。見積りは、契約書、仕様書、設計図書、現場説明書などを十分検討するとともに、地形、地質、気象、輸送、動力、用水、労働力、材料の入手方法などの施工に関するあらゆる現場条件を調査して、その工事に最も適した、最も経済的な施工法を決定し、工程、機械、資材、労力、輸送、仮設備、資金などの詳細な施工計画を立て、それに基づいた適正な原価計算による見積りとしなければなりません。

実行予算は、実施原価の評価基準となるものですから、工事受注後、見積り時に立てた施工計画を再検討し、最も経済的な施工計画に基づいて作成しなければなりません。実行予算の精度を高め、かつ予算作成業務のスピードアップを図るためには、類似工事の実績、企業独自の歩掛りなどの蓄積・整備が必要です。

原価発生の統制

工事の施工が開始されると、直ちに必要な物的・人的資源が投入され、材料、労務、外注経費などの費用、つまり原価が発生します。これら工事の進行に伴って発生する実施原価を、数量と金額の両面から実行予算と比較するわけですが、その前に原価の発生を統制することが必要です。すなわち、工事着手前の実行予算をまず基準として、実施原価をできる限り低く抑える努力をすることが重要です。

原価発生の統制における基本原則は、次のとおりです。

  1. 原価比率の高いものに重点を置いて、その費用の低減を図ること。
  2. 原価を低減する可能性が高いものに重点を置いて、合理化を図ること。
  3. 損失費目を見つけ出し、重点的に改善すること。
  4. 実行予算より実施原価が超過する傾向を持つ費目を洗い出して原因を調査し、早期に改善を図ること。
  5. 常に実際の作業量を調査して、標準作業量(実行予算)と比較すること。作業量が低下した場合は、その原因を突き止め改善を図ること。また、増大した場合は原因を分析し、今後の同種工事の参考とすること。

実施原価との対比

工事の進行に伴って材料費、労務費、外注費、経費などの費用が発生してきますが、これが当該工事の実施原価です。この実施原価と実行予算における予算単価の対比が容易に行えるように、工事原価管理台帳を作成し、工種別、費目・科目別に整理しておく必要があります。将来の同種工事の見積りへの利用も念頭に、金額だけでなく、数量についても予算と実績の差異を把握し、原価を価格と数量の両面から対比して、残工事に対する支払い予定を検討して、最終損益見込みを把握します。

施工計画の再検討等

実施原価と実行予算に差異が生じた場合は、その原因を分析・検討し、施工計画の再検討を含む原価引き下げの措置を講じます。これによって生じた結果を吟味し、良好であればその処置を持続・発展させ、そうでない場合は再度見直しを行います。計画(P)実施(D)検討(C)処置(A)のサイクルを連続的に反復進行させて、工事を成功に導くようにします。

原価管理の手順は、以下のとおりです。結果が良好でなければ、1~5の繰り返し(P-D–C-A)を実行します。

  1. 実行予算を作成する(P)
  2. 原価発生の統制を図る(D)
  3. 実施原価と実行予算とを対比する(C)
  4. 施工計画の再検討、修正措置を講じる(A)
  5. 修正措置の結果を評価する(A)

品質管理計画

品質保証の活動は、大別して、品質の確認(検査)と、プロセスでのつくり込み(管理)の2つであります。これらを満足する品質管理計画を作成するためには、まず発注者の要求品質を正しく把握する必要があります。

発注者の要求品質を正しく把握する手段として、共通仕様書・特記仕様書・図面等の入手および種々の打合せ等があり、これらをもとに下記に示す品質管理計画を作成します。

  1. 発注者の要求品質を的確に把握し展開する。
  2. 工程の流れに沿って重要品質特性を整理する。
  3. 要求品質と重要品質特性の対応度合を検討する。
  4. 要求品質と重要品質特性の対応度合をふまえて、検査項目・管理項目を整理する。
  5. 管理項目の中から重点管理項目を抽出する。

なお、品質管理に用いる統計的手法などについては、「第4章品質管理」に詳述しているので、以下の節においては、第4章で取り扱われていない出来形管理、工事写真および内部検査について説明します。

出来形管理計画

工事目的物が設計図書に示された形状、寸法を満足したものになっているかを確認し、欠陥のない信頼度の高い構造物を完成するよう管理することが、出来形管理の目的です。

出来形管理計画の作成にあたっては、まず、管理すべき構造物の形状寸法とそれらに要求される精度を明らかにしておく必要があります。それらは、公共工事であれば、発注者が指定する出来形管理基準および規格値によることが多いです。

次に、出来形管理計画で重要なことは、工事施工過程で得た各種測定値などのデータをパソコンを利用するなどして速やかに整理かつ処理する方法を計画しておくことです。整理した結果は、基準値と対比するなどして、結果を現在の施工に反映し、管理基準を常に満足させるよう施工を誘導していく必要があります。

なお、工事完成後に目視による確認のできない部分については、出来形の記録と併せて写真記録を利用することを計画しておきます。

工事写真

工事写真撮影の主な目的は、以下のとおりです。

  1. 工事の状況を記録し、完成後にその過程を忠実に再現できるようにすること。
  2. 施工後には目視確認が不可能な部分の施工状況を記録すること。
  3. 施工中の品質管理に関する信頼性を補強すること。
  4. 施工図書のみでは把握しきれない施工管理状況を記録すること。
  5. 臨機に講じた措置、事故などへの対応措置などを記録すること。

工事写真は、おおむね次のような内容で構成されます。

  1. 着手前および完成写真
  2. 施工状況写真(工事の状況を再現し、設計図などと対比するための資料)
  3. 安全管理写真
  4. 使用材料写真
  5. 品質管理写真
  6. 出来形管理写真
  7. 事故・災害の写真(被害状況や対応状況の証明写真)
  8. その他(公害、環境その他の補償などに関する根拠写真)

内部検査

工事目的物の品質・出来形については、完成後だけでなく、工事の施工段階でも主要な区切りごとに発注者の検査が実施されます。これは、建設工事はその性質上、工事完成後に施工の適否を判定することが困難であり、また、工事目的物に不良箇所が発見されても、それを手直しするには相当の時間と費用を要する場合が多いため、施工の各段階で逐次品質・出来形について管理するのが合理的です。

施工者としては、現場における日々の管理を徹底することが第一ですが、さらに適時、社内での内部検査を実施して、品質・出来形の確保に努めなければなりません。

安全管理計画

安全管理計画の意義

工事現場において事故が発生し、施工中の構造物が損傷を受けたり、作業員や第三者に負傷者や死者が出るなどすると、関係機関への届出や説明、原因の究明、構造物の補修、工事のやり直しなどで工期が大幅に遅延し、さらには営業活動の停止処分や損害賠償など、企業として大きな経済的損失を受けるだけでなく、イメージダウンにもなります。

そのうえ、直接、間接に、その工事目的物のユーザーなどに社会的損害を与えることになります。したがって、安全管理は、土木施工管理の中でも、工事の成否を決する重要な管理のひとつです。

安全管理計画立案の基本

工事現場において、作業員の安全および良好な労働条件を確保し、快適な作業環境の形成を図るために、労働基準法、労働安全衛生法等の関係法令を遵守するとともに、「土木工事安全施工技術指針」、「建設工事公衆災害防止対策要綱–土木工事編–」などに基づき、工事の安全に留意し、労働災害の防止に努めなければなりません。

また、安全管理は施工計画とも不可分であり、安全管理計画の策定にあたっては、次の事項に留意しなければなりません。

  1. 安全管理に関する法令等を遵守すること。
  2. 施工条件、施工内容を熟知し、総合的な視野から安全管理方策を立案すること。
  3. 工事に関する関係機関等との協議・調整内容を十分把握し、安全管理計画に反映させること。
  4. 工事現場内だけでなく、現場外近傍の第三者の災害防止にも十分留意すること。
  5. 常時および非常時の安全管理に関する現場組織および業務分担、連絡・指揮命令系統を明確にしておくこと。

安全管理計画の主な内容

安全管理計画について検討する場合の主な項目は、次のとおりです。なお、詳細については、「第5章安全管理」を参照してください。

  1. 安全管理の目標の設定(標語など)
  2. 現場における安全訓練・教育の方法
  3. 安全管理活動(安全点検、安全巡視、安全ミーティングなど)の方法
  4. 建設機械・設備などの安全点検方法
  5. 各種工種、種別ごとの作業の安全対策
  6. 仮設施設の設計と安全度の確認
  7. 現場周辺の安全対策(交通安全管理など)
  8. 常時および非常時の安全管理体制(役割分担、連絡体制、指揮命令系統など)

安全管理体制

安全管理に関する体制の整備は特に重要であり、法令等にしたがって安全衛生を推進するためには、そのための組織と担当者や役割分担を明らかにしてシステマティックに取り組む必要があります。

しかし、専任の安全衛生管理担当者を配置することは一般には困難なので、工事現場の安全管理を有効に機能させるために、施工内容を熟知している工事の実施組織の構成員が安全衛生管理組織のスタッフを兼任することが適当です。

安全管理に関する法令では、工事現場における統括安全衛生責任者、元方安全衛生管理者、安全衛生責任者、各種の作業主任者などを工事現場の規模に応じて選任することとされています。

交通管理計画

工事現場およびその周辺には多くの工事用の特殊車両などが頻繁に通行し、自動車や歩行者の交通安全に大きな影響を及ぼします。したがって、工事に伴う交通処理や交通対策については、交通管理計画として明確にしておく必要があります。

  1. ダンプトラック等大型貨物自動車による工事用資機材等の輸送計画
    1. 地元関係機関との協議内容と担当者
    2. 交通安全に関する協議内容と担当者
    3. 輸送担当業者
    4. 輸送経路および輸送方法
    5. 輸送期間
    6. 交通誘導員の配置方法
    7. 標識・安全施設等の設置場所
    8. その他安全輸送上必要な事項
  2. 工事現場内の交通安全施設や案内標識の配置計画および交通整理員の配置計画
  3. 迂回路を設ける場合は、迂回路の位置、交通安全施設や案内標識の配置方法および交通整理員等の配置計画
  4. 過積載に対する防止策

過積載とは、ダンプトラック、トラックなどの自動車に定められた重量の限度を超えて貨物を運搬することをいい、次の2つの場合があります。

  1. 最大積載重量の超過(道路交通法違反)
    • 最大積載重量は、車検証に値が記載されており、ダンプトラックや大型トラックで10~12t程度です。
  2. 車両総重量の超過(道路運送車両法違反)
    • 車両の最大総重量は、軸距(ホイールベース)に応じて20tないし25tとなっており、軸距が短いダンプトラックなどでは20tです。

緊急時の安全管理体制

大雨、強風などの異常気象および地震による災害などの緊急時に備えた安全管理体制と指揮連絡命令系統並びに備蓄資材や応急処置のための資機材の調達方法に関する計画を明確にしておく必要があります。

大雨、強風などの異常気象により災害発生のおそれがある場合は、工事を中止し、現場の整理を行って、必要に応じて現場パトロールを行い、警戒にあたります。また、地震予知情報が発令された場合には、直ちに工事を中止し、現場の整理を行って避難体制をとります。また、責任者は、この処置を確認するものとします。

環境保全計画

環境保全計画の意義と目的

土木工事は、一般に、地形を大きく改変させ、地勢にも影響を及ぼす場合があり、工事現場周辺の自然環境や生活環境に及ぼす影響は大きいです。環境に関する地域社会などとのトラブルの発生は、工事の工程を大きく狂わせ、工期や工費に多大な影響を及ぼします。また、工事にともない発生する建設副産物を適正に処理し、生活環境の保全および公衆衛生の向上を図る必要があります。そのため、工事に先立ち、以下について十分検討しなければなりません。

  1. 地域の自然環境や生活環境を事前に把握すること。
  2. 関係法令を遵守し、環境問題の発生を最小限に抑えるような環境保全計画を立案すること。
  3. 工事を円滑に進められるよう、地域住民などに環境保全計画を事前に説明すること。
  4. 現場の労働環境を考慮し、健康被害が生じることのないように、あらかじめ適切な対策を講じること。
  5. 工事現場からの廃棄物の発生を抑制し、適正な分別、収集・運搬、処分を行う計画を立案する(リデュース、リユース、リサイクル)。

環境保全計画における検討項目

環境保全計画を作成するうえで対象となる主な検討項目は、以下のとおりです。なお、ここでは、工事現場の近隣に及ぼす損失や迷惑などの問題も環境問題(以下「近隣環境」といいます。)として整理することにします。

  1. 自然環境の保全
    • 植生の保護、生物の保護、土砂崩壊の防止対策
  2. 公害などの防止
    • 騒音、振動、ばい煙、粉じん、水質汚濁などの防止対策
  3. 近隣環境の保全
    • 工事用車両による沿道障害の防止対策
    • 掘削などによる近隣建物などへの影響防止対策
    • 耕地の踏み荒らし、土砂および排水の流出、井戸枯れ、電波障害などの事業損失の防止対策
  4. 現場作業環境の保全
    • 排気ガス、騒音、振動、ばい煙、粉じんなどへの対策
  5. 建設副産物対策
    • 建設発生土、建設汚泥、アスファルト・コンクリート塊、金属くず、建設発生木材などの適正処理

環境保全に関する関係法令

環境保全に関係する主な法令には、以下のようなものがあります。

  1. 現場作業環境関係
    • 労働安全衛生法、労働安全衛生規則
  2. 自然環境関係
    • 環境基本法、自然環境保全法、自然公園法
  3. 公害防止関係
    • 騒音規制法、振動規制法、大気汚染防止法
    • 悪臭防止法、土壌汚染防止法、水質汚濁防止法
    • 下水道法、湖沼水質保全特別措置法
    • 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律
  4. 建設副産物関係
    • リサイクル法、廃棄物処理法

建設副産物の種類

建設副産物とは、「資源の有効な利用の促進に関する法律(リサイクル法)」にいう“建設工事にともない副次的に得られる物品”です。

詳細については国土交通省-リサイクルを参照してください。

建設副産物対策の基本

建設副産物については、

  1. 発生の抑制(施工方法などを工夫して発生を抑制する)
  2. 再利用の促進(建設資材等としてリサイクルを促進する)
  3. 適正処分の徹底(廃棄物の不法投棄をなくし適正な処分を徹底する)

の3本柱を基本方針とし、関係法令の規定にしたがって適正に処置することが、建設工事の発注者ならびに施工者等に義務付けられています。

建設副産物対策の検討事項

建設副産物対策に関する施工計画の作成にあたっては、契約条件の検討や事前調査に基づき、建設副産物の発生の抑制、再利用の促進、適正処分の徹底の3原則に従い、次に示す事項について検討しなければなりません。

建設副産物の種類と量の推定

建設副産物対策の基本は、どのような種類の建設副産物が、現場からどの程度発生するかを事前に推定することから始まります。また、適正に処分可能な処理場があるかどうかについての調査が必要です。

契約指示事項などの確認

契約指示事項の留意点は、下記のとおりです。

  1. 契約条件と現地条件との整合性
  2. 変更が生じた場合の処理費や処理場の変更などの契約上の取扱い

再生資源利用促進計画の作成

あらかじめ推計した建設副産物の種類と量をもとに、工事の内容を吟味し、リサイクル法で指定された土砂、コンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊、木材(以下「指定副産物」といいます。)の再生資源利用促進計画を作成します。建設副産物の発生量が一定の規模以上の工事の場合は、計画の作成が義務づけられています。

分別方法、保管方法および運搬方法

建設副産物は、一般に、景観を阻害したり、臭いやほこりなどの衛生上の問題から近隣の住民に歓迎されないものです。また、現場におけるこれらの処理方法は、作業効率と建設コストにも影響します。したがって、建設副産物の効果的な分別方法や保管方法さらには運搬方法などについて、あらかじめ十分検討しておく必要があります。

処理場の確保と処理の委託

1)処理場を確保するうえでの留意点
  1. 特別な処理を必要とする廃棄物(廃油類、トランス類、アスベスト)の発生。
  2. 特に都市部においては処理場の有無、その処理場の容量等。
2)処理の委託上での留意点
  1. 廃棄物処理法に基づく許可をもった委託業者(収集運搬、処分)の選定。
  2. マニフェスト(管理票)を交付して、その実施状況を適切に管理する。

その他の管理的事項に関する計画

現場管理組織の編成

建設業は、発注者からの個々の注文に応じて、その都度特定の場所で特定の目的構造物の工事を施工するものであり、その職場はひとつの工事が終了すると次の工事場所へと移動します。したがって、工事現場を管理する組織も個々の工事ごとに編成と解散を繰り返すことになります。工事の現場管理組織が工事を効率的に完成させるために極めて重要であることはいうまでもありませんが、効果的な組織を編成するうえですべての組織に共通する重要な基本的要素は、次に説明する分業、権限およびルールの3つを確立することです。

  1. 仕事の性格を明らかにし、内容を分類し、全体を統合する。
    • 目的を達成するために、なすべき仕事の性格と内容を明らかにします。次に、その仕事を関連のある職位にバランスよくまとめます。
  2. 職責と権限を明らかにし、その委譲をする。
    • 各人の責任と権限をはっきり知らせます。また、管理者はどの仕事を部下に任せるかを決め、効果的に仕事ができるよう各人に仕事の割当てを行います。
  3. ルール(規則)を設定する。
    • 組織全体を協調させ、活気とやる気を起こさせるよう、各部門、各職位間の諸関係のルール(規則)を定めます。

なお、組織の編成にあたっては、必要とされる資格、工事経験、技術力、統率力、年齢その他の条件を総合的に勘案し、全体が円滑に運営されるよう検討します。

下図に、中規模の建設工事の一般的な管理組織の例を示します。

施工体制台帳等の整備

下請・孫請等の施工体制を明確にするために、公共工事、民間工事を問わず、発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者で、当該工事を施工するために締結した下請負契約の総額が4億5000万円(建築一式工事の場合は7億円)以上になるときは、「施工体制台帳」と「施工体系図」の作成が義務づけられています(建設業法第24条の8第1項、第4項)。さらに、施工体制台帳には、平成27年4月から、外国人技能実習生および外国人建設就労者の従事の状況を追記することになりました。

施工体制台帳等を作成する時期は、民間工事では、その工事を施工するために締結した下請金額の総額が4億5000万円(建築一式工事の場合は7億円)以上となった時点、公共工事では、その工事を施工するために下請契約を締結した時点です。

※建設業法施行令の一部改正に伴い、令和5年1月1日に施行予定の規定についてはアンダーラインを付けて記述します。

書類の管理

工事の施工を開始してから竣工に至るまでには、工事に関する膨大な書類の整理はもとより、各種の届出、報告、協議、契約、検査その他に関する様々な手続きが必要です。これらの過程で作成した書類などは、施工中や施工後に課題が生じた場合の判断根拠資料となる重要な記録です。

工事を円滑に遂行するためには、日頃より一定の様式にしたがって計画的に書類などを整理しておく必要があります。様々な法令や基準などが整備されるにしたがって、書類整理の必要性は益々高まっており、現場技術者は十分そのことを認識して現場管理をする必要があります。